相場展望 3月28日号 「弱含みで始まっても、引けにかけて急上昇」 が、日米株式相場で続く不思議

2022年3月28日 10:20

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)3/24、NYダウ+349ドル、34,707ドル(日経新聞より抜粋
  ・原油先物相場が▲4%近く下げる場面があり、ガソリン高が米消費を抑えるとの警戒感が後退した。
  ・米新規失業保険申請件数が18.7万件と市場予想21万件を下回り、52年ぶりの低水準となり、米経済の堅調さが意識され、買いを誘った。
  ・主要7カ国(G7)は3/24開催の首脳会議で、ロシアへの追加経済制裁を「必要に応じて講じる用意がある」と宣言したが、具体案には言及しなかった。欧州連合(EU)がロシアからの原油輸入を禁止するなどの制裁強化がひとまず見送られ、一段のエネルギー高への懸念が和らいだ面もあった。
  ・半導体株の上昇も相場を押し上げ、インテル+7%、エヌビディア+10%高と急伸。
 
 2)3/25、NYダウ+153ドル高、34,861ドル(日経新聞より抜粋
  ・米原油先物相場が上昇して石油が買われ、米長期金利の上昇を受けて金融も上昇。ただ、金利上昇時に売られやすい高PER(株価収益率)のハイテクが下落した。
  ・3/25にサウジアラビアの石油施設が、イエメンの親イラン武装組織フーシ派のミサイル攻撃を受け、大規模火災が発生したと伝わった。朝方は下げていた原油先物相場が上げに転じると、石油銘柄が買われた。
  ・FRBの利上げ前倒し観測を受け、米長期金利は一時2.50%と、2019年5月以来の高水準を付け、金融銘柄が買われた。
  ・ただ、NYダウはここ2週間で+1,800ドル超上げており、目先の利益確定目的の売が出やすく、半導体銘柄が総じて売られた。

●2.米国株:「弱含みの相場が、引けにかけて上昇」する展開が続く⇒慎重さ求められるか?

 1)年初からの売り攻勢で大幅下落 ⇒ FOMC後に、売り方の買戻しで大きく反騰
                    戻り率:NYダウ+53.6%、SP500+60.0%
  ・反騰した材料
  ・ウクライナ停戦合意が進展。
  ・原油先物価格が落ち着く。
  ・FRBの利上げが確定し、不透明感が薄らぐ。
  ・FRB議長の「米景気は強い」という楽観的発言の後押し。
  ・インフレ率高進のやや鈍化。

 2)米株の最近の特徴:「米債券市場は慎重に、米株式市場は楽観的」と違いが鮮明
  ・米株式市場は、楽観的で強い戻り基調が続く ⇒ 強い景気。
  ・米債券市場は、長短金利差が「逆転」⇒ 景気後退を示唆。
  ・3/25 米国債利回り  5年物 +2.561%
              10年物+2.488%
              差引 ▲0.204% ⇒ 景気後退を示唆

 3)懸念材料
  ・ウクライナ戦争が短期で終わるとは限らない。⇒ 世界経済への影響も未知数。
  ・3月急騰で、短期的な過熱感が出ている。
  ・5月FOMCの+0.50%利上げの織り込み始めはこれから。
  ・3月+0.50%予想から+0.25%となったため、再仕切りとなる。
  ・富裕層を対象にした資産含み益課税は、株式投資にとって負の材料。
  ・バイデン氏は当初、大統領選で富裕層課税を掲げたが、その後に撤回した。
  ・撤回を受けて、株式相場は好感し株価上昇した経緯がある。
  ・チャートからは、踊り場を形成して、上下の分岐点にある状況。
  ・FRBの5月+0.5%引き上げ、ウクライナ泥沼・長期化。

●3.バイデン米政権、富裕層の未実現キャピタルゲイン最低20%課税提案(ブルームバーグより抜粋

 1)3/28発表の2022年会計年度(2022年10月~2023年9月)予算教書で、1億ドル(約122億円)を上回る超富裕層の家計を対象に、所得と未実現のキャピタルゲイン所得の両方に最低20%を課税する増税案を提案する。「ビリオネア最低所得税」と呼ぶ。

