相場展望2月27日号 米国利上げ長期化観測で金利4%⇒米国株下落へ 日米金利差が拡大⇒円安・ドル高⇒インフレ高まる

2023年2月27日 10:53

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)2/23、NYダウ+108ドル高、33,153ドル(日経新聞より抜粋
  ・NYダウは直近2日間で▲780ドル余り下げた後で、自律反発を見込んだ買いが入ったただ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが長引くとの見方は相場の重荷だった。
  ・米長期金利は朝方の3.97%(前日終値は3.91%)と、昨年11月以来の高水準を付けた後は上昇が一服した。午後は3.9%を下回って推移する時間帯が長かったことも、株価の支えとなった。
  ・NYダウ構成銘柄ではないが、2/22夕発表の決算や見通しが市場予想を上回った画像処理半導体(GPU)のエヌビディアが+14%高となり、ハイテク株の一角に買いが波及した面もあった。
  ・半面、インフレの高止まりや、労働需給の逼迫を背景にFRBの利上げ停止時期が遠のくとの観測は相場の重荷となり、NYダウは▲250ドル近く下げる場面もあった。
  ・朝方発表された2022年10~12月期の米実質国内総生産(GDP)改定値で、物価指標のGDPデフレーターや個人消費支出(PCE)物価指数などが上昇修正された。週間の米新規失業保険申請件数は小幅に市場予想を下回った。
  ・NYダウ構成銘柄ではソフトウェアのマイクロソフトが高い。航空機のボーイングやホームセンターのホームデポ、銀行のJPモルガンチェースも買われた。米原油先物相場が上昇し石油のシェブロンも上げた。一方、通信のベライゾンや小売のウォルマート、外食のマクドナルドは売られた。エヌビディアの急伸に連れAMDやマイクロンなど半導体株が買われた。

【前回は】相場展望2月23日号 米国: 新春相場の上昇を打ち消す、金利再上昇で 日本: 10年国債利回りが上限0.50%を超える

 2)2/24、NYダウ▲336ドル安、32,816ドル(日経新聞より抜粋
  ・米1月個人消費支出(PCE)物価指数が市場予想を上回った。インフレの高止まりが続き、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ停止の時期が遠のくとの警戒感から幅広い銘柄に売りが出て、下げ幅は一時▲500ドルを超えた。
  ・FRBが物価指標として重視するPCE物価指数は、変動が大きい食品とエネルギーを除くコア指数が前年同月比+4.7%上昇した。伸び率は前月+4.6%から加速し、市場予想の+4.4%も上回った。「インフレは沈静化に向かっているとの市場の見方に反する内容で、FRBの利上げが想定より長引くとの警戒が強まった」との声が聞かれた。
  ・米債券市場では長期金利が上昇し、一時は前日比+0.09%高い3.97%を付けた。長期金利が上昇すると相対的な割高感が意識されやすい高PER(株価収益率)のハイテク株の売りが目立った。
  ・ソフトウェアのマイクロソフト、スマホのアップルが▲2%安となった。景気悪化への懸念からスポーツ用品のナイキや映画娯楽のディズニーなど消費関連株も売られた。主力民間機の出荷の一時停止が伝わった航空機のボーイングは▲5%安。

●2.米株式:利上げ長期化観測が再燃、長期金利が4%に接近 ⇒ 米国株安

 1)米経済指標は好調で、インフレ伸長⇒利上げ圧力が増し、長期化の見方が強まる
  ・1月PCE(個人消費支出)コア指数が前年比+4.7%と予想+4.6%を上回る。1月PCE指数も前年比+5.4%と前月+5.3%から伸びが加速。
  ・米1月新築住宅販売件数は前月比+7.2%増の67万戸、12月61.6万戸から予想以上に増加し、2022年3月来で最高となった。
  ・米2月ミシガン大学消費者信頼感指数は67.0と、予想66.4から上昇修正され、昨年1月来で最高となった。

 2)好調な経済データから、米国債利回りが上昇 ⇒ 株価にはマイナス影響
  ・米国債利回り    2/1  ⇒  2/24
     2年物    4.106%  ⇒  4.832  +0.726%上昇 +17.7%上昇
     10年物    3.417%  ⇒  3.973  +0.556%上昇 +16.3%上昇
  ・米国主要株式指数              差引き    %
     NYダウ   34,092ドル⇒ 32,816  ▲1,272安  ▲3.8%下落
     ナスダック  11,816  ⇒ 11,394  ▲ 422安  ▲3.6%下洛
     SP500     4,119  ⇒  3,970  ▲ 149安  ▲3.6%下洛
     日経平均   27,346円 ⇒ 27,453  + 107円高 +0.4%上昇
     日経平均は米国株に比べ、堅調に推移した。

