相場展望9月11日号 米国株: 9/17の「利下げ決定」、トランプ関税の最高裁判決に注目 日本株: 国民の石破氏への期待は「泡」となって消えた

2025年9月11日 14:45

印刷

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/08、NYダウ+114ドル高、45,514ドル
 2)9/09、NYダウ+196ドル高、45,711ドル
 3)9/10、NYダウ▲220ドル安、45,490ドル

【前回は】相場展望9月8日号 米国株: 景気後退と物価上昇のスタグフレーションへの懸念が深化 日本株: 海外投資家は10兆円の買い越しで満腹⇒売り転換に注意

●2.米国株 : FOMC9/17の「利下げ決定」、トランプ関税の最高裁判決に注目

 1)次回FOMCは9/16~17開催で「利下げ決定」
  (1)雇用減速で利下げはほぼ確実になった。
  (2)利下げ幅の予想と、株価への影響を想定
   ・▲0.25%利下げなら、小幅利下げで失望売り
   ・▲0.50%利下げなら、中立。
   ・▲0.75%利下げ : 期待平均を上回る利下げで、株価には追い風、  
  (3)次の焦点は、年内の追加利下げ。

 2)トランプ関税の訴訟で「最高裁の判決」に注目
  (1)地裁、高裁と、トランプ関税を否決した。
   ・否決理由は、関税の決定権限は議会にあり、大統領ではない。
  (2)トランプ政権は、最高裁に上訴した。
   ・最高裁の判決は10/4までと予想。

●3.米国8月生産者物価指数(PPI)は前月比▲0.1%安と予想外に鈍化、ドル売り加速(ロイター)

 1)前年比では+2.6%高と、7月の+3.1%からの加速予想に反して鈍化し、6月来で最低となった。ガソリンや野菜の値段が下落したことが全体指数を押し下げた。
 2)予想外のインフレ鈍化で9月連邦公開市場委員会(FOMC)で▲0.75%の利下げ観測も浮上した。10年債利回りは4.09%から4.06%まで低下した。ドル売りも加速した。

●4.米国雇用悪化で史上最大の下方修正! JPモルガンCEOが警鐘「米国経済は既に弱体化」

 1)米国労働省は、昨年4月から今年3月までの12カ月間の非農業部門の新規雇用者数を91.1万人に下方修正した。180万人の新規雇用を創出したとされていた。月平均の新規雇用は7万人程度になり、従来の14.7万人から半減した。
 2)ダイモンCEOは、「多くの消費者はまだ仕事を持ち、収入に見合った支出を続けているが、消費者の自信は既に揺らぎ始めている」と懸念を表明した。ただ、企業の純利益は依然として好調であると述べた。(ブルームバーグ)

●5.FRB9月利下げはほぼ確実、雇用減速で年内3回の観測高まる(ロイター)

 1)今年3月までの1年間の雇用創出が従来の推計より▲91.1万人少なかったことが判明した。
 2)今年3月までの雇用増加数は月平均での14.7万人の半分以下だった可能性があり、トランプ米国大統領が4月に大規模関税措置を発表する前から雇用の伸びが既に鈍化していたことが示唆された。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/08、上海総合+14高、3,826
 2)9/09、上海総合▲19安、3,807
 3)9/10、上海総合+4高、3,812

●2.中国8月消費者物価指数は前年同月比で▲0.4%下落、デフレ懸念が続く(NHK)

 1)下落の要因は、
  ・生鮮野菜や豚肉の価格が下がった。
  ・消費者の節約志向を背景に、自動車などが値下がりしたためで、デフレへの懸念が続いている。

 2)企業が製品を出荷する際の値動きを示す8月の生産者物価指数は前年同月比で▲2.9%の下落となった。

 3)中国政府は、内需の拡大を最優先課題に掲げ、効果的な消費刺激策などを打ち出すことができるかが焦点となる。

●3.中国8月貿易統計、米国向け輸出額は▲33.1%減、対米国黒字額は▲39.9%減(読売新聞)

 1)前年同月比を下回るのは5カ月連続で、減少幅は前月より拡大した。
 2)米国向け以外の輸出額は、東南アジア諸国連合(ASEAN)向けが+22.5%増の571億ドル、欧州連合(EU)向けは+10.4%増の516億ドルとなった。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/08、日経平均+625円高、43,643円
 2)9/09、日経平均▲184円安、43,459円
 3)9/10、日経平均+378円高、43,837円

