相場展望11月11日 米インフレ懸念で金利上昇し、ハイテク株総崩れ ただし、現時点では『高値圏での一時的調整』

2021年11月11日 09:29

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)11/08、NYダウ(日経新聞より抜粋
  ・米議会下院は11/5、インフラ投資法案を可決した。道路や橋のほか、電気自動車(EV)向け設備や高速通信網の整備などを進める。建機の需要拡大につながるとの見方からキャタピラーが+4%上昇し、鉄鋼のマーコアなど素材株、電気自動車(EV)の充電設備銘柄の上げが目立った。
  ・前週末の米雇用統計で雇用者数が市場予想以上に増えてことを受け米景気への楽観の広がりも相場を支えた。
  ・長期金利の低下が一服し、利ザヤ縮小の警戒感が薄れ、JPモルガンなど金融株が買い直された。

【前回は】相場展望11月8日 米、長く待てない(1) FRB資産縮小(2) 金利引上げ 日本では、「腰の据わらない株式市場」が続く

 2)11/09、NYダウ▲112ドル安、36,319ドル(日経新聞より抜粋
  ・連日で過去最高値を更新し、過熱感も意識されていたため、最近上昇が目立っていた景気敏感株を中心に利益確定売りに押された。
  ・米長期金利の低下を受け、金融株が売られたのも相場の重荷になった。
  ・市場予想を上回る主要企業の決算発表に加え、10月の米雇用統計や新型コロナの飲み薬の開発、米政府のインフラ投資法案可決などが好感され、上昇基調が続いていたが、11/9は景気に関する特段の材料がなく、利益確定や持ち高調整の売りが優勢になった。
  ・インフラ投資の恩恵を受けるとの期待で前日に買われたキャタピラーが安い。
  ・イーロン・マスク最高責任者(CEO)が保有株を売却するとの観測が強まったテスラが▲12%安と大幅続落した。ペイパルも▲10%下げた。
  ・NYダウは一時▲260ドル近く下げたが、引けにかけて下げ渋った

 3)11/10、NYダウ▲240ドル安、36,079ドル(日経新聞より抜粋
  ・11/10発表の米消費者物価指数(CPI)が市場予想以上に上昇した。
  ・インフレ懸念が改めて強まり、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを前倒しするとの観測が株売りにつながった。主要株価指数は過去最高値圏あり、利益確定売り出やすい状況にある。
  ・CPIは前年同月比+6.2%上昇し、1990年以来の高い伸びとなった。前月比でも市場予想を上回った。
  ・エネルギー価格の高騰に加え、中古車や家賃など全般に値上がりした。
  ・CPI上昇を受け、米長期金利が一時1.59%に上昇し、相対的な割高感が意識され安い高PER(株価収益率)のハイテク株が売られ、総崩れとなった。スマートフォンのアップル、ソフトウェアのマイクロソフトなどが下落している。半導体株の下げも目立った。

●2.米国株は、10月消費者物価指数(CPI)が前年比+6.2%とインフレ懸念でハイテク総崩れ

 1)米10月消費者物価指数が、市場予想以上に上振れし、30年来の高さとなった。

 2)そのため、くすぶっていたインフレ懸念に火が付き、米金利が急上昇したため、相対的に割高株とされる高PER(株価収益率)のハイテク株が売られ総崩れとなった。

 3)米国の7~9月期決算発表ラリーで、好業績を反映し株価は上昇していた。ただ、今週で決算発表シーズンを終えつつあるなかで、次のテーマ材料探しを始める時期に差し掛かっていたときにおける、「米消費者物価指数の1990年来の高さ」が発表され、株式市場は長期金利上昇に一気に反応したもよう。

 4)米連邦準備制度理事会(FRB)は米公開市場委員会(FOMC)結果発表においてバウエルFRB議長は記者会見で「物価上昇は一時的」と公表し、『利上げは考えていない』と市場に説明していた。しかし、CPIが前年比+6.2%との発表を受けて、市場では『利上げの前倒し』観測が広がった。特に、ハイテク株が多いナスダック総合指数だけでなく、NYダウやSP500指数にも売りが波及した。

 5)もともと、好業績の決算発表で過去最高圏に主要3指数ともに株価指数が位置していたこともあり、利益確定売りも出やすい環境にあった。よって、これで米国株全体が総崩れするという見解には同意しない。史上最高値圏にあったことへの『一時的調整』に過ぎないと見ている。

