相場展望2月23日号 米国: 新春相場の上昇を打ち消す、金利再上昇で 日本: 10年国債利回りが上限0.50%を超える

2023年2月23日 11:00

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)2/20、祝日「ワシントン誕生日」で休場

【前回は】相場展望2月20日号 新春相場は決算イベントと共に終了、金利再上昇へ 米利上げ長期化観測強める経済データが増える

 2)2/21、NYダウ▲697ドル安、33,129ドル(日経新聞より抜粋
  ・NYダウの下げ幅が▲700ドルを超える場面があり、12月中旬以来の大きさだった。米小売大手の決算や見通しが市場予想を下回り、米景気や企業業績への先行き不透明感が広がった。米長期金利が上昇し、株式の相対的な割高感が意識されたのも相場の重荷となった。
  ・ホームセンターのホームデポは2/21発表した2022/11~2023/1月期決算で売上高が市場予想を下回り、2024/1月期通期が減益になるとの見通しも示した。小売のウォルマートは2024/1月期の1株利益見通しが市場予想に届かなかった。ホームデポは約▲7%下げ、NYダウを▲170ドル近く押し下げた。映画娯楽のディズニーやスポーツ用品のナイキなど消費関連株に売りが広がり、景気敏感株の一角にも下げが波及した。
  ・米長期金利が一時3.96%と昨年11月以来の水準に上昇した(前週末終値3.82%)。インフレ高止まりで米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを打ち止めにする時期が遠のくとの見方が強まっている。金利上昇に歯止めがかからず、相対的な割高感が意識されやすい高PER(株価収益率)のハイテク株の売りも目立った。電気自動車のテスラや動画配信のネットフリックスなどの下げが目立った。
  ・ロシアのウクライナ侵攻に終結の兆しが見えず、地政学的リスクが投資家心理を冷やしたとの指摘もあった。バイデン米大統領が2/20にウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問し、長期的な支援への決意を示した。一方、ロシアのプーチン大統領は2/21にウクライナ侵攻を継続する考えを示した。

 3)2/22、NYダウ▲84ドル安、33,045ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(1/31~2/1開催分)はおおむね市場の想定に沿った内容だった。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ転換が遠のくとの警戒感が引続き株式相場の重荷になった。半面、前日に大きく下げた後で、押し目買いが入りやすく下値は堅かった。
  ・FRBはFOMCで利上げ幅を+0.50%から+0.25%に縮小した。議事要旨ではほとんど全ての参加者が+0.25%の利上げに賛成した一方、少数の参加者が+0.50%の利上げを主張していたことが判った。インフレ率が物価目標の+2%を大きく上回り、労働市場が引締まっている状況を踏まえて「継続的な利上げが適切だ」との見解で一致した。利上げを打ち止めする時期が遅れるとの見方が改めて意識され、相場を押し下げた。
  ・もっとも、一部のFRB高官はすでに次回のFOMCで+0.50%の利上げを排除しない考えを示していた。
  ・NYダウは前日に▲697ドル安と大幅に下げただけに、利上げ継続の懸念はいったん相場に織込まれたと見て買いに動く投資家もいた。
  ・建機のキャタピラーや機械のハネウェルなど景気敏感株の一角が下げた。電気自動車のテスラ・ネット通販のアマゾンが上昇、動画配信のネットフリックスは下落した。保険のトラベラーズや日用品のP&Gなどディフェンシブ株は上昇し、相場を下支えた。

●2.米国株:NYダウは新春相場の上昇を取消す下落となった

 1)NYダウの直近高値を切り下げている
  ・NYダウの直近高値の推移
   11/30   34,589ドル
   01/13   34,302
   02/13   34,245
  ・直近高値を抜けずに下落が続き、株式相場は決して強いエネルギーにないと示唆。

 2)決算発表イベント終了後から、高金利の長期化見通しから米国株式相場は下落
  ・2/21のNYダウは▲697ドル下落。2/22は前日の大幅安の反動高が期待されたが、米FOMCの議事要旨を受け米利上げ継続への警戒で▲84ドル安。
  ・利上げ長期化懸念で、新春の株高+1,155ドル高を取消す▲1,257ドル安となった。
   NYダウ :12/30 33,147ドル ⇒ 1/13 34,302 ⇒ 2/22 33,045
        +1,155高     ▲1,257安(▲3.7%安)
  ・なお、SP500も2/2高値4,179⇒2/22は3,991(▲188安、▲4.5%安)と軟化基調にある。
  ・いったん、株高相場は終わりを付けつつあり、上げ下げを繰返しながら下値模索に入ると思われる。

●3.米FOMC(1/31~2/1開催)議事要旨の公表(フィスコ)

