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相場展望3月3日号 米国株: 「皇帝」トランプ氏への懸念材料が、世界を震撼させる 中国株: 上海総合指数は3,500ポイントが大きな壁 日本株: 12/27高値から軟調局面、ボックス圏相場から下放たれる
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)2/27、NYダウ▲193ドル安、43,239ドル
2)2/28、NYダウ+601ドル高、43,840ドル
【前回は】相場展望2月27日号 米国株: トランプ高関税懸念と、エヌビディアの決算発表2/26待ち 日本株: 「民のかまど」からでる炊煙をみる日本の指導者の登場期待
●2.米国株 : 「皇帝」トランプ氏が巻き起こす懸念材料が、世界を震撼させる
1)2/28の株高、長期金利低下が支えとなって大幅反発、ただ景気不安が重荷
・株価上昇の要因
・金利低下で相対的に株価に割安感が広がり、主力株に買いが入った。
・週末を控え、株安を主導した売り方の買い戻し。
・1月の個人消費支出(PCE)物価指数の落ち着きで、インフレ再加速への懸念が薄らいだ。
・ただ、直近の株価大幅下落に対する自律反発で一時的上昇の可能性がある。
2)「皇帝」トランプ氏が巻き起こす懸念材料が、世界を震撼させる
・「皇帝」トランプ氏が巻き起こす懸念材料
・米国政権の関税賦課が引き起こす物価高。
・DOGEによる強烈な雇用削減など財政支出減がもたらす景気後退。
・米国景気のスタグフレーションの進展懸念での先行き不安。
・地政学リスク。
・ウクライナとの首脳会談の決裂
・同盟国との軋轢(EU、カナダ、メキシコなど)
・ガザ復興と住民の移転
・敵対国ロシアへの親近感の高まり
・トランプ氏の「皇帝」的な判断と威圧的な指示、「あいまいな発言」がもたらす世界的混乱。
3)トランプ、ウクライナのゼレンスキー会談決裂、高笑いしたのはプーチン氏
・親ロシアにみえるトランプ米国大統領とウクライナ大統領との会談が決裂した。トランプ氏が要求したウクライナの鉱物資源の米国権益の確保を取り決める署名も流れた。
・トランプ氏にとって、初めて面前で自分に逆らった外国首脳となった。
・決裂を受けEU諸国の首脳は、ゼレンスキー大統領への支援声明を出した。
・この決裂を一番喜んだのはロシアのプーチン大統領だ。
4)CRB指数の急落は、世界景気の後退懸念が増したことを示す
・CRB指数の推移
2/19 316.63
2/28 301.83
●3.欧州各国、米国と会談決裂のゼレンスキー氏支持を表明「侵略者はロシア」(産経新聞)
●4.米国PCE統計、個人支出が4年ぶり大幅減、価格指数は小幅な伸び(ブルームバーグ)
1)1月の米国・個人消費支出(PCE)統計では、厳しい寒波が影響し自動車など財への支出が減少した。また、サービス分野への支出も減速し、経済の底堅さを巡り懸念が生じる可能性がある。
2)PCEコア価格指数は前年同月比で+2.6%上昇、予想と一致した。
3)トランプ政権が進める関税措置や、大幅な財政支出削減などの政策も経済活動に影響を及ぼしている可能性がある。(ロイター)
1月は飲食店での支出も弱含み、消費者の節約志向が強まっていることが示唆された。
●5.米国・新規失業保険申請件数は+2.2万件増の24.2万件、予想22.1万件(ロイター)
1)労働市場の大きな変化を示唆するものではない可能性が高い。
●6.米国GDP、2024年10~12月期は+2.3%、7~9月期から減速(ロイター)
1)年率換算で前期比+2.3%増、前四半期の+3.1%から減速した。
2)寒冷な気温のほか、関税に起因する物価上昇で消費が落ち込むとの懸念から成長の勢いの衰えは今四半期序盤も続いたとみられる。
●7.FRBはインフレ期待上昇を受け、警戒緩めるべきでない=カンザスシティ連銀総裁(ロイター)
●8.トランプ大統領、中国への追加関税を10⇒20%へ引上げ、3/4から(TBS)
1)カナダ、メキシコには猶予していた25%関税を3/4から発動へ。
2)中国への関税をさらに10%上乗せは、合成麻薬フェンニタルの流入が理由。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)2/27、上海総合+7高、3,388
2)2/28、上海総合▲67安、3,320
●2.中国株 : 上海総合指数は3,500ポイントが大きな壁
1)上海総合指数は、昨年9/13を底に反発も、3,500が大きな壁
・上海総合指数は、昨年9/13に付けた2,704を底値にして反発基調に転じた。
・上海総合の推移
2024年09/13(底値) 2,704
10/08(高値) 3,489