●2.日本株:国民の石破氏への期待は「泡」となって消えた

 1)PER(株価収益率)は「18倍」に接近、
  (1)9/9、PER(株価収益率)は未踏の「18倍」、日経平均は一時44,000円台乗せ。なお、9/9PERの終値は後場に売り込まれたため17.85倍。前日9/8は日経平均が+625円と急騰したため、PERは17.96倍に上昇。9/11にも、「18倍」台乗せもありえる。
  (2)株価上昇の理由
   ・新政権への期待感。
   ・海外短期筋の株価先物を使った買い上がり。
   ・今まで売り方であった筋による、買い戻し。
  (3)先物清算日(SQ)は9/12、それまでは日経平均は高いと予想。
  (4)目先の天井の予想
   ・公示日  9/22前後 : 総裁が事実上確定。
    総裁選  10/4前後 : 総裁選で確定。

 2)自民党の支持率回復期待は望み薄
  (1)フジテレビ9/7の「Mr.サンデー」視聴者アンケート(デイリー)
   ・新総裁に代わる自民党に期待できるか?
      期待できる    7%
      期待できない   93%
   ・衆院を早期に解散すべきか?
      解散すべき     73%
      解散すべきではない 27%
   ・自民党による参院選挙敗北に対する総括は「出直し的解党」。使い古された「出直し的解党」でしかなく、選挙敗北の真の理由と責任者に触れず。責任者隠しの反省に終始した。

  (2)石破首相支持の高さに疑念
   ・支持39%:不支持42%  ⇒    39%を分解すると
      自民党支持層で65%(与党支持層62%)⇒ 18.1%(19.2%)
      野党支持層で27%          ⇒  9.2
      無党派支持層32%          ⇒ 11.1
   ・石破支持39%の内訳は、与党19%・野党・無党派20%程度と、与党からの支持より野党・無党派からの支持が多くなっている。だが、選挙となると野党からの投票は期待できない。無党派層からの選挙投票も目減りするだろう。選挙の投票に結び付かない同情票で39%と高くなっているだけ。したがって、石破支持が39%と高いが、「誇れるものではない」。

  (3)政党支持率から見えるのは、国民からの「自民党与党への嫌悪感」
   ・政党支持率(9月)
      自民党   27.9%
      参政党    6.3
      国民民主党  5.7
      立憲民主党  5.0
      日本維新の会 3.6
      公明党    3.1
      共産党    2.9
   ・選挙ベースで考慮すると、石破支持率は19%+アルファが実体であり、自民党支持率27.9%以下というのが実際とみる。つまり、自民党からの「いじめ」に対する野党・無党派から一時的な同情で支持が集まった結果の39%ではないか。それだけ、裏金などに対する自民党に対する嫌悪が強いようだ。

  (4)自民党の年代別支持率から見えるもの
   ・年代別支持:18~39歳 14%
          40歳台  20%
          50歳台  31%
          60歳台  39%
          70歳台  55%
          80歳以上 61%

   ・問題点は、若い層ほど自民党の支持率が低いこと。いかに自民党が高年齢層の支持に依存しているかを表している。つまり、自民党の政策は高齢者寄りになっているかを証明している。自民党は家計に苦しむ現役世代に向いた政策を実施してこなかった。
    ・租税負担率は社会保険料費・ガソリン税・消費税を含むと5割をはるかに超えており、重税となっている。
    ・物価上昇に何の対策も打っていない。むしろ、輸入に大きく依存した食料・原油代は「円安」効果で高騰している。

   ・実質賃金は岸田政権時代から3年以上にわたってマイナスが続いている。

   ・政府の歳出は「利権化」して、それが膨張し、硬直化している。

   ・このような状況のもと、高齢者は年次を追うごとに減少するため、自民党の衰退は避けられない。昨年11月の衆議院選挙、今年7月の参議院選挙での自民党の退潮が際立ったが、たまたまの現象ではなく、自民党の政策の積み重ねの結果である。これは、野党・立憲民主党や社民党、共産党にも同じことが当てはまる。

