相場展望7月17日 米国: インフレは再加速が濃厚⇒金利引上げ圧力増す 日本: 日経平均はダブルトプを形成し、「下落」を示唆

2023年7月17日 15:33

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)7/13、NYダウ+47ドル高、34,395ドル(日経新聞より抜粋
  ・7/13発表の6月の米卸売物価指数(PPI)の上昇率が市場予想を下回った。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ長期化観測が一段と後退、買いが入った。
  ・PPIは前月比の伸び率が+0.1%と、5月▲0.4%下落から上昇に転じたもののダウジョーンズ通信がまとめた市場予想+0.2%上昇よりは下回った。
  ・7/12発表の6月の米消費者物価指数(CPI)もインフレ鈍化を示していた。FRBは6月に公表した政策金利見通しで年内あと2回の利上げを示唆していたが市場では「次回7月会合での利上げが(今回の利上げサイクルでは)最後になるとの見方が強まった」との指摘があった。
  ・買い一巡後にNYダウは伸び悩んだ。前日までの3日間で+600ドル超上昇していた。一部の銘柄には目先の利益を確定するための売りが出やすかった。
  ・PPIを受け、米長期金利は先日比▲0.11%低い3.75%を付ける場面があった。金利低下で相対的な割高感が薄れた高PER(株価収益率)のハイテク株が買われやすく、ソフトウェアのマイクロソフトや顧客情報管理のセールスフォースが上昇した。米経済の先行き不安が薄れ、景気敏感株である工業製品・事務用品のスリーエムや建機のキャタピラーも上げた。ネット検索のアルファベットや半導体のエヌビディアの上昇が目立った。半面、ドラッグストアのウォルグリーンズや保険のトラベラーズといったディフェンシブ株の一角に売りが出た。

【前回は】相場展望7月13日 米国株: 米インフレ率は「高止まり」状態、安易な観測に注意 年内は金利引き上げ継続を予想 日本株: 日米金利差の縮小による「円高」に警戒

 2)7/14、NYダウ+113ドル高、34,509ドル(日経新聞より抜粋
  ・朝発表の2023年4~6月期決算が好調だったヘルスケア株や金融株を中心に買いが広がり、NYダウを押し上げ、昨年11月下旬以降およそ7カ月半ぶりの高値で終えた。インフレが鈍化しているとの見方が強まっていることも相場の支えとなった。
  ・医療保険のユナイテッドヘルスは+7%高で終え、1銘柄でNYダウを+210ドルあまり押し上げた。4~6月期決算で売上高と1株利益が市場予想を上回り、通期の1株利益見通しを上方修正したことが好感された。
  ・製薬のメルクなど関連銘柄にも買いが及んだ。
  ・金融のJPモルガンチェースも4~6月期決算で市場予想を上回る増収増益となり買いが入った。
  ・市場では「週末を控え、持ち高調整の売りも出ていたものの、決算発表が好感された銘柄が支えとなった」との見方があった。
  ・ミシガン大学が朝発表した7月の消費者態度指数が72.6と、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想65.5を上回り、2021年9月以来、1年10カ月ぶりの高水準となったことも株買いにつながった。
  ・アナリストが投資判断を引上げたソフトウェアのマイクロソフトや、日用品のP&G、スマホのアップルが買われた。電気自動車のテスラやネット検索のアルファベットが買われた。一方、石油のシェブロンや化学のダウ、航空機のボーイングが下げた。半導体のエヌビディアが下落した。

●2.米国株:米国のインフレ圧力が強まり、再加速が濃厚⇒金利引上げ圧力増

 1)国際商品価格が上昇 ⇒ インフレ加速の可能性
         7/3    7/13    7/14
  WTI原油   69.79ドル 76.89   75.25
  銅      379ドル  394    ー
  CRB指数   260.9   270.74  270.79

