相場展望1月11日号 米国株: 相場の新リーダーとしてエヌビディアが登場、アップルと交替 日本株: 予想を超え熱狂的となった東京株式市場、懸念材料も芽生える

2024年1月11日 10:35

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)1/09、NYダウ▲157ドル安、37,525ドル(日経新聞
  ・前日にNYダウが再び最高値圏に上昇し、主力銘柄の一部に利益確定の売りが出て、NYダウは4営業日ぶりに反落して終えた。昨秋以降の米長期金利の低下に一服感があり、株式の相対的な割高感が意識されやすい面もあった。

【前回は】相場展望1月8日 米国株: 次の焦点は「インフレ再点火」と高水準の金利の長期化 日本株: 新高値銘柄数が多く、底堅さ示し、円高⇒円安転換で上昇

  ・NYダウは前日までの3営業日で+250ドルあまり上昇し、1/2に付けた過去最高値37,715に接近していた。景気敏感株や消費関連株に目先の利益を確定させる動きが広がった。午前の取引で、NYダウの下げ幅は▲300ドルを超える場面があった。

  ・米債券市場で長期金利は前日終値4.03%近辺んで推移した。2023年12月下旬には3.7%台後半と、およそ5カ月ぶりの低水準を付けた後、水準を切り下げている。足元では米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ観測が後退し、今後発表になる物価指数を見極めたいという雰囲気がある。市場では「長期金利が再び4%台を付けたことで投資家心理が強気になりにくい」との声が聞かれた。

  ・ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は3日続伸した。

  ・個別銘柄では、石油のシェブロン、化学のダウなどの景気敏感株が下げた。映画・娯楽のディズニー、クレジットカードのアメリカンエキスプレスも売られた。航空機のボーイングは連日で下落した。アナリストが投資判断を引下げた動画配信のネットフリックが下げた。半面、製薬のメルクと日用品のP&Gが上昇した。半導体のエヌビディアが連日で最高値を更新し、+2%弱上昇した。

 2)1/10、NYダウ+170ドル高、37,695ドル(日経新聞
  ・ハイテク株を中心に買いが入り、相場を支えた。週内発表の米経済指標が引続きインフレ鈍化を示すとの見方に加え、米主要企業の好決算への期待も追い風となった。

  ・1/11には2023年12月の米消費者物価指数(CPI)の発表がある。これまでに米経済指標は相次いでインフレの減速を示しており、市場では米連邦準備理事会(FRB)による今の利上げ局面が終了したとの見方が根強い。12月のCPIが一段のインフレ鈍化を示すことへの期待が買いを誘った。今週後半からは大手銀行を中心に米主要企業の決算発表が本格的に始まる。好調な内容になるとの期待もみられ、株買いにつながった面もある。

  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合指数は4日続伸した。

  ・多くの機関投資家が運用目標にするSP500株価指数は反発し、2022年1月の最高値4,796に迫る4,783で終えた。

  ・個別では、ソフトウェアのマイクロソフトや顧客情報管理のセールスフォースといったハイテク株が相場を牽引した。アナリストが目標株価を引上げた交流サイトのメタも買われた。半導体のエヌビディアも上昇し、3日続けて上場来高値を更新した。市場では「年初に目立っていた短期的な利益確定目的の売りが一服したようだ」との声が聞かれた。その他の個別銘柄では、ホームセンターのホームデポやスポーツ用品のナイキ、保険のトラベラーズなどが買われた。半面、化学のダウやクレジットカードのアメリカンエキスプレス、映画・娯楽のディズニーや石油のシェブロンは下げた。

●2.米国株:相場の新リーダーとしてエヌビディアが登場、アップルから交替

 1)画像処理半導体エヌビディアの高値更新が続き、米国株式相場を牽引
  ・エヌビディアの上場来高値更新が、ハイテク株を牽引、さらに米主要3株価指数への買いに波及した。
  ・ビットコインETFが承認されたことも、米株式相場の上昇を支援した。

 2)米国株の牽引役がアップルから、エヌビディアに交替し、新リーダーが現れる

●3.米景気後退は、もはや予測せず、年内3回の利下げを予想=格付け会社フィッチ(ロイター)


■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)1/09、上海総合+5高、2,893(亜州リサーチより抜粋
  ・金融緩和の期待感が相場を支える流れとなり、4日ぶりに反発した。

