相場展望9月7日号 米国株: 原油高と金利上昇が重荷で、株式は割高感が増し続落 日本株: 円安効果で輸出関連株主導の株価上昇⇒過熱感 外国人は先物市場で大量の売り⇒調整局面入り接近?

2023年9月7日 10:10

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/4、祝日「レーバーデー」で休場

【前回は】相場展望9月4日号 米国株: インフレ鈍化と米経済の好調で、米株式市場は堅調 ただ、インフレ再燃の兆しあり 中国株: 中国経済のバブル崩壊を防ぐ政策は「資金供給」

 2)9/5、NYダウ▲195ドル安、34,641ドル(日経新聞より抜粋
  ・主要産油国の減産継続方針を受けて原油相場が上昇し、米国の物価上昇率が再び高まるとの警戒が広がった。米長期金利が上昇し、株式の相対的な割高感が意識されたのも重荷だった。
  ・サウジアラビアは9/5、これまで続けてきた原油の自主減産を年末まで延長すると表明した。原油需給の引締りにつながるとの見方から米原油先物相場は一時88ドル台と昨年11月以来の高値を付けた。原油の価格上昇が続ければインフレ圧力が再び高まり、米連邦準備理事会(FRB)が長期にわたって政策金利を高く維持するとの懸念が広がった。
  ・9/5の米債券市場で長期金利が上昇(債券価格が下落)し、4.2%台後半に達する場面があった。(前営業日の終値は4.18%)
  ・ゴールドマンサックスは9/4付けで米経済が今後12カ月で景気後退入りする確率を従来予想から5ポイント引き下げ15%とした。「浅く、短い」景気減速にとどまると予想する。米景気の底堅さが続くとの見方もFRBの金融引締めが長期化するとの観測を誘った面がある。
  ・朝方は買いが先行し、NYダウは上昇する場面があった。ただ、買いは長く続かず、取引終了にかけて下げ幅を広げた。中国や欧州の景気減速への懸念が、相対的に米国外の売上高が高い景気敏感株を中心に重荷となった面がある。
  ・個別株では、スポーツ用品のナイキや化学のダウ、建機のキャタピラーが下落。ネット通販のアマゾンが下げた。半面、ソフトウェアのマイクロソフトや医療保険のユナイテッドヘルスは上昇。原油高で石油のシェブロンも買われた。中国生産車の販売増が伝わった電気自動車のテスラは+5%高で終え、指数を下支えした。

 3)9/6、NYダウ▲198ドル安、34,443ドル(日経新聞より抜粋
  ・午前発表の米経済指標が景気の底堅さを示す内容で、米長期金利が上昇(債券価格は下落)した。金利の上昇で、相対的な割高感が意識されやすいハイテク株を中心に売られた。足元の原油価格の上昇がインフレや企業収益の悪化につながるとの懸念も引続き株式相場の重荷となった。
  ・午前発表の8月の米サプライマネジメント協会(ISM)の非製造業(サービス業)景況指数は前月比+1.8高い54.5だった。ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想52.5に反し、改善した。個別項目では、雇用や価格が前月から上昇した。米連邦準備理事会(FRB)による金融引締めが長期に及ぶとの見方につながった。
  ・9/6の債券市場では、米長期金利が上昇し、一時前日に比べ+0.04%高い4.30%を付けた。金利の上昇によって、株式の相対的な割高感が強まり、高PER(株価収益率)のハイテク株を中心に売りが出やすかった。
  ・米原油先物相場は9/6の取引で一時、1バレル88.08ドルとおよそ10ヵ月ぶりの高値を付けた。原油高が物価上昇圧力の高まりや企業コスト増につながるとも見方が広がった。NYダウの下げ幅は一時▲300ドルを超える場面があった。
  ・個別株では、スマホのアップルの下げが大きかった。航空機のボーイング、外食のマクドナルド、金融のゴールドマンサックスなどが下落した。半導体のエヌビディアが▲3%安、電気自動車のテスラも下げた。半面、顧客情報管理のセールスフォース、化学のダウが上昇した。

●2.米国株:原油高と金利上昇が重荷となり、株式は相対的割高感が増し続落

 1)NYダウは2日続落
  ・NYダウの推移    9/1     9/6      下落幅  下落率
    NYダウ     34,837ドル  34,443ドル : ▲394ドル ▲1.1%

 2)原油高で、インフレ再燃懸念が高まる
  ・WTI原油価格は、上昇。
    9/1 85.55ドル ⇒ 9/6 87.62 : +2.07ドル上昇・+2.4%上昇
  ・サウジアラビアやロシアの減産延長報道で、原油価格が上昇した。これにより、米国のガソリン価格上昇が予想され、インフレ要因が増。

