相場展望12月29日号 年末・年始の上げ相場は期待薄か 中国コロナ感染に警戒、世界各国規制と経済活動影響

2022年12月29日 13:23

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)12/26、NYダウ:クリスマス休暇の振替のため休場

【前回は】相場展望12月26日号 米国株は、来年も利上げ長期化と景気後退で逆風か 日本株は、3重苦の始まりか

 2)12/27、NYダウ+37ドル、33,241ドル(日経新聞より抜粋
  ・中国政府が新型コロナ防疫措置を緩和する方針を示し、中国経済への不安が和らいだことが一定の支えになった。反面、米景気を巡る先行き不安は根強く、上値は限られた。
  ・中国政府がこれまでの厳格な入出国の規制を緩めると12/26夜に公表した。経済が活性化に向かうとの期待から、中国に関連が深い銘柄に買いが入った。建機のキャタピラー、化学のダウ、スポーツ用品のナイキが上昇した。
  ・ディフェンシブ銘柄の上昇もNYダウを支え、通信のベライゾン、コミュニケーションや日用品のP&Gの上げが目立った。
  ・一方、米長期金利が上昇する中、金利上昇局面で売られやすいハイテクなど高PER(株価収益率)の銘柄が下げた。スマホのアップル・ソフトウェアのマイクロソフトが安い。
  ・中国での減産継続が伝わった電気自動車のテスラが7日続落し、▲11%安で終えた。
  ・市場では、年末を控え、節税目的の損出しの売りも出やすかったとの見方がある。

 3)12/28、NYダウ▲365ドル安、32,875ドル(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利の上昇で高PER(株価収益率)のハイテク株に相対的な割高感を意識した売りが出て、ハイテク比率が高いナスダック総合指数は続落、10/14の年初以来安値を更新した。
  ・中国での新型コロナ感染拡大が伝わったのも投資家心理を冷やし、相場を押し下げた。
  ・米長期金利が3.87%と前日3.84%から上昇し、ハイテク株の売りを誘った。スマホのアップルは▲3%安とNYダウ構成銘柄で下落率が最大で、「最優良銘柄の下落は相場の先安観につながり、投資家心理を冷やした」という。
  ・アップルは、中国の新型コロナ感染拡大で、iPhoneの中国生産が停滞すると懸念されたのも、売りの材料だった。
  ・中国政府は12/26に新型コロナ規制の追加緩和策として入国者の強制隔離の撤廃などを発表したが、12/28にはコロナ感染が深刻化していると報じられた。
  ・市場では、中国経済の回復には時間が掛るとの懸念が強まっている。「欧米の金融引締めの長期化と併せて、世界景気への警戒感が高まり、株式の持ち高を手仕舞う動きが広がった」という。
  ・NYダウ構成銘柄ではアップル以外にも中国の生産や販売の比率が高い銘柄が売られ、スポーツ用品のナイキ・化学のダウ・映画娯楽のディズニーなど消費関連の下げが目立つ。

●2.米国株:年末高・年始高は期待できない、経験則では上昇だが

 1)米国株主要3指数ともに軟調、特にナスダック総合は新安値をつけた
  ・米経済指標が予想ほど悪化しなかったため、米景気は底堅いとみられ、米10年債利回りは12/28、3.88%台まで上昇した。金利上昇を嫌う高PER(株価収益率)のハイテク銘柄が売られ、ナスダック総合が下落。NYダウも中国の生産・販売比率が高い銘柄を中心に売りが波及した。

 2)アップルは米国株、ハイテク株を代表する銘柄であるが、12/28に▲3.07%下洛。
  ・アップルは、米国最強の銘柄であり、その下落率トップは米国株全体に暗雲を示唆する可能性があり、注目したい。
  ・電気自動車(EV)を代表するテスラの株式も悲惨な状況となっている。
  ・昨年11月市場最高407.36ドル⇒12/28に112.71ドル、▲72.3%下落
  ・高値から約4分の1になっている。
  ・半導体株の主要銘柄のエヌビディアも大幅下落しており、低迷から抜け出せない。

 3)米国株の年末・年始は上昇を期待したいが、経験則に逆らう流れか
  ・要因 : ・米長期金利の高水準長期化予想。
        ・米景気の減速懸念。
        ・米企業業績の低下懸念。
        ・原油価格の高止まり。
        ・中国が新型コロナ感染の急拡大で中国経済停滞の影響。

●3.欧米の消費減速で、ベトナムの製造拠点で数万人が解雇(AFPBBより抜粋

 1)ベトナムは衣服・靴・家具の世界有数の輸出国である。ベトナムは、米国からの受注が▲30~▲40%減、欧州から▲60%減少した。ベトナムでは50万人近くが労働時間の削減を余儀なくされ、解雇は数万人に及ぶ。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)12/26、上海総合+19高、3,065(亜州リサーチより抜粋
  ・自律反発狙いの買いが先行したが、上値は重い。
  ・上海総合指数は先週末まで7日続落し、連日で約1カ月半ぶりの安値水準を更新していた。
  ・国内各地で新型コロナ感染爆破が伝えられる中、経済活動の混乱が引続き危惧された。
  ・業種別では、ハイテク関連の上げが目立ち、発電・電力設備が高い。酒造は下落。

