相場展望9月8日号 米国株: 景気後退と物価上昇のスタグフレーションへの懸念が深化 日本株: 海外投資家は10兆円の買い越しで満腹⇒売り転換に注意

2025年9月8日 10:35

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/4、NYダウ+350ドル高、45,621ドル
 2)9/5、NYダウ▲220ドル安、45,400ドル

【前回は】相場展望9月4日号 米国株: トランプ事案が最高裁へ、不透明感強まり米国株安へ 日本株: 海外短期筋が、朝方だが売り始めたため、慎重に

●2.米国株 : 景気後退と物価上昇のスタグフレーションへの懸念が深化

 1)米国8月労働市場は本格的な悪化局面入りの懸念深まる
  ・米国雇用者数は+2.2万人増にとどまる。予想は+7.5万人増、前7月は+7.9万人増。雇用減少は、金融・製造業・政府・ビジネスサービス。雇用増は、医療・娯楽・ホスピタルティー。雇用者数が10万人を下回るのは4カ月連続で、コロナ禍以降で最も弱い雇用の伸びが続いている。
  ・失業率は4.3%と2021年以来の高水準。前7月は4.2%、市場予想は4.3%。レイオフはやや加速している。黒人の失業率が上昇が続き、約4年ぶりの高水準となった。

 2)8月雇用統計を受け、米国債利回りは低下
  ・米国債利回りの推移
          2年国債  10年国債  30年国債 
     9/2    3.639%   4.261    4.975
     9/5    3.509    4.073    4.760
     差異  ▲0.130%  ▲0.188%  ▲0.215%

  ・8月雇用統計を背景に、FRBは9/16~17のFOMCで「利下げ」決定が濃厚。

  ・FOMC会合前の8月消費者物価指数(CPI)の発表を注視。
   ・軟調な雇用統計の減速が鮮明となり、▲0.25%の利下げが確実視される。

 3)米国、景気後退と物価上昇のスタグフレーションへの懸念が深化
  ・景気後退で金利低下⇒景気刺激⇒物価高へのシナリオが濃くなっている。

  ・連邦公開市場委員会(FOMC)で9/17、▲0.25%の利下げは確実視。FRB高官の最近の発言を見ると、利下げは確実。株式市場では、▲0.50%や▲0.75%下げ観測があるが、期待にすぎない。むしろ、利下げが大きくなればなるほど、インフレ抑制のための金利引上げの恐れが高まる。

  ・雇用者数が急低下して、労働市場の悪化が懸念されてきた。トランプ政権は、雇用者数の減少を材料にFRBに金利低下を迫っている。
 
  ・しかし、トランプ政権による移民取締り強化の結果、逮捕を恐れた労働者が求人に応募してこなくなったため、雇用者数が減少している可能性がある。そうだとすると、「金利引下げ⇒景気浮揚⇒物価高」に向かう可能性が増す。最もリスクの高い「スタグフレーション(景気後退+物価高)」となる可能性が高まる。

  ・なお、9/4発表された米国サプライマネジメント協会(ISM)の非製造業(サービス業)景況感指数は8月で52.0と、7月の50.1から上昇した。これは、米国景気が底堅さを保っているという見方ができる。この観点からも、FRBは「利下げ」は慎重に対処した方が良いと思われる。

 4)NYダウ・半導体指数・ナスダック総合が、チャートでは勢いが衰える様相示す
  ・株価指数をチャートで見ると、株価上昇の勢いが鈍化している。米国株の上昇を牽引してきた半導体株指数(SOX)は明らかに天井を打った可能性を示唆している。NYダウ・ナスダック総合も、同様である。

  ・株価上昇点火には、新たな買い材料・新たな主役の登場が待たれる。

 5)株式相場は「慎重なスタンス」が求められる
  ・「金利低下」は、「株価に割安感」が出るため、株価指数のチャートは勢いが増して株高となるのが定番である。

  ・しかし、国債利回りの低下にもかかわらす「株価の勢いが減速」している。

  ・もしかしたら、株式市場は「スタグフレーション」を警戒し始めたかもしれない。

●3.EU、グーグルに約5,100億円の独占禁止法の制裁金を科す、「公正な競争の妨げた」(NHK)

