相場展望10月2日号 米国株: 政府機関の一部閉鎖と、株式市場・金相場との関係 日本株: 信用取引残高が減少⇒買い方が売り転換、買いエネルギー減

2025年10月2日 14:36

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/29、NYダウ+68ドル高、46,316ドル
 2)9/30、NYダウ+81ドル安、46,397ドル
 3)10/1、NYダ+43ドル高、46,441ドル

【前回は】相場展望9月29日号 米国株: FRB政策金利低下も、市場金利は上昇⇒株高意識に注目 日本株: 自民党総裁選とその後に、小泉・混乱要因が浮上

●2.米国株 : 政府機関の一部閉鎖と、株式市場と金相場との関係

 1)NYダウは、FRBによる10月金利低下観測で、10/1に最高値を更新
  ・日経平均は9/25に史上最高値を更新したが、翌日からは4日続落し▲1,204円下落した。その間、NYダウは+494ドル高して最高値を更新した。
  ・NYダウの上昇要因は、10月FRB会合で利下のげ期待感の高まり。

 2)懸念要因
  ・米国政府機関の一部閉鎖のリスク
   ・連邦政府の一部閉鎖で、政府職員の一時帰休者は75万人とされる。報酬は1日当たり▲4億ドル減額と政府支出は削減できるが、その分、消費支出が減少することになる。米国経済にとって、マイナス要因となる。

   ・トランプ大統領は、政府機関の閉鎖をテコにして、政府職員の削減を実施しようとしているとの報道がある。今年1月の大統領就任直後から、マスク氏が主導して米国政府職員の削減や歳出カットを実行してきた。マスク氏が政府から去って、トランプ氏が直接人員削減に手を付けようとしている。米国の機能低下による損失が人件費減を上回り、米国の影響力低下と中国・ロシアなど敵対諸国とのパワーバランスが崩れ、世界秩序が大きく変化するリスクが出てきた。

   ・国連はニューヨークに立地しているが、米国政府がビザを発行しないため、国連関係者であっても国連に出席できないという事態が生じている。国連がジュネーブやケニア、北京などに移転することさえあり得る状況に追い込まれている。そうなれば、ますます米国の孤立化が進み、米国の国際世界でのパワーが減退することになろう。

   ・トランプ氏は短期的なものの見方で、状況変化でコロコロ変わるのが特徴である。もっと、懐を深く・広くして、長期的な視点で熟慮・実行することが望まれる。

  ・雇用統計
   ・民間のADPリサーチ社が発表する全米雇用統計が発表された。事前予想に比べ、雇用状況の悪さが目立つ内容であった。
   ・このADP全米雇用データが、米国FRBの10月会合で使われる。本来、労働省発表の雇用状況のデータが使われることになってきた。
   ・ADPのデータは、労働省データに比べ粗さが目立っている。そのため、10月FRBのFOMCでの利下げ検討の精度が気になるところ。
   ・政府機関閉鎖による心配事が早くも出始めた。

 3)政府機関の一部閉鎖と、株式市場・金相場との関係
  (1)株式市場との関係
   ・トランプI期目の政府機関閉鎖は2回あったが、1回目が株式相場が天井のサインとなった。
   ・トランプII期目の政府機関閉鎖で米国株式市場はどのような反応を示すのか?
   ・とりあえず、10/1はADP全米雇用統計の後退データを受けて、FRBが10月会合で金利低下観測が高まり、米国株は上昇しNYダウは最高値を更新した。
   ・10/1の米国株の上昇をもって、政府機関閉鎖の影響を軽く見ない方がよいと思われる。

  (2)金相場との関係
   ・金相場の推移
      9/02  3,592ドル
      9/25  3,771
      10/1  3,897

   ・金相場が急騰している要因は、
     ・インフレからの逃避。
     ・米国株の最高値更新からの下落警戒。
     ・ドル資産からの逃避。
     ・各国政府によるドル⇒金保有の促進。

   ・特に、トランプ政権の不透明感が金保有に勢い付かせている。
     ・トランプ政権が指向しているのは「ドル安」政策である。


●3.米国8月求人件数は722.7万人とほぼ変わらず、採用は抑制、労働需要緩やかに減退示唆

 1)求人件数は722.7万人、市場予想は720万件。(ブルームバーグ)
 2)雇用主が採用を抑制し、失業者が新たな職を見つけるのに時間を要している。

●4.トランプ氏、映画・家具への新たな関税を予告、自国産業を支援と主張(ブルームバーグ)

 1)米国外で制作された映画に関税100%、家具に高関税を賦課する意向。
 2)詳細は不明、トランプ氏の関税政策への不透明感が増すのは確実。

●5.バフェット指数は217%、驚異的な水準(ロイター)

 1)バフェット氏指数が「火遊び」水準を超え、市場熱狂の限界を試すとの懸念。米国CNBCは9/28、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が好んで用いた指数が史上最高値に達し、投資家が市場の熱狂を試しているとの懸念が再燃したと報じた。

