相場展望9月25日号 米国株: インフレ再加速で、高金利が数年となる可能性 日本株: 日本株は底堅いが、外国人の先物売りに注意

2023年9月25日 09:25

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/21、NYダウ▲370ドル安、34,070ドル(日経新聞より抜粋
  ・前日発表の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を受け、米金融引締めが長期化するとも見方が改めて広がり、米長期金利がほぼ16年ぶりの高水準を付け、株式の相対的な割高感が意識され、7/10以来の安値となった。
  ・米連邦準備理事会(FRB)が前日まで開いたFOMCで市場の想定通り、政策金利の据え置きを決めた。参加者の政策金利見通し(ドットチャート)では、年内に+0.25%の追加利上げの余地を残した一方、2024年の利下げ幅は前回予想から縮小した。市場では、「株投資家は高水準の政策金利が長く続くことを意識した売りに動いた」との声が出ていた。
  ・9/21朝発表の週間の新規失業保険申請件数は20.1万件と、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想の22.5万件を下回り、1月以来の低水準となった。米労働市場は依然として引締っているとの見方が広がり、FRBによる金融引締めの長期観測を強めた。米債券市場では長期金利が上昇(債券価格は下落)し、一時前日比+0.08%高い4.49%と、2007年11月以来の高水準を付けた。
  ・金利が上昇すると相対的な割高感が意識されやすい高PER(株価収益率)のハイテク株の一角が売られ、顧客情報管理のセールスフォースやスマホのアップルが下げた。
  ・金融引締めの長期化の伴う先行きの景気悪化への懸念もくすぶり、景気敏感株や消費関連株も売られた。化学のダウや建機のキャタピラー、スポーツ用品のナイキ、クレジットカードのビザが安い。ソフトウェア会社の買収を発表したネットワーク機器のシスコシステムズの下げも目立った。ネット通販のアマゾンやネット検索のアルファベット、電気自動車のテスラなど主力株が売られた。エヌビディアやAMDなど半導体株の一角も安い。

【前回は】相場展望9月21日号 米国株: FRBは9月金利据え置きも、インフレ懸念で金利上昇し株下落  中国株: 景気回復に向けて「空虚な進軍ラッパ」しか吹けない中国政府 日本株: 直近の下落は反動安の範囲、堅調な動きあり

 2)9/22、NYダウ▲106ドル安、33,963ドル(フィスコより抜粋
  ・長期金利の上昇が一服したため、まちまちで寄り付いた。その後、9月サービス業や総合PMI速報値の悪化を嫌気し、NYダウは下落。ハイテクは金利の低下で堅調に推移したが、連邦準備制度理事会(FRB)高官がインフレ率が依然として高く、金利引上げの可能性を主張した。
  ・原油高や年内の追加利上げの可能性、政府機関閉鎖の可能性や自動車労働組合(UAW)のスト継続リスクが警戒され、相場の戻りが鈍く、下落して終了した。
  ・業種別では、半導体・同製造装置が小幅高となった一方、自動車・自動車部品が下落した。

●2.米国株:インフレ再加速で一段の金利上昇が必要となり、高金利が数年となる可能性

 1)原油価格は上昇
  ・          9/1   9/15   9/22
    WTI原油価格  85.55ドル 91.20   90.33
  ・原油価格の上昇は物価上昇に連動しやすく、インフレ上昇に繋がる。

 2)金利は上昇      9/1   9/15   9/22
  ・10年物金利    4.179%  4.303   4.438

 3)米経済は底堅く堅調

 4)インフレ率は下げ止まり、反転上昇に転じた

 5)米株価は、金利上昇に対し相対的に割高感意識が醸成され下落基調へ
  ・米株価の推移    9/1    9/15   9/22
    NYダウ    34,837ドル  34,618  33,943 ▲894安 ▲2.57%減
    ナスダック総合 14,031    13,798  13,211 ▲820安 ▲5.84%減
  ・成長株のハイテク株比率の高いナスダック総合指数は、NYダウよりも下落率が大きい。
  ・金利上昇時期には債券が買われる(株は売られる展開に)。