 1)インフレ、上方リスクがある。

 2)全ての高官が利上げ+0.25%の決定を支持。

 3)ただ、数人の高官が+0.50%の利上げを主張。

 4)米国経済のリスクは低下。しかし、中国の経済再開やウクライナ戦争を含め、インフレに上方リスクがあるとの見解が明らかになった。

●4.米金融大手ゴールドマンS、FRBは年内にあと3回×0.25%の利上げ実施予想(フィスコ)

●5.米国株投資家は苦境に、金融当局の断固たる利上げ方針でラリーは一服(ブルームバーグより抜粋

 1)米企業の決算発表からは危険信号が点灯している。利益成長率は前年同期比でマイナスに転じており、こうした状況は過去20年間では4回しかなく、株式相場は決して勇気づけられる兆候ではない。

●6.株高は失速へ、米利上げ影響は続く  =JPモルガンのマティカ氏(ブルームバーグより抜粋

 1)米金融当局の利上げ停止前に、株式市場が底入れすることは通常はない。

 2)景気後退の可能性が消えたと言うには、時期尚早。

●7.暗号通貨は法定通貨の代替になり得ない=BIS(国際決済銀行)総支配人(フィスコ)

●8.欧州銀の暗号資産保有巡る資本規制、EUが早期の法制化を要請(ロイター)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)2/20、上海総合+66高、3,290(亜州リサーチより抜粋
  ・中国の景気テコ入れスタンスが好感される流れとなった。
  ・中国人民銀行(中央銀行)は2/20、2,240億元(約4兆3,800億円)を市中供給した。また、2023年地方特別債の前倒し発行額が前年同期比で大幅に増加し、材料視された。朝方公表された2月最優遇金利は、1年物と5年物が1月と同水準に据え置かれた。ただ、住宅ローン金利の指標となる5年物最優遇金利については「今後、不動産市況の回復が予想を下回るペースにとどまるようであれば、3月以降に引下げられる可能性がある」とのブローカー予測もある。
  ・業種別では、金融が相場を牽引し、通信も急伸、ゼネコン・建機・インフラ建設関連が物色された。消費関連・ハイテク・エネルギー・不動産・運輸・医薬品なども買われた。

 2)2/21、上海総合+16高、3,306(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済対策の期待感が相場を支える流れとなった。
  ・中国人民銀行(中央銀行)が資金供給を継続していることに加え、全国人民代表大会(全人代)の開幕(3/5)が視野に入ってきたことも意識された。ただ、上値は限定的。
  ・米金融引締めの長期化や、対中関係の悪化などが不安材料としてくすぶっている。
  ・業種別では、素材の上げが目立ち、エベルギーもしっかり。半面、酒造は安い。

 3)2/22、上海総合▲15安、3,291(亜州リサーチより抜粋
  ・売り圧力が意識される流れとなった。
  ・上海総合指数は前日までの上昇で、昨年7月以来、約7ヶ月ぶりの高水準を回復した。「インフレ高止まりで欧米が利上げを継続する」との見方が広がるなか、世界経済が冷やされるとの懸念も重石だ。
  ・もっとも、中国経済対策の期待感は根強く、下値を叩くような売りは見られない。
  ・中国では来週末の3/5、全国人民代表大会(全人代)が開幕する予定だ。景気のテコ入れに向けて、各種方針が打ち出されると見込まれている。
  ・業種別では、素材の下げが目立ち、消費関連も総じて冴えない。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)2/20、日経平均+18円高、27,531円(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利が高止まりするなか、指数寄与度の高いハイテク関連株が下落し、指数の下押し要因となり、日経平均は朝方▲90円近く下げる場面があった。半面、金融株や鉄鋼株などのバリュー株(割安)銘柄は買われ、下げ一巡後は前週比で横ばい圏まで戻した。
  ・主要企業の決算発表や日米の重要な経済指標の発表が一巡し、目先は目立った取引材料に乏しくなっている。今日はプレジデントデーの祝日で米国の全市場が休場となることもあり、日本株は小動きで推移する時間が長かった。日経平均の後場の値幅は28円ほどと狭かった。
  ・米国では堅調な経済と高インフレが共存していると見られ、米長期金利は上昇基調にある。こうしたなか電子部品関連などのグロース(成長)の一角は弱く、バリュー株は相対的に強かった。三菱UFJ・日本製鉄は昨年来高値を更新した。
  ・東証株価指数(TOPIX)の業種別指数の上昇率を見ると、証券商品先物が1位、パルプ紙が2位だった。市場では「バリュー株買いが続くなか、相対的に不人気なセクターにも投資家の目が向き始めたようだ」との見方があった。TOPIXは反発した。
  ・KDDI・ダイキン・オリックス・Jフロントが上昇し、東エレク・村田製が下落した。