 3)パウエルFRB議長発言「インフレ鎮静化」を、他のFRB高官達が「打ち消す」発言
  ・パウエル議長は、FOMC結果を受けて2/1に記者会見をして「ディスインフレ」とインフレ抑制について「条件付き」であるが楽観的発言をした。しかし、その発言を受けて、他のFRB高官達は即座に「インフレは依然として高水準にあり、高金利は長期化」との趣旨の発言をして、市場にサインを送った。
  ・FRB高官発言と、経済データ(雇用統計・個人消費支出など)は米国経済の堅調さを示し、米国債利回りは上昇した。米国の金利上昇を受けて、米国株式相場は下落した。

 4)今後の見通し
  ・米国長期金利(10年)は、4%に接近した。米国では、FRBの「利上げ長期化」観測が再燃し、3月から3回連続の利上げが織込まれつつある。
  ・2月に入り、賃金・物価が市場予想を上回ってきている。
  ・インフレ率をFRB目標の2%に低下させるには、強い米国の需要を押さえつけなければならない。供給を下回る需要にまで低下させない限り、インフレは抑制できない。インフレ退治のためには、一定程度の「雇用悪化と景気減速」はやむを得ない。
  ・したがって、FRBはインフレ目標2%を掲げる限り、「高金利政策の実施と長期化」政策を採らざるを得ない。イエレン財務長官の「景気後退なき、インフレ抑制」は希望であり、政治的発言に過ぎないと思われる。前FRB議長の発言として重く受け止めると、間違うことになりかねない。

 5)米株式相場の見通し
  ・米FRBがインフレ目標2%を達成しようとすると、米国長期金利は7~8%まで上昇する可能性がある。
  ・現在の4%程度から、さらに大きく上昇することになる。2月に入って米国株式市場は、金利上昇を織込む動きをして、株価は下落傾向を辿っている。米国長期金利が7~8%程度まで上昇し、ピークアウト感が出るまで米株式相場は強気に見ることはできないと思われる。インフレ率次第であろう。
  ・米国株式相場は「2番底」を取りに行くと読んでいる。

●3.米短期金融市場、3月・5月・6月での利上げ織込む(フィスコ)

●4.米1月コアPCE(個人消費支出)価格指数は前年比+4.7%と、予想+4.3%・12月+4.4%を上回る(フィスコ)

●5.米先週分新規失業保険申請件数は+19.2万件、予想+20.0万件を下回った、前回は+19.4万件(フィスコ)

●6.米10~12月コアPCE(個人消費支出)価格指数は、前期比+4.3%で、予想+3.9%を予想外に上方修正。7~9月は+4.7%。(フィスコ)

●7.米クリーブランド連銀メスター総裁、「過小な利上げコストは、過剰な利上げコストを上回る」「インフレリスク上向き」と指摘(フィスコ)

●8.米ボストン連銀コリンズ総裁、米インフレなお高すぎる、一段の利上げ必要(ロイターより抜粋

 1)「インフレ目標2%に低下のため、やるべきことは全てやる」との考えを強めた。その上で、「一段の利上げ」と「長期間にわたる高金利維持」が必要と語った。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)2/23、上海総合▲3安、3,287(亜州リサーチより抜粋
  ・外部環境の不透明感が重石となる流れとなった。
  ・欧州や米国の金融引締めが長期化するとの見方が強まるなか、世界経済の成長鈍化が改めて懸念された。
  ・中国と欧米との対立も不安視される。
  ・ウクライナ侵攻で欧米から非難されているロシアの国防省は2/22、「中国、南アフリカとの3カ国で合同軍事演習を開始した」と発表した。
  ・また、習近平・国家主席が向こう数ヶ月内のロシア訪問に向け、準備を進めている模様とも伝わっている。
  ・もっとも、下値は限定的。中国経済対策への期待が根強く、指数は小高く推移する場面もみられた。
  ・業種別では、通信関連が安く、酒造も冴えない。半面、石炭が高く、不動産も買われた。

 2)2/24、上海総合▲20安、3,267(亜州リサーチより抜粋
  ・前日までの軟調地合を継ぐ流れとなった。
  ・欧米の金融引締め長期化で世界経済の成長が鈍化するとの懸念や、ロシアのウクライナ侵攻問題を巡る中国と欧米の対立が不安材料として意識された。
  ・ただ、中国経済対策の期待感は根強く、下値は限定されている。
  ・業種別では、消費関連の下げが目立ち、不動産も安く、金融は冴えない。半面、軍事関連は高く、通信・メディア関連の一角が買われた。

●2.中国アリババ、10~12月純利益+9,200億円、前年同期比+69%増(ブルームバーグ)

●3.日本が全個体電池の開発に成功、中国自動車企業は危機感を=中国メディア(Record China)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)2/23、祝日「天皇誕生日」で休場。

