相場展望4月1日号 米国株: FRBは「利下げに慎重」、高PERを意識するまでは株高続く 日本株: 「株高の期待値」だけでの株高は限界がある、円安は負の効果

2024年4月1日 10:01

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)3/28、NYダウ+47ドル高、39,807ドル(日経新聞より抜粋
  ・NYダウは続伸し、1週間ぶりに最高値を更新した。米経済への楽観や米利下げ観測が相場を支えた。ただ、3/29からの3連休を控え、薄商いとなるなかで、方向感を欠く場面もあった。

【前回は】相場展望3月28日号 米国株: 2月消費者物価指数に注目、インフレ懸念と金利動向に影響 日本株: 3月末までは堅調な株価を予想、早期の利益確定も一案

  ・朝発表の2023年10~12月期の実質国内総生産(GDP、確定値)は前期比年率+3.4%増と、改定値+3.2%増から上方修正された。週間の新規失業保険申請件数は21万件と、ダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想21.1万件を下回った。

  ・市場では、「3連休を前に市場参加者が少なく、米指標も想定の範囲内にとどまり、値動きは小さかった」との声が聞かれた。明日は聖金曜日で休場となるが、米連邦準備理事会(FRB)が重視するインフレ指標である米個人消費支出(PCE)物価指数の2月分が発表される。内容を見極めたい雰囲気があった。

  ・FRBが年央にも利下げに転じるとの見方は引き続き相場を支えた。ウォラーFRB理事は3/27の取引終了後の講演で、1~2月の物価指標が上振れし「想定する利下げの回数を減らしたり、利下げをさらに先送りしたりすることは適切だ」と話した。早期の利下げを織り込むほどではなかった。

  ・個別銘柄では、ディズニーやインテル、ボーイングなどが高かった。一方、アップルやマイクロソフト、ナイキは売られた。朝に企業買収を発表したホームデポが下げた。

  ・NYダウは3月の月間で+810ドル・+2.08%上昇した。月間では5カ月連続の上昇となり、2020年4~8月以来の連続記録となった。

  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は小反落した。アナリストの目標株価引下げがあったテスラは▲2%安で終えた。メタプラットフォームズも下げが目立った。月間では+1.79%高となり、5ヵ月連続で上昇した。

  ・多くの機関投資家が運用指標とするSP500種株価指数は前日比+3.10%高となり5ヵ月連続で上昇した。

 2)3/29、祝日「グッドフライデー(聖金曜日)」で休場

●2.米国株:FRBは「利下げに慎重」 投資家の目が「PERの高さ」を意識するまで、株高が続く

 1)パウエルFRB議長は「利下げに慎重」発言
  ・米金利は、利下げが遠のくとの観測が強まり、金利上昇へと反騰の可能性。
  ・為替は、円安・ドル高に追い風が吹く。
  ・しかし、金利引下げ期待が失せるとことはなく、引き続き引下げ期待感は続くとみる。したがって、米国株のサポートは続きそうだ。

 2)NYダウのPER(株価収益率)は上昇が続く
  ・PERの推移       (注)PER(株価収益率)=株価÷1株当たり純利益
   1/02    27.27倍
   3/28    27.70
  ・PERの評価
  ・PERは15倍~20倍が適正とされている。
   そして、15倍未満が割安、20倍を超えると割高とみられるのが一般的。
  ・一般的なPERの味方からすると、3/28の27.70倍を含めて、割高株という評価の範疇が続いている。

 3)企業業績の向上という裏付けのない「株価上昇」はどこまで続くか?
  ・過去のPERをみると40倍超えの時もあり、すぐに下落が迫っているという状況でもない。しかし、現在のPERの高さから、いつ下落に転じてもおかしくない位置にあるともいえる。

  ・株式投資家が、現状のPERが高いと認識する時まで株高は続くと思われる。

  ・今後、PERの動向にも留意していきたい。

●3.米2月コアPCE価格指数は予想通り前年比+2.8%増、予想+2.8%・1月+2.8% (フィスコ)

●4.パウエルFRB議長、インフレ指標は「予想通り」、利下げはなお慎重(ブルームバーグ)

 1)インフレ率が目標の+2%に向けて順調に低下していると、当局が確信するまでは利下げは適切ではないとの見解を改めて示した。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)3/28、上海総合+17高、3,010(亜州リサーチより抜粋
  ・自律反発狙いの買いが優勢となる流れ。上海総合指数は前日の下落で、約1ヵ月ぶりの安値を付けたとあって、値ごろ感に着目された。足元で下落の目立ったハイテク株などに、押し目買いが先行した。