 3)金利上昇で、株式の相対的割高感が増し続落
  ・米国金利の推移   9/1    9/6
    10年物金利   4.179%  4.298% : +0.119%上昇・+2.8%上昇
    2年物金利    4.879%  5.023% : +0.144%上昇・+2.9%上昇

●3.サウジアラビアは日量100万バレルの減産を年末まで延長、ロシアは30万バレル減 (共同通信)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/4、上海総合+43高、3,177(亜州リサーチより抜粋
  ・前週末の好地合いを継ぐ流れとなった。
  ・当局の景気支援スタンスや、人民元安懸念の後退などが引続き手掛かりとなる。
  ・不動産支援策が相次いだ。北京市、上海市の当局は9/1に、住宅ローン規制の緩和を発表し「認房不認貸」制度の導入を明らかにした。「認房不認貸」とは、過去に住宅ローンを組んでいた場合でも、現時点で自分名義の不動産を持っていなければ、1軒目の住宅ローン頭金比率や優遇金利が適用される制度。広東省の広州市、深圳市などが続く動きとなる。
  ・業種別では、金融が相場を牽引し、不動産もしっかり、エネルギー関連も高い。インフラ関連・素材・消費関連・運輸・ハイテクなども買われた。

 2)9/5、上海総合▲22安、3,154(亜州リサーチより抜粋
  ・投資家の慎重スタンスが再び強まる流れとなった。
  ・新規の買い材料が乏しいなか、指標の下振れが重しとなった。取引時間中に公表された8月の財新中国サービス業PMI(民間)は7月の54.1から51.8に低下し、市場予想53.5を下回った。9/1に発表された財新中国製造PMIが上振れていただけに、投資家の失望を呼んだ。
  ・また、上海総合指数は前日までの上昇で、約3週ぶりの高値水準を回復していたとあって、戻り待ちの売り圧力も意識された。
  ・業種別では、不動産の下げが目立った。不動産業界を巡っては、当局が支援策を相次いで投入。一部地域で物件販売が急回復していると伝わっているが、債務問題は依然くすぶっている。金融も安く、通信も冴えず、インフラ関連・消費関連・素材・運輸・医薬品も売られた。

 3)9/6、上海総合+3高、3,158(亜州リサーチより抜粋
  ・中国当局による景気支援スタンスが相場を支える流れとなった。
  ・巨額債務の問題を抱える不動産業界に対し、支援策が強化されると期待されている。中国政府系メディアの証券日報は9/6付けの論評記事で、不動産購入規制や住宅ローン規制など各都市で実施されている政策は、すでに現状に適していないと指摘。1線級都市以外の地域では、各地の状況に応じてこうした規制を早急に廃止することも可能と伝えている。それより先に、北京市・上海市の当局は9/1、広東省の広州市・深圳市に続き住宅ローン規制の緩和を発表し、「認房不認貸」制度の導入を明らかにしている。「認房不認貸」制度とは、過去に住宅ローンを組んでいた場合でも、現時点で自分名義の不動産を持っていなければ、1軒目の住宅ローン頭金比率や優遇金利が適用される制度だ。
  ・業種別では、不動産の上げが目立った。半導体は産業支援の動きを期待してしっかり。中国政府は新たにファンドを設立し、半導体産業の「自強自立」を支援するなどと報じられた。外電が9/4、消息筋情報として伝えたところによれば、3本目の「国家集成電路産業投資基金(大基金)」は約3,000億人民元(約6兆円)の募集、運用を目指す。調達額は過去2本を上回る規模だ。そのほか、軍事関連・自動車・素材・エネルギー・銀行・保険なども買われた。半面、医薬品は冴えず、運輸・公益も売られた。

●2.JPモルガンは、碧桂園が建設中の全てのプロジェクトを完了させるのに約3,160億元(約6兆3,200億円)が必要と試算(ロイター)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/4、日経平均+228円高、32,939円(日経新聞より抜粋
  ・前週末のNYダウや9/4の香港ハンセン指数などアジア株価指数が堅調に推移したことで、投資家心理が改善し、東京市場でも幅広い銘柄に買いが入った。8/1以来となる約1ヵ月ぶりの高値となる。
  ・東証株価指数(TOPIX)も6日続伸し、バブル経済崩壊後の高値を連日で更新。
  ・9/1発表の8月米雇用統計で失業率が前月から上昇。労働需給の緩和で米連邦準備理事会(FRB)による追加利上げ観測が後退し、週明けの東京市場でも運用リスクをとる動きが先行した。
  ・9/4の東京外国為替市場で円相場が146円台前半まで下落したことも自動車など輸出関連銘柄の買いを誘った。
  ・ただ、上値を追う勢いは乏しかった。日経平均は前週に+1,000円超上昇しており、節目の33,000円が近づくに伴って利益確定売りが上値を抑えた。9/4の米株式市場が休場で市場参加者が限られるため、様子見気分も強かった。
  ・個別銘柄では、ファストリとトヨタが上昇、三菱商と住友不の上げも目立った。一方、ソフトバンクG・テルモ・オリンパス・味の素が売られた。