 2)法律が成立すれば、今後10年で推定3,600億ドルの新たな税収が見込まれ、同期間に想定する赤字支出の削減額(1兆ドル)の3分の1余りに相当する。

●4.パウエルFRB議長の発言を受け、米長期金利の上昇幅拡大(DZHフィナンシャル)

 1)パウエル大統領発言の要旨
  ・必要ならFOMC会合で+0.25%を上回る+0.5%の利上げを実施する可能性。
  ・中立金利を上回る引き締めが必要な場合は、そうする。
 

●5.アトランタ連銀ボスティック総裁は、今年7回の利上げを想定、2023年は2回(ロイター)

 1)FOMCメンバーは、年内残り6回の会合すべてで利上げ、2023年は4回利上げを想定したのが大勢。

●6.パウエルFRB議長、必要なら5月+0.5%利上げ(ブルームバーグ)

●7.FRBは年内に複数回の0.5%利上げ、バンカメとシティ予想(ロイター)

 1)銀行別予想利上げ
        5月 6月 7月 9月 10月 12月 (単位:%)
  ・シティ  0.5  0.5  0.5  0.5  0.25 0.25  2023年に3.50~3.75%予想
  ・バンカメ 0.5  0.5              2023年5月に3.00~3.25%予想
・ゴールドマン 2022年最大7回、2023年最大5回利上げし、2023年末3.00%予想

●8.ロシアvsウクライナ関連

 1)ウクライナ軍の分析、ロシア軍は3日以内に食糧・弾薬・燃料が尽きる(Newsweek)
  ・ロシア軍は、ロシア兵士集団の需要に応えるだけの補給ルート構築が出来なかった。

 2)ロシアは、キエフへの進軍停止、東部ドンバス地域の完全掌握に注力(ブルームバーグ)
   ・1カ月にわたる戦争で、軍事的野心を後退させつつある可能性を示唆した。
   ・ウクライナ軍はロシア軍に反撃し、首都キエフ近郊から押し戻そうとしている。
   ・ウクライナ軍が南部ベルジャンスク港付近で、ロシア軍艦を破壊と発表(ロイター)

 3)ロシアのウクライナ東部攻撃に注力は、交渉での影響力視野か(ロイター)

 4)米国政策研究機関「軍事研究所」は、ロシアは『当初目標達成できず』と分析(FNN)
  ・分析結果を3/25発表
   ロシア国防省の「軍事作戦第1段階達成、東部に集中」の会見発表の目的は、ロシア国内向けに美化しており、当初目標だった首都キエフなど主要都市制圧に失敗し、シナリオ修正したと分析した。
(注)日本の大本営発表に類似の「撤退」を⇒「転進」と言い換えるようなもの。

 5)ウクライナ軍発表、3/26までに南部へルソン州の戦闘でロシア軍中将が戦死(CNN)
  ・ロシア軍はウクライナ攻撃開始以降、これまで将官6人程度と黒海艦隊の副司令官
  が死亡したとみられている。
  ・西側当局は、ロシア軍将官7人死亡、1人解任と報じる。(AFP、時事通信)チェチェン共和国特殊部隊の将軍も戦死。解任されたのは北東部のハリコフ制圧を任されていた精鋭部隊の司令官。(FNN)
  ・ロシア軍の無線は旧式で、現場の兵士は、作戦内容はおろか自分たちの位置情報すら認識できていない。(FRIDAY)ロシア軍が通信手段に使っているのは、自分たちのスマホや携帯電話という。スマホにはGPS機能がついているため、ウクライナ軍から会話を傍受されピンポイントで次々と攻撃を受け、被害が拡大。

 6)ロシア軍は3/25、死者1,351人と3週間ぶりに公式発表(AFP BB News)
  ・西側諸国の推計は、この4~5倍となっている。
  ・侵攻開始から1カ月でロシア部隊の6分の1が戦闘力を失う。ロシア軍115~120大隊のうち、約20個が「戦闘力を失った」とみられる。さらに、ロシア陸軍第37自動車狙撃旅団の司令官は「部隊に大損害をもたらした」として、部下に戦車にひかれて殺害されたという。「ロシア軍が抱える士気の問題」が表面化している。

 7)英紙タイムズ3/26、ロシア軍は明確な指揮命令系統の欠如が混乱の原因(共同通信)

