相場展望8月31日号 日本株: 8月相場は、やや弱含みながらも横ばいと堅調な展開 9月相場は、経験則では「売られやすい」月間 ただし、選挙あれば上昇 チャイナ・ショックに留意

2023年8月31日 15:29

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)8/28、NYダウ+213ドル高、34,559ドル(日経新聞より抜粋
  ・8/25に講演したパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が金融引締めを継続する姿勢を示しつつも、政策判断に踏み込んだ発言はせず、追加利上げへの過度な警戒が和らいだ。米長期金利の上昇一服や中国の資本市場活性化策も米株式市場の支えとなった。
  ・パウエルFRB議長は8/25の国際経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)の講演で、「適切ならば追加利上げの用意がある」としつつ、今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げするかの政策判断は「慎重に進める」と述べた。最終的に利上げに踏み切るかは米景気次第ではあるものの、「市場の一部で、追加利上げの可能性は低いと受け止められた」という。注目イベントが通過したことで買い安心感が広がった面もあった。
  ・米債券市場で長期金利の指標である米10年債利回りが4.2%前後と、前週末終値の4.32%を下回って推移する場面が目立った。長期金利は前週に4.36%と、2007年11月以来の高水準を付けている。株式の相対的な割高感が強まる長期金利の上昇に歯止めがかかっていることが好感された。
  ・中国当局が8/28に株式取引の印紙税引下げなどの市場活性化を発表したのも投資家心理を支えた。
  ・個別株では、軍需用耳栓に関連した訴状で和解する方向と伝わった工業製品・事務用品のスリーエムが+5%余り上昇した。資産運用・管理などを手掛ける個人向け事業の売却で合意したと伝わった金融のゴールドマンサックスも+2%近く上げ、2銘柄でNYダウを+70ドル押し上げた。航空機のボーイングや化学のダウなどの景気敏感株も買われた。顧客情報管理のセールスフォースやスマホのアップルなどハイテク株も高かった。画像処理半導体のエヌビディアや半導体メモリーのマイクロン、交流サイトのメタが高い。一方、医薬品・日用品のJ&Jや製薬のメルクなどディフェンシブ株が売られた。

【前回は】相場展望8月28日号 米国株: パウエルFRB議長は、利上げに関しフリーハンドを得る  中国株: 日本産水産物の輸入禁止は拡大し、長期化の覚悟が必須  日本株: 8/25の大幅下落は、意味するところなし「単なる夏枯れ」

 2)8/29、NYダウ+292ドル高、34,852ドル(日経新聞より抜粋
  ・8/29発表の米経済指標が労働市場の過熱感の和らぎを示し、米連邦準備理事会(FRB)による追加利上げ観測が後退した。米長期金利が低下し、株式の相対的な割高感が薄れて幅広い銘柄が買われた。NYダウの上げ幅は+300ドルを超える場面があった。
  ・8/29午前に発表された7月米雇用動態調査(JOLTS)で非農業部門の求人件数は882.7万件と、2021年3月以来の低水準となった。リフニティブがまとめた市場予想946.5万件を下回った。
  ・8月の米消費者信頼感指数は106.1と、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想116.0を下回った。同調査では雇用機会が「豊富にある」と答えた消費者の割合が2021年4月以来の低水準だった。
  ・FRBは今後の政策決定は経済データ次第とするなか、市場ではインフレ抑制に向けて「正しい方向にある」との見方が強まった。労働需給の引締りが和らぎつつあるとの観測から、米金利先物の値動きから市場が織り込む政策金利予想を算出する「フェドウオッチ」では9月と11月の会合で政策金利を据え置く確率がともに前日から上昇した。
  ・米長期金利は一時、前日比▲0.10%低い(債券価格は高い)4.10%を付けた。高PER(株価収益率)のハイテク株を中心に買いが入りやすくなり、スマホのアップルが+2%上昇した。FRBが米景気後退を避けてインフレを抑え込めるとの楽観を背景に、景気敏感株や消費関連株も買われ、スポーツ用品のナイキや金融のゴールドマンサックスなどが高い。アナリストが投資判断を引上げ通信のベライゾンは+3%高となった。
  ・ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は、主力株が軒並み買われた。電気自動車のテスラが+8%近く上げ、エヌビディアが+4%高となるなど、半導体関連株の上昇も目立った。
  ・週内は注目度の高い経済指標の発表が多い。8/30は8月のADP全米雇用リポート、9/1には8月雇用統計と雇用関連指標も相次ぐため、内容を見極めたい雰囲気もあった。米国では3連休の週末を控えて夏季休暇を取る市場関係者が多く、「薄商いで相場の振れが大きくなりやすい面がある」との声が聞かれた。