 2)9/5、日経平均+97円高、33,036円(日経新聞より抜粋
  ・最近の相場上昇を受けて投資心理が強気に傾くなか、大引けにかけて買いが優勢となり、今日の高値で引けた。終値で33,000円を上回るのは8/1以来、およそ1ヵ月ぶり。
  ・東証株価指数(TOPIX)も7日続伸し、連日で1990年7月以来、33年ぶりの高値を付けた。
  ・日経平均の7日続伸は、5月以来の連騰記録となる。9/5の東京外国為替市場では円相場が146円台後半に下落し、輸出採算の改善期待から機械株などが買われた。
  ・心理的節目の33,000円を上回る場面では、短期的な過熱感から利益確定売りが出て、指数は下げる場面も目立った。前日の米株式市場が休場で目立った手掛かりは乏しく、一部の海外投資家による短期目線の先物買いが相場上昇を主導したとの見方が多い。
  ・個別株では、三井E&S・太陽誘電・住友不・東エレク・信越化が上昇した。半面、JFEは大幅安、アドテスト・第一三共も売られた。

 3)9/6、日経平均+204円高、33,241円(日経新聞より抜粋
  ・外国為替市場の円安進行を追い風に輸出企業の業績改善期待が高まった。原油高から石油関連株なども上昇した。8日続伸は5/11~22日以来。
  ・午前に147円台後半まで円安が進み、自動車・電気機器・機械など輸出関連株の買いを後押しした。今週末の株価指数先物・オプション9月物の特別清算指数(SQ)算出に絡んだ思惑的な買いが入ったとの見方もあった。
  ・「円安進行に加え、米景気が想定以上の堅調となり、企業業績の上振れ期待が高まっている」との指摘があった。
  ・個別株では、トヨタ・ホンダなど自動車株が買われた。東エレク・三菱重・第一生命・三井住友FGも高い。半面、アサヒ・郵船・住友林が売られた。

●2.日本株:円安進行で輸出関連株が主導し株価上昇 ⇒ 過熱感発生、短期的な調整局面接近か?懸念材料は、外国人による大量の先物売り続く

 1)日米の10年債金利差が拡大し、円安に⇒円安進行で輸出関連主導の株高
  ・円安の推移   8/18   9/1   9/4    9/5   9/6
   円・ドル  145.25円  145.52  146.19  146.98  147.10
   日経平均 ▲175円安  +91円高 +228   +97   +204

 2)日本株の上昇に比べ、米国株の軟調が目立つ⇒日本株も調整局面入り接近か?
  ・日米株価の推移   8/30    9/6   値動き  値動き率
   NYダウ     34,890ドル 34,443  ▲447下落 ▲1.3%安   
   日経平均     32,333円  33,241  +908高  +2.8%高

 3)テクノカル分析では「過熱感」を示唆
           8/18   9/4   9/5   9/6
   PER      19.15   20.09   20.13  20.24
   騰落レシオ25日 103.47 128.56  123.75  122.75
         6日 66.72 283.15  234.18  209.42
   空売り比率    46.9 38.6   41.1   40.2
   ストキャスト
    RSI      33   59    69    74
    FAST     14   94    96    99
    SLOW     17   90    93    96

 4)外国人は先物市場で大量の売り ⇒ 日経平均の上昇とは逆行の動き
  ・外国人の先物売買推移  9/4    9/5     9/6
   先物売買枚数  ▲16,525売 ▲104,334売 ▲45,420売

 5)日本株は、少数の輸出関連銘柄が牽引して上昇も、全体的には弱気派が増加
  ・値上がり・値下がり銘柄数の推移 8/18  9/1  9/4  9/5  9/6
       値上がり銘柄数     334  1,451 1,422 1,076  965
       値下がり銘柄数     1,448   332  372  671  796
   日経平均(円)        ▲175安 +91高+228  +97 +204

 6)日本株は調整局面入り(反落)が接近と予想

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4385 ラクスル     黒字化。
 ・6289 技研製      業績回復期待。  
 ・7366 LITALICO     業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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