 2)米国でも石油・ガス掘削リグ減少
  ・531基で前年同期比▲81基下回り、2022年4月以来の低水準(ロイター)
  ・原油・ガス価格の低下を受け、掘削リグ数が減少 ⇒ 原油減産効果あり
  ・欧州・中国の景気減速による需要減も、国際的に価格上昇 ⇒インフレ圧力増

 3)米国は「年内の利上げ継続」と予想
  ・米国のインフレ率は鈍化してきたが、FRB目標の2%にはほど遠い。
  ・米国の経済は依然として「強さ」を維持している。労働市場では求人件数の鈍化がみられるものの、雇用は高水準にある。賃金の上昇も続いている。
  ・原油価格の上昇にみられるように、インフレ圧力は再度強くなってきている。
  ・以上の観点から、「FRBは年内の利上げ継続」とみる。

●3.SF連銀総裁が、十分な引締め域まで利上げが必要と再表明(フィスコ)

 1)インフレの改善を歓迎も、インフレ対処について「勝利宣言には早すぎる」と十分な引締め水準まで利上げが必要だと再表明した。

●4.米セントルイス連銀総裁が辞任、パデュー大学ビジネススクールの学部長に(ロイター)

 1)ブラード氏は、利上げを支持するタカ派として知られる。   

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)7/13、上海総合+40高、3,236(亜州リサーチより抜粋
  ・米金利の低下が好感される流れだった。
  ・昨夜の米債券市場では、米利上げ長期化観測の後退で米長期金利が大幅に低下した。6月の米消費者物価指数(CPI)が予想以上に前月から伸びが縮小したことを受け、「米連邦準備理事会(FRB)は7月で利上げを打ち止めにする」との観測が流れた。
  ・外国為替市場では、人民元高・米ドル安が一段と進んだ。
  ・前日後に公表された6月の中国貿易統計では、輸出と輸入が大幅に縮小。中国景気の先行き不安は高まったものの、逆に、「当局は経済対策を強める」との見方が広がった。
  ・政府系シンクタンクの社会科学院は7/11に公表した報告書を通じ、財政赤字の拡大で消費のテコ入れを図るべきなどと提言した。
  ・業種別では、メディア・娯楽の上げが目立ち、酒造も高く、金融などが上昇。半面、発電が冴えず、自動車・バイクの一角が売られた。

 2)7/14、上海総合+1高、3,237(亜州リサーチより抜粋
  ・前日の好地合いを継ぐ流れとなった。
  ・経済対策の期待感が高まっていることや、通貨安の懸念が薄らいだことが支えとなった。
  ・中央銀行の中国人民銀行は7/14、人民元レートの対米ドル基準値を6日連続で元高方向に設定した。外国為替市場では、人民元高・米ドル安が一段と進行している。ただ、上値は重い。
  ・指数はマイナス圏に沈む場面もみられた。週明けに中国の重要経済指標がまとめて報告されるため、結果を見極めたいとするスタンスも漂っている。中国では週明け7/17に第2四半期GDP成長率、6月の各種経済統計(小売売上高や鉱工業生産など)、中期貸出ファシリティ(MLF)金利、7/20に最優遇貸出金利「ローンプライムレート(LPR)」が報告される予定だ。
  ・業種別では、ハイテクの上げが目立ち、通信も急伸、エネルギーも買われた。半面、消費関連は冴えず、発電・医薬品・素材は売られた。

●2.中国6月の銅輸入、前年比▲16.4%減、国内生産増加や需要低迷で(ロイター)

 1)アナリストは、目先、銅の消費低迷が続き、輸入の重しになるとの見方を示す。
   

●3.中国、6月輸出は前年同月比▲12.4%大幅減、3年4カ月ぶりの落ち込み(時事通信)