  ・複数メディアが1/9までに報じたところによれば、中国人民銀行(中央銀行)貨幣政策司の司長はこのほど「公開市場操作や中期貸出制度(MLF)、預金準備率などの金融政策ツールを用いて、与信の合理的な伸びを支援する」と述べ、早期の緩和を示唆した。中国10年債利回りの低下基調が強まっていることも、緩和観測を後押しした。

  ・また、上海総合指数はこのところ急ピッチに下落し、2022年4月以来の安値を付けただけに、値ごろ感も着目された。ただ、上値は重い。

  ・影の銀行(シャドーバンキング)の債務問題が依然としてくすぶっているほか、ファンドの解約換金による売り圧力も警戒された。

  ・「中国の証券当局は、運用会社の株売り越し規制を解除したもよう」などと報じられた。中国証券管理監督委員会(証監会)は昨年、低迷するA株市場を支えるため、主要な運用会社に対し、1日当たりの株式売買の売り越を禁じていた。

  ・業種別では、旅客増が期待される空運の上げが目立った。中国では今月26日、春節(旧正月)前後の特別輸送態勢「春運」期間がスタートする。中国民用航空局の予測によると、3/5までの「春運」40日間で、航空旅客数は述べ8000万人に達する見通しだ。(1日当たり200万人に拡大し、過去最多を更新する見込み)また、中国民用航空局の内部会議では、2024年に業界全体の黒字化を目指すとの目標を掲げている。消費関連もしっかり。中国旅遊集団中免については、業績成長も支援材料。同社が1/8引け後に報告した2023年通期の業績速報では、純利益が前年比で+33.5%増加した。石炭も高い。不動産・インフラ関連・医薬・素材・銀行なども買われた。

 2)1/10、上海総合▲15安、2,877(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済の鈍化が懸念される流れとなり、2020年5月以来の安値水準に落ち込む。

  ・世界銀行は1/9、最新の世界経済見通しを公表し、うち中国の経済成長率が2023年の5.2%ら2024年の4.5%まで減速すると予測した。また、影の銀行(シャドーバンキング)の債務問題がくすぶる中、金融システムの混乱も警戒されている。

  ・外国為替市場で対米ドルの人民元安が進んだことも(約1ヵ月ぶりの元安水準)投資家心理の重しとなった。

  ・業種別では、保険の下げが目立ち、エネルギーも冴えず、通信ネットワークも安い。ハイテク・公益・メディア・娯楽・不動産・素材・海運・証券なども売られた。半面、消費関連はしっかり。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)1/09、日経平均+385円、33,763円(日経新聞より抜粋
  ・1/8の米株式市場で主要3指数がそろって上昇し、幅広い銘柄に買いが入った。朝方に上げ幅は一時+600円を超え、心理的節目の34,000円に接近する場面があった。もっとも、上値では利益確定売りに押され、上げ幅を縮小した。終値は33,763円と、2023年7/3に付けた昨年来高値33,753円を上回り、1990年3月以来33年10ヵ月ぶりの高値を更新した。

  ・1/8の米株式市場では米長期金利の低下を受けてハイテク株が大きく上昇し、主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+3.27%高だった。今日の東京市場でも日経平均への寄与度が高い東エレク・アドテストといった値がさの半導体関連株が買われ、相場を押し上げた。

  ・買い一巡後は伸び悩んだ。1/11に2023年12月の米消費者物価指数(CPI)の発表を控え、結果を見極めたいとの雰囲気も強かった。日米とも個人投資家が新年に入って益出しの売りを出したことも重荷になった。市場では「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの年金基金が株式保有比率の調整を目的とした売りを出したのではないか」との声も聞かれた。

  ・個別銘柄では、ソフトバンクG・ダイキンが高い。ソニー・日立・テルモが上昇し、ファナック・安川電も買われた。一方、信越化・京セラ・三菱商が安い。川崎汽船・商船三井・郵船など海運株が売られた。

 2)1/10、日経平均+678円高、34,441円(日経新聞より抜粋
  ・半導体関連株の上昇を受け、海外投資家の投資余力が高まっている。外国為替市場では円相場が円安・ドル高基調となっており、輸出関連企業の業績の先行き懸念が後退する中、国内外の投資家が積極的に運用リスクを取るリスクオン姿勢に傾き、日経平均は3日続伸し、終値で約33年11ヵ月ぶりの高値。

