相場展望12月28日号 米国株: NYダウ、最高値更新も材料乏しく注意、年始の潮目に注目 日本株: 日経平均は軟弱へ、年末のお化粧買いに注意

2023年12月28日 10:55

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)12/25、祝日「クリスマス」で休場

【前回は】相場展望12月25日号 米国株: 政策金利▲1%低下期待で株価高騰、期待が剥げる可能性 日本株: 日経平均は25日移動平均線に収れんし、勢いが低迷か

 2)12/26、NYダウ+159ドル高、37,545ドル(日経新聞より抜粋
  ・米国のインフレ鈍化を受け、米連邦準備理事会(FRB)が2024年前半にも利下げに転じるとの観測が投資家心理を支えた。12/19に付けた過去最高値37,557ドルを上回る場面があったが、引けにかけてやや伸び悩んだ。

  ・前週発表の11月の米個人消費支出(PCE)物価指数は米国のインフレ鈍化を改めて示した。年末で目新しい材料に欠けるなか、FRBが2024年に利下げを開始するとの見方が引続き株買いを促した。

  ・NYダウは前週まで8週間連続で上昇した。「運用成績を良く見せるための、年末のお化粧買いが見込まれ、下がりにくい相場だ」との見方があった。

  ・半面、短期的な株式相場の過熱感や高値警戒感が意識された。主力銘柄の一部には持ち高調整や利益確定の売りが出て、午前のNYダウは上値が重くなる場面があった。

  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合指数は3日続伸し、2022年1月以来の高値で終えた。

  ・個別銘柄では、製造拠点拡大のためにイスラエル政府の補助を受け取ると伝わった半導体のインテルが+5%高で終えた。建機のキャタピラー、工業製品・事務用品のスリーエムなど景気敏感株も買われた。電気自動車のテスラと半導体のエヌビディアが上昇した。半面、スマートフォンのアップルと小売のウォルマートが下げた。

 3)12/27、NYダウ+111ドル高、37,656ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦準備理事会(FRB)が2024年の前半に利下げに転じるとの観測が相場を支え、NYダウは過去最高値で終えた。半面、主力株を中心に利益確定目的の売りが出た。中東の地政学的リスクも意識され、上昇の勢いが弱まる場面があった。

  ・米国のインフレ減速を背景にFRBが2024年早期に利下げするとの見方が根強い。12/27の米長期金利は一時3.78%と7月以来の低水準を付けた。金利と比べた株式の相対的な割安感が意識され、買いが入った。NYダウの上げ幅が+140ドル近くになる場面があった。相場の先高観が強く、上昇に乗り遅れまいとする買いが入ったとの見方もあった。

  ・もっとも、NYダウの上値は重く、下げる場面もあった。イスラエル軍の首脳が、パレスチナ自治区ガザでのイスラム組織ハマスとの戦闘について「あと何カ月もかかる」との見方を示したと伝わった。12/27は安全資産とされる金の先物価格が上昇し、市場では「地政学リスクが高まるなか、運用リスクを回避する目的の株売りが出た」との声が聞かれた。

  ・年末の休暇シーズンを迎え、市場参加者が減っている。株の売買が普段より少なく、指数に明確な方向感が出にくい面もあった。

  ・ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は4日続伸し、2022年1月以来の高値で終えた。

  ・多くの機関投資家が運用指標とするSP500株価指数も2022年1月以来の高値で終えた。

  ・個別銘柄では、小売のウォルマートやバイオ製薬のアムジェン、建機のキャタピラーが上昇した。一部車種の改良版を投入する準備を進めていると伝わった電気自動車のテスラが上昇した。半面、スポーツ用品のナイキと映画・娯楽のディズニーは下げた。ネット検索のアルファベットも下落した。

●2.米国株:NYダウ、最高値更新も、材料乏しく注意、年始の潮目に注目

 1)NYダウは最高値を更新も、材料乏しく方向感を欠く、年始の潮目変化に注目
  ・米国株は「FRBの利下げ」観測だけで、上昇相場を形成してきた。
  ・チャートからは「強引な上げ相場」がうかがえ、反落リスクを内包しているように見受けられる。

 2)懸念材料
  ・FRBが利下げに転じるとの観測が相場を支える展開だが、期待外れとなった場合の備えが必要。
  ・絶税対策の損出し。
  ・年末のポートフォリオ改善のための化粧買い。
  ・年内取引はあと2日になった。新年に潮目が変わるリスクを念頭に。
  ・薄商いのため、少ない株数の売買で値動きが荒くなる傾向にある。