 1)輸入も▲6.8%減と振るわなかった。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)7/13、日経平均+475円高、32,419円(日経新聞より抜粋
  ・米利上げ長期化懸念の和らぎを背景とした前日の米株高を受け、幅広い銘柄が買われた。ハイテクやグロース(成長)株を中心に断続的な買いが入り、日経平均の上げ幅は一時+500円を超えた。
  ・7/12発表の6月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが市場予想を下回り、米利上げの打ち止めが近いとの観測から、米株式市場ではハイテク株を中心に上昇。今日の東京市場ではリクルートやエムスリーなどの成長株のほか、東京エレクやアドテストなど半導体関連株の上昇が目立った。
  ・市場では「海外短期筋の一部が売り建てていた半導体関連株を買い戻した」との見方があった。
  ・138円/ドル台に進んだ円高・ドル安は輸出関連株の重荷になり、三菱自・SUBARU・マツダなど自動車株の一角が下げた。
  ・ソニー・丸紅・任天堂が上げた。一方、T&D・三井不・イオンは下げた。

 2)7/14、日経平均▲28円安、32,391円(日経新聞より抜粋
  ・日銀が金融政策を修正するとの観測を背景に、外国為替市場で円高・ドル安が進み、海外短期筋から株価指数先物に断続的な売りが出た。下げ幅は一時▲200円に迫ったが、前日の米ハイテク株高が支えとなり半導体関連などに買いが入り、日経平均は上昇する場面も多かった。
  ・同日の外国為替市場では円相場が137円/ドル台まで上昇した。輸出関連企業の採算悪化などへの警戒がされ、日本株の重荷となった。「次回(7/27~28)の日銀金融政策決定会合までは、日本の株式相場は神経質な展開が続く」との見方が多い。
  ・朝方は買いが入る場面も目立った。前日の米株式市場でハイテク比率が高いナスダック総合指数は4日続伸し、2022年4月以来の高値を付けた。米インフレの鈍化観測が支えとなり、東京市場でも主力の半導体装置を中心に買いが入り、相場の支援材料となった。
  ・午後に入ると、これから本格化する主要企業の決算発表への期待や中国・上海株の上昇が追い風となる半面、週末をにらんだ持ち高調整の売りが出て、方向感に欠ける展開が続いた。
  ・ファストリ・ソフトバンクG・セブン&アイが下げた。一方、半導体関連のアドテスト・東エレクが買われた。川崎汽船など大手海運株の上昇が目立った。

●2.日本株 : 日経平均はダブルトップを形成し、下落を示唆

 1)日米金利差が縮小⇒為替市場で「円高・ドル安」が進行
  ・円高が進行      7/3     7/14
    円/ドル     144.63円   137.83  +6.8円もの円高、+4.7%円高
    日米10年物金利差 3.459%    3.362  10年国債金利の差が縮小
  ・日米の10年国債金利の差が縮小したのを受け、円高が進行。
  ・日銀が7月27~28の金融政策決定会合で、金利操作を変更すると、日本の10年物金利が上昇する可能性が浮上する。そうなった場合、さらなる「円高」進行は避けられない。

 2)「円高」は日本株にとって重要なポイント「下落圧力」

 3)日経平均はダブルトップ形成で下落示唆
  ・日経平均の推移  
   6/16  33,706円    ダブルトップ
   7/03  33,753     ダブルトップ
   7/12     31,943  ▲1,810円下落 ▲5.3%
   7/13    32,419
   7/14    32,390

●3.東京応用化  半導体製造用化学薬品生産の中国子会社を台湾・長春Gに譲渡(M&A)

●4.ニデック TAKISAWAを敵対的買収も、TOBで完全子会社化目指す(ブルームバーグ)

●5.SUMCO新工場に750億円の助成金、政府は半導体素材強化に本腰(時事通信)

●6.企業業績

 1)ファーストリ 23/8期営業利益3,600⇒3,700億円上方修正、前期比+24.4%増
          好調な海外事業を背景に最高益を見込む、中国も回復(ロイター)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4301 アミューズ

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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