 1)トランプ大統領は不当な罰金だと、通商法301条の開始手続きをすると述べた。

●4.雇用激減するメキシコの北部国境の町、トランプ関税が追打ち(ロイター)

●5.米国8月サービス業PMIは54.5、予想66.4を下回る(フィスコ)

●6.米国8月ADP民間雇用者数5.4万件増、予想6.8万人を下回る、需要減を示唆(ブルームバーグ)

●7.米国失業保険申請件数、6月以来の高水準に増加、労働市場の減速映す(ブルームバーグ)

 1)申請件数は23.7万件、予想23万件を下回る。

●8.米国7月貿易赤字+32.5%増、2カ月ぶり拡大(共同通信)

 1)米国商務省が9/4発表した、7月のモノとサービスを合わせた国際収支の貿易赤字は前月比32.5%増の783億ドル(約11.6兆円)だった。輸出は+0.3%増の2,804.6億ドル、輸入は+5.9%増の3,587.7億ドルだった。

●9.日本・EUなどとの貿易協定「解消」も、関税裁判敗訴なら=トランプ氏(ロイター)

●10.FRB地区連銀、米国経済の停滞を浮き彫り、ほぼゼロ成長(ブルームバーグ)

 1)物価はすべての地区連銀で上昇し、多くの世帯にとって、賃金が物価上昇ペースに追いついていない。
 2)特に、物価上昇には関税の影響が著しいと報告する地区が多かった。
 3)次回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合は9/16~17に開催される。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/4、上海総合▲47安、3,765
 2)9/5、上海総合+46高、3,812

●2.中国BYD、年間販売目標を550⇒460万台に引下げ=関係者(ロイター)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/4、日経平均+641円高、42,580円
 2)9/5、日経平均+438円高、43,018円

●2.日本株:海外投資家は10兆円の買い越しで満腹⇒売り転換に注意

 1)海外投資家は「買い残高が4月から+10兆円買い越し」して満腹
  ・海外投資家の買い状況
    現物株 +6兆5,188億円  : 4月1週~8月3週までの期間
    先物  +3兆5,390    : 4月2週~8月3週までの期間
    合計  +10兆0,578億円

 2)海外投資家は売りに転換を模索する可能性が高まる
  ・8月3週は現物株を▲1,989億円売り転換、先物は買い越が続く。
  ・8月4週に現物株・先物ともに売り
    現物  ▲3,032億円
    先物  ▲3,333
    合計  ▲6,365億円売り

 3)最近の海外投資家の「先物」は「前場の買い⇒後場は売り」とスタンスを変化
  ・ただし、米国株の状況を見ながらの売買のため、9/5は海外短期筋の先物は「前場・後場」ともに買い越したもよう。

 4)日経平均はNYダウと比べて「割安」とは言えない
  ・日経平均・NYダウの推移
         日経平均    NYダウ
     8/29  42,718円   45,544ドル
     9/05  43,018    45,400
     差異  + 300円高  ▲ 144ドル安

  ・過去の日経平均株価とNYダウを比較すると、日経平均の方が強い動き。そのため、日経平均の強さが目立つ展開となっている。その要因に、海外投資家と自社株買いが挙げられる。
    ・海外投資家による+10兆0,578億円もの買い。(4月1週~8月3週の期間)
    ・企業の自社株買い+7兆6,332億円。     (1月1週~8月4週の期間)

  ・企業の自社株買いは継続すると思われるが、海外投資家の売り圧迫に注意したい。

 5)日経平均・米国株ともに、チャートから上昇の勢いに減速が見られる⇒注意
  ・チャートからは株価上昇の勢いの鈍りが見られる。
  ・この状況のもとでの、海外投資家の売りスタンスへの変化に注目したい。

●3.ニデックが9/4一時ストップ安、経営陣認識の下で不適切会計の疑い(ブルームバーグ)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6869 シスメックス   業績堅調
 ・8053 住友商事     業績堅調
 ・9843 ニトリ      業績好調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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