 8)ウクライナ世論調査、半数が「武器を手に闘う」(AFP、時事通信)
  ・ノルウェーのオスロ国際平和研究所がウクライナ国民に3/9~12に世論調査を実施。
  ・18~55歳のウクライナ国民の約半数が、ロシアから国を守るために戦闘する用意が
  あると、3/26に明らかにした。男性は70%、女性30%が武器を手に闘うと答えた。
  ・オスロ国際平和研究所は、「ウクライナ国民の士気の高さは驚異的だ」としている。

●9.ドイツ、ロシア産原油への依存は「年内に脱却」、天然ガスも大幅輸入削減(時事通信)

●10.米新規失業保険申請件数18.7万人、予想21.0・前回21.4万人から改善(フィスコ)

 1)1969年来で最低。

●11.米3月製造業PMIは58.5、予想56.6・2月57.3を上回る(フィスコ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)3/24、上海総合▲20安、3,250(亜州リサーチ)
  ・インフレ高進の警戒感が再燃し、投資家の慎重なスタンスが強まる流れとなった。
  ・ロシア産原油の供給がさらに細るとの見方が広がり、昨夜のWTI原油先物は+5.2%も大幅上昇した。製造業や輸送のコスト上昇による景気下振れが不安視された。
  ・もっとも、下値を叩くような売りはみられない。中国経済対策の期待感などが相場を支えている。
  ・業種別では、ITハイテク関連の下げが目立ち、消費関連も冴えない。反面、医薬品は急伸、石炭も高い、非鉄・銀行・海運も買われた。

 2)3/25、上海総合▲38安、3,212(亜州リサーチ)
・中国景気の持ち直し期待で、前場は下げ渋る場面がみられたものの、引けにかけて下げ幅を拡大した。
  ・対露制裁の拡大に伴う世界経済に対する悪影響や、米中対立の激化が懸念される。
  ・対露制裁が中国に及ぶとの不安もくすぶった。EUの関係者は「中国はロシアに半導体を輸出する準備をしている疑念がある」と指摘している。
  ・業種別では、医療機器関連の下げが目立ち、酒造も冴えない。反面、紡織が高い。

●2.中国2021年婚姻件数763万組、2022年にも公式統計上で人口減少に転換も(共同通信)

 1)中国の婚姻件数は2014年以降減り続けている。

 2)結婚や消費に意欲を見せない若者の増加が、社会問題となっている。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)3/24、日経平均+70円高、28,110円(日経新聞)
  ・このところの大幅高の反動で、朝方は幅広い銘柄に売りが先行し、一時▲400円超下げた。
  ・売り一巡後には、トヨタや資源高を背景に鉱業や商社株が物色され、主力銘柄にも買い直しが入って、大引け前に上昇に転じた。
  ・太平金・住友商・三菱重・ヤマハ・ソフトバンクGが上昇し、海運株が大幅安。

 2)3/25、日経平均+39円高、28,149円(日経新聞)
  ・9日連騰記録、1/18以来の2カ月ぶりの高値、一時+200円高超となった。
  ・前日の米国株の上昇や、円安基調を背景に、東京市場では買い優勢だった。半導体が買われ、海運・医薬品が上昇した。
  ・後場に、利益確定売りとアジア株安などから一時▲160円安となったが、その後は戻した。
  ・TOPIXは9営業日ぶりに小幅反落した。
  ・東エレク・塩野義・第一三共・TDK・ファナックが高く、ソフトバンクG・KDDI・ダイキン・キーエンスは売られた。

●2.日本株:リバウンドがしばらく続く可能性あるが、心配事も膨らむ

 1)3月急反騰の主役は、「売り方の買戻し」である。
  ・今回の反騰の牽引役は「売りに回っていた外資系短期筋が、ウクライナ停戦の進捗や期末の買い需要が高まるのを見越して、膨れ上がった売りリスクを回避するための強引ともいえる買戻し」だったとみている。
  ・しかし、度が過ぎて、買いが膨らみ過ぎリスクが大きくなり始める局面に差し掛かりつつあると思われる。
  ・9日連騰もしており、反動の谷の深さも気になる。