●3.米10月消費者物価指数は前年比+6.2%、予想+5.9%・9月+5.4%より上昇(フィスコ)

 1)米10月コア消費者物価指数は前年比+4.6%、予想+4.3%・9月+4.0%より上昇

●4.米・先週分新規失業保険申請件数26.7万件、予想26.0万件から悪化(フィスコ)

●5.米GEは、ヘルスケア、電力、航空の3事業別に分社化(ブルームバーグ)

 1)コングロマリットとしての事業の歴史に終止符。
 2)それぞれを上場させる方針。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)11/08、上海総合+8高、3,498(亜州リサーチより抜粋
  ・経済活動正常化が期待され買われる流れとなった。
  ・新型コロナ感染者数が約3月ぶりに100人を超えたものの、週末3日間は大幅減少した。
  ・中国輸出の上振れもプラス。
  ・ただ、上値は限定的。北京市で11/8~11にかけて、中国共産党の6中全会が開かれるため、政策動向を見極めたいとするスタンスが買い手控え要因として意識された。
  ・業種別では、旅行関連の上げが目立ち、自動車株もしっかりした。反面、医薬品株は安く、発電・食品飲料・半導体・銀行株が売られた。
 
 2)11/09、上海総合+8高、3,507(日経新聞)
  ・3営業日ぶりに3,500台を回復した。
  ・中国国内の投資家の投資意欲が堅調との見方で買い優勢となった。
  ・ただ、中国共産党の6中全会が開催中で、中国の10月経済指標の発表が本格化するとあって、様子見気分が強く、小幅続伸となった。

 3)11/10、上海総合▲14安、3,492(亜州リサーチ)
  ・物価高を懸念して、売りが広がる流れとなった。
  ・10月中国生産者物価指数(PPI)は前年同月比+13.5%に達し、26年ぶりの高い水準を記録した。企業業績や経済成長の下押し圧力になると不安視された。
  ・業種別では、景気動向に敏感な素材関連が安く、食品飲料や家電・自動車など消費関連株も冴えなかった。反面、不動産株は高いのは、国内起債に関する政策が緩和される兆しがあるため。

●2.中国10月生産者物価指数は前年比+13.5%、市場予想+12.3%を上回る(フィスコ)

●3.中国10月消費者物価指数は前年比+1.5%、概ね想定の範囲内(フィスコ)

 1)11月以降、上昇することが懸念されている。

●4.中国10月自動車販売、前年比▲9.4%減の233万台、6カ月連続減(ロイター)

 1)夏の暑さが和らぐ9月と10月は「金の9月、銀の10月」と呼ばれ、例年は販売が伸びる傾向がある。

 2)9月は、世界的な半導体不足が長期化し、生産に混乱が生じている。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)11/08、日経平均▲104円安、29,507円(日経新聞より抜粋
  ・前週末の米株高を受けて買い先行したが、3万円の大台が意識されるなかで戻り待ちや利益確定の売りが優勢となった。後場に建設株が急落すると下げ幅を広げた。
  ・本格化した7~9月期決算発表では、市場期待に届かなかった内容だった銘柄への売り圧力が強い。JFEや神戸製鋼は上方修正したが、物足りないと受け止められ大幅安。大幅減益決算を発表した大林組や清水建設への売りもかさんだ。
  ・中国不動産大手・中国恒大集団が11/6に期日を迎えたドル建て社債の利払いを見送ったと伝わったのも、相場の重荷になった。
  ・一方、新型コロナの飲み薬が経済正常化の後押しをするとの期待が高まり、鉄道・空運など経済再開銘柄への買いが目立った。

 2)11/09、日経平均▲221円安、29,285円(日経新聞より抜粋
  ・朝方は上昇して始まり上げ幅は一時+200円超となった。前日に1兆円の自社株買を発表した値嵩のソフトバンクGは、+10%超の大幅高となり、日経平均を1銘柄で+136円押し上げた。
  ・自民党・公明党の幹事長で、経済対策を巡る協議で、柱となる「給付金について18歳以下に10万円相当を支給する、との合意」が伝わったことも、個人消費が拡大するとの期待からも相場を支えた。
  ・その後、米株価指数先物が軟調に推移し、日本株の売りを促した。
  ・為替が112円台に円高・ドル安に進んだことも、輸出関連株を中心に相場の重荷になった。

