相場展望6月30日号 米国株: インフレ鈍化・利下げ観測で株高も、むしろ暗雲が深まる 日本株: 過熱感を示唆、車関税25%交渉、参院選挙と難局を迎える

2025年6月30日 10:52

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)6/26、NYダウ+404ドル高、43,386ドル
 2)6/27、NYダウ+432ドル高、43,819ドル

【こちらも】相場展望6月26日号 米国株: 中東の地政学リスクやトランプ関税をものともせず、力強く上昇 日本株: 米国ハイテク株の上昇が日経平均を押し上げる

●2.米国株:インフレ鈍化・利下げ観測で株高も、むしろ暗雲が深まる

 1)米国株急伸=インフレ鈍化示す指標と貿易交渉の進展期待、利下げ観測が追い風
  ・トランプ氏、金利▲1%引下げ希望「パウエル議長の辞任は大歓迎」と発言。
  ・ベッセント米国財務長官、関税措置が9月までに多くの国とまとまる見通し。
  ・最近の経済指標で、インフレ再加速への過度な懸念が和らぐ。
  ・米国金利は低下基調にあり、FRBの利下げ期待感が強まってきた。
  ・以上の観点から、米国株式市場は急伸している。多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数は史上最高値を更新。

 2)不透明感が吹き飛んではいない、むしろ暗雲が立ち込めてきた
  (1)関税交渉は行き詰まっている。
   ・今まで妥結できたのは、英国の1カ国だけである。中国からはレアアースの輸出規制を受け、受け身に回っている。重要な隣国であるカナダとの関税交渉は「打ち切り」宣言をした。関税交渉妥結1位といわれたインドとも、難航している。EU(欧州連合)との交渉も、進展がみられない。

  (2)金利低下に歯止めがかかり、上昇に転じる火種がある
   ・トランプ関税による輸入コスト増の本格的な影響が、夏場から出てくる。駆け込み輸入した物品がなくなると、高関税を織り込んだ価格転嫁が本番を迎える。この関税による輸入品の価格上昇が、インフレ急伸を引き起こす。
   ・FRBはインフレ抑制のため、政策金利を引き上げるしかない。最近の金利低下期待は吹き飛ぶ可能性がある。

  (3)トランプ氏の「減税」政策は、米国財政赤字のさらなる膨張を招く
   ・米国議会上院で可決され、下院に回されることになった。下院は与党・共和党が少数だが多数を占めているため、可決される公算が高い。
   ・トランプ氏は、関税で値上がりした分を、減税で補填するという考えだ。しかし、この減税案は、全米国民に恩恵をもたらすわけではない。低所得者増に恩恵のある医療費補助などが打ち切られる案が含まれている。富裕層の優遇策ともいえる。
   ・昨年秋の大統領選挙では低所得者層の票を取り込んで、トランプは勝った。この支持者層がトランプ氏から離反する動きが出るのは、これからだ。来年秋の中間選挙でトランプ与党・共和党が苦戦する可能性が大きい。
   ・米国議会予算局の見解は、トランプ関税で財政赤字が増えると警告を発した。

●3.トランプ氏、カナダとの貿易協議打ち切り表明、新たな関税を警告(ブルームバーグ)

 1)カナダの米国IT企業への「デジタルサービス税」の3%課税に反発。(AFP)

●4.トランプ氏、イラン制裁解除計画を撤回、必要なら再爆撃も検討(ロイター)

 1)ハメネイ師が6/26、「米国に勝利した」と述べたことを受け。

●5.再就職の困難を示唆、米国失業保険継続受給者が2021年11月以来の高水準(ブルームバーグ)

●6.サンフランシスコ連銀総裁、秋に利下げの可能性、関税のインフレ影響が限定的なら(ロイター)

●7.米国リッチモンド総裁、関税措置でインフレ圧力増大の公算、予測は困難(ロイター)


■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)6/26、上海総合▲7安、3,448
 2)6/27、上海総合▲24安、3,424

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)6/26、日経平均+642円高、39,584円
 2)6/27、日経平均+566円高、40,150円

●2.日本株:過熱感が出始めるなか、車関税25%交渉、参院選挙と難局を迎える

 1)夏場枯れ相場に警戒
  ・自社株買いが一服。
   ・株主総会の週以降は、事業会社の自社株買いは一服する傾向がある。そのため、強力な買い筋が買い軟調となるリスクがある。

  ・トランプ関税の一時停止の期限が7/9に迎え、波乱要因となる可能性。

  ・日本・米国関税交渉の行方が不透明感強い。

  ・ただ、参院選挙投票の7/20までは、株式相場は適温状態が続く可能性がある。

 2)日経平均は直近4日間で+1,796円高・+4.68%高と急伸
  (1)日経平均の推移
    6/23  38,354円
    6/27  40,150

  (2)空売り比率が低水準で、株上げを容認し下支え
    6/13  42.8
    6/20  34.3
    6/24  37.4
    6/25  36.2
    6/26  34.8
    6/27  36.1

  (3)6月末で四半期決算を迎える機関投資家の運用成績をよくしたいとの思惑から、「お化粧買い」の株買いが入った面もある。この点は、7月に入って売りに出る懸念がある。

 3)テクニカル分析は、「過熱感」を示唆
  (1)騰落レシオは上昇し警戒を示す
   ・騰落レシオの推移
          25日    6日
     6/25  110.01   98.16
     6/27  118.79   126.96

  (2)ストキャスティクスは、株価が高値警戒水準にあることを示す
   ・ストキャスティクスの6/27の水準
     FAST  96
     SLOW  90

  (3)移動平均線の乖離率が5%超えで過熱感を示す
   ・移動平均線の乖離率は6/27に5%近辺まで上昇
     25日移動平均線との乖離率  4.94%
     200日移動平均線の乖離率   5.80%

 4)参院選挙で自民党・公明党の与党の負け方に注目
  ・小泉・農水省の米対策で、自民党支持が持ち直す動きがある。しかし、石破政権の「バラマキ」政策が継続している。このため、小泉・効果に天井感が出始めている感がある。
  ・トランプ関税の閣僚級協議は、参院選挙後の妥結を目論んでいたようだ。だが、トランプ氏の「車の関税は25%のままで、交渉は終わりの手紙を送る」との発言があった。国民の石破政権への見切りとなる可能性が出てくる可能性がある。参院選挙の結果を受けた、株式市場の反応に注目したい。


●3.トランプ氏、「親愛なる日本様、車の関税は25%。貿易協定終わりと手紙送る」(読売新聞)

 1)トランプ氏は、25%の追加関税を見直さない可能性を示唆。
 2)日本との自動車貿易について「不公平だ」と改めて不満を表明した。
 3)日本政府は特に自動車関税の引下げを優先させて交渉した。赤沢・経済再生相は7回の閣僚級協議のため訪米していたが、双方の溝は埋まらなかったとみられる。

●4.日産の追浜工場、7~8月に大幅減産、稼働率2割へ、「ノート」販売不振で(読売新聞)

●5.今治造船、ジャパンマリンユナイテッドを子会社化へ(NHK)

●6.カーナビ大手・パイオニア、台湾自動車部品メーカーの傘下に(NHK)


■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2685 アダストリア     業績好調
 ・3288 オープンハウス    業績順調
 ・9508 九州電力       業績回復期待

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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