相場展望2月27日号 米国株: トランプ高関税懸念と、エヌビディアの決算発表2/26待ち 日本株: 「民のかまど」からでる炊煙をみる日本の指導者の登場期待

2025年2月27日 13:32

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)2/24、NYダウ+33ドル高、43,461ドル
 2)2/25、NYダウ+159ドル高、43,621ドル
 3)2/26、NYダウ▲188ドル安、43,433ドル

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●2.米国株:トランプ高関税への懸念と、エヌビディアの決算発表2/26待ち

 1)米国景気不透明感と関税で米国株式市場のS&Pとナスダックが1ヵ月ぶり安値
  ・NYダウは2/5~26まで▲1,440ドル下落した。特に、2/20~21までの2日間で▲1,198ドルと急落した。
  ・下落の要因は、トランプ氏による広範な高関税政策が
    ・米国経済の減速
    ・インフレ再加速
   を誘引したとみられる。
  ・最悪のスタグフレーション(景気減速+インフレ上昇)の途上に対する懸念が増している。それが米国株式市場の最近の下落につながっている模様。

 2)著名投資家バフェット氏は、相場の先行きを楽観していない
  ・マグニフィセント・セブンといわれる7銘柄が、最近の高値から▲10%超下落し、調整局面入りしたとみられる。
  ・著名投資家バフェット氏が率いるバ―クシャ―・ハサウェイは株式保有を減額し、現金等価額を2024年末に3,342億ドル(約50.4兆円)に積み上げて1年前比でほぼ倍増し過去最高額とした。つまり、リスク資産を減らし、現金等を増額したのである。
  ・バフェット氏は、過去の米国株大幅下落の時には、大量の株買いを実行してきた。理由は、米国経済に対する信頼をベースに「下落は一時的であると判断し、株買いのチャンス」と捉えて実行してきた。その彼が、「保有株式の入れ替えをしながら全体としては減少させ、現金等の増加」に転換したことに注目したい。

 3)米国株式相場は、エヌビディアの決算発表2/26夕、待ち
  ・最近の米国株式相場で決算発表の内容次第で、大きく上昇・大きく下落するという変動幅が大きくなっているのが特徴である。
  ・極め付きの決算発表が2/26夕のエヌビディア。予想を上回る決算内容になるとの観測があるが、その内容如何で米国株相場が転換する可能性がある。ここは慎重なスタンスが求められると思われる。

●3.マグニフィセント・セブンが調整局面入り、時価総額223兆円消える(ブルームバーグ)

 1)マグニフィセント・セブンの7銘柄
  (1)アップル
  (2)エヌビディア
  (3)マイクロソフト
  (4)アルファベット
  (5)アマゾン
  (6)メタプラットフォームズ
  (7)テスラ

 2)直近高値からの下落度は、調整局面入りの目安である▲10%安を超えた。

 3)投資家は、トランプ大統領による関税の脅威から米国経済を弱体化させ、インフレを誘発することの懸念を強めている。

●4.イーライリリー、米国新工場に270億ドル投資へ、トランプ氏の医薬品関税示唆で(ロイター)

●5.トランプ大統領、EUに対し25%関税を近日中に発表(ロイター)

 1)EUは自動車に10%の関税を課しており、これは米国の2.5%の4倍にあたる。

●6.トランプ大統領、カナダとメキシコへの25%関税発動を4/2と表明(ロイター)

 1)実際に課税すれば、カナダとメキシコの経済に大きな影響は避けられない。
 2)米国も幅広い品目で物価上昇につながると指摘されている。

●7.アルミ25%関税で、米国内で10万人の雇用喪失の可能性=アルコアCEO(ロイター)

 1)トランプ大統領は、主要供給国のカナダ、メキシコ、ブラジルなどへの関税適用除外措置と無関税枠を撤回した。
 2)アルコアのCEOは、今回の関税措置は米国のアルミニウム産業にとって、米国労働者とって悪いものだと述べた。
 3)米国のデータによれば、アルミニウム精錬所の昨年の生産量はわずか67万トンで、2000年の370万トンからは大幅に縮小。米国はアルミニウムを輸入に大きく依存している。

●8.米国リッチモンド連銀総裁、不確実性を踏まえ慎重な姿勢維持へ(ロイター)

●9.米国2月CB消費者信頼感指数98.3に急低下、関税懸念で物価見通し上昇(ロイター)

 1)前月は105で、低下は3ヵ月連続、予想は102だった。
 2)幅広い年齢層と所得層で信頼感が低下、家計や労働市場への悲観強まる。

●10.米国下院委員長(共和党)らが警告、中国はマスク氏通じてトランプ氏に影響(ロイター)

●11.テスラ時価総額1兆ドル割れ、欧州販売急減とマスク氏巡る懸念も(ロイター)

 1)2/25、テスラ株式は▲8.4%安、時価総額9,740億ドル。

●12.米国ホームデポ、消費抑制傾向など重しで通年減益見通し(ロイター)

●13.ホワイトハウス、大統領の取材参加者を選定へ、報道の独立性に懸念も(ロイター)

●14.マスク氏の政府効率化省(DOGE)職員の3分の1、21人が辞職、改革に抗議(AFP)

 1)21人は「政府の中核システムと国民の機密データを危険にさらし、重要な公共サービスを解体する」取り組みに参加することを拒否した。

●15.500万ドルで富裕投資家に米国市民権を付与へ、トランプ構想(ロイター)