11/07(高値) 3,470
2025年02/28時点 3,320
・昨年10/8の高値以降、上げ下げを繰り返しながらも、戻り高値が下方傾向にあるのが懸念。
●2.中国の製造業活動、2月は再び拡大、関税打撃も経済の底堅さ示す(ブルームバーグ)
1)米国の関税引上げと、内需低迷で打撃を受けているものの、中国経済の底堅さが示された。国家統計局が3/1発表した2月の製造業購買担当者指数(PMI)は50.2と、1月の49.2から上昇した。予想は49.9だった。活動の拡大・縮小の境目は50。建設業とサービス業を対象とする非製造業PMIは50.4と、前月の50.2から上昇し、予想と一致した。
2)PMIは毎月月初に発表される公式データであり、米国との貿易戦争が激化するなかで、見通しが不安定な中国経済の健全性をみるうえで、重要な指標となる。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)2/27、日経平均+113円高、38,256円
2)2/28、日経平均▲1,100円安、37,155円
●2.日本株 : 12/27高値から軟調な局面、ボックス圏相場から下放たれる
1)投資主体別の売買動向は、年初から「プロの買い手不在」が続く
・年初~2月3週(~2/21)までの投資主体別投資内訳
・証券会社(自己) ▲2兆0,056億円の売り越し
・海外投資家 ▲1兆4,660億円の売り越し(但し、2/14まで)
内訳:先物 ▲1兆7,133億円の売り越し(但し、2/21まで)
現物 + 841億円の買い越し
・年金基金 ▲ 8,252億円の売り越し
・事業法人(自社株買含)+1兆3,528億円の買い越し(但し、2/14まで)
・個人 +1兆4,270億円の買い越し
・つまり、投資のプロは「売り」、自社株買いの事業法人と個人は「買う」状態が年初から続いている。株式投資のプロは、相場を警戒して「売りスタンス」を継続している。
2)日経平均は昨年12/27高値40,281円を付けて以降、軟調な局面にあった
・日経平均の推移
2024年12/27 40,281円
2025年02/28 37,155
・昨年12/27高値から下落し、今年2/28まで▲3,126円下落・▲7.76%安。特に、2/28は▲1,100円の大幅下落となった。
・調整局面入りとされる▲10%超の下落とはなっていない。そのため、今日3/3あたりに戻り反発もあり得る状況にある。
3)約5カ月に及ぶボックス相場(38,000~40,000円)が終了し、下放たれる
・昨年09/27高値 39,829円
10/15高値 39,910
12/12高値 39,849
12/27高値 40,281
今年02/28時点 37,155
・昨年8/5の31,458円を底に上昇したが、8/5底値を起点とした上昇支持線を下に抜け、日経平均は落としどころを模索してボックス圏相場を形成してきた。
・トランプ氏の
(1)関税引上げによるスタグフレーション(物価高・景気後退)の懸念
(2)西側同盟国の盟主から一転して、「米国一国主義」に傾斜して、反西側諸国・親ロシアに映る方向にある。このような懸念材料から株式市場は軟調な動きとなっている。昨年の大統領選挙後の株式市場は祝福して株価上昇してきたが、期待相場がはげ落ちようとしている。
・このような米国株の流れを背景に、日経平均も負の影響を受けようとしていると思われる。こういった地合いから、3月中旬までは慎重スタンスで見守りたい。
●3.立憲・国民、ガソリン暫定税率の廃止法案を提出へ調整(日テレ)
1)燃料価格の高騰対策として、ガソリンの暫定税率を今年4月から恒久的に廃止するものです。維新も含めた幅広い野党に協力を呼び掛けていく。
2)暫定税率の廃止を巡って、国民民主党が与党の自民・公明と交渉してきたが協議は打ち切りとなっていた。
●4.3月の食品値上げ2,343品目、前年の3倍超、平均値上げ率は月17%(帝国データバンク)
1)2025年の飲食料品値上げは、累計1万品目を突破、前年より4カ月早く到達。
●5.電気とガス代、全社で値上がり、政府補助金の縮小で3月使用分から(共同通信)
1)上げ幅は、電気が294~411円、都市ガスが179~233円。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・5423 東京製鉄 業績回復期待
・7753 SCREEN 業績好調
・7912 大日本印刷 業績堅調
著者プロフィール
中島義之(なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou
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