 2)上場株式の時価総額と名目国内総生産(GDP)で算出するバフェット指数は217%という驚異的な水準に上昇した。バフェット氏が「火遊び」と呼んだドットコム・バブル期のピーク水準やパンデミック(疾病の世界的流行)時を大幅に上回ったとしている。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/29、上海総合+34高、3,862
 2)9/30、上海総合+20高、3,882
 3)10/1、祝日「国慶節・中秋節」のため休場(10/1~8)

●2.中国9月の製造業景況感指数は49.8、6ヵ月連続で節目の50を下回る(NHK)

 1)国内需要の停滞や、米国トランプ政権による関税措置を背景に新規の受注が伸び悩んだことが主な要因で、景気の先行きに不透明感が広がっている。
 2)一方、サービス業など非製造業指数は、デフレへの懸念が広がる中、販売価格が下落したことから、前月から▲0.3低下し、50.0となった。

●3.中国共産党、「四中全会」を10/20~23に開催、5カ年計画などを議論(NHK)

 1)共産党の「四中全会」は、5年に1度の党大会で選出される「中央委員会」が開く4回目の全体会議、2026年から2030年までの経済政策の方針を示す「5カ年計画」が主要な議題になる。
 2)中国では長引く不動産不況などを背景に景気が減速しており、米国のトランプ政権との間で貿易摩擦や先端技術などを巡る対立が長期化すると予想される中、どのような方針を示すのかが焦点となる。
 3)このほか、会議では党の幹部人事も議論される可能性がある。

●4.中国は友好国の中央銀行のゴールド保管庫になることを望んでいる(ブルームバーグ)

 1)中国は金地金市場における自国の役割強化の一環として、上海にゴールドを保管するように各国の中央銀行に働きかけている。中国は世界のゴールド市場における影響力の拡大を図っている。

 2)ゴールド(金)の現物価格は、中央銀行からの需要が勢いを増し、先週、1オンス当たり3,785ドル付近で過去最高値を更新した。アナリストはこの動きを「脱ドル化」と関連付けている。
  ・ゴールド価格は、年初来で+43.59%上昇した。これはビットコインの+17%上昇、S&P500種株価指数の+12.96%上昇、ナスダック総合指数の+16.43%上昇を大きく上回る。
  ・アナリストは、インフレ傾向と米国債の代替となる資産への需要増を理由に、ゴールドの上昇基調が継続すると予想している。投資家がドルの代替手段としてゴールドにますます注目している。

 3)中国国内のゴールド市場はすでに世界最大規模だが、世界の準備金保管の中心地は依然としてロンドンだと指摘している。ロンドンの金庫には、世界に金準備の5,000トン以上が保管されている。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/29、日経平均▲311円安、45,043円 
 2)9/30、日経平均▲111円安、44,932円 
 3)10/1、日経平均▲381円安、44,550円 

●2.日本株 : 信用取引残高が減少⇒買い方が売り転換、買いエネルギーが低下傾向

 1)信用取引残高が減少⇒買い方が売り転換
  ・信用取引残高の推移
     9/05  3兆2,759億円
     9/12  3兆0,609
     9/19  3兆0,662
     9/26  2兆6,963

  ・信用取引残高を見ると、株式市場から信用取引のメンバーが去っている、あるいは投資を引上げている状況が見て取れる。

  ・つまり、信用取引のメンバーは警戒感を膨らませている状況にある。

 2)新高値銘柄数が減少は、相場のエネルギー低下を示唆
  ・新高値銘柄数などの推移
              9/26  10/1
     新高値銘柄数   220   12
     新安値銘柄数    4   23
     値上がり銘柄数  1,197   124
     値下がり銘柄数  376   1,480

  ・新高値銘柄数の大幅減少が、買い手が引っ込んだことを示す。かといって、安値を売り叩く現象にまでは至っていない。つまり、高値恐怖が出てきたが、恐怖感には至らずの状態にある。

 3)現在は、先行き不透明感が重なり、見送りムードが強まった状況にある
  ・不透明感の要因
    ・米国政府の一部閉鎖リスク。
    ・米国雇用統計。
      民間統計のADP全雇用統計のみで、労働省発表の雇用統計公表待ち。
    ・自民党総裁選挙
      絶対優位の小泉氏に負の案件が湧き上がり事象、林氏の追い上げ。
      秋の値上げラッシュで、多くの庶民からの悲鳴に応えられるか?
    ・日銀10月利上げ観測が強まる。
    ・円相場は「円高」へと進展。
  ・ただし、株式相場では、押し目買いが入っている
    ・まだ、株式相場は堅調さの中で、揺れている状況にある。よって、値がさのハイテク関連に買い戻しが入っている。
       例:ソフトバンクG
         東京エレクトロン
         アドバンテスト
         ディスコ
         ファーストリテイリングなど

●3.10月の飲食料品値上げ、3024品目・値上げ率平均17%、半年ぶり値上げラッシュ

 1)年間では21,000品目前後の値上げ。(帝国データバンク)

 2)実質賃金の伸び悩みも背景に、消費者の理解を得られるかは依然として不透明。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・5929 三和      業績回復期待
 ・6752 パナソニック  業績回復期待
 ・8316 三井住友FG   業績好調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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