 3)注目のイベント
  ・12/28 米・前週分失業保険申請件数
  ・01/02 米・12月製造業PMI
  ・01/03 米・12月ISM製造業景気指数
      米・11月JOLTS求人件数
       米・FOMC議事録要旨(12月会合分)
  ・01/05 米・12月雇用統計
       米・12月ISM非製造業景気指数

●3.ロマネコンティも、高級ワイン価格が急落(英フィナンシャル・タイムズ紙)

 1)金利上昇と中国経済の減速を背景に、ブルゴーニュ最高級ワインやシャンパンに対する投資家の興味が薄れた。ブルゴーニュ産の価格は今年▲15.7%低下、ビンテージ物シャンパンは▲17.2%下がり、ローヌ産は▲19.4%安くなった。2017年物ロマネコンティ・リシュブールのケースは今年▲29%値下がりした。

●4.NY原油先物75.72ドルまで急伸、中東地政学的リスクが上昇(フィスコ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)12/25、上海総合+4高、2,918(亜州リサーチより抜粋
  ・自律反発狙いの買いが優勢となる流れとなった。

  ・中国のネット締め付けや、米中対立の激化などが引続き嫌気されて、前場は続落したものの、後場にかけてプラス圏に転じた。ただ、上値は重い。

  ・中国経済の先行き不透明感がくすぶっている。

  ・業種別では、印刷包装の上げが目立ち、航空関連もしっかり。非鉄金属・電子部品・石炭なども買われた。半面、ホテル・観光・貿易・製紙は冴えない。

 2)12/26、上海総合▲19安、2,898(亜州リサーチより抜粋
  ・香港市場や欧米市場がクリスマス休暇で国内発の新規買い材料が乏しいなか、投資家の慎重スタンスが強まる流れとなった。心理的節目の2,900を小幅に割り込んで取引を終えた。

  ・引続き中国経済の先行き不透明感がくすぶっている。

  ・業種別では、造船関連の下げが目立ち、電子情報・電子部品関連も安い。機械・電子情報・バイク・医療機器などを中心に幅広いセクターが売られた。半面、前日に続き印刷包装が高く、農薬・化学肥料・ガラスなどが買われた。

 3)12/27、上海総合+15高、2,914(亜州リサーチより抜粋
  ・自律反発狙いの買いが先行する流れとなった。

  ・上海総合指数は前日、約1年2カ月ぶりの安値を付けただけに、値ごろ感が着目された。

  ・中国企業の業績成長も好材料。朝方公表された中国工業企業の利益総額は、今年11月に前年同期比で+29.5%増加した。4カ月連続でプラス成長を維持し、増加率は10月の+2.7%から大幅増加した。

  ・業種別では、石油関連の上げが目立ち、ハイテクも高く、証券もしっかり。公益・医薬・素材・石炭・銀行・食品なども買われた。半面、メディア・娯楽は冴えず、自動車・軍事関連・保険が売られた。

●2.中国、地方はクリスマス「封印」、外国の風習に神経とがらす当局(ロイター)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)12/25、日経平均+84円高、33,254円(日経新聞より抜粋
  ・前週末の米ハイテク株高を背景に主力大型株の一角や株価指数先物への買いが優勢となった。上げ幅は一時+200円を超えた。12/25にはクリスマス休暇で欧米主要市場が休場となるため、様子見姿勢が強まりやすく、売買代金は節目の3兆円を割り込んだ。

  ・前週末の12/22の米株式市場でNYダウは小幅に反落する一方、ハイテク株比率が高いナスダック総合指数は続伸した。米インフレ鈍化に伴う米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ期待が支援材料にとなった。米ハイテク株高を支えに12/25の東京市場では買いが優勢だった。

  ・買い一巡後は伸び悩んだ。12/25の欧州主要市場が休場となるため、上値追いの雰囲気に乏しく、次第に利益確定や戻り待ちの売りが増えた。日経平均への寄与度は大きくないが、大手海運株が急落し、投資家心理の悪化による持ち高調整の売りも観測された。

  ・日経平均への寄与度が高いファストリやソフトバンクGが買われた。レーザーテクやトヨタも高い。一方、川崎汽船や郵船など大手海運株が大幅安となった。

 2)12/26、日経平均+51円高、33,305円(日経新聞より抜粋
  ・相場の方向性を決めるほどの材料に乏しく、一進一退の展開が終日続いた。クリスマス休暇で海外投資家などの参加も少なく、売買代金は連日で節目の3兆円を割り込んだ。