 3)11/10、日経平均▲178円安、29,106円(日経新聞より抜粋
  ・米国で主要3指数が下落したことを受け、日経平均は主力銘柄を中心に4日続落。ソフトバンクG・東京エレク・アドテストは下落、3銘柄で▲113円押し下げた。アジア株も軟調に推移したこともあり、下げ幅は一時▲200円を超えた。
  ・中国の卸売物価指数(PPI)は前年同月比で上昇率が最大となり、インフレ懸念から上海・香港の株価指数が軟調に推移したことも、投資家心理を冷やした。
  ・一方、決算発表を受けた個別銘柄の物色が見られ、相場の下値は堅かった。日産自動車・NTTデータ・バンナムなどが大幅上昇した。
  ・10月米消費者物価指数(CPI)の発表を控え、米国でのインフレ動向を見極めようと次第に投資家の様子見姿勢が強まった。
  ・衆議院は11/10の本会議で、賛成多数で岸田首相を101代首相に指名した。既定路線との受け止めが多く、相場への影響は限られた。

●2.日本株は、外人勢は『売りに転換』、日経平均EPS(1株利益)の急落に注目

 1)日本企業の決算発表は来週でほぼ出揃うもよう。つまり、決算ラリーによる個別銘柄の物色シーズンが終了することになる。
 
 2)外国人投資家の日本株買いは、10月に2兆5,570億円買い越したが、11月には売り越しに転換している。10月の外国人の買い主役は日替わり交替のため、よく見えず。ただ、アルゴ取引が株価上下の増幅をした点に留意したい。つまり、外国人買い仕掛けは『腰が据わっていない』と解釈できる。

 3)日経EPS(1株利益)の低下に注目したい。
    EPSの推移   11/01   11/08 11/10
          2,070円  2,179円  2,026円
   ソフトバンクの大幅な下方修正が影響したと思われるが、日本株全体としては、今回の決算発表でEPSは改善しなかった、ということになる。米国株との違いが浮き彫りにされた格好となった。これでは、外国人投資家、とりわけ外国人短期筋の買い仕掛けも入りにくいといえる。

 4)今後、注目したい点は、
  (1)半導体DRAMのスポット価格
  (2)海上運賃指数
    DRAM価格は既にピークアウトしており、半導体全体への波及効果に注意したい。海上運賃もコンテナ船不足の解消が進んでいることもあり、バルチック海運指数も急落している。この海上運賃指数の低下が、景気動向を反映したものかにも注目したい。

 5)日経平均の売り圧力も増大し、外人筋も29,500円当たりで売り転換しているもよう。今後は、FRBの『2022年の利上げ議論の進展』に焦点を合わせてみたい。

●3.台湾TSMC、熊本に半導体工場に8,000億円で建設、ソニーは570億円出資(時事通信より抜粋

 1)2022年着工、2024年生産開始を目指す。雇用創出は1,500人を見込む。工場はソニーの熊本県菊陽町の画像センサー工場の隣接地に建設予定。

 2)製造品目は、自動車などに使われる回路線幅22~28ナノメートルのロジック半導体。月産生産能力は300ミリウエハー換算で4.5万枚を計画。

 3)ソニーは新工場から画像センサー用半導体などを優先的に調達する方針。工場の運営会社に対するソニーの出資比率は20%未満で約5億ドル。日本政府から補助金を得る見通し。

●4.世界保健機構(WHO)は、2022年の世界で最大20億本の注射器が不足と警告(時事通信)

●5.企業動向

 1)東急電鉄  2023年に運賃値上、全体で十数%程度。初乗り10円値上(神奈川新聞)

●6.企業業績

 1)キリン   1~9月期純利益+516億円、前年同期比▲28%減。(日経新聞)
         通期予想の+865億円に対する進捗率6割にとどまった
 2)NTTデータ 7~9月期営業利益+619億円、前年同期比+66.6%増(フィスコ)
受注+25%増も、通期予想は据え置いた
 3)西武    今年度最終損益▲50⇒▲140億円赤字拡大で下方修正(NHK)
         新型コロナ長期化で、鉄道・ホテル事業が当初予定より回復が遅れた
 4)IHI    4~9月期最終利益+151億円黒字、昨年同期▲97億円赤字(日経新聞)
         通期利益予想は据え置き

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・8086 ニプロ    業績堅調。コロナワクチン普及の関連材料受注増に期待。
 ・6902 デンソー   業績好調。電気自動車(EV)・自動運転に期待。
 ・3861 王子     業績回復。景気回復による需要増に期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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