相場展望1月13日号 米国株: NYダウ11/5大統領選後に史上最高値更新も、11/5前に戻る 日本株: 親中・離米の石破首相下で、日本製鉄のUSスチール買収は無謀

2025年1月13日 19:00

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)1/09、カーター元大統領の国葬のため休場
 2)1/10、NYダウ▲696ドル安、41,938ドル

【前回は】相場展望1月9日号 米国株: インフレ再燃⇒長期金利上昇⇒株価警戒が根強くなっている 日本株: NYダウに比べ「割高感」、次世代自動運転車でトヨタに注目

●2.米国株:NYダウは11/5大統領選後に+3,220ドル高と史上最高値更新も、11/5前に戻る

 1)金利が急伸、1/10に10年債利回りは4.759%に上昇
  ・米国30年債利回りも5%に上昇したことで、次回の利下げ見込みは大きく後退。

 2)12月雇用+25.6万人増で予想上回る、失業率は4.1%に低下⇒インフレ懸念が再燃
  ・11/5の米国大統領選挙後、トランプ次期大統領の掲げる (1)規制緩和や(2)減税などの政策への期待から米国株価は上昇基調にあった。

  ・その後、トランプ氏の政策の(3)関税引上げなど、米国経済のマイナス面が意識されて米国株価は軟調基調となっていた。

  ・そして、トランプ氏は激しく迫った。
   ・カナダに向かって、米国の51番目の州になれ。
   ・メキシコに対し、メキシコ湾の呼称をアメリカ湾に変更要求。
   ・パナマ運河の管轄権の米国への移管。
   ・デンマーク領のグリーンランドの米国による買収・領有化。
   ・NATO諸国に対して、軍事費を2%⇒5%への増額要求。
    「5%に増額しなければ、米国は西側欧州を守らない⇒NATOから脱退」すると「米国ファースト」発言が激化した。

  ・そのため、米国のインフレ(物価上昇)が長期化すると、金利上昇は必然的に連鎖することになる。そうなると、FRBは金利引下げについて慎重になり、金利据え置きとなろう。むしろ、インフレに勢いが出ると、金利引上げを誘引する可能性が浮上する。

 3)米国NYダウは11/5大統領選後に+3,220ドル高と史上最高値更新も、11/5前に戻る
  ・NYダウの推移
    11/04 41,794ドル
    11/05 米国大統領選挙
    12/04 45,014:トランプ政策期待で+3,220ドル高・+7.7%高
    12/24 43,297
    12/25 クリスマス休暇
    12/26 43,325
    01/10 41,938:インフレ懸念と金利高で▲3,076ドル安・▲6.8%

  ・トランプ政策((1)規制緩和(2)減税)期待で12/4に史上最高値を更新した。

  ・その後、高値警戒感から株価は軟調となり43,000ドル台で推移した。

  ・12/27から、トランプ政策のマイナス面が意識され、インフレ再燃懸念や金利据え置き予想が増して、米国株価は下落に転じた。1/10は良好な雇用統計を受け、マイナス懸念が増し、NYダウは▲696ドル安と大幅下落となり41,938ドルで終えた。

 4)NYダウのチャートは崩れた
  ・2024年8/5の底値を起点とした上昇ラインが、12/4を天井として下落に転じ、上昇支持線を下に抜けた。

  ・2023年10/27を起点に上昇してきた上昇支持線も、下に向かって放たれた。

  ・NYダウは上記の2つの上昇支持線を下に抜け、チャートは崩れた。

 5)NYダウの弱い動向からすると、今後は底を探る可能性が高いと予想
  ・機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数も、NYダウと同様の動きを示している。

●3.米国雇用統計は予想上回る、失業率低下、利下げ休止の論拠裏付け(ブルームバーグ)

 1)12月の非農業部門雇用者数は+25.6万人増、3月以来の大きな伸び。
 2)失業率4.1%、予想4.2%から予想外に改善。
 3)平均時給は前年比+3.9%増。

●4.米国CNN、トランプ氏は同盟国含め一律関税を課す緊急事態宣言を検討(ロイター)

 1)昨年8月に、米国の輸入品に一律で10~20%の関税をかける考えを明らかにしている。
 2)国際緊急経済権限法(IEEPA)は、米国に安全保障や経済面などで「異例で重大な脅威」がある場合には、大統領が緊急事態を宣言すれば、輸出入などで規制をかけることができると定めている。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)1/09、上海総合▲18安、3,211
 2)1/10、上海総合▲42安、3,168