 6)原油価格上昇と米経済成長の堅調、賃金上昇が続くと、インフレ再加速のリスク
  ・現状から、高金利の水準が続き、FRBによる金利停止・引下げ期待は裏切られ株価は試練を迎える可能性がある。

 7)注目のイベント
  ・9/28  4~6月期の国内総生産(GDP)
       パウエル議長タウンホールミーティング
  ・9/29  コアPCEデフレーター
       8月個人所得・支出

●3.FRBホフマン理事、「インフレ高すぎる」と一段の追加利上げを警告(ロイターより抜粋

 1)この発言には、「忍耐」などといった言葉で和らげらているが、金利がなお引上げられる可能性のほか、これまでの予想よりも長期にわたり金融政策が引締った状態にとどまる可能性が高いととの考えを強調するものだった。

 2)原油価格が上昇する可能性があり、インフレ対策が完了するまでに数年を要するかもしれない。

 3)インフレ率が依然として高すぎるため、FRBのインフレ目標率2%に戻すためには、現在の連邦公開市場委員会(FOMC)はさらに金利を引上げ、高水準な金利を継続しなければならない。

 4)堅調な米経済が続き、完全雇用が続いているため、インフレ率が高い状態が続くため、現在の政策金利の水準ではインフレ率の鈍化ペースは遅いとした。

 5)しかも、エネルギー価格が一段と上昇する可能性があるため、インフレが再加速する可能性がある。

●4.米「政府閉鎖」の恐れ、来月1日以降、共和党強硬派が「つなぎ予算」拒否(産経新聞)

●5.イエレン米財務長官、米経済は完全雇用の状態、望まないが経済減速が必要(ロイター)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/21、上海総合▲23安、3,084(亜州リサーチより抜粋
  ・投資家の慎重スタンスが継続する流れとなった。
  ・中国の景気不安が根強いほか、米金利高が嫌気された。米金融引締めの長期化観測が強まるなか、昨夜の債券市場では、米10年債利回りが2007年11月以来、およそ16年ぶりの高水準に切り上げた。
  ・人民元安も警戒。9/21の外国為替市場では、対米ドルの人民元が再び元安で推移している。
  ・また、中国本土が来週末、中秋節・国慶節の大型連休(9/29~10/6)に入ることも買い手控え要因として意識された。
  ・個別業種では、消費関連の下げが目立ち、医薬品も安く、素材も冴えない。エネルギー・不動産・ハイテク・インフラ関連・公益・金融なども売られた。

 2)9/22、上海総合+47高、3,132(亜州リサーチより抜粋
  ・中国政府の政策に対する期待感が改めて意識される流れとなった。
  ・中国商務部は9/21、消費促進に向けた各種キャンペーンを実施する方針を打ち出した。中国本土は来週末、中秋節・国慶節の大型連休(9/29~10/6、香港は10/2休場)に入る。連休中の消費活発化が期待された。
  ・そのほか、国営メディアは9/22、中国国家市場管理監督総局は「民営経済発展促進措置」を発表し、民営経済への政策支援を強化する方針を示したと報じている。
  ・中国人民銀行(中央銀行)は今週、レバーレスレポ取引を通じ、厚めの資金を市場に投入していることも好感された。
  ・また、外電は9/22、外国人投資家のA株保有比率について、上限引上げを検討している、と報じたことも材料視され、指数は上げ幅を徐々に広げた。
  ・個別業種では、消費関連の上げが目立ち、ハイテクも高く、金融もしっかり。エネルギー・不動産・インフラ関連・医薬・素材なども買われた。

●2.注目のイベント

 ・9/29  財新製造業・サービス業PMI

●3.経済より安保優先、景気対策は小粒で、利下げ見送りへ(日経新聞)

●4.中国のアフリカ向け融資が急減、昨年は2004年以降で最低(ロイターより抜粋

 1)アフリカは、中国の習近平主席が2013年に提唱した巨大経済圏「一帯一路」の重点的対象となってきた。ところが、2016年をピークに大きく減少。2022年は9億9400万ドルと、10億ドル割れ、2004年以降で最低の水準となった。

●5.ドイツ、5G網から中国を排除へ、経済安全保障が理由、2026年禁止へ調整 (時事通信)