  ・ただ、上値は限定的だった。米中対立の激化懸念がくすぶっている。

  ・業種別では、ハイテクの上げが目立ち、消費関連もしっかり。素材・インフラ建設・軍事関連・不動産・エネルギーなども買われた。半面、銀行は冴えない。通期決算が+1%の増益にとどまり、利ザヤ縮小で利息収入が減少した最大手行の中国工商銀行が▲2.1%安と値を下げた。

 2)3/29、上海総合+30高、3,041(亜州リサーチより抜粋
  ・前日の好地合いを継ぐ流れとなった。前場でプラス圏でもみ合い、後場にかけて上げ幅を拡大した。

  ・中国政府による景気対策に対する期待も根強い。

  ・「国家隊」と呼ばれる中国の政府系投資会社・中央滙金投資有限責任公司による買い支えの動きも好感されている。

  ・このところの下落基調を受け、押し目買いの動きも広がった。

  ・ただ、上値は限定的。

  ・香港市場がグッドフライデーで休場となっているほか、半導体を巡る米中対立の激化懸念がくすぶっている。

  ・業種別では、船舶製造の上げが目立ち、石油も高い。自動2輪車・アパレル・非鉄金属関連なども買われた。半面、印刷・包装は冴えず、メディアエンターテイメント・醸造関連も下落。

●2.中国・製造業PMIの3月は50.8、予想49.9以上に改善、半年ぶりに節目超え  (ロイター)

●3.中国の住宅販売は3月も▲46%減と不振が続き、好転の兆しが見えない(ブルームバーグより抜粋

 1)中国房産信息集団(CRIC)の速報データによると、不動産大手100社の3月新築住宅販売は前年同月比約▲46%減の3,580億元(約7兆5,000億円)となった。
 2)2月は▲63%減だった。

●4.中国BYD(比亜迪)、香港市場で株価急落、2023年通期利益が予想に届かず(ブルームバーグ)

 1)決算発表を受け、BYDは一時▲7.4%安と、昨年8月以来の日中下落率となった。

●5.中国EV「零跑汽車」、2023年は+35%増収も約▲890億円の赤字(36Kr)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)3/28、日経平均▲594円安、40,168円(日経新聞より抜粋
  ・日経平均は反落し、終値は▲594円安の40,168円だった。前日に史上最高値40,888円に接近したため、高値警戒感から利益確定売りが優勢だった。今日は3月期末の配当の権利落ち日にあたり、配当落ちも指数を下押しした。午後に入ると、年金勢とみられる売り圧力が強まり、下げ幅は一時▲700円を超えた。

  ・QUICKによると、3月期末の配当落ちは日経平均を▲264円下押しした。前日に財務省の神田真人・財務官が「行き過ぎた動きにはあらゆる手段を排除せずに適切な対応をとる」と述べ、足元の円安・ドル高を牽制したことも輸出関連を中心に重荷となった。午後の中頃から年金勢など国内機関投資家による保有資産のリバランス(調整)の売りが出て、日経平均は下げ幅を拡大した。

  ・下げ渋る場面もあった。前日の米株式市場で主要株価指数が上昇したことが支援材料で、日本株の先高観を背景に個人などによる押し目買いが入った。朝方は機関投資家が期末配当の受け取りを先回りした、株価指数先物などに投資する「配当再投資」の動きも観測された。

  ・東証株価指数(TOPIX)は3日ぶりに▲1.73%安と反落した。JPXプライム150指数は3日ぶりに反落し、▲1.58%安で終えた。

  ・個別銘柄では、信越化やアドテスト、東エレクなど半導体関連の下げが目立つ。トヨタや三菱UFJも安い。一方、住友不や冨士フィルムが上げた。東電や三菱重も高い。

 2)3/29、日経平均+201円高、40,369円(日経新聞より抜粋
  ・日経平均は反発した。前日に米株式市場でNYダウが史上最高値を更新した流れを受けて、東京市場でも投資家のリスク許容度が高まり、不動産や建設、非鉄金属など景気敏感株を中心に幅広く買いが入った。

  ・3/29は2023年4月から2024年3月(2023年度)の最終営業日だった。日経平均は年度ベースで+12,327円(+44%)上昇した。東証株価指数(TOPIX)は+38%上昇した。

  ・日経平均は大引け間際に一段高となる場面があった。3/29は米国や欧州の主要市場が休場となるため、海外投機筋による仕掛け的な売買が日本株に集中したとの指摘があった。「株価指数先物のショートカバー(買い戻し)も巻き込んで日経平均を押し上げたようだ」との声があった。

  ・3/29は米連邦準備理事会(FRB)が重視する2月の米個人所得・個人消費支出(PCE)が発表されるとあって、内容を見極めたいとの声が多かった。持ち高調整の売りが相場全体の上値を抑える場面も目立った。

  ・TOPIXは反発した。JPXプライム150指数は反発して終えた。

  ・個別銘柄では、小糸製がストップ高まで上昇した。三菱重、東建物が高い。野村マイクロ、コクサイエレが買われた。一方、郵船が下げ、レーザーテクやテルモが売られた。ニデックの下げも目立った。