●2.中国12月の消費者物価指数、11カ月連続プラスも上昇率は鈍化(NHK)

 1)中国・国家統計局が1/9発表した12月消費者物価指数は、前年同月比+0.1%の上昇となった。
  ・消費者物価指数がプラスとなったのは11カ月連続で、主な要因は、豚肉や衣料品などの値上がり。
  ・一方、上昇率は前月の+0.2%から鈍化し、+0.1%にとどまった要因。
    ・消費者の節約志向が強まるなか、自動車が値下がりしたほか
    ・住宅販売の低迷で家具や家電製品の価格も下落

 2)企業が製品を出荷する際の値動きを示す先月の生産者物価指数は、前年同月比▲2.3%の下落となった。

 3)中国共産党は、金融緩和の拡大や積極的な財政出動で景気を下支えする方針を示しているが、不動産不況の長期化を背景に依然として、デフレへの懸念がくすぶっており、効果的な対策を打ち出せるかが焦点となる。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)1/09、日経平均▲375円安、39,605円
 2)1/10、日経平均▲414円安、39,190円

●2.日本株:親中国・離米国の石破首相の下での、日本製鉄のUSスチール買収は無謀だった

 1)米国から信頼される同盟国・日本だったら許可された買収案件だった
  ・USスチールは、投資資金がなく設備リニューアルできなく高コストで採算が低かった。そのため、開発投資もできず技術革新に遅れを取り、経営資源は疲弊していた。USスチールは、設備改善のため投資するにも投資資金がなく、工場閉鎖や人員削減などに直面していた。もちろん、高価格帯で販売できる新製品についても技術開発力を欠いていた。

  ・日本製鉄は水素を使った製鉄など技術力が高く、新製品開発力に優れ、高利益を背景に豊富な資金力を保有していた。しかし、最近では中国自動車市場で日系自動車会社の不振を受け鋼板販売が減少し、次の事業拡大を狙ってインド・米国などに焦点を絞っていた。

  ・そのような状況下で、USスチールは支援企業として求めてきた。

 2)米国の鉄鋼市場は魅力的
  ・先進国の鉄鋼販売の成長は止まっている。しかし、米国は人口増もあり、経済成長は持続している。したがって、先進国としては珍しく鉄鋼の使用量は順調に伸び、新規参入がないため市場価格は高値維持されてきた。

  ・米国への鉄鋼事業の参入はチャーミングな案件だった。

 3)「鉄は国家」の思想は米国だけでなく日本でも同じだ
  ・日本製鉄は昔から「鉄は国家」と言い続けて、自社に有利となる国の政策を長年に亘って誘導してきた。

  ・その日本製鉄が何故、USスチールの買収を「民間経済の自由」を主張するのか、ご都合主義であろう。

  ・バイデン大統領も「鉄は国家」であり、この買収案件は「米国の安全保障」の問題として、日本製鉄によるUSスチールの買収を拒否した。

  ・両国で「鉄は国家」といわれるだけに、単純な民間企業の契約にはならないのは自明の理である。この案件は、日本製鉄の自分都合な理由で「鉄は国家」という認識を消去して判断し、買収に邁進した結果である。

 4)米国は、日本の時の政権によって「中国寄りになる日本」とみている
  ・田中角栄 ・1972年9月、中国(中華人民共和国)と国交正常化を果たす。それまで国交のあった台湾の中華民国と断交。
        ・日本から中国に総額3兆円を超えるODA(政府開発援助)を実施。
        ・米国の頭ごなしで実行した中国との国交正常化で、禍根を残した。当時の米国大統領は激怒したと伝わっている。
         5億円の裏金が田中首相に渡されたロッキード事件が起こった。田中首相は辞任に追い込まれた。ロッキードのコーチャン氏が動いたと言われている。贈収賄は米国法でも有罪とされるが、コーチャン氏は訴追されていない。ロッキード事件を引き起こしたのは米国政府筋と言われている。

  ・海部俊樹 ・1989年天安門事件で人民解放軍が実力行使し多数の死傷者を出す。G7が中国に制裁を課すなか、中国を訪問し、円借款を再開した。日本が率先して先進国首脳会議(G7)の制裁破りをした。
        ・1991年、湾岸戦争で多国籍軍に参加せず、130億ドルの戦費資金を提供するだけで「小切手外交」と批判された。戦後、クウェートが感謝広告を新聞に掲載したが、日本は不掲載。
        ・2010年、中国の招きで訪中し、南京事件での日本軍の虐殺を認め謝罪を行った。