 2)2/24、日経平均+349円高、27,453円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式相場の上昇を受け、自立反発狙いの買いが朝方から先行した。
  ・次期日銀総裁候補である植田和夫氏の衆院での所信聴取と質疑の内容が伝わると、現在の金融緩和策が当面続くとの見方から一段高となった。植田氏は「現在、日銀が行なっている金融政策は適切」との認識を示したほか、2%の物価目標を柱とした政府・日銀の共同声明についても「現在の物価目標の表現を当面変える必要はない」との見解を述べた。
  ・金融引締めに前向きなタカ派的な発言を警戒していた海外投機筋がニュースのヘッドライン(見出し)に反応して先物の買戻しを進め、日経平均を押し上げた。
  ・前日の米株式市場で主要な半導体関連株で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が大幅に上昇したのも支援材料だった。東エレクとアドテストの2銘柄で日経平均を+160円程度押し上げた。  
  ・午後に入ると、日経平均は高値圏で膠着感を強めた。副総裁候補である日銀理事の内田真一氏、前金融庁長官の氷見良三氏の所信聴取と質疑が行なわれたが、植田氏と金融政策に対する姿勢がそう変わらないとの受け止めから相場の反応は限られた。
  ・安川電・オークマ・郵船・川崎汽船・商船三井・ニコン・SMCも上昇した。半面、武田・第一三共・三井住友FG・みずほFGも下げた。

●2.日本株:3月上旬までは低調な相場か

 1)日米金利差拡大⇒円安・ドル高へ
  ・日米の長期金利の推移  2/1  ⇒  2/24   上昇分
     日本10年    0.477%    0.499  +0.022% + 4.6%上昇
     米国10年    3.417%    3.947  +0.530% +15.5%上昇
     金利差      2.940%    3.448  +0.508% +17.3%上昇
  ・日米の長期金利差が拡大 ⇒ 円安・ドル高へ
   日本株式相場は、輸出関連株が優位・景気敏感株は出遅れと予想する。
  ・円相場の進捗(米ドル比)
     2022/2/1   2/24    2023/2/1   2/24
      115.00円  114.59    130.22   134.59  
   1年前と比べ、「約15~20円の円安」となっている。円安分だけで「輸入物価を前年比+13.2~+17.5%押し上げている」のである。

 2)日本では輸入物価が上昇し、インフレ進展
  ・インフレ圧力が増す
   日本の食料自給率は4割程度、6割が輸入に頼っており、ドル建て輸入。PCなど家電製品が輸出から輸入超過に転じており、円安は製品値上げに繋がる。原油・天然ガスなどエネルギーはほとんどが輸入であり、円安は経済に直結する。電気・ガス・交通運賃・製造・飲食など広範囲に値上げの影響が波及する。鉄鉱石・非鉄など輸入原材料高を円安はさらに押し上げる。鶏卵は鳥インフルエンザと輸入飼料高騰で昨年比2倍程度の値上げしている。

 3)1月消費者物価指数は、前年同月比+4.2%上昇、41年4カ月ぶりの歴史的な物価上昇
  ・日銀が公表する「1月展望レポート」では、「2023年度に前年比+1.6%に減速」と述べている。
  ・黒田・現日銀総裁は、異次元緩和策の継続と日本のインフレは収束すると語った。日本のインフレは、日銀の低金利政策による「円安」効果が大きな役割を果たしている。
  ・日本のインフレは、(1)輸入物価の上昇 (2)円安 である。今年から(3)賃金アップも要因に加わる。食品分野では、この1年間ほどで3回の値上げを実施する企業が表れている。値上げラッシュが止まるとは思えない。

 4)植田・次期日銀総裁候補は国会の聴取で、「慎重な金融緩和政策」を述べた。
  ・つまり、「超金融緩和策の継続」発言で、低金利が続く観測で日経平均は上昇した。また、円安へと誘導した。
  ・植田次期総裁候補は「コンビニ弁当が450円⇒500円に上昇」と庶民派を演じたが、植田発言が、「円安」を招き、物価上昇となるインフレを助長させたとは考えないのだろうか。日銀の「1月展望レポート」に記載した「来年のインフレは前年比+1.6%に減速」を是非とも証明していただきたい。
  ・植田・次期日銀総裁候補への要望
   「円安」ストップ。できれば、インフレ率を「2021年度比+2%」を実現して貰いたい。

 5)日経平均の見通し「3月上旬までは低調」
  ・当面は好材料イベントが見当たらない。
  ・企業の決算対策としての利益捻出の株売りが3月上旬まで予想される。
  ・なお、3月中旬以降は、新年度入りの資金流入期待・持高調整の買い等で相場は強めの展開を見込む。

●3.TSMC第2工場も熊本、総投資額は1兆円以上の見通し=日刊工業新聞報道(ブルームバーグ)

 1)5~10ナノの先端プロセスを採用する可能性があり、稼働は2020年代後半の見込み。

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします) 

 ・3288 オープンハウス 業績堅調。
 ・4516 日本新薬    業績堅調。
 ・9514 エフオン    業績好調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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