相場展望10月23日号 米国株: 長期金利5%乗せで、割高感意識高まりSOX指数下落、注意! 日本株: 「やや割安感」出るも、米国の長期金利の動向次第

2023年10月23日 08:49

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)10/19、NYダウ▲250ドル安、33,414ドル(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利の上昇が続き、米景気の先行き不透明感や株式の相対的な割高感が意識された。
  ・米長期金利は一時、前日比+0.08%高い4.99%(前日終値は4.91%)と2007年以来の高水準に上昇し、節目の5%に迫った。朝方発表の週間の米新規失業保険申請件数が市場予想を下回った。今週発表の9月の米小売売上高や米住宅着工件数なども市場予想以上の伸びとなり、米連邦準備理事会(FRB)の金融引締めが長期化するとの観測が強まっている。
  ・パウエルFRB議長は10/19の講演で、米経済次第で「さらなる金融引締めが正当化される可能性がある」との考えを示した。その後に参加した討議では、経済状況は「金融政策が引締めし過ぎだと示していない」と指摘した。
  ・議長が政策判断を「慎重に進める」と述べたことで、次回や12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ観測が後退したとの見方があった。NYダウは+180ドルあまり上昇する場面があった。ただ、「今後の金融政策の明確な方向性を示したとは言えず、市場の不透明感は強い」との指摘もあり、買いは続かなかった。
  ・米長期金利の上昇の勢いは鈍らず、株式相場は引けにかけて下げ幅を広げた。建機のキャタピラーや航空機のボーイングなど景気敏感株、映画・娯楽のディズニーなどの消費関連株が売られた。10/18夕に発表した7~9月期決算で1株利益などが市場予想に届かなかった電気自動車のテスラが大幅安だった。一方、顧客情報管理のセールスフォースが上昇した。外食のマクドナルドや飲料のコカコーラといったディフェンシブ株の一部にも買いが入った。通信のベライゾンも上げた。10/19発表の四半期決算で1株利益が市場予想を上回った同業のAT&Tが大幅上昇し、連れ高した。10/18夕の決算を受けて業績改善期待が強まった動画配信のネットフリックスは急伸した。

【前回は】相場展望10月19日号 米国株: 米国が抱える3重苦⇒株価には逆風 中国株: 景気回復に力強さ欠く 日本株: 市場エネルギーは高くなく、売りに押されやすい

 2)10/20、NYダウ▲286ドル安、33,127ドル(日経新聞より抜粋
  ・中東の地政学リスクの高まりが、引続き相場の重荷となった。米長期金利の上昇は一服したものの、依然として高水準で推移していることも株売りを誘った。
  ・中東では、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が続いており、地上戦が近づいているとの見方もある。10/20には、イスラエル国防省がレバノン国境近くの地域の住民に避難を命じたと報じられた。情勢悪化への警戒が根強く、投資家心理に影響している。市場では「衝突が解決に近づかない限り、短期的に株買いに対する不安感がくすぶるだろう」との声が聞かれた。
  ・米債券市場で長期金利は前日から低下(債券価格は上昇)し、4.9%台前半で推移している。前日夕には16年ぶりの5%台を付けていた。金利上昇はやや一服しているものの、依然として高い水準を維持しており、株式を買い戻す動きは広がらなかった。
  ・米連邦準備理事会(FRB)による金融引締めが長期化するとの観測も相場の重荷となった。アトランタ連銀のボスティック総裁は10/20の米CNBCのインタビューで、利下げは2024年後半以降になるとの見方を示した。クリーブランド連銀のメスター総裁は同日、年内の追加利上げが適切との見方を維持した。
  ・個別株では、クレジットカードのアメリカンエキスプレスや半導体のインテル、化学のダウなどが売られた。一方、医薬品・医療機器のJ&Jやドラッグストアのウォルグリーンなどディフェンシブ株の一角には買いが入った。アナリストが投資判断を引上げた製薬のメルクも高かった。

●2.米国株:長期金利5%台乗せで、株価意識高まり、半導体株指数主導で下落、注意

 1)長期金利が上昇する要因
  ・米経済が強い。
  ・米財政赤字で、米連邦政府が資金調達のため金利を上げても米国債を発行。
  ・米連邦準備理事会(FRB)による量的金融引締め(QT)継続。
  ・FRBがもはや米国債の買い手(市場に資金を供給)でない。
  ・労働市場が依然として逼迫。

 2)米長期金利が一時5%乗せ(10/19)
  ・長期金利の推移(終値ベース)
     10/2   10/17  10/19  10/20
     4.679%  4.834  4.990   4.919  
  ・10/19に一時5%台に乗せ、その後、一服した。
   長期金利上昇に天井感はなく、上昇⇒一服⇒上昇の流れを予想。
  ・長期金利は7~8%を目指すと見る。