  ・安倍晋三 ・地球儀を俯瞰した戦略を、トランプ・1期大統領に提案して受け入れられた。米英豪の「AUKUS(オーカス)」に日本も関与すべきと強調した。日米豪印の「Quad(クアッド)」でインド・太平洋の平和と安全の推進を訴えた。
        ・外交に不慣れなトランプ大統領をサポートし、リードした。
        ・安倍・トランプ氏とは数多く会談し、ゴルフ外交含めて積極的に関係強化した。

  ・菅義偉  ・首相就任時に早々にバイデン大統領の要請に応じ訪米し会談した。
        ・1年後の退任時にもバイデン大統領の異例の招きで訪米し会談した。
        ・間違いなく、米国からみて安倍・菅の2人が首相の時期の日本は親米国で強い絆で結ばれた「同盟国」であった。

 5)米国からみれば岸田・石破首相を「親中国・離米国」とみている
  ・何故、安倍・菅首相は米国大統領と親密であったのに、岸田・石破首相は会談を後送りにされたのか?

   ・岸田文雄 ・「親米派」」でもあるが「親中派」でもある宏池会に属し、広島県日中友好協会の会長にもなったという。
         ・2021年、首相就任時のバイデン大統領との初会談実現に月日がかかった。首相退任時に菅・前首相と違い、バイデン大統領からの招きなし。

   ・石破首相 ・トランプ氏の大統領選挙2期目勝利を受け、会談を申し込んだが、米国法令を盾に断られた。ところが、トランプ氏は自宅でカナダ、イタリアなどのトップと会談をしている。
         ・安倍夫人がトランプ氏の招きで自宅を訪ね食事をした時、トランプ氏は自署した本を石破氏に贈るとともに会談のお膳立までした。ところが、首相がお礼と会談の返書をしたためたという報道がない。トラップ氏から申し出のあった会談日程は、大統領就任後がよいと国会開会中の2月前半に遅らせた。
         ・石破首相は2024年10/1に首相就任しながら、訪米してバイデン大統領と会談しなかったことになる。極めて異例な事件である。石破首相がバイデン大統領と初面談は、APEC首脳会議でのついでの会談でわずか約10分に過ぎなかった。時間の短さから、もちろん、突っ込んだ会話はなく、表敬にとどまった。これは挨拶程度であり、会談したとは言えない。
         ・トランプ氏との会談も、当初は希望したが断られ、トランプ氏から声掛けしてもらったら断り返した。
         ・にもかからわず、外務大臣は中国に行かせて王毅外相と会談し、関係強化するとともに、訪日中国人の訪日ビザの緩和など日本側から譲歩した。しかも、自民党とは議論しないままの提案であった。石破首相は、自民党総裁選での公約を破って、首相になると「自民党は民主主義のため、党で認められない限り、総裁選の公約は実施できない」と発言した。ならば、今回の外相の中国人の訪日ビザ緩和発言について、どのような言い訳をするのだろうか。中国からはブイ設置の正当化発言があるなど、中国は歩み寄りがない。もちろん、尖閣諸島への中国海警局の領海侵犯や九州の領空侵犯について警告していない。
         ・反して、外務大臣は、日中韓の外相会議の早期開催に熱心に動いている。
         ・米国と中国との熱の差はどこにあるのか?外交は相互訪問が基本である。ブリンケン国務長官は日本に来て、石破閣僚と会談した。ところが、日本は外相含めて、米国に直接訪問はしていない。
         ・こういう状況にもかかわらず、石破首相は早期訪中を望んでいる。

 6)自民党の与党・公明党は、「立派な親中国」である
  ・創価学会は池田会長時代から訪中を定期的に繰り返し、中国に肩入れしてきた。公明党はその考えを踏襲し、長年に亘って訪中国し、その都度、中国政府など主要人物と会談し、友好関係を築いてきた。
  ・反して、米国とは距離を縮める・友好関係を築く動きはなかった。
  ・そのような公明党は、自民党に親中国寄りの政策を求めるのは当たり前のことである。
  ・公明党は石破首相に、中国・ロシア・北米・欧州・中央アジア諸国で構成する「アジア版全欧安保協力機構(OSCE)」創設の必要性を訴えた。自民・公明党が中国共産党と1/13~15に北京で開催する「日中与党交流協議会」でこの構想を中国側に提案すると山口氏が伝達した。
  ・ここで重要なのは、米国に事前説明しないで、先に中国に説明するという点である。
  ・中国を警戒する米国政府からみて、公明党は要警戒の団体と認定されてもおかしくない。
  ・まして、国内政治で弱り目の自民党にとって、公明党の協力は必要であるだけに自民党への公明党の影響力が増す土壌があるだけに要警戒事項である。

