相場展望5月16日 5/13米日の大幅上昇は「自律反発」、下落途上? 5月下落の5/13戻り率:NYダウ20%、日経61.6%

2022年5月16日 07:47

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1) 5/12、NYダウ▲103ドル安、31,730ドル(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利の低下にもかかわらず、ハイテクへの売りが続いた。今年に入ってからの株価の大幅下落で信用取引の買い主体に「追証」が発生しているとみられ、投資家の損失覚悟の投げ売りが相場下落につながった。
  ・アップルが▲3%下落し、1/4上場来高値からの下落率は▲2割を超え、▲2割超の下落で定義される「弱気相場」入りとなった。追証で現金確保に迫られた売りのようだ。
  ・投資家心理の悪化に伴い、マイクロソフトやセールスフォースなどに売りが波及した。
  ・米4月卸売物価指数(PPI)は前年比+11%と高水準、米4月消費者物価指数が市場予想を上回る伸びとなったことで、FRBが積極的に金融引締めを進めるとの観測が広がり、消費や景気冷え込むとして、ボーイング・ビザの下げが目立った。
  ・ディズニーは▲1%下落、業績の先行きに慎重な声が相次いだ。

【前回は】相場展望5月12日 米FRBの金融政策は『遅すぎ・緩慢』のため、バブルを産み⇒金融引締めで深刻な株価底値に誘引する可能性がある

 2)5/13、NYダウ+466ドル高、32,196ドル(NHK)
  ・NYダウは最近、約▲2,000ドル下落し、売られていた銘柄を中心に買い戻しの動きが出て、7営業日ぶりに値上がりした。IT関連の多いナスダックも+3.8%と大幅高。
  ・市場関係者は、「前日のNYダウが1年2カ月ぶりの安値となったこともあって、いったん買い戻しされる展開となったが、景気減速への警戒は根強く、株価の下落傾向に歯止めが掛かるかどうかは不透明だ」と話す。

●2.米国株:5/13大幅上昇は「自律反発」の範囲、懸念材料はやや薄らぐも警戒

 1)年初来の下落で、信用取引の買い主体に「追証」が発生し、損失覚悟の投げ売りが出ている、との声がある。5/13は+466ドルと大幅上昇したが「値頃感からの自律反発の域」と思われる。

 2)懸念材料と今後の動向
  (1)ウクライナ情勢:ウクライナ攻勢のなか、ロシアは白旗掲げず、長期化必死。
             原油・天然ガス・穀物価格高値水準は継続。 ⇒ インフレ圧力継続。

  (2)中国ゼロコロナ:上海の感染者数は減少傾向、北京は少数ながら発生継続。
             都市封鎖で中国発の世界景気マイナスの影響発生は事実。
             ⇒生産停滞から回復基調に転換予想。
             ⇒中国発の世界経済後退懸念が薄まる方向に。

  (3)米インフレ:ガソリン・中古車価格が低下傾向でインフレ鈍化要素となる。
           新車価格・航空運賃上昇、家賃・時給上昇が見込まれるため、インフレ・ピークアウトにならず、高水準維持を見込む。

 3)従って、金融引締めは、緩むことなく、継続と予想
  (1)金利引上げ:6月・7月と連続+0.5%引上げを予想。
  (2)QT(量的縮小):6~8月は月額▲475億ドル(6兆2,000億円)を市場から回収。 ⇒ インフレ抑制本番に突入のため米景気減速へ。 ⇒ 株価への影響はこれからが本番?

 4)インフレ退治のための金融引締め策は始まったばかり、株価動向に注意
  ・株式市場は、金利上昇を反映する動きだが、QTについて織込みが進んだとは思えない点が気懸かり。

●3.米インフレ率、ピークには程遠く4月CPIは広範な物価圧力示す(ブルームバーグより抜粋

 1)5/11発表の米4月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+8.3%と、3月の+8.5%から若干伸びが鈍化し、インフレがエコノミスト予想の通りピークに達した可能性を示唆したものの、前月比では予想を上回る伸びとなり、状況の厳しさを示した。サービスコスト上昇が加速したほか、モノのインフレも大部分が高水準を維持、物価圧力の持続性と幅広さを示した。

 2)ウェルズファーゴはリポートで、7~9月期インフレ率は+8%をわずかに下回る水準で高止まりすると予想。60%超の項目で過去1年の5%を超えていたとし、「インフレは依然として広範囲に及んでおり、インフレ抑制はますます困難になっている」と分析した。

●4.米4月生産者物価指数(PPI)は前月比+0.5%と、伸びが過去最大となった3月+1.6%

 1)前月から伸び率は鈍化したが、前年比では+11.0%。(フィスコ)

●5.ゴールドマンS、米独英で10年国債利回りの2022年末見通しを引上げ(ブルームバーグ)

 1)米国:2.7% ⇒ 3.3%、ドイツ:0.75  ⇒ 1.25、英国:1.95  ⇒ 2.25

●6.米ヘッジファンド運用成績

 1)ペラム   年初来で過去最悪▲28%、株安響く、2021年▲12%(ブルームバーグ)
 2)タイガーG 年初来▲44%、4月に成績悪化(5/4報道)(ブルームバーグ)