 2)最近の株式市場の特徴的なこととして、「買いの息切れ」を感じ始めたこと。
  ・朝方は、マイナス含めた弱いスタート ⇒ 引けにかけての反発でプラスになる展開が続いている点だ。
  ・そこに、上げ相場の息切れ状況を見て取れる。

 3)株式先物市場をみると、昨年8月20日ごろ⇒9月中旬までの急騰相場を主導したのがバークレイズ。今回の上げ相場でも牽引役として再登場している。そのバークレイズの先物買い残高は9月半ばのピーク越えており、その残高増減の推移を注視したい。

 4)4月相場は上昇するという経験則がある。
  ・海外年金資金による買いが源泉となってきた。
  ・例外は、昨年2021年4月の下げ。
  ・これは、3月末に日銀がETF購入の基本的廃止を表明し、外資系短期筋が日本株への魅力低下により、売り急いだのが原因とみる。
  ・結果として、日銀のETF政策変更が、日経平均の▲4,000円安を招いた。

 5)4月の予想される買い主体。
  ・3月期末の配当金の再投資。
  ・4月海外年金資金による買い需要。
  ・新年度入りのポジション調整による買い。

 6)2022年4月は上昇するという構図は変わらないが、気がかりな悪材料が浮上。
  ・3月の反転相場は余りにも激しかったため、その反動安があっても不思議ではない。5月米FOMCによる+0.5%の大幅利上げは市場では織り込んでいない。
  ・ただし、債券市場は織り込み始めて慎重になっているが、株式市場は余りにも楽観的すぎるため、シビアな材料が現出すると過剰反応を起こす可能性がある。
  ・テクニカル分析でも、過熱感が示されている。
  ・SMBC日興証券の会社ぐるみの株価操縦事件が重くのしかかってくる可能性がある。
  ・海外年金資金が最も嫌うのは不祥事であり、日本株への不信感から4月買いが期待できなくなるおそれがある。
  ・株式市場への不信感が株価に影響してくる前に、買い需要が期待できる内に海外短期筋の売り転換もあり得る。
  ・海外投資家は3月急騰したため、利益確定売りに反転しても不思議でない。
  ・5月米FRBの+0.5%利上げと、FRBバランスシート縮小を意識したリスク回避の売りも想定できる。
  ・バイデン政権提案の富裕層向けキャピタルゲイン課税(税率20%)の負の市場反応が起きた場合の、日本株への波及も気掛かりなところである。

 7)急反発で配当金以上の大きな利幅を確保した反動に注意。
  ・配当権利落ち3/29後は利益確定売りに見舞われる可能性が出てきたので、
注目したい。 ⇒ 反落リスクの芽生えか?
   「朝方、弱気で始まった相場も、引けにかけて上昇する」という攻防戦が続く不思議さも、早晩、明らかになりそうだ。

●3.岸田首相、4月末までに物価対策、ガソリン補助金は1ヶ月延長(時事通信)

●4.感染力強いオミクロン系BA.2に置き換わり進み4月100%に、第7波に警戒(産経新聞)

●5.日本GDP1~3月、民間予測は年率▲0.24%、オミクロンで消費落ち込み (NHK)

 1)まん延防止等重点措置が各地に適用され、外食や旅行などGDPの半分以上を占める
「個人消費」が、前3カ月と比べて▲0.83%となったことが主な要因です。

 2)4~6月は、まん延防止等重点措置の解除に伴う消費の回復で年率換算+5.05%と高い成長が見込まれているものの、ウクライナ情勢に関連した「原油価格の上昇」など先行きの不透明感を懸念する見方が多くなっています。

●6.日本3メガバンク、ロシア最大手銀行のズベルバンクとのドル取引を全面停止(読売新聞)

 1)3メガバンクは、すでに金融決済網SWIFTから外されたロシア第2位のVTB銀行やバンクロシアといった金融機関との取引を全通貨で止めている。

 2)ズベルバンクは、ロシアに進出する日系企業やその従業員が利用し、影響が及ぶ。

●7.ロシア、日本のロシア制裁に反応(共同通信)

 1)北方領土交渉の中断。
 
 2)北方領土への墓参などを目的としたビザなし交流の停止。

 3)北方領土問題含む日本との平和条約締結交渉の中断。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4443 Sansan    業績好調。
 ・4612 日本ペイント 業績堅調。
 ・4523 エーザイ   業績好調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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