 7)日本製鉄も「親中国企業」との烙印を押されているかもしれない
  ・日本製鉄は、1970年代の技術支援から始まって中国の鉄鋼産業の近代化に関わってきた。日本製鉄は、世界最大手の鉄鋼メーカー・中国宝武鋼鉄の傘下にある「宝山鋼鉄」との間で2004年に合弁会社を設立し、自動車向け鋼板の製造や販売を行ってきた。
  ・この合弁事業の契約期間が2024年8月に期限を迎え、日本製鉄は契約更新を見送り、中国事業から撤退すると決めた。合弁会社の株式は、宝山鋼鉄に約360億円で売却するという。
  ・日本製鉄の技術が、宝山鋼鉄に盗用されたという事件も起きている。
  ・日本製鉄は20年もの合弁企業を運営し、技術提携に遡れば約50年の歴史を積み重ねがある。
  ・米国政権からみれば、日本製鉄自身を「親中国企業」の範疇に入れている可能性がある。
  ・将来、日本製鉄が苦境に入った時、大が小を飲み込むように中国宝武鋼鉄の傘下に入る可能性を懸念してるかもしれない。そのような時、中国政府は補助金を中国宝武鋼鉄に投入することも考えられる。

 8)中国は「独裁者の枢軸」と、駐日・米国エメニュエル大使の発言
  ・バイデン政権の「対中国観」を端的に示す言葉である。
  ・これは、トランプ2次政権になっても変わらない。むしろ、トランプ氏は日本に対して「日本は中国に近いのだから、防衛費を現状の2%ではなく4~5%に増額要求」してきそうな雰囲気である。
  ・日本政府が親中国の色合いを強めるなら、米国は日本の防衛にから手を抜く方向に傾くのではないだろうか。

 9)そのような日本の企業に、「鉄は国家」の米国政府はUSスチールの買収は不可
  ・「親中国・離米国」の日本と、米国政府から烙印を押されている可能性がある。
  ・そのような日本企業・日本製鉄によるUSスチールの買収を認めるにはハードルが高すぎる。
  ・USスチールを買収した日本製鉄が、中国資本の傘下に組み入れられる可能性がある。その時点で、親中国の日本政府が不認可するだろうか?米国の状況を理解して日本政府が阻止してくれるのか?石破首相はこの買収に関して「民間での案件であり、関与しない」と言った。中国企業が日本製鉄を買収するという重要案件になっても、日本政府は関与しないということになる。そうなると、米国内で有力な中国資本傘下のUSスチールが誕生することになる可能性もありえる。
  ・これは、米国政権としても受け入れられないだろう。そう考えると、日本製鉄によるUSスチールの買収が不許可となるのは当たり前である。

 10)円高へ転換か
  ・円相場の推移
    1/10、日本 158.37円 ⇒ 米国時間 157.76円 : 61銭円高へ
  ・米国株の1/10の大幅安を背景に、円高に転換した。

●3.東京海上日動、初任給を最大41万円に、人材獲得競争が激化(NHK)

●4.安川電、通期営業利益640⇒580億円に下方修正、米韓で投資停滞(ロイター)

●5.イオン、2024年3~11月期純損益▲156億円赤字、前年同期は+183億円黒字(時事通信)

 1)店舗閉鎖で損失、年末年始商戦で挽回できるとして通期予想(460億円黒字)は据え置いた。

●6.ファーストリテイ、2024年9~11月営業利益+7.4%増、中国は予想下回る(ロイター)

●7.セブン&アイ、9カ月決算で前年比▲65%減益、米国コンビニの不振で(NHK)

 1)米国のコンビニでは、物価高を背景に消費者の買い控えが起きている。
 2)国内では、ネットスーパー事業の撤退で特別損失▲1,700億円計上。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4502 武田薬     業績好調
 ・4503 アステラス薬  業績絶好調
 ・7550 ゼンショー   業績好調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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