  ・前日の米ハイテク株高などを支えに日経平均は寄り付きから高く始まると、上げ幅を拡大する展開となった。午後には上げ幅を+700円強に広げ、34,500円を上回る場面もあった。新しい少額投資非課税制度(NISA)経由の個人投資家の買いを指摘する声も出ていた。想定外の相場の急上昇を受け、株価指数先物やコール(買い)オプションの売り方が損失回避で先物などを買い戻す動きも上昇に拍車をかけた。

  ・厚生労働省が朝方に発表した2023年11月の毎月勤労統計調査によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で▲3.0%減少した。名目賃金の伸びを上回って消費者物価指数(CPI)が上昇し、実質賃金は2022年4月以来、20ヵ月連続で減少した。減少率は10月の▲2.3%減から拡大した。物価高に賃金上昇が追い付かない状況が続いており、一部市場参加者の間では日銀の早期の政策修正観測が後退した。マイナス金利政策の解除は想定以上に後ずれするとの見方が強まったのも、株買いを後押ししたのと見方があった。

  ・個別銘柄では、日経平均への寄与度が大きいファストリ・東エレクが買われた。京セラ・TDK・ソニーも上昇した。一方、スクリン・富士通・資生堂・サッポロが下落した。

●2.日本株:予想を超える熱狂的な東京株式市場、懸念材料も芽生える

 1)予想を超える熱狂的な相場
  ・日経平均はこの3営業日(1/5~10)で+1,153円上昇した。
  ・米ハイテク株高で投資家心理が改善

 2)熱狂的な相場となった要因
  ・米株式市場でハイテク株が上昇し、東京市場でも半導体関連株が上げた。
  ・円安の進行で自動車関連株が上昇。
  ・新NISAがスタートでニューマネーによる株買いが始まった。
  ・企業業績が好調で買い安心感が増した。
  ・利益確定目的の売りが止まった。
  ・米国株に比べ割安感が急浮上した日本株。
  ・米国株は野中の一本杉、日本株は高原で推移しており、割安感を醸し出す。
  ・売り方の損切覚悟の買い戻しパワーで、株価急騰を演出。
  ・空売り比率は1/10、38.2と大きく低下。
  ・売り方が引っ込み、買い転換となり、逆回転で株価は急伸。
  ・軟調な欧州・中国株式市場から、割安感が増した日本株式市場に資金が流入。

 3)懸念材料も芽生える
  ・消費支出の減速で、GDPの6割を占める消費支出の減退で、日本経済にマイナス要因が膨らむ。
  ・物価上昇率が賃上げを上回り、実質賃金は20ヵ月連続でマイナスが続く。
  ・価格変動が激しい生鮮食料品などを除く物価上昇率が3%に乗せた。東京地区の生鮮食料品の上昇率が8%となった。
  ・日経平均が高騰する中で、値下がり銘柄数の割合が増加
  ・1/10の日経平均は+678円と大幅上昇の中で、値下がり数の多さが目立つ。
   値上がり銘柄数   1,053
   値下がり銘柄数    538
  ・市場の中で弱気の芽生えに注目したい。
  ・騰落レシオ(6日)が200を超えて、警戒を示唆。
  ・騰落レシオ(6日)   1/5   1/9   1/10
              209.19  250.29  204.35
  ・騰落レシオ(6日)の高値警戒ラインは120超とされるが、突出した状態。

●3.日本株ETFに殺到、中国人投資家は本土株の損失にうんざり(ブルームバーグ)

 1)チャイナAMC野村日経225ETFなど日本株ETFの取引が急増。

 2)TOPIXは昨年+25%上昇、中国のCSI300指数は▲11%下落。

●4.スズキ、新工場建設で印グジャラート州政府と合意、投資6,000億円以上(ロイター)

●5.ウエルシア、3~11月期営業利益は前年同期比▲1%減の311億円黒字(日経新聞)

●6.近鉄百貨店、3~11月期純利益6倍、オリックス優勝で(日経新聞)

●7.サイゼリア、3~11月期純利益2倍、中国で需要取り込む(日経新聞)

●8.エーザイ、認知症薬が中国で承認、収益貢献に期待(日経新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4502 武田薬品 高配当期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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