■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/21、日経平均▲452円安、32,571円(日経新聞より抜粋
  ・米金融引締めの長期化観測を背景に、前日の米株式市場で主要株価指数が下落し、東京市場でも売りが終日優勢だった。中国の景気懸念を背景に香港ハンセン指数などアジア各国・地域の株価指数が総じて軟調に推移したことも重荷となり、午後に日経平均の下げ幅は▲470円を超える場面があった。
  ・米連邦準備理事会(FRB)は9/20まで開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で2会合ぶりに政策金利の据え置きを決めたが、年内の追加利上げや2024年以降の利下げペースの鈍化が強く意識される内容だった。市場では想定以上に「タカ派」だったとの受け止めが多く、海外投機筋などが日経平均先物に断続的な売りを出した。
  ・米長期金利が約16年ぶりの水準に上昇し、9/20の米株式市場ではハイテク株比率が高いナスダック総合指数の下落が目立った。この流れを受け、東京市場でもアドテストなど値がさの半導体関連株が軟調に推移し、日経平均を押し下げた。
  ・9/21の東京外国為替市場で円相場が一時148円台半ばまで下落した。円安の進行を受けて輸出関連株の一角に買いが入り、日経平均は下げ渋る場面もあった。ただ、財務省による円買い介入への警戒感も根強く、円安を好感した株買いは続かなかった。
  ・個別株では、ソフトバンクG・東エレク・太陽誘電・ファストリ・ソニー・TDKが下げた。ファナック・安川電・資生堂も売られた。一方、ブリディストン・味の素が高い。三菱UFJ・三井住友FGなど銀行株の上げが目立った。川崎汽船・商船三井・東電も買われた。

 2)9/22、日経平均▲168円安、32,402円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式相場の下落を受け、投資家心理が悪化した。東京市場では値がさ株を中心に売りが優勢だった。ただ日銀が9/22の金融政策決定会合で大規模な金融緩和策の維持を決定したことで、金融政策への不透明感が和らぎ、日経平均は下げ幅を縮める展開だった。
  ・9/21の米株式市場では米金融引締めが長期化するとの見方が引続き強く、主要3指数が軒並み下落した。米長期金利が約16年ぶりの高水準まで上昇したことも、ハイテク株の重荷として意識され、寄り付き直後の日経平均は下げ幅を▲400円強まで広げる場面があった。
  ・午後に入り、日経平均は下げ幅を縮小した。日銀は9/22に開いた金融政策決定会合で金融緩和策の現状維持を決めた。想定外のサプライズへの警戒感が後退し、短期筋を中心に日本株を買い戻す動きが優勢となった。もっとも9/22の取引終了後に植田・日銀総裁の記者会見を控え、様子見ムードは強かった。
  ・個別株では、日経平均の寄与度が高いファストリ・ソフトバンクGは下落。アステラスとダイキンの下げも目立った。一方、セコム・アドテストが上昇、ニデック・味の素が堅調に推移した。

●2.日本株:日本株は底堅いが、外国人の先物売りに注意

 1)日本株は米株に比べ、底堅さを示す
  ・日米株価の推移   9/1    9/15   9/22
    NYダウ    34,837ドル  34,618  33,943 ▲894安 ▲2.57%減
    日経平均    32,710円   33,533  32,402 ▲308安 ▲0.94%減

 2)短期筋の外国人の先物売りが続いており、動向に注意したい
  ・9/20 ▲6,479枚売  9/21 ▲8,296  9/22 ▲6,390

 3)注目イベント
  ・9/27  7月日銀・政策決定会合議事要旨
  ・9/29  失業率、東京CPI、鉱工業生産、小売売上高

●3.日本の貿易収支、8月は▲9305億円の赤字、輸出が2カ月連続で前年割れ(ロイター)

 1)対中国輸出は前年同月比▲11.0%減、1兆4350億円、9カ月連続減少。

 2)自動車輸出は増加、半導体製造装置が減少。

●4.パナソニック液晶ディスプレイが特別清算開始申し立て、負債5,836億円(ロイター)

 1)親会社パナソニックは貸付金5,800億円の債権放棄を発表済。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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