  (5)石破首相が唱えた「楽しい日本」というフレーズは、堺屋太一の「三度目の日本」のなかの言葉を借用もので、自分の言葉ではない
   ・一度目の敗戦:江戸末期の幕藩体制の崩壊⇒富国強兵で「強い日本」
    二度目の敗戦:第二次世界大戦での敗戦⇒経済成長で「豊かな日本」
    三度目の敗戦:東京五輪後の国民の意欲喪失で敗戦⇒地方分権化で「楽しい日本」
   ・石破首相は「楽しい日本」を築くと言ったが、何が「楽しい」のか説明もなく、さっぱりわからなかった。安倍・元首相がよく使った「美しい日本」をもじったものとも言える。要するに、石破首相の「楽しい日本」は、彼の頭から浸み出た言葉ではないということ。これでは、国民の心には響かない。

  (6)参院選挙で少数与党となった石破首相は、新たに野党との連携を模索せず
   ・昨年の臨時国会で補正予算が承認されたのは、国民民主党の要求を受け入れたからだ。

   ・今年の国会で2025年度予算が通過したのは、維新の協力があったからだ。それぞれ、国民・維新の協力を得られたのは、彼らの要求を受け入れたからである。

   ・ところが、その後、国民民主党の要求「103万円の壁撤廃」を、「財源論」を盾にして、にべもなく断った。「ガソリンの暫定税率の廃止」も同じ扱いをした。予算を成立するためなら甘言を弄して協力を得るが、成立したら約束破りをする体質をあらわにした。森山幹事長を諫めて、法案成立の前提条件となる約束の実行を指示するべきだったが、石破首相は「約束破り」を承認した。

   ・日本維新の会も、石破内閣との連立論を打ち消した。

   ・立憲民主党も「国民からNOと意思表示された自民党とは組む必要はない」と大連立を否定した。

   ・石破首相は参院選挙の敗北・衆院選の敗北で、自民党は野党の協力なしに政治を前に進められない状況に陥った。しかし、その現実を石破首相は、理解できていない。

   ・選挙の敗北の結果、野党との連立・部分連合を即座に模索するべきだったが石破首相は「ぼんやり」と「無為」に時を過ごしてしまった。衆議院・参議院ともに自民党与党は少数与党に成り下がった。野党との協力なしに法案を通す力がなくなってしまったという現実がある。参院選挙大敗で、与党は野党との新たな協力体制を築く必要があった。石破首相は「参院選挙後、約50日間」経つが何をしていたのだろうか。

  (7)国民は、自民党内の党内野党が長かった石破氏の首相就任に高い期待をした
   ・多くの国民は、今までの自民党ではやらなかったことを改革してくれると期待した。
   ・ところが、自民党総裁になったとたん、総裁選での公約をほとんど消去してしまった。理由は「自民党は幅広い層があり、自分の意見を通すのははばかれる」ということだった。昨年の自民党総裁選挙で掲げた石破・公約は「絵空事」だったことが判明した。
   ・国民が期待した「物価上昇に対する抑制」は、何一つしていない。
   ・国民の石破氏への期待は「泡」となって消えた。

  (8)自民党に求められるのは「まったく新しい自民党」
   ・参議院選挙の総括は、形ばかりであるが総括した。だが、昨年の衆院選挙の総括は、頬かむりしたままである。これでは、「解党的出直し」と言っても、今までの自民党が続くことになる。
   ・人口減少の高齢対策だけでは選挙に勝てない。物価高でエンゲル係数が高く家計を苦しめられている現役・若者に向いた政策を実行できる自民党に生まれ変わる必要がある。それが実現できなければ、自民党は高齢化したとして介護施設に入ってもらうしかない。

●3.アドバンテストの時価総額は初の10兆円突破、東エレクを約20年ぶり逆転(ブルームバーグ)

 1)アドバンテストの時価総額は9/10終値で10兆556億円と、東エレクの9兆9,750億円を逆転した。アドバンテストは年初来+43%高と、東京エレクの▲13%安を圧倒した。

●4.三井ハイテク、今期純利益▲43%減の+70億円に下方修正(moneyworld)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願い押します)

 ・6856 堀場製作所    業績堅調
 ・7309 シマノ      業績回復期待
 ・8088 岩谷産業     業績堅調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

記事の先頭に戻る

関連キーワード

関連記事