 2)2/21、日経平均▲58円安、27,473円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米市場が休場で相場全体を方向付ける手掛かりに乏しく、散発的な持ち高調整の売りに押され、下げ幅は一時▲100円を超えた。半面、主力のバリュー(割安)株や高い配当利回りの銘柄の物色は続き、相場を下支えし、下値は限定的だった。
  ・東京市場の取引時間中に米株価指数先物が軟調に推移し、日経平均先物にも売りが波及した。米利上げ継続観測などを背景とした、休場明けの米株安への警戒が重荷になった。
  ・日経平均の寄与度が高いファストリヤ東エレクが下落、堅調だった日本製鉄や三菱UFJも安い。一方、郵船・三菱商事・ホンダは上昇した。

 3)2/22、日経平均▲368円安、27,104円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株安を背景に運用リスクを回避する売りが優勢となり、1/23以来の安値。米長期金利の上昇を背景にグロース(成長)銘柄の下げが目立った。
  ・前日の米株式市場でNYダウなど主要3指数の下落率は▲2%を超えた。米景気や企業業績の先行き懸念が強まったほか、米長期金利の上昇が懸念された。
  ・午前に日経平均の下げ幅は一時▲400円を超えた。円安に一服感が出たことで輸出関連銘柄に売りが出た。ロシアとの関係を巡り、中国と欧米の関係が悪化するとの見方からアジアの株式市場が軟調に推移したことも重荷となった。
  ・朝方はバリュー(割安)株やディフェンシブ銘柄の一角に買いが入り、相場全体を下支える場面もあった。また、明日の東京市場が祝日で休場となるため、午後に入ると持ち高調整による売り方の買い戻しが入り、日経平均はやや下げ渋った。
  ・日経平均への寄与度が高いファストリや東エレクが下げ、三菱UFJも安い。日本郵政による株式売却の報道があった「ゆうちょ銀行」は大幅安となった。一方、郵船や商船三井・日本製鉄・三井住友FGは上げた。

●2.日本株:10年国債利回りが上限の0.50%を超え、2/22は0.502%に上昇

 日本株に強気になれない理由
 1)日経平均の新春相場
  ・12/30終値26,094円⇒2/22終値27,104円  +1,010円高(+3.9%高)
  ・日経平均はNYダウと比べて、堅調に上昇している。

 2)10年国債利回りが日銀上限の0.5%を超えた
  ・日銀の次期総裁のもとで、金融政策修正の可能性から、日本国債売りが増えている。このため、国債利回りが上昇し、2/21に5.05%を付けるなど、5.00%を超える日が継続している。
  ・金利上昇は、株式相場の重荷となり得るため、注意深く見たい。

 3)強気になれない日本株の理由
  ・年金と個人(現金)が売越し継続年金は、高値を追わないで、高値圏では利益確定売りスタンスである。個人(現金)は機を見るに敏感で、先行き下落を読んだ売り傾向が強い。
   年金 ▲7,880億円売越し
   個人(現金) ▲6,140億円売越し

  ・外国人の1月第2週~2月第2週の買越し金額合計が+2兆8,299億円と巨額であり、買越しの天井圏にあり、いつ売越しに転じてもおかしくない状況にある。
   外国人の買越し合計内訳:先物+2兆0,760億円、現物株+7,539億円     
   過去を見ると、外人は買越し額累計が+2兆円を超えると、売り転換しているため、警戒したい。

  ・外国人の先物買い手口の直近推移
     2/16   2/17   2/20  2/21  2/22 
   +823枚買 ▲3,038売 ▲1,307 ▲3,406 +151 

  ・2/22は日経平均が▲368円安にもかかわらず、外国人は+151枚の買越しである。外国人がスクエアな位置で売り浴びせしていない。これは、個人(現金)や年金の売りで下落したと思われる。外国人が全面的に売越しに転換したとは言えないと見られる。

  ・新高値・新安値銘柄数の推移からは、日経平均が弱含みながらも勢いがの残る状況。
          2/16  2/17  2/20  2/21  2/22
    新高値   94銘柄 63   109   150   68
    新安値    9銘柄 19    13   10   28

  ・勢いとしてはピークアウトしたと見えるが、まだまだ力強さが継続している。新安値銘柄数が伸びていないのも、相場の勢いを証明していると思われる。

●3.長期金利は2/21、0.505%と変動幅の上限を1/18ぶりに超えた(ブルームバーグ)

●4.企業動向

 1)トヨタ  2025年に米国でEV車種と電池を生産(NHK)

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします) 

 ・3086 Jフロント     業績好調。
 ・7270 SUBARU     業績好調。
 ・8358 東京センチュリー 業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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