 3)フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は反発も、中期下降線を上に抜けず下落
  ・半導体株は9/26を底にして、米国株の上昇を牽引してきたが、金利の再上昇をきっかけに割高感が意識され、下落に転換した。
  ・半導体株指数(SOX)の推移
    07/31  3,861
    09/26      3,329  : 下落幅▲532、下落率▲13.78%
    10/12    3,548    : 上昇幅+219、戻り率+41.1%
    10/19      3,367 
    10/20      3,316  : 上昇幅を超える下落
  ・半導体株指数の反発は一時的だったと証明された。
  ・SOXは、米国株上昇の牽引役であっただけに、米国株全体に与える悪影響が気掛かり。
  ・チャートは下落傾向を示しており、さらなる下落⇒反発⇒下落を示唆。

 4)他の懸念材料も悪化方向にある
  ・米国政治:米下院議会議長選、不透明感深め政治混乱長期化懸念。
        対中国向け半導体関連の輸出規制強化。
  ・中東情勢:地政学リスクの高まり。
  ・長期金利:上昇傾向にある。

 5)米国株式は下落基調にあり、慎重な運用姿勢が強まる方向にある。
  ・7~9月決算発表では好業績に株高で反応したが長続きせず、株式市場は懸念材料に反応を示すようになってきている。
  ・相場の上昇を主導してきた半導体株指数が9/26安値を10/20に更新して、下落の底が見えなくなってきた。チャートは続落を示唆。
  ・長期金利上昇で、米国株の割高感意識が高まる傾向途上にある。

●3.米下院議長選、共和党ジョーダン氏3回目も落選、反対票増え撤退(共同通信)

●4.FRB、2024年後半に利下げの可能性=アトランタ連銀総裁(ロイターより抜粋

 1)金融緩和を検討する前にインフレ率が2%にもっと近づけなければならない。だが、インフレ率は依然として高すぎるが、鈍化してきており、「2024年後半」には金融緩和が議論の対象になる、とした。

●5.クリーブランド連銀総裁、政策金利据え置く水準に近づいたとの見解(フィスコ)

●6.パウエルFRB議長講演、中立姿勢示す、米長期債利回りは上昇基調継続か(フィスコ)

 1)講演で「インフレが依然として高過ぎだ」と指摘した。現在の金利が十分に高くない可能性と、高金利が長期にわたる可能性を指摘。金融政策が引締め過ぎでない証拠があるとして、追加利上げを除外しなかった。

 2)同時に、最近の長期債利回りの上昇が、追加利上げの必要性を低下させる可能性もあると言及する中立姿勢も強調した。

●7.米長期金利が上昇、約16年ぶりに5%の大台を突破、パウエル議長が利上げ示唆(テレビ朝日)

●8.エヌビディア、対中輸出規制で、アナリストは目標株価を引下げ(ロイター)

●9.テスラ増収も、値下げによる利益率低下で大幅減益(NHK)

 1)テスラの7~9月期決算は前年比▲44%減益、売上は市場予想に届かず 

●10.モルガンスタンレー株価下落、7~9月期減益を嫌気、投資銀行不振(ブルームバーグ)

●11.TSMC、7~9月期純利益は0.9兆円、前年同期比▲24.9%減、半導体市況低迷(共同通信)


■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)10/19、上海総合▲53安、3,005(亜州リサーチより抜粋
  ・前日の軟調地合いを継ぐ流れとなり、昨年11/3以来の約11カ月ぶりの安値水準に落ち込んだ。
  ・10/18公表された経済指標では、今年7~9月の国内総生産(GDP)成長率や9月の小売売上高は予想を上回ったものの、都市部の1~9月固定資産投資は予想を下回り、9月の不動産開発投資は減少率が拡大した。
  ・また、米長期金利の上昇や、中東地域の地政学リスクなども重しとなった。
  ・業種別では、銀行・保険が下げを主導し、消費関連も冴えない。エネルギー・医薬・素材・運輸・公益なども売られた。半面、半導体はしっかり、軍事関連の一角が買われた。

 2)10/20、上海総合▲22安、2,983(亜州リサーチより抜粋
  ・内外の不安材料が投資家心理を冷やす流れとなり、昨年11月1日以来、約11カ月ぶりの安値水準に落ち込んだ。
  ・中国の景気鈍化や半導体を巡る米中対立、米国の金利高などが引続き売り材料視された。10/19の米債券市場では、米10年債利回りが一時5%台に上昇し、2007年7月以来、約16年3カ月ぶりの高水準を付けた。
  ・中国人民銀行(中央銀行)の大規模な資金供給などで前場はプラス圏に浮上する場面がみられたものの、買いの勢いは続かず、指数は中盤から下げ幅を広げた。
  ・人民銀は10/20、リバースレポを通じて満期分との差引で7,330億人民元(約15兆2,830億円)を市場供給した。(1日の正味供給規模としては過去最大)人民銀は朝方、実質的な政策金利となる最優遇貸出金利「ローンプライムレート(LPR)」を発表。事前予想通り、1年物・5年物いずれも現行水準(それぞれ3.45%・4.20%)に据え置いた。
  ・ただ、アナリストの一部からは「今後、数カ月の間に、利下げが実施される可能性が残っている」との見方も示された。
  ・業種別では、ハイテク関連の下げが目立ち、医薬品も冴えない。通信も安い。エネルギー・金融・消費関連・素材・軍事関連などが売られた。

