相場展望4月11日号 米国、ハイテク売られ、相場の流れ変わる可能性 日銀に、「円安」による悪性インフレ退治を期待する

2022年4月11日 08:13

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)4/7、NYダウ+87ドル高、34,583ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦制度理事会(FRB)による積極的な金融引き締めを警戒した売りが先行したが売り一巡後は業績が景気に左右されにくいヘルスケアやディフェンシブ株を中心に買われ上げに転換した。
  ・FRBが4/6公表したFOMC議事要旨では、保有資産の圧縮ペースが前回よりも大幅に加速し、通常の2倍の+0.5%の利上げを複数回実施する道筋が示された。
  ・金融引き締めが景気を冷やすとの警戒感からNYダウは一時▲305ドル安まで下落。
  ・その後、業績が景気に左右されないヘルスケアの上昇が目立ち、相場は下げ渋った。

【前回は】相場展望4月7日号 過剰マネー相場終焉の始まりに注意 日本株4月相場は期待薄?

 2)4/8、NYダウ+137ドル高、34,721ドル(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利が2.73%と3年ぶりの高水準になったのを受け、利ざや拡大の見方から金融株が買われたが、高PERのテスラ・エヌビディア・半導体など値嵩株が下落。
  ・業績が景気動向に左右されにくいディフェンシブ株のユナイテッドヘルス・トラベラーズ・P&Jの買いも、相場を押し上げた。
  ・反面、ハイテク株が売られ、相場の重荷になった。
  ・米連邦制度理事会(FRB)が積極的に金融を引き締めるとの観測から、長期金利が4月に入って+0.4%近く上昇し、金融のGサックス・JPモルガンチェースが上げた。

●2.米国株:長期金利上昇・資源価格上昇で相場の流れが変わる可能性

 1)長期金利上昇: 利ざや拡大で金融株、景気後退でディフェンシブ株が買われる。
          反面、高値懸念でハイテク株が売られる。
  2)原油価格高: 利益拡大で石油株が上昇。
  3)年初来大幅下落: 買い戻し。

●3.セントルイス連銀ブラード総裁、年内に3~3.25%近くまでの急速な利上げを支持(フィスコ)

  1)FRBの金融政策の立ち遅れを認める。

●4.新規失業保険申請件数16.6万件に改善、労働市場の引き締まりを示唆(ロイター)

  1)高インフレ維持の一因。

●5.ロシア関連

 1)国連総会は4/7、ロシアの人権理事会から追放を決議、賛成79.5%(ロイター)
  ・ロシアは、決議後に「脱退」の意向を表明。(朝日新聞)

 2)米上院は4/7、ロシア関税優遇撤回法案を可決(フィスコ)

 3)ロシア首相は4/7、「ロシアは過去30年で最も困難な状況に直面している」(ロイター)

 4)ロシア大統領報道官4/7、ウクライナ侵攻で、かなりの兵力失う「大きな悲劇」(ロイター)

 5)ウクライナ軍の反撃で、膨張するロシア軍費で国家財政を圧迫(産経新聞より抜粋
  ・欧州の調査研究機関は3月上旬、人的損害含む1日当たりの戦費が200億ドル(約2兆4,900億円)と試算。
  ・米経済誌フォーブスは、侵攻開始16日間で露戦車363両・ヘリコプター83機損害。
  ・ストックホルム国際平和研究所は、ロシアの軍費は2020年で617億ドル、GDP比4.3%と高く、経済制裁で外貨確保が難しく、戦線拡大はロシア財政を直撃と報告。

 6)EU、ウクライナのEU加盟手続き加速へ、武器調達支援10⇒15億ユーロ(毎日新聞)

