相場展望12月11日号 米国株: 金利引下げで次期FRB議長人事が焦点、物価上昇の懸念増す 日本株: 海外短期筋のパワーに変調、日経平均の流れに変化か?

2025年12月11日 14:08

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)12/08、NYダウ▲215ドル安、47,739ドル
 2)12/09、NYダウ▲179ドル安、47,560ドル
 3)12/10、NYダウ+497ドル高、48,057ドル

【前回は】相場展望12月8日号 米国株: 米国株のリーダー銘柄は、ピークを付けたもしれない 2026年株式相場は、年央まで「追加利下げで追い風」、その後は「逆風」か 日本株: 日経平均寄与上位銘柄中心から広がる展開か、注目

●2.米国株:政策金利引下げで次期FRB議長人事が焦点、インフレ再加速の懸念増す

 1)12/10、FRBは政策金利を▲0.25%引下げ⇒NYダウは48,000ドル台を回復
  ・12/10のNYダウは+497ドル上昇し、48,057ドルで終えた。

 2)NYダウは11/12の最高値に接近
  ・NYダウの推移
    11/12  48,254ドル
    11/20  45,752 ・・11/12比で▲2,502ドル安・▲5.18%安
    12/10  48,057 ・・11/20比で +2,305ドル高・ +5.03%高

  ・NYダウは11/12最高値を付けた後、高値警戒感から▲2,502ドル下落した。しかし、FRBによる政策金利低下への期待が高まり、12/10までで+2,305ドルの値戻しをした。
  ・12/10、FRBは利下げ決定したことで、次の焦点は来年以降の政策金利の動向に移ることになる。

 3)次期FRB議長の人事
  ・パウエルFRB議長の任期は来年5月で満了する。トランプ大統領は自分の要求に従わないパウエル議長を再任しない方針だ。
  ・今後、次期FRB議長の人事に焦点が移ることになる。有力者は、トランプ大統領の政策に忠実なミランNEC委員長兼FRB理事だ。

 4)2026年以降も利下げが確実
  ・12/10の政策金利決定において、ミラン理事は▲0.50%の引下げを主張した。トランプ氏の要求も▲0.50%引下げであった。
  ・12/10でのミラン理事の動きから、FRBは来年も政策金利を引下げると見られる。引下げ幅も従来の▲0.25%引下げを大幅に上回るだろう。

 5)利下げで、しのびよる物価上昇(インフレ)の再加速
  ・トランプ大統領のFRBへの利下げ要求は、トランプ政策の失敗を糊塗するものだったと思われる。それが、雇用減に現われた。そのため、米国景気への刺激を与えるために金利低下要求をしたものと推測する。
  ・今回の政策金利低下決定に際して、政府機関の一部閉鎖で十分なデータを基に決めたものではない。パウエル議長は、トランプ大統領との妥協を図って金利低下に軸足を移した可能性がある。なお、3人の理事が利下げ反対し、従来の政策決定に比べて異例だった。
  ・金利の断続的な低下が続くと見込まれる。結果、米国景気に強い刺激を与えるため、物価上昇(インフレ)の再加速は避けられないと思われる。トランプ2期の後半は、インフレとの闘いに悩まされることになる。
  ・米国株式市場は難問を抱えることになるだろう。

●3.FRB、政策金利を▲0.25%引下げ、3会合連続、雇用減速に対応(毎日新聞)

 1)米国連邦準備理事会(FRB)は12/10の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を▲0.25%引下げ、3.5~3.75%とすることを決めた。利下げは3会合連続。物価上昇(インフレ)懸念は根強いが、足元で目立つ雇用市場の減速への対応を優先させた。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)12/08、上海総合+21高、3,924
 2)12/09、上海総合▲14安、3,909
 3)12/10、上海総合▲9安、3,900

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)12/08、日経平均+90円高、50,581円
 2)12/09、日経平均+73円高、50,655円
 3)12/10、日経平均▲52円安、50,602円

●2.日本株:海外短期筋のパワーに変調、日経平均の流れに変化か?

 1)日経平均と寄与上位の状況
  (1)12/08 、日経平均+90円高、寄与上位5銘柄は+96円高
   ・寄与上位5銘柄     寄与度    株価
     フジクラ     +40円高   +1,205円高
     コナミ      +21     +630
     アドバンテスト  +13     +50
     豊田通商     +13     +126
     ディスコ     +9     +1,360
      合計      +96
   ・ソフトバンクGは相場の流れに反して寄与▲126円安・株価▲630円安。レーザーテクも寄与▲11円安・株価▲840円安。今まで相場を牽引していた人工知能(AI)・ハイテク関連株で、バラバラの値動きが見られたのが特徴。

  (2)12/9、日経平均+73円高、寄与上位5銘柄は+145円高
   ・寄与上位5銘柄     寄与度     株価
     東京エレクトロン  +43円高   +430円高
     ファナック     +43     +257
     ソフトバンクG    +29     +145
     レーザーテク    +15    +1,150
     ディスコ      +15    +2,210
      合計       +145
   ・寄与を下げた上位
     ファーストリテイ  ▲39円安  ▲480円安
     TDK        ▲32    ▲64

  (3)12/10、日経平均▲52円安、寄与上位1銘柄で▲47円安
   ・寄与上位5銘柄     寄与度    株価
     東京エレクトロン  ▲47円安   ▲470円安
     アドバンテスト   ▲28    ▲105
     ソフトバンクG    ▲28    ▲140
     ソニー       ▲21    ▲124
     レーザーテク    ▲19    ▲1,390
      合計       ▲143

  (4)特徴:日経平均の牽引役・海外短期筋に変調の兆し
   ・海外短期投資筋の株価先物を使った日経平均上昇に対し、売りが優勢で押される。このように、海外短期筋主導の相場形成ができない状況が目立つ。
   ・このため、12/10の米国NYダウは+497ドル高と大幅上昇したが、12/11の日経平均はどこまで追随できるか? 注目したい。

●3.実質GDP、7~9月期は前年同期比で年▲2.3%減に下方修正、設備投資落込み(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・3038 神戸物産    業績向上期待
 ・5929 三和      業績回復期待
 ・7832 バンダイナムコ 業績堅調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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