●7.ロシア&ウクライナ関連

 1)ロシアの電力会社、フィンランドへの送電を5/14から停止へ(毎日新聞)
  ・フィンランドは5/12、米欧の軍事同盟NATOに加盟を表明、ロシアが報復か。
  ・ロシアからの電力供給量は、フィンランドの電力消費量の10%程度。
   スウェーデンからの輸入や国内電力の供給増でまかなう、としている。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)5/12、上海総合▲3安、3,054(亜州リサーチより抜粋
  ・中国景気の回復が遅れる流れとなった。
  ・ロックダウン(都市封鎖)緩和の期待がはく落した。上海市で5/11、新型コロナの市中感染者を2例確認、上海市当局は行動規制の緩和について、市中感染が3日連続でゼロとなる必要があると説明。中央政府が「ゼロコロナ」政策を堅持しているだけに、経済活動の正常化に時間がかかると不安視された。
  ・また、通貨安も逆風で、1年7カ月ぶりの人民元安となり、資金流出も警戒された。
  ・ただ、中国経済対策の期待感が持続し、下値は限定的だった。
  ・業種別では、業界の債務問題が再燃している不動産が安く、ハイテクがしっかり。

 2)5/13、上海総合+29高、3,084(亜州リサーチより抜粋
  ・中国景気対策への期待感が高まる流れで、中国人民銀行(中央銀行)の副総裁は貸出金利をさらに引下げることに言及し、政策金利の引下げを示唆した。
  ・新型コロナ禍による景気腰折れを回避するため、政府関係当局は雇用やインフラ投資、産業支援、消費振興などに向けた対策を相次いで発表している。
   ・業種別では、不動産・自動車の上げが目立ち、ハイテクは冴えない。

●2.中国株式:ゼロコロナ政策、ロシアと同一視され、人民元安・資金流出に注目

 1)中国の新型コロナ感染者数の増加に歯止めが掛かり、生産・物流回復の兆しあり。

 2)独裁国家ロシアと同質視され、金融市場からの敬遠される動きは止まっていない。
   ⇒ 人民元安・資金流出・外貨準備高減少の行方、不動産業界回復懸念に注目したい。

●3.中国政府、国民の「不必要な出国を制限」、ゼロコロナ政策徹底方針(毎日新聞)

●4.中国「ゼロコロナ政策は成功」と、WHOの方針転換の提案に反発(毎日新聞)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)5/12、日経平均▲464円安、25,748円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式市場で根強いインフレへの懸念から主要3指数がそろって下落した流れを受け、東京市場でも幅広い銘柄に売りが出て、26,000円の節目を割り込む。
  ・東京市場でも米金利上昇で割高感が意識される高株価の成長株を中心に大幅下落。朝の売り一巡後、値頃感から主力株に買いが入り、好決算銘柄にも買いが目立ったが、株式先物に短期筋の売りが出て日経平均を下押しした。
  ・ソフトバンク▲8%安、ファストリ▲4.6%、2銘柄で日経平均を▲177円押し下げ。エムスリー・シャープは大幅安、一方、神戸製鋼・日製鋼は大幅高。

  2)5/13、日経平均+678円高、26,427円(日経新聞より抜粋
  ・今週に入って▲1,200円下落し、心理的節目26,000円を下回って割安感が意識され、自立反発狙いの売り方の買い戻しが進み買い優勢、前日に決算発表を値嵩株の買いも押し上げにつながり、上げ幅は一時+700円超えた。
  ・決算発表が好感された東エレク、悪材料出尽くしのソフトバンクGが大幅高で、2銘柄で日経平均を+220円程度押し上げた。値嵩の半導体株にも買いが波及した。
  ・市場では、「世界的なインフレや金融引締めへの警戒は残っており、今日の相場上昇は買い戻しの域を出ていない」との見方があった。
  ・リクルート・エムスリーが大幅上昇し、カシオ・ニコン・コニカミノルタが大幅安。

●2.日本株:5月相場も、日経平均は堅調、米国株は弱さが目立つ展開、懸念もあり

 1)日米株価の5月下落と5/13戻り高の比較
  ・NYダウ 5/5~12 ▲2,331ドル安、5/13 +466ドル高、戻り率+20.0%
  ・日経平均 5/2~12 ▲1,099円安、 5/13 +678円高、 戻り率+61.6%

 2)5月相場の展開は、日経平均の方が強いと言えるが、懸念材料あり
  ・1株当たり利益の低下:5/6 2,143円⇒5/13 2,077円 ▲66円安・▲3%減
  ・決算シーズン終了:好決算発表イベントが先週でピークアウト。好材料が乏しくなる。
  ・3月決算株主総会:自社株買いで株価プラス材料はあるが、実施は6月か?
  ・外国人動向は軟調:外国人買いは、依然として売り基調が継続。国内勢の買いがいつまで続くか注目。
  ・値上げ積極攻勢:個人消費支出の減少必至となり、景気減速⇒企業業績悪化が懸念される。

●3.値上げ影響、生活費年6万円増も(テレビ朝日)

●4.3メガバンク、ロシア関連の損失は▲3,500億円規模に(読売新聞)

 1)三菱▲1,500億円、三井住友▲1,000億円、みずほ▲969億円の見込み。

●5.企業業績

 1)ソフトバンクG 3月期決算純損益▲1兆7,080億円赤字、株安が直撃(朝日新聞)
 中国・配車サービス会社、韓国・通販会社「クーパン」など株価下落で投資損失▲3兆4,347億円に膨らんだ
 2)NTT   3月期決算純利益+1兆1,810億円黒字、前期比+28.9%増(共同通信)
 3)マツダ  3月期決算純利益+815億円、前期▲316億円赤字(読売新聞)
 4)ENEOS  3月期決算純利益+5,371億円、前期比5倍(朝日新聞)
 5)ホンダ   3月期決算純利益+7,070億円、前期比+496億円(IT media)
        2023年3月期予想純利益+7,100億円
 6)エーザイ 3月期決算純利益+479億円、前期比+14.3%、認知症薬損288億円(朝日新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6201 豊田自動織機   業績堅調。
 ・6523 PHC       業績好調。
 ・3141 ウエルシア    業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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