 1)ロシアのオリガルヒ(新興財閥)も取得できると示した。

●16.トランプ大統領、アップルに「多様性・公平性・包摂性(DEI)」方針廃止求める(ロイター)

 1)アップルの株主は2/25の年次総会の投票で、DEIを引き続き推進する経営陣の方針を承認した。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)2/24、上海総合▲6安、3,373
 2)2/25、上海総合▲26安、3,346
 3)2/26、上海総合+34高、3,380

●2.中国、大手国有銀行などに4,000億元を注入へ=BBC(ロイター)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)2/24、祝日「天皇誕生日」のため休場
 2)2/25、日経平均▲539円安、38,237円 
 3)2/26、日経平均▲95円安、38,142円  

●2.日本株:「民のかまど」からでる炊煙に向いた日本の指導者の登場に期待

 1)米国著名投資家バフェット氏が投資拡大意欲を示唆し、商社株高
  ・商社株は昨年3~7月の高値を付けた後、▲3割程度下落・調整を続けてきた。頃合いよくバフェット氏の買い増しニュースが伝わり、商社株は反発した。
  ・バフェット氏は、株買いを終えてから発表してきた。よって、株買いを宣言後⇒株買いを行うとは考えられない。したがって、「商社株を売りたい強気」筋が発信した可能性がある。

 2)米国の対中国半導体規制強化を嫌気し2/26、値がさ半導体株が安値
  ・東京エレクトロン  ▲1,255円安
   ディスコ      ▲1,680
   レーザーテク    ▲ 525

 3)円高が進行
  ・円高の要因は、日本・米国10年債利回り差の縮小にある。
  ・円相場の推移
     2/04  155.23円
     2/19  151.59円
     2/26  149.50
  ・日本・米国長期金利差の推移
               2/04 2/19   2/26
     日本10年債金利   1.275 % 1.416%  1.357%
     米国10年債金利   4.511 4.533   4.256
      金利差      3.236 3.117   2.899
  ・円高が輸出関連株を直撃し、日本株は反落。

 4)仁徳天皇の「民のかまど」は、日本の指導者のあるべき姿を語っているが
  ・仁徳天皇は高台に登ってみると、人家の「かまど」から炊煙が立っていないことに気が付いた。民の生活苦が要因と理解し、租税を免除し、民の生活が豊かになるまでと自身の衣服や履物が破れるまで使用し、屋根の雨漏り修理もしなかった。

  ・もっとも、日本書紀の話であるため、解説は諸説あるが、これが、「日本人の精神文化で、日本の指導者のあるべき姿」となった。

  ・現在の日本の民は「生活苦」のメディア報道が多い。
    ・日本のエンゲルス係数は28と、G7の中でも最下位、貧困国のクラスにあるという。
    ・昨年、首相は賃上げに取り組んだが、賃上げができたのは大企業である。労働者の8割を占める中小・零細企業は1%程度といわれている。
    ・賃上げがあったとしても、一般的に手取りは賃上げの約半分でしかない。残り約半分は「税金・社会保険料など」で徴収されてしまうためだ。賃上げで、収入が増えるのは政府関係部門である。いわゆる「5公5民」となっている。江戸時代は「3公7民」が多くの藩であり、5公5民では村からの逃散や暴動が起こったようだ。加えて、政府は物価上昇の恩恵で消費税の自然増収が巨額となっている。
    ・このような実質賃金マイナスの長期化で、賃上げの恩恵を受けられない人の生活保護者が急増している。
    ・こうした現状の中、食料品価格が高騰している。(前年同月比)
        コメ     1.95倍
        白菜     2.73
        キャベツ   2.57
        大根     1.52
        にんじん   1.45
    ・岸田政権の「新しい資本主義」の肝煎り事業として始めたのが、気候変動など地球規模のビジネスとして新興企業を育成するために636億円の基金を作った。しかし、現状時点での利用はわずか1%未満だという。
    ・石破政権は、野党が政策費要求しても「財源を示せ」という。わずか200億円程度の高額療養費さえ削って、がん患者などの負担を増すのに躍起となっている。高額医療費がかかる患者「国民の切り捨て」つながる。
    ・政府は税金等を含む歳入を肥大化して、歳出を「利権化」しているように映る。そこに「民の存在」を意識した「日本国の指導者」の登場を期待したい。「民のかまど」からでる炊煙に眼を向けた政治を願う。

●3.日本郵政、保有する「ゆうちょ銀」株のうち6,000億円規模を売却へ (ロイター)

 1)日本郵政のゆうちょ銀への出資比率は現在61.5%、2925年度中に50%以下に引き下げることを目指している。

●4.ANA、航空機77機を2兆円超でボーイング、エアバス、エンブラエルに発注(ロイター)

 1)ANAグループ全体の運用機数は、2023年の278機から2030年末に約320機に増える。
 2)国際線事業を強化(NHK)

●5.スーパーでのコメの平均価格は5キロあたり3,892円に、上昇続く(NHK)

●6.伊藤忠商事、セブン&アイ買収計画を見送り(時事通信)

 1)創業家は8~9兆円規模の資金確保を目指しているが、1兆円規模の拠出を検討していた伊藤忠の離脱で買収計画に暗雲が漂っている。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2764 ひらまつ     業績黒字化
 ・6367 ダイキン     業績好調
 ・6594 ニデック     業績好調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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