 3)8/30、NYダウ+37ドル高、34,890ドル(日経新聞より抜粋
  ・8/30朝発表の米経済指標が労働市場の過熱感の緩和を示した。米連邦準備理事会(FRB)による利上げ観測が一段と後退し、株買いを誘った。半面、NYダウは前日までの3営業日で+750ドル余り上昇した後で、主力銘柄には持ち高調整売りが出やすく、小幅に下げる場面があった。
  ・8/30朝に発表された8月のADP全米雇用リポートでは非農業部門の雇用者数は前月に比べ+17.7万人増と、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想+20万人増を下回った。労働需給の軟化を示す内容との受け止めが広がった。2023年4~6月期の国内総生産(GDP)は前期比年率+2.1%増と、速報値の+2.4%増から下方修正された。成長率が鈍っていることも、追加の利上げ観測の後退につながった。
  ・米債券市場では長期金利が低下(債券価格の上昇)し、一時は前日に比べ▲0.04%低い4.08%となった。金利の低下で株式の相対的な割高感が薄れ、高PER(株価収益率)のハイテク株を中心に買いが入った。NYダウは一時+170ドル余り上昇し、35,000ドル台に乗せる場面があった。
  ・買い一巡後は持ち高調整や利益確定の売りに押されNYダウは一時下落に転じた。
  ・8/31には7月米個人消費支出(PCE)、9/1には8月雇用統計の発表がある。いずれもFRBが重視する経済指標とあって、内容を見極めたいとの雰囲気が出やすかった。市場には「商いが薄く、株式市場の方向感が定まりにくかった」との見方があった。
  ・個別株では、スマホのアップル、ホームセンターのホームデポ、建機のキャタピラーが上昇。航空機のボーイングと半導体のインテル、エヌビディア、ネット検索のアルファベットなどが買われた。半面、工業製品・事務用品のスリーエム、バイオ製薬のアムジェン、金融のゴールドマンサックスが下落した。

●2.米7月JOLTS求人件数は882.7万件、予想945・6月958.2万件を下回る(フィスコ)

●3.経済減速が続けば利上げ終了が可能=前ボストン連銀総裁(ロイターより抜粋

 1)次回の連邦公開市場委員会(FOMC)の開催は9/19~20。
   FRBは金利据え置きを決定するとの見方が大勢だが、11月の会合については、利上げ停止と再利上げで見方が割れている。

●4.アップル、「Apple Watch」のスチール製ケースを3Dプリンターで製造テスト中(ブルームバーグ)


■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)8/28、上海総合+34高、3,098(亜州リサーチより抜粋
  ・株式市場の活性化が材料視される流れとなった。
  ・関連部局は8/27、市場活性化に向けた一連の措置を発表した。8/28から株式取引の印紙税が半減されたほか、信用取引の保証金率も引下げる。(9/8引け後に適用)新規公開株式(IPO)の引締めや、大株主の保有株売却の制限なども決定された。経済対策の期待感も根強い。当局は断続的に支援策を打ち出している。足元では、関連当局が住宅ローン規制の緩和に踏み切る見込みだ。
  ・もっとも、中国の景気懸念は根強く、指数は引けにかけて上げ幅を縮小した。
  ・業種別では、不動産の上げが目立ち、証券も高い。銀行・保険・ハイテク・消費関連・インフラ関連・エネルギー・素材・医薬品・運輸なども買われた。半面、発電の一角が冴えない。

