相場展望4月18日号 米国株: 牽引役のハイテク・半導体株と、軟調な決算で売り展開 日本株: 「弱気相場」入りか?本日は売り優勢と予想

2024年4月18日 11:17

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)4/15、NYダウ▲248ドル安、37,735ドル
 2)4/16、NYダウ+63ドル高、37,798ドル
 3)4/17、NYダウ▲45ドル安、37,753ドル

【前回は】相場展望4月15日号 米国株: 軟調な米国株に、懸念材料が膨らみ、7月中旬まで調整か? 日本株: 日経平均は売り優勢を予想、円安でデフレ経済に舞い戻りか?

●2.米国株:米株の上昇を牽引してきた半導体株・ハイテク株に売り、軟調な企業決算を発表した銘柄も売られた

 1)米3月小売売上高は前月比+0.7%増、市場予想+0.3%増を上回った
  ・堅調な個人消費が米経済を牽引する状況が続き、FRBの利下げ時期が遅れるとの見方が広がった。

 2)米金利が急騰
  ・米3月小売売上高が市場予想を上回ったため、利下げ開始時期が遅れるとの見方が広がり、長期金利が上昇した。
           4/1   4/16   上昇幅
   10年債利回り  4.312  4.667  +0.355%上昇
  ・加えて、イランによる報復攻撃を受けたイスラエルの対応によっては、中東情勢の先行き不透明感が高まるとの見方が広がった。

 3)米株は金利上昇で割高感が意識され、半導体株とハイテク株が売られた
  ・米金利は上昇(4/1⇒4/16)し、割高感が意識された株式は売られ、株価は押しさげられた。
  ・金利の推移      4/1 4/16    4/17   4/16⇒4/17
     10年債利回り  4.312  4.667   4.590  ▲0.077%低下
     02年債利回り  4.712 4.987   4.932  ▲0.055%低下
  ・問題点は、4/17は前日比で金利低下したが、ハイテク株と半導体関連株が下落したこと。株価下落の要因は、金利低下効果を上回る「決算が予想下回わった」という期待外れにある。特に、オランダの先端半導体製造装置大手のASMLの決算は大きな期待外れで衝撃的な決算発表となった。
  ・特に、PER(株価収益率)が高いハイテク関連銘柄の多いナスダック総合指数とフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は大幅な下落となった。
  ・下落率の推移       4/15    4/17
    NYダウ        ▲0.65%安 ▲0.12%安
    SP500         ▲1.20   ▲0.58
    ナスダック総合     ▲1.79   ▲1.15
    半導体株指数(SOX)  ▲1.39   ▲3.25

 4)市場予想に届かない決算発表をした銘柄に売りが出た
  ・JPモルガン・チェース
  ・ASML
  など

 5)地区連銀経済報告(ベージュブック)では、「インフレ鈍化の進展みられず」
  ・米経済活動が底堅さを示したが、インフレの鈍化は進まなかったとの報告内容。インフレは鈍化から再上昇へと転換するリスクが膨らみつつあるとみたようだ。
  ・ただ、消費者は「物価上昇に敏感」と報告にあり、消費者の財布の紐が締まってきたことを示している。このことは、物価上昇が家計を圧迫している様子を表している。消費支出の減速動向が気になるところである。
  ・一方、企業もコスト増に対して価格転嫁が難しくなっている。企業業績の見通しの悪化を示唆している点に注意したい。
  ・結論として、「インフレ鈍化が停滞し、政策金利据え置きを後押しする流れ」を容認する報告だったとみる。

●3.パウエルFRB議長、利下げ開始の先延ばしを示唆、インフレ根強く(ブルームバーグより抜粋

 1)インフレは、昨年末に速いペースで鈍化したものの、その後は一段の進展がみられないと指摘。インフレ率が2%の物価目標に向かっているという、利下げに先だって必要な確信を得るのにはより長い時間がかかる可能性が高いとの見解を示した。

 2)そのうえで、物価上昇圧力が根強く続いた場合は、金融当局は「必要な限り」金利を据え置くことが可能だ、と述べた。

 3)利下げの必要性が差し迫ったものと感じていない。年内に利下げがあるとしても、比較的遅い時期となる。

●4.米利下げ急ぐ必要ない、景気・労働市場が堅調で=サンフランシスコ連銀総裁(ロイター)

●5.ジェファーソンFRB副議長、「インフレ長期化なら高金利の維持も長期化」(フィスコ)

●6.米地区連銀経済報告(ベージュブック) 要旨(フィスコ)

 1)米国経済活動は2月以降わずかに拡大。
 2)消費者は引き続き物価にかなり敏感。
 3)経済見通しは注意深く楽観的。
 4)物価上昇は緩慢。
 5)企業がコストを製品に反映する能力がかなり弱まった。