 2)12/27、上海総合+30高、3,095(亜州リサーチより抜粋
  ・新型コロナ水際対策の見直しで買われる流れとなった。
  ・国務院(政府)は12/26夜、2023年1/8付で新型コロナ感染症の法的分類を「乙類甲」から「乙類乙」に変更し、中国入国者全員に対するPCR検査と施設の集中隔離義務撤廃を発表した。現在は5日間の施設隔離と3日間の自宅隔離が義務づけられている。今後、陸路と水路による入出国も段階的に開放。中国人の海外旅行も解禁する方針だ。
  ・業種別では、農林牧畜漁業セクターが相場を牽引、石炭も高い。医薬は下げが目立った。

 3)12/28、上海総合▲8安、3,087(亜州リサーチより抜粋
  ・景気後退懸念がくすぶる流れとなった。
  ・中国リオープン(経済再開)をはやした買いが一巡し、中国経済の成長鈍化が懸念材料として改めて意識された。
  ・中国国家統計局は12/27、今年1~11月にかけた工業企業の利益総額が前年同期比▲3.6%減だった発表。マイナス成長は5カ月連続で、減少率は1~10月の▲3.0%から拡大した。
  ・また、リオープンに伴い、新型コロナ感染は足元で急拡大し、消費活動が停滞するとの不安感も広がった。
  ・業種別では、消費関連の下げが目立ち、自動車・酒造が安く、ハイテク関連も売られた。反面、発電・銀行・保険・医薬品・エネルギーが買われた。

●2.中国株:中国の新型コロナ防疫措置緩和で、感染輸入を警戒する世界各国

 1)主要国の反応
  ・米国:中国からの入国者に対し1/5から、コロナ陰性証明義務づけと発表(フィスコ)
  ・イタリア:中国から到着の全旅客にコロナ検査義務づけ=保険相(ロイター)
  ・12/26に北京と上海から到着した航空便の乗客検査の結果、約半数が感染していることが判明した。

 2)中国政府は12/26、新型コロナ防疫措置を緩和する方針を突如示した。
  ・中国政府は、オミクロン株の毒性が弱いとして緩和措置を取ったが、直前までは危険との報道を行なって強制措置を取ってきた。前触れが全くない中での突然の真逆な政策変更である。
  ・段階を踏んで緩和措置を取るべきであった。mRNAワクチン接種など感染拡大の予防措置など段階的な規制緩和を踏むことなく、一気に規制を撤廃した。医療の崩壊防止策も入念に対処すべきである。中国では、中国製ワクチンの接種は若者中心で、地方の高齢者への対策は不十分と言われている。
  ・結果、全国に爆発的な感染拡大し、医療体制が崩壊し、葬儀まで滞ってしまっている。
  ・このような状況下にもかかわらず、中国当局は中国人の海外旅行も1/8から解禁した。

 3)このままでは、新型コロナ再感染を、中国から世界にまき散らすことになる。
  ・欧米諸国は、ようやく集団免疫が進行しつつある段階である。日本は集団免疫が得られたとは言い難く、第8波の再感染が広がっている状況にある。新興国始め世界では、まだまだ心配な環境下にある。
  ・この段階での、中国からの新型コロナ輸出策となる急な緩和措置は是とできない。

 4)経済への悪影響はこれから。
  ・中国は、新型コロナ感染は初期の段階であり、急激な全国感染が進んでいる状況にある。
  ・中国消費は低迷し、GDP世界2位の中国経済の停滞は避け難い。
  ・中国は世界の工場という位置づけからも、世界のサプライチェーンへの供給懸念が再度深刻となり、世界経済・企業活動に及ぼす影響が心配される。
  ・当然、株式市場への悪影響もある。

●3.中国政府、中国人の海外旅行1/8から解禁、「ゼロコロナ」終了、入国者隔離を撤廃(読売新聞)    

●4.中国、世界各国の水際対策強化に反発(共同通信)

●5.中国のスマホ出荷台数、10月は前年比▲27.2%減少(ロイター)

 1)1~10月の出荷台数は前年同期比▲22%減の2億1,500万台だった。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)12/26、日経平均+170円高、26,405円(日経新聞より抜粋
  ・前週までの▲1,200円超と短期間で急速に下落したため、下げが目立った自動車や半導体関連株に見直しの自律反発狙いの買いが優勢だった。
  ・資源高を背景とした前週末の米国株高を受け、東京市場でも鉱業や商社などが買われた。
  ・一方、前週に大幅上昇した銀行や保険には利益確定売りが出た。
  ・12/26は欧米や香港市場が休場。クリスマス休暇中で海外勢の参加者が少ないうえ、新たな取引材料も乏しく、買い一巡後は膠着感が強まった。国内勢の持ち高調整や個人投資家による短期目線の売買が中心との見方があった。東証プライム市場の売買代金は2兆円を割込み、4月の市場再編後で最小となった。
  ・フジクラ・マツダ・東エレク・INPEX・双日・シャープ・日揮が上げ、東電が下落。