  ・1日の日中値幅(高値と安値の差)は130円ほどと小幅にとどまった。年末が近く、休暇を取る国内の市場参加者も一定数いたため、売買は低調だった。日本時間の12/26の米株価指数先物は小高く推移し、休場明けの米株式相場が堅調に推移するとの期待もあって、朝方に上昇する場面もあったが、ほどなく下げに転じて上値を追う雰囲気は乏しかった。

  ・午後に入ると、日経平均は下げ幅を広げる場面があった。年末年始の東京市場は休場期間中、米国など海外市場の相場が大きく動く可能性も警戒され、いったん持ち高調整する売りが出たとの見方があった。午後にかけて、日産自・スズキなど自動車株の一角が一段安となった。

  ・個別株では、東エレクが大引けにかけて上げ幅を拡大した。アドテスト・スクリンも高い。一方、午後にかけて小田急・高島屋・Jフロントは下げ幅を拡大した。

 3)12/27、日経平均+375円高、33,681円(日経新聞より抜粋
  ・年末ラリーで米国株の上昇が続いているうえ、日銀は大規模金融緩和を継続するとの観測から幅広い銘柄に買いが入った。米通信大手TモバイルUS株を無償取得すると発表したソフトバンクGが大幅高となり、指数を押し上げた。

  ・日経平均は一時+449円高ぼ33,755円まで上昇し、7/3に付けた33年ぶりの高値33,753円を上回った。12/26の米株式市場でハイテク株比率が高いナスダック総合指数が2022年1月以来の高値で終え、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は過去最高値を更新した。東京市場でも半導体関連株を中心に電気機器・精密機器など値がさのハイテク株が買われた。海運株や、原油高を受けた石油株の上昇も目立った。

  ・日銀が取引開始前に発表した12月の金融政策決定会合の「主な意見」で、委員らの利上げに慎重な意見が目立った。市場では早ければ来年1月にもマイナス金利解除に動くとの予想もあったが、日銀の慎重姿勢で政策正常化が遅れるとの見方が強まった。

  ・日経平均が7月に付けた高値が近づくと買いの勢いは弱まり、伸び悩む場面があった。高値更新は明日以降に持ち越された形だが、市場の先高観は根強い。「円高警戒の後退に加え、米国のインフレや金利上昇懸念が薄れている。2024年に始まる新たな少額投資非課税制度(NISA)への期待感も追い風」との声も聞かれた。

  ・個別銘柄では、商船三井・川崎汽船が高い。東エレク・レーザーテク・テルモ・トヨタも買われた。一方、Jフロント・第一三共・マクニカは売られた。

●2.日本株:日本株は軟弱局面に、年末のお化粧買いに注意

 1)日経平均は気迷いが強くなる方向へ
  ・日経平均は上昇も個別株は下方を向く
  ・値上がり・値下がり銘柄数と日経平均の推移、12/25が特徴を表す
        12/25
   値上がり 632
   値下がり 984
   日経平均 +84円高
  ・少数の値がさハイテク株が主導し日経平均が上がるという相場になってきた。

 2)株式相場は高値警戒感を示す
  ・騰落レシオ(6日)の数値が上昇し、下落の接近を示唆
  ・騰落レシオ(6日)の推移 12/21 12/25 12/26 12/27
                78.74 98.64 121.42 136.31
 3)円高で株安へ
  ・12/27の円相場の推移
   日本142.60円⇒米国141.79・・・81銭の円高

 4)円高と相場の軟弱化で、日経平均は重くなるとみる

 5)年末の株価形成に「お化粧買い」が入りやすく、注意したい
  ・新規の買いは慎重な姿勢が望まれる。

●3.1人当たりGDP、OECD38カ国中で21位、G7で最下位、円安響き▲15%下落(共同通信)

●4.ソフトバンクG、米Tモバイルの株式約4,875万株を無償取得(約1.1兆円)(ケータイWatch)

●5.日清紡、日立国際電気の株式取得完了、傘下に収め日本無線とシナジー(電波新聞)

●6.Jフロント、第3四半期営業利益+306億円、前年同期比+52.6%増(フィスコ)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・3107 ダイワボ 業績向上期待

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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