 7)英首相、ウクライナ電撃訪問、装甲車・対艦ミサイル・経済支援5億ドル表明(朝日新聞)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)4/7、上海総合▲46安、3,236(亜州リサーチ)
  ・中国景気の先行き不安がくすぶる流れだった。
  ・世界銀行やエコノミストらは、中国経済成長率を相次ぎ下方修正している。
  ・上海市政府が4/7発表した新規感染者数は4/6に19,982人と過去最多を更新した。
  ・その他、米国で金融引き締めの動きが加速するとの見方が高まり、マイナス材料。
  ・李克強首相は4/6、国務院常務会議で、中国景気に下押し圧力がかかっているとし、適時に支援をして経済を支える方針を示した。
  ・業種別では、不動産の下げが目立ち、ハイテク・消費関連も冴えなかった。

 2)4/8、上海総合+15高、3,251(亜州リサーチ)
  ・中国政府の経済対策への期待が相場を支える流れとなった。
  ・市場では「早ければ来週にも、預金準備率や中期貸出し金利の引き下げで一段の緩和策が発表される」との見方が広がった。
  ・4/6の国務院常務会議では、適時の金融支援で経済を支える方針が改めて示された。
  ・中国の新型コロナ感染が再拡大し、4/7に2万人を突破した上海市では、事実上のロックダウンが延長され、物流の混乱も危惧される状況となった。業種によっては、業績の下方修正も必至だ。
  ・業種別では、インフラ建設関連の上げが目立ち、医薬品・消費関連が売られた。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)4/7、日経平均▲461円安、26,888円(日経新聞より抜粋
  ・米連邦制度理事会(FRB)が金融引き締めを積極的に進めるとの観測から、東京市場でもリスク回避の売りが優勢となり、下げ幅は一時▲500円を超える場面があった。
  ・4/6に米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公表され、FRBによる保有資産の縮小や利上げ幅など具体的な議論を明らかにした。
  ・中国では新型コロナ感染が広がる上海でロックダウン(都市封鎖)が続いている。製造業を中心に生産や販売が下振れしかねないとの見方も、日本株の重荷になった。
  ・新年度入りで国内機関投資家のリバランス(資産配分の見直し)売りもあった。
  ・世界経済の影響を受けにくいディフェンシブの医薬や食品の買いが下値を支えた。
  ・アドテスト・東エレクなど半導体の下げが目立ち、アステラス・味の素が買われた。

 2)4/8、日経平均+97円高、26,985円(日経新聞より抜粋
  ・日経平均は前日までの2営業日で▲900円近く下落していたため、海外の短期筋を
中心に目先の戻りを見込んだ売り方の買い戻しが入り一時+300円に接近した。
  ・心理の的な節目の27,000円を一時上回ったが、買い一巡後は国内機関投資家の益出
しに伴う売りが続き急速に伸び悩む場面があった。
  ・市場では「米FRBが積極的な金融引き締めを進めることへの警戒感は根強く、先行きに確信をもてない」との指摘があった。
  ・ニコン・キャノン・三菱電・川重が高く、スズキ・丸井・楽天が安かった。

●2.日本株:

 (1)「円安」・資源高に起因する「悪性インフレ」を退治する日銀に期待
 (2)3月期をイベントとし相場を牽引してきた買主役は、売越しに転じたまま

 1)日米長期金利差拡大が円安・ドル高を招き、物価高・コスト上昇を上積みしている
               1/04    4/08          
  米10年国債金利      1.647%   2.704%
  日10年国債利回り     0.085    0.225
  日米金利差        1.562    2.479
  円ドル          115.79円  124.02

  WTI原油先物       76.99ドル  97.84
  CRB国際商品指数(資源・穀物)235.51   298.21
 
 2)日本銀行の目的は、
  (1)「物価の安定」を図ること(日本銀行法第1条第1項、第2条) 
  (2)「金融システムの安定」に貢献すること(日本銀行法第1条第2項)
   ・「物価の安定」は、経済が安定的かつ持続的な成長を遂げる上で不可欠な基盤であり、日本銀行はこれを通じて国民経済の健全な発展に貢献するという役割を担っている。

   ・「金融システムの安定」は、決済システムの円滑かつ安定的な運行の確保を通じた金融システムの安定(信用秩序の維持)に貢献することが、重要な目的。日本銀行は、金融機関に対する経済サービスの提供や、「最後の貸し手」機能の適切な発揮等を通じて、この目的の達成に努めるとされている。

   ・現在、黒田総裁の日本銀行の実体は、どうか?