 2)8/29、上海総合+37高、3,135(亜州リサーチより抜粋
  ・前日の好地合いを継ぐ流れとなった。
  ・中国当局の株式市場活性化策が引続き材料視されたほか、米国の利上げサイクル終了期待も支えとなった。米中関係の悪化懸念もやや後退した。半導体など先端技術を巡る対立が続くなか、米国のレモンド米商務長官と中国の王・商務部長は8/28に北京で会談し、貿易や投資に関する問題の解決に向けた協議の場を新設することで合意した。
  ・中国景気の先行き不安が根強いなか、指数は早い時間に弱含む場面がみられたものの、徐々に上げ幅を広げた。
  ・業種別では、ハイテク関連の上げが目立ち、医薬品もしっかり。消費関連・不動産・インフラ関連・素材・運輸が買われた。一方、エネルギーは冴えず、公益・金融が売られた。

 3)8/30、上海総合+1高、3,137(亜州リサーチより抜粋
  ・前日までの好地合いを継ぐ流れとなった。
  ・米中関係悪化の懸念が後退し、当局の株式市場活性化策が引続き材料視された。また、昨夜の米債券市場で米10年債利回りが大幅に低下したことも好材料だ。
  ・ただ、上値は重い。このところ上昇ピッチが早かっただけに、戻り待ちの売り圧力が意識された。中国経済の先行き不安も依然としてくすぶっている。また、明日8/31に公表される8月製造業購買担当者景気指数(PMI)も気懸り材料。PMIの結果を見極めたいとするスタンスも漂っている。指数は一時、マイナス圏で推移した。
  ・業種別では、ハイテクい関連の上げが目立ち、軍事関連もしっかり。消費関連・医薬品・素材なども買われた。半面、銀行・証券・不動産・公益が売られた。

●2.経営難の不動産大手の碧桂園は、過去最大の損失計上し、業績悪化が続けば債務不履行(デフォルト)リスクがあると警告(ロイター)

 1)上半期に過去最大の損失(▲67億元)を計上。負債総額は1兆4,000億元。

●3.中国は「リスクが高すぎて投資できない」、米商務長官が米企業の声を述べた(ブルームバーグより抜粋

 1)米企業による、中国のリスク
  ・新たなスパイ防止法を巡る曖昧さと罰金。
  ・知的財産権の窃盗。
  ・政府からの補助金を受け取る中国企業との競争。

●4.中国株にディフェンシブなポジションを、大幅緩和がなければ=BofA(ブルームバーグより抜粋

 1)中国の経済と金融市場を支える、より大幅な緩和策を向こう数週間内に打ち出さない場合、投資家は年内に中国株に対して一段とディフェンシブなポジションを取った方がよい。

 2)政策対応には、向こう2~3週間が重要な時間だとみている。

 3)短期的には大幅な緩和策が講じられなければ、中国の経済と市場は今年10~12月期と2024年1~3月期に一段と下押し圧力を受ける可能性があると指摘した。
 (注)BofA=バンク・オブ・アメリカ


■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)8/28、日経平均+545円高、32,169円(日経新聞より抜粋
  ・前週末の米株式市場の上昇に加え、8/28の上海・香港の株価指数上昇を追い風にファストリや東エレクなど値がさ株が買われ、指数を押し上げた。半面、日中関係の悪化懸念などを背景にインバウンド(訪日外国人)関連銘柄には売りが広がった。
  ・日経平均は大引けにかけて株価指数先物主導で上げ幅を拡大した。国際経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演を控えた前週末は▲600円を超える下げとなっていた。実際の講演内容は金融引締めに積極的なタカ派寄りだったものの、前週末の米株式市場が上昇して終えたことで短期筋が先物の買い戻しに動いた。米金融政策の先行きに対して様子見の投資家も少なくないなか、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて今後も短期的な売買に相場が大きく振らされる展開を予想する見方が市場では出ていた。
  ・上海総合指数と香港ハンセン指数の上昇も先物買いを誘った。半面、百貨店や陸運・空運といった中国の影響度が高いインバウンド関連(訪日外国人)関連には売りが広がった。
  ・東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出を巡って、中国で抗議や嫌がらせが相次いでいると報じられたほか、日本への団体旅行やキャンセルの動きも一部メディアで伝わっている。中国では景気低迷が続き、個人消費も振るわないなかで、インバウンド消費の回復がさらに遠のくとの見方につながった。JALは午後に下げ幅を拡大した。
  ・個別株では、ダイキン・アドテスト・テルモ・TDKが上昇した。一方、三越伊勢丹・Jフロント・ANA・JR西日本・エーザイが下落した。