●7.ゴールドマン・サックス、1~3月期+28%増益、債券トレーディング収入予想上回る(ブルームバーグ)

●8.テスラ、世界の従業員の▲10%以上を削減へ、EV需要が減速(ブルームバーグ)

 1)テスラの昨年末の従業員数は14万473人、削減数は1.4万人超に

●9.米バイデン政権、中国製の鉄鋼・アルミの関税を3倍の20%超に引上げ検討(NHKより抜粋

 1)中国政府の補助を受けて過剰生産された製品が米国に輸入され、米国内産業に打撃を与えるのを防ぐねらい。

 2)中国は世界の鉄鋼生産のおよそ50%を占め、中国製の価格は米国製より40%安くなっている。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)4/15、上海総合+37高、3,057
 2)4/16、上海総合▲50安、3,007
 3)4/17、上海総合+64高、3,071

●2.中国1~3月のGDP伸び率は前年比実質+5.3%(NHK)

 1)中国政府は、今年の経済成長率の目標を+5%前後としているが、不動産不況と内需の停滞は続いており、景気回復の勢いが持続するかどうかが焦点となる。

●3.国家統計局4/16発表、70都市新築住宅価格は3月前年同月比▲2.7%下落(ブルームバーグ)

 1)3月の▲2.7%下下落は、2月の▲1.9%下落を超える値下がりとなった。
 2)3月の中古住宅価格は前年同月比▲5.9%下落し、70都市すべてが値下がりした。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)4/15、日経平均▲290円安、39,232円
 2)4/16、日経平均▲761円安、38,471円
 3)4/17、日経平均▲509円安、37,961円

●2.日本株:「弱気相場」入りか?

 1)日経平均4/16に▲761円安したが、空売り比率はわずか「42.7」と低水準
  ・相場全体的に「弱気相場入り」を示唆したと思われる現象である。
  ・但し、翌4/17の空売り比率は「44.4」と▲509円安と連動した動きとなった。一般的には「47前後」があったとしても良い状況だったと思われる。
  ・空売り比率が低い水準での日経平均の大幅安は、全体として買い手控えられるなかでの「売り圧力の強さ」を表している。「弱気相場」入りした可能性がある。

 2)日経平均の推移
  ・最高値3/22と比較して、4/17は▲2,927円安と▲7.16%下落した。
     3/22   40,888円
     4/17   37,961
     差引  ▲ 2,927円安

 3)NYダウと日経平均の比較
  ・NYダウは4/17比で、▲2,054ドル安と、▲5.16%安。
     最高値3/28  39,807ドル
     4/17     37,753
     差引    ▲ 2,054ドル安      
  ・最高値からの下落幅・率ともに、日経平均が大きく下げている。
  ・これは日経平均がNYダウより「割高」であった所以である。過去の日経平均とNYダウの位置をみると、まだまだ日経平均が買われ過ぎといえる。つまり、日本株フィーバーが過ぎれば、日経平均は▲3,000円~▲4,000円は下げ余地がある。

 4)今日の株価予想、「円高」と「半導体関連株安」が下押し圧力となり下落
  ・円安・ドル高は一服し、やや円高に振れる。
  ・自動車・商社株などの輸出関連株は、円高で逆風となりそう。
  ・米国の半導体株下落の波及で売られる展開を予想。
  ・買い手控えの雰囲気があり、値ごろ感からの買い期待は薄そう。

●3.2023年度貿易収支▲5兆8,919億円赤字、3年連続赤字、輸出増で赤字幅縮小(ロイター)

 1)財務省4/17発表の貿易統計、2022年度▲20兆円を超える赤字からは縮小。

 2)地域別では、対米が前年比+11.6%増、欧州連合(EU)向けは+10.7%増。アジア向けは▲3.2%減は3年ぶりに減少、中国向けは▲1.3%と4年ぶりの減少。

●4.円が対ドルで34年ぶりとなる154円台に下落、米長期金利上昇で売り圧力(ブルームバーグ)

●5.経営再建中の東芝、国内の従業員の6%にあたる▲4,000人前後の削減を検討(NHKより抜粋

 1)東芝は、昨年12月に投資ファンドの日本産業パートナーズによる買収を受入れて非上場化し、経営の再建を進めている。

 2)東芝は、不採算事業や子会社の売却などによる経営の効率化や、主力事業とするインフラとエネルギー部門などの成長戦略を示せるかが課題となる。

●6.レゾナック、2024年12月期純利益+250億円黒字(前期▲189億円赤字)(日経新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6367 ダイキン   夏に備えて買い場
 ・9602 東宝     好決算発表期待

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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