   ・インフレ年間目標2%に向けて、膨大な紙幣を印刷して市場に供給したが、目的は未達成。むしろ、日銀の膨大な通貨供給は、「資源高・円安」による「悪性インフレを増長」を招来という温床になるリスクがある。

   ・さらに、証券市場が下落するとETF購入して市場に介入して支えている。現状は東京証券市場の前場引けが▲2%を超えると、後場に701億円のETF購入を機械的に実施。この行為は、日本銀行法が定めた定義を逸脱した拡大解釈ではないか。また、日米の長期金利の差が拡大し、為替市場では「円安・ドル高」が進行し、4/8に 1ドル124円台にまで円安が急伸。円安で潤うのは自動車業界など輸出関連企業でGDPの25%が対象と言われている。つまり、GDPの75%を占める部門にとって「円安はマイナス要因・悪」。結果、原油・穀物・鉱物など資源価格上昇に加えて、円安効果が上乗せして、今後は物価高がより国民生活に重くのし掛かってくる。コスト圧迫で企業は値上げラッシュ、電気・ガスも昨年から連続値上げ、ガソリン価格は急騰し輸送費も値上がりしている。賃上げは大手優良企業のみで、雇用者の7割を占める中小企業はコロナ禍もあって賃上げどころか、雇用の維持で精一杯。まして、物価高は、国民の多数の割合となった年金受給者の生活を直撃する。引いては、国民総所得GDPの6割を占める個人消費の減速は必至で、日本の経済後退(リセッション)を促すだろう。

  ・円安は貿易収支の悪化をもたらす。日本企業のパソコンを買っても、「メイドイン中国」で想像以上に、輸入に頼った日本の現状からすると、「円安によるマイナス効果は大きく」貿易収支赤字に直結する。
  ・そして、日本経済はますます世界経済から取り残されていく可能性が大。
  ・そうならないために、政府と日本銀行が果たす機能が存在しているはず。岸田政権も日銀も、関心はどこを向いているのか?日本銀行は、「円安」に対して『なすがまま』で放置し、負の効果測定と対策についてなんら手を打っているようにはみえない。株価維持よりも、根本的に重要な「国民の生活」を守る番人としての役割を直視して国民から請託した仕事に「先手必勝」で忠勤していただきたい。

 3)日経平均株価は、やや閑散相場で、相場上昇を牽引してきた主役は売り転換し継続中
  ・バークレイズ 2/18 51,272枚先物買残⇒3/25 121,071枚買⇒4/08 78,009枚買
          2/18から+69,799枚買い上がったが、4/8で▲43,062枚と買残未解消。
  ・みずほ    3/15 ▲46,146枚売残⇒4/01 ▲15,613枚売⇒4/08 ▲22,952枚売
          3/15から+30,533枚先物を買い戻したが、4/08で▲7,939枚売したが、売越し圧力が残っている。

●3.GW国内旅行者1,600万人、前年比+68.4%と予想、コロナ渦から回復(読売新聞)

●4.IMF、2022年日本の経済成長+3.3⇒+2.4%に下方修正、ウクライナ危機で(ロイター)

●5.企業動向

 1)コスモHD 旧村上ファンド系の保有株式比率7.09%に買い増し(ロイター)
 2)東芝    非上場化を特別委員会で検討、会社2分割や子会社売却は中断(朝日新聞)
 3)セブン&アイ ヨーカ堂は維持強調、そごう西武の売却検討は認める(朝日新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4552 JCRファーマ    業績好調。
 ・6080 M&Aキャピタル   業績堅調。
 ・4523 エーザイ       業績好調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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