●2.日本株:PERは高く推移しているが、株高への期待値だけでは限界がある 円安は負の効果が大きい

 1)円安が止まらない可能性高まる
  ・理由 (1)FRB議長の「利下げ急ぐ必要はない」発言
      (2)日銀総裁「大規模緩和継続方針は変わらず」の発言
   で、日米長期金利差が縮まらず、むしろ「円安」進行の可能性が高まる。
  ・円安効果で、輸出関連企業の株高期待で、日経平均は上昇圧力が増す。

 2)一方、円安は、日本経済の後退を誘導する
  ・円安は輸入コスト上昇を招き、企業による値上げ転嫁を加速させる。
  ・さらに、家計を直撃し、家計の防衛意識高まりから消費支出削減へと導く。
  ・円安は、輸入大国となってしまった日本にとって、国内総生産(GDP)成長の芽を摘むことになる。

 3)政治と日銀は「円安の負の効果」について「音痴」すぎる
  ・岸田政権と日銀総裁は、「円安」がもたらす「経済の負の効果」について、わかっているとは思えない。一言も「円安が国民生活に及ぼす負の効果」について発言していない。「経済音痴」だ。

  ・岸田首相は、弱視のため直面する問題への対応しかしていない。今は、自民党議員の裏金対策と自己保身で精一杯だ。自民党の結党以来の危機にも関わらず、リーダーショップを示さない。主流派の麻生氏と茂木氏などと相談・意見交換し合意形成をしているだけだ。岸田首相の相談相手は「自身の派閥を温存」している。

  ・自民総裁選当時の「所得倍増」が、いつの間にか「資産倍増」にすり替わった。国民目線に近いところから、資産富裕層へと重点対象が変わっている。その方針変更の説明もしていない。岸田首相は「新しい資本主義」という概念を示したが、概要説明もしていない。審議会での検討に回したが、丸投げしたまま、一向に検討状況の発信がない。一方、海外所得に対しては「良い顔」をみせるために、日本の富を気前よくつぎ込んでいる。その支出効果について、日本国民が納得できる説明をしたことがあるだろうか?

  ・植田・日銀総裁は、「学者」の域にとどまっている。とても、金融・為替などでうごめく金融のプロ世界の人間と対峙できていない。日銀総裁としての発言が、マーケットに対してどうのように影響するか?も読めていない。だから、「マイナス金利解除」と「大規模金融緩和の継続」を併せて発言してしまった。「マイナス金利解除」しても、日本の金利は上昇するどころか、下落している。加えて「大規模金融緩和の継続」と不用意な発言で「円安促進」させた。植田・日銀総裁は理路整然と話をするが、国民の生活や日本経済を担っていると日銀総裁としての「自覚に欠ける」と言わざるを得ない。

  ・このような首相と日銀総裁を頂いている「国民は不幸」だ。

 4)日経平均のチャートでは、小さいが「ダブルトップ」形成し、下落方向を示唆。
  ・日経平均の推移
   3/22 40,888円
   3/26 40,398
   3/27 40,763
   3/28 40,168
   3/29 40,369

 5)日本株は米国株と連動性が高いが、米国株の牽引役の半導体株に変調の動きあり
  ・米主要株価3指数は市場最高値更新も、牽引してきた半導体株指数が変。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は3/7に史上最高値を付けたが、その後勢いをなくし、現在はダブルトップを付けにいく素振りを示している。
   SOX指数の推移
    3/07 5,165ポイント
    3/19 4,712
    3/28 4,905: 3/7比で▲5.0%安

  ・日経平均は企業業績の向上を背景にした株高ではない。PER(株価収益率)
    PER(株価収益率)、つまり「株高への期待値」での株高となっている構図だ。
    PERの推移
    1/04 19.94倍
    3/22 24.09
    3/29 23.78

  ・それは、米国株でも同様の状況だ。
  ・PER(株価収益率)とPBR(1株当たり純利益)の推移
       1/4    3/29   増加率
   PER  19.94倍   23.78   119.3%増  PER=株価÷1株純利益
   PBR  1,669円   1,697    1.7%増

  ・企業業績の裏付けのない「株高への期待値」という人気だけでの株価上昇がいつまで・どこまで続くのか?注意深く見守りたい。

●3.パナソニック傘下のブルーヨンダー 、米ワンネットワークを1,270億円で買収(ブルームバーグ)

 1)サプライチェーン・マネジメント事業の強化を進めてきたが、今回の買収で、顧客基盤が拡充でき事業強化に弾みがつく可能性がある。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・1911 住友林業  業績向上期待
 ・1928 積水ハウス 業績向上期待
 ・2413 エムスリー 業績好調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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