相場展望4月15日号 米国株: 軟調な米国株に、懸念材料が膨らみ、7月中旬まで調整か? 日本株: 日経平均は売り優勢を予想、円安でデフレ経済に舞い戻りか?

2024年4月15日 08:55

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)4/11、NYダウ▲2ドル安、38,459ドル
 2)4/12、NYダウ▲475ドル安、37,983ドル

【前回は】相場展望4月11日号 米国株: 3月CPI上ぶれ⇒インフレ加速懸念⇒金利上昇リスク増す 日本株: 米半導体株の下落・円安・資源高の波及に対処を

●2.米国株 : 軟調に陥った米国株に、懸念材料が膨らみ、7月中旬まで調整か?

 1)NYダウは、4月に入ってから4/12までで▲1,824ドル安(▲4.58%安)と大幅下落
 ・4/1~12までの10営業日のうち、9営業日が下落を記録。4月になってから軟調な日が続いている。
 ・米3主要株価指数はチャートでも下方局面入りを示唆。

 2)利下げを前提とした「楽観」観測は、「破綻」方向に逆走し始めている。
  ・米金利の推移     3月末    4/12   上昇幅
   10年債利回り   4.200%   4.518  +0.318%高・+7.5%アップ
   02年債利回り   4.620    4.897  +0.277%高・+6.0%アップ
  ・米金利は「楽観で低下」していたが、インフレ懸念が増して楽観期待が後退し「金利は上昇」に転じた。

 3)懸念材料が膨らむ
  ・インフレが悪化傾向(消費者物価指数が再加速の兆し)
  ・企業業績に神経質(冴えない決算の銀行)
  ・中東情勢(イランのイスラエル攻撃、ホルムズ海峡封鎖リスク)
  ・原油高(OPEC+の減産、メキシコの一部輸出停止、中東情勢悪化)
  ・金利再上昇(FRBが市場から毎月15兆円資金吸い上げ、インフレ懸念増)

 4)米国株に、押し目買いが入りにくい状況
  ・金利上昇により、株価は割高感が意識され、売られやすい状況に転換した模様。
  ・米国株の上昇を牽引していた主力株が7銘柄から4銘柄に減少。その4銘柄も勢いに陰りが出てきている。

 5)当面、株式相場は弱気相場で、反騰は7月半ば以降となる局面を予想

●3.米運用会社ブラックロックのCEO、年内の利下げは1回か2回、インフレ抑制難しい(ブルームバーグ)

●4.米ウェルズ・ファーゴ、1~3月期は借り手の需要減などを背景に利益が▲7%減少(ロイター)

●5.米金融大手JPモルガン・チェース、1~3月期の利益は市場予想を上回るが、通期の純金利収入(NII)見通しがアナリスト予想を下回った(ロイター)

●6.米USスチール、臨時株主総会で日本製鉄による買収計画を承認(NHKより抜粋

 1)今後は買収に反対する労働組合との交渉の行方などが焦点となる。

 2)日本製鉄はUSスチールを今年9月までに子会社化する買収計画を去年12月に発表。

 3)日本製鉄はUSスチールの株主に対して、両社が買収に合意した時期の株価に40%上乗せした価格で支払うため、買収額はおよそ2兆円にのぼる見通し。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)4/11、上海総合+6高、3,034
 2)4/12、上海総合▲14安、3,019

●2.中国新規銀行融資、3月は+3.09兆元に増加も、予想+3.89兆元には届かず(ロイター)

 1)3月末時点の元建て融資残高は前年同月比+9.6%増で、2月の+10.1%増から予想以上に鈍化した。アナリストの予想は+9.9%だった。

 2)華宝信託のエコノミスト、ニー・ウェン氏は、企業レベルでも銀行レベルでも、実体経済全体の資金ニーズは依然として、あまり良くないと指摘した。

●3.中国の大学が運営権限を共産党委員会に一任(NEWSポストセブン)

 1)国家重点大学は学校運営の中心を担ってきた学長事務室を閉鎖。学長事務室は、教員の育成・管理、教育内容の決定、学生の成績管理、就職斡旋、などを行ってきた。

 2)学生による民主化運動の取り締まりが狙いとみられる。学生の白紙化運動の高まりで、ゼロコロナ対策を廃止に追い込まれたため、共産党委員会に権限を集めた。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)4/11、日経平均▲139円安、39,442円
 2)4/12、日経平均+80円高、39,523円

●2.日本株:日経平均は今週初めは下落予想、止まらない円安でデフレ経済に舞い戻りか?