 2)12/27、日経平均+42円高、26,447円(日経新聞より抜粋
  ・米株価指数先物が堅調に推移したことが支えとなった。
  ・中国政府による新型コロナ感染対策の緩和をきっかけにインバウンド(訪日外国人)関連株の上昇が目立ち、日経平均の上げ幅は一時+200円を超えたが、米景気減速への懸念が重荷となり、次第に伸び悩んだ。東証プライム市場の売買代金は連日で2兆円を下回った。
  ・中国政府は12/26、新型コロナ感染拡大防止のため海外から中国本土に入る際に義務づけているホテルでの強制隔離を来年1/8から撤廃すると発表した。中国人の訪日が増えるとの観測から、百貨店や空運に好感した買いが入った。
  ・朝方の買い一巡後は上げ幅を縮小した。米金融引締めの長期化による景気減速懸念は根強く、東京市場では自動車や機械・電気機器など景気敏感株に売りが出た。
  ・国内の個人投資家が年末を前に、節税目的の損失確定売りを出したとの観測も重荷だった。日経平均は大引けに掛けて上値の重い展開となり、今日の安値で引けた。
  ・ファストリが大幅高となり、1銘柄で日経平均を+56円押し上げた。三越伊勢丹は年初来高値を更新した。地銀株の上昇も目立った。一方、半導体関連の東エレク・アドテストは下落、信越化・ダイキン・ファナクは下落。

 3)12/28、日経平均▲107円安、26,340円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米市場で長期金利の上昇を背景にハイテク株が下げたのを受け、東京市場でもグロース(成長)株を中心に売りが優勢となり、下げ幅は一時▲250円に迫ったが、下値では押し目買いも入った。
  ・前日の米市場ではハイテク株比率の高いナスダック総合指数や、主要な半導体関連株で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が大幅に下落した。「米国の長期金利の上昇に改めて警戒感が強まった」とみられ、東京市場でも値嵩株のハイテク株や半導体関連株に売りが出て、指数を押し下げた。
  ・日銀が金融緩和策を修正した12/19~20開催の金融政策決定会合の「主な意見」を12/28朝に公表。金融緩和について「いずれかのタイミングで検証を行ない、効果と副作用のバランスを判断していくことが必要」との意見があり、市場では日銀が近いうちに緩和策の再修正に踏み切る可能性を指摘する声が聞かれた。
  ・売り一巡後は下げ渋った。割高感のある水準とみた個人投資家などの押し目買いが入った。今日は12月期末の配当権利付き最終売買日にあたり、配当再投資に絡んだ先物買いも支えになった。
  ・東エレク・村田製・Z・エムスリー・住友不・三井不が安く、川重・IHI・関西電が高い。

●2.日本株:米国株にらみとなり弱含みながら、強弱入り交じる展開が続く

 1)日経平均は弱含みながら、底堅い展開となっている
  ・         12/26   12/27   12/28
    日経平均   +170円高 +42円高  ▲107円安
    新高値銘柄数   31     66     64
    新安値銘柄数   71     35     89
  ・新高値と新安値銘柄数が多く、強気・弱気が入り交じる状況で、一方向に傾かないでせめぎ合いの相場展開となっている。

 2)ただし、外国人の先物取引市場での動向は、12/16~28まで売越し継続となっている。このことから、強気一辺倒にはなりにくい環境といえる。

 3)懸念は、日銀の事実上の利上げ第2弾
  ・1~3月の金融政策決定会合に注目。
  ・黒田総裁の任期は来年4/8まで。

●3.固定型住宅ローンを大手銀行が引上げ、日銀の金融政策一部修正で長期金利上昇(朝日新聞)

●4.政府は「中国からの入国規制強化方針」との報道、中国新型コロナ感染急拡大のため(FNN)

●5.企業動向

 1)三菱電機   三菱重工と発電事業を統合へ、合弁会社設立を検討(NHK)
 2)パナソニック 炊飯器の国内生産を2023年6月に中国に移管(共同通信)
 3)塩野義製薬  中国の上海医薬とコロナ薬の流通契約(NNA)
 4)フジッコ   64品目を3/1から最大36%値上げ(読売新聞)
 5)オリエンタルランド 株式の5分割を発表、2023年4月1日付け(日経新聞)

●6.企業業績

 1)高島屋   2023/上期、営業利益+255⇒+285億円に上方修正(フィスコ)
 2)パイロット 2022/12月期、純利益+155⇒+170億円、前期比+19%増に上方修正(日経新聞)

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)

 ・4661 オリエンタルランド 株式5分割
 ・9006 京急    リオープンで業績回復
 ・9843 ニトリ   円高は追い風

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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