●2.中国新築住宅価格、9月は前月比▲0.2%下落、8月は▲0.3%だった(NHK)

●3.中国、株価てこ入れ策不発、上海総合指数が年初来安値(日経新聞より抜粋

 1)中国の代表的な株価指数である上海総合指数は10/19、年初来安値を更新した。

 2)不動産不況が深刻化した8月以降、自社株買いの奨励や新規株式公開(IPO)の段階的な抑制といった株価てこ入れ策を打ち出したが、心理的な節目の3,000割れが迫る。

 3)中国の家計資産は住宅に偏り、投資家心理が冷え込む中、株式市場の信認回復が急務となっている。

●4.中国経済を脅かす不動産不況の暗い影(ウオール・ストリート・ジャーナル)

 1)経済指標は概して改善も、不動産大手の苦境が続けば消費マインドに影響。

 2)中国経済はもはや、舗装されたばかりの駐車場ではない。物事が再び動き出し、地面の割れから芽吹きも見られる。だが、大手不動産開発業者も次々とひび割れして倒れるならば、この状態を維持するのは難しいかもしれない。

●5.一帯一路、共同声明なく議長声明のみ、首脳参加者は前回40人⇒24人に減少(産経新聞より抜粋

 1)一帯一路を巡って、中国の過剰な融資が途上国が苦しむ「債務の罠」が問題視されている。

 2)国連のグテレス事務総長は10/18の会議で、一帯一路に関し「多くの発展途上国が債務に溺れている」と苦言を呈した。

●6.中国、政策金利を据え置き、景気対策の効果を見極めと元安の進展を警戒(東京新聞)

●7.中国政府系企業がテンセント関連会社に1%出資、統制強化の一環か(日経新聞)

 1)ネット大手の騰訊控股(テンセント)の関連会社である深圳市雅閲科技に1%出資した。雅閲科技はテンセントのネットサービスに関わる様々な特許や著作権を保有する企業で、中国政府による統制強化の一環とみられる。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/19、日経平均▲611円安、31,430円(日経新聞より抜粋
  ・前日に米長期金利の上昇を背景に米株が下落したのを受け、半導体関連株を中心に売りが広がり、3日ぶりに大きく反落した。
  ・日経平均への寄与度が大きい東エレク・アドテスト・レーザーテクなど半導体関連の下落が目立った。10/18の米市場で米長期金利が約16年ぶりの水準に上げ、米ハイテク株が売られた流れを引き継いだ。上海や香港などアジア株の下落が投資家心理に響き、海外の短期筋などが株価先物に売りを出した。
  ・もっとも、インバウンド(訪日外国人)関連の一部には物色が向かった。日本政府観光局(INTO)が10/18発表した9月の訪日客数は新型コロナウイルス流行前の水準をほぼ回復。京王・小田急・JR西日本などの鉄道株が堅調に推移した。
  ・個別株では、ファストリ・第一三共・リクルートが安い。一方、花王・クレセゾン・ニチレイが上げた。

 2)10/20、日経平均▲171円安、31,259円(日経新聞より抜粋
  ・米金融引締めの長期化懸念を背景に前日の米株式相場が下落し、東京市場でも主力株に売りが先行し、下げ幅は一時▲300円を超える場面もあった。米長期金利の上昇が相場全体の重荷となった。
  ・パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の金融引締めに積極的な「タカ派」発言をきっかけとした米株安を受け、朝方は成長(グロース)株に売りが目立った。10/19夕の米債券市場で長期金利が一時5%台まで上昇したこともCTA(商品投資顧問)などの機械的な売りにつながった模様だ。中東情勢の一段の悪化への警戒が根強い中、週末の持ち高調整の売りが出やすかった。
  ・10/20午前には日経平均のオプション価格から算出する日経平均ボラティリティ
  ・インデックス(VI)が年初来高値を一時上回った。金融資産の変動率に着目して売買するリスク・パリティー戦略を採用する機関投資家の売りが出たとの声が聞かれた。
  ・ただ、売り一巡後は前日終値31,430円近辺まで下げ渋る場面もあった。来週から本格化する主力企業の2023年4~9月期決算で業績見通しの上方修正が相次ぐとの観測から下値では押し目買いが入った。
  ・個別株では、太陽誘電の下げが目立った。リコー・キャノンも下げた。セブン&アイも売られた。一方、第一三共が大幅に上昇、INPEXも買われた。郵船・三井物産も高かった。

●2.日本株:「やや割安感」もあるが、米国の長期金利の動向次第

 1)日経平均はNYダウに比べて「やや割安感」が出てきた

 2)ただ、米国株が金利上昇で下落傾向を示唆しており、連れ安に注意したい

 3)米国の長期金利の動向次第の様相が深まる

 4)短期筋の海外投資家の株価先物の売買手口を見ると、「様子見」姿勢

 5)今日10/23は、下落から始まりそう

●3.日本9月消費者物価コア指数は前年比+2.8%で、市場予想+2.7%を上回る(フィスコ)

●4.第一三共、米メルクと「がん分野」で提携、最大220億ドル受取る(ロイター)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4661 OLC     業績向上期待。
 ・4996 クミアイ化学 業績好調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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