 1)日経平均は、NYダウと比べ「割高」となっている
  ・日経平均とNYダウの推移
        日経平均       NYダウ
    3/29  40,369円   3/38  39,807ドル
    4/12  39,523    4/12  37,983
    下落幅 ▲ 846円安      ▲1,824ドル安
    下落率 ▲ 2.1%安      ▲4.6%安
  ・日経平均は、NYダウの下落の半分以下で、底堅さを感じさせる4月の推移。逆に言えば、日経平均の「割高感」が増した。

 2)日本株の4月は海外投資家の買いで上昇するという経験則があるが、証券自己の売りで相殺された
  ・4月1週(4/1~5)の投資主体者別売買からみると、
    海外投資家の現物株買い    +1兆1,821億円の買い
    証券自己の売り        ▲  9,871億円の売り
  ・せっかくの海外投資家(現物)の買いで日経平均は上昇する舞台は揃ったが、証券自己の約▲1兆円近い売りで日経平均上昇の芽が摘まれた。
  ・年金基金は4月1週も▲7,888億円と売り越して、年初から売りが継続している。

 3)証券自己の4/5現在の買い残高は約+3兆円と、大きな売り圧力が残っている
  ・海外投資家による現物株買いが拡大するか? 注目。

 4)4/15以降の相場は、売り優勢からのスタートを予想
  ・4/1以降は薄商いのため、株価は上にも下にも一方通行にブレやすい。
  ・売買の推移   3/21      4/10    4/11    4/12
    売買金額  5兆9,014億円  3兆8,033  4兆1,293  4兆5,786 
    売買株数  22億1,465万株 14億6,306 16億0,700 16億3,518
  ・日経平均は、NYダウに比べ「割高」であり、売り優勢となる地合いにある。
  ・日本株を代表する一角のキーエンス(6861)やアドバンテスト(6857)などのチャートが崩れ、下落方向を向くなど、3/22までの様相とは違った展開を見せ始めていることに注目したい。
  ・よって、今週初めは大幅安からスタートすると予想。

 5)「円安」基調が継続し、輸出関連株は追い風も、デフレ経済に逆戻る可能性増す
  ・円は現行153円台⇒155円を目指すとの市場の観測が出てきた。
  ・34年ぶりの「円安153円台」になっても、口先介入発言しかできない財務省。
  ・神田財務官、行き過ぎた円安にはあらゆる手段排除せずに対応(ブルームバーグ)
   財務省内の日本の記者団にしか語れない、内弁慶の財務省。
  ・合理的な事前対応をしない財務大臣、財務省高級官僚。円安になってから後出しで、円安介入の発言をして、責任回避がひどい。為替に「我、関知せず」の首相。
  ・本来は「円高」が日本の国益にかなっている。円高であれば、原油・食料品など物価安を享受でき、GDPも増す傾向にある。米国でも歴代の財務長官は「ドル高が良い」と公言し続けている。ドル高は米国の輸入購買力を強くし、物価上昇を抑えられる。何よりも米国に海外の資金を呼び込むことができ、米国株高につながる。米国株高は、株式を保有する米国民の資産形成に資する。
  ・ところが、日本政府と官僚は、円安を放置して、円安阻止の手立てをしない。要するに、無能をさらけ出し、職務放棄を行っている。
  ・国民の生活の守護神である日銀も、大幅円安の進行について発言・行動しない。日米の金利差が拡大⇒円安になっても放置している。植田・日銀総裁は、いまだに「大規模金融緩和は継続する」と発言している。これでは、日米金利差が拡大する一方で、円安が進行するだけである。
  ・外国為替市場の投機筋は、日本政府の財務大臣や官僚が発する口先介入発言は「口先だけ」と見抜いている。だから、安心して「円売り・ドル買い」を実施し、円売り差益を狙える。
  ・円安進行で、プラスなのは輸出関連企業、日本全体としてはマイナスが大きい。円安で企業業績がプラス効果をもたらすのは自動車など輸出関連会社。日本は食料品・原油・資源など輸入大国であり、物価高・コスト高を招き、国民にとって実質賃金の減少要因であり、財布の紐を締めることになる。結果、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費の減少となり、企業業績にとっても先行き不透明感が増すことになる。
  ・つまり、円安は「日本経済の失速」につながる。
  ・自己保身しか考えない岸田首相は、日本経済失速を果たして止められるか?
  ・円安を起因とするインフレで物価高。
  ・実質賃金減少が23カ月連続と、消費支出がマイナスで国内総生産が縮小。
  ・新資本主義という刀の鞘は振りかざすが、中味の刀は下に投げるだけ。投げられた方からも討議の動向が聞こえてこない居眠り状態にある。

●3.ファストリ、2月中間の純利益+1,959億円、前年同期比+27.7%増と過去最高(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6143 ソディック       黒字転換
 ・6594 ニデック        業績回復
 ・6965 浜松ホトニクス     株価切り返し期待

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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