 2)8/29、日経平均+56円高、32,226円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式市場で主要株価指数が上昇し、東京市場でも運用リスクをとる動きが優勢だった。8/29に香港ハンセン指数などアジア各国・地域の株価指数が上昇したのも投資家心理の改善につながった。日経平均の上げ幅は朝方に+200円を超える場面があったが、買い一巡後は利益確定売りも出て伸び悩んだ。東証プライムの売買代金は8日連続で3兆円の大台を割り込んだ。
  ・前週末の国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演を波乱なく通過し、市場では過度な米金融引締めへの警戒感がいったん後退した。同会議前に買い持ち高を減らしていた海外ヘッジファンドなどの短期筋が今日も買い戻しの動きを進めてたようだ。もっとも市場では「手がかりとなる新規材料に乏しいなかで買いの手は鈍く、自律反発の域を出なかった」との声が聞かれた。
  ・週内は9/1に予定される8月の米雇用統計をはじめ、米国で重要な経済指標の発表が相次ぐ。結果次第で米利上げ観測が再燃するとの見方が根強く、上値追いの動きは限られた。チャート分析で上値抵抗線として意識される25日移動平均線(32,295円、8/28)に接近した場面では戻り待ちの売りも出やすかった。
  ・個別株では、東エレク・ダイキン・ファストリなどの値がさ株が高い。オリンパスや日立建機も上昇、資生堂や三越伊勢丹も買われた。一方、アドテストが安く、KDDI・京セラ・デンソー・荏原が売られた。

 3)8/30、日経平均+106円高、32,333円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式市場で主要な株価指数が上昇した流れを引き継ぎ、幅広い銘柄に買いが入り、日経平均は一時+300円を超えたが、上値では戻り待ちの売りが出て伸び悩んだ。
  ・8/29の米市場では市場予想を下回る米経済指標を受け、米長期金利が低下し、NYダウが上昇した。米ハイテク株を中心に買われたことから、東京市場でも東エレクやアドテストなど半導体関連や村田製や京セラといった電子部品株の上昇につながった。
  ・日経平均はチャート分析で13週移動平均が位置する32,400円台半ばの水準を上回ると、戻り待ちの売りに押されて上げ幅を縮めた。
  ・日本時間8/30夜に8月のADP全米雇用リポートの発表を控え、米労働市場の趨勢を見極めたいとして積極的に買い進む動きは限られた。
  ・個別株では、三菱重・KDDIが高い。一方、高島屋・資生堂・商船三井が下げた。

●2.日本株:

 8月相場は、やや弱含みながらも堅調に推移した展開だった
 9月相場は、経験則では「売られる」月間、衆院選挙があれば上昇
  ・チャイナ・ショックの発生に留意

 1)日経平均は、8/1~30で▲880円安・下落率は▲2.6%だった。
  ・7月末までの日本株の急ピッチな上昇を考えると、「底堅く」推移した。

 2)海外投資家の先物市場の動向は、8/1~30で+1,171枚の買い越しだった。
  ・海外投資家の買い越し枚数はわずかだったが、買い越しで、「様子見」したともいえる。

 3)懸念材料は海外投資家の、高水準にある「買い残高」
  ・年初来の海外投資家の買い残高は、8月第2週で8兆7,824億円と高水準にある。
  ・ただし、8月第3週は▲8,355億円の売り越し。

 4)海外投資家の「買い」に対抗した、「売り」は年金と個人(現金)
  ・年初来、一貫して年金は▲6兆1,923億円の売り越し。(8月第3週)
   個人(現金)は▲4兆6,160億円の売り越し。(8月第3週)

 5)9月に入っても「外人買いvs年金・個人(現金)の売り」の構図が続くのか要注目
  ・経験則では、9月は下落確率が高い。ただし、衆院選挙があれば上昇確率が高い。
  ・要注意は、「チャイナ・ショック」。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4051  GMO-FG     業績好調。

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