相場展望10月17日号 株式市場の「甘い希望的観測」は、リスクが濃い 日本株は、「押し目買い・吹いたら売り」が良さそう

2022年10月17日 09:37

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)10/13、NYダウ+827ドル高、30,038ドル(日経新聞より抜粋
  ・朝方発表の米9月消費者物価指数(PPI)が予想を上回り、売り先行で始まった。ただ、CPIを受けた米長期金利の上昇が一服すると買いが優勢となり、値ごろ感を意識した買いも入り、NYダウの日中の安値から高値までの値幅は1,500ドルに達した。
  ・CPIではエネルギー・食品を除くコア指数が、前年比+6.6%上昇と、40年ぶりの高さとなり、市場予想+6.5%も上回った。
  ・米連邦準備理事会(FRB)が大幅利上げを続けるとの観測につながり、米長期金利は一時4.08%と2008年10月以来の高水準を付け、利上げが景気を冷やすとの懸念からNYダウは午前に一時▲549ドル下げた。
  ・売り一巡後は米長期金利が3.9%台に水準を切り下げると、株式相場は買い優勢となりNYダウは+957ドル高まで上げる場面があった。
  ・今週後半から本格化する主要企業の決算発表を控え、下値を拾う目的の買いも入った。
  ・英政府が減税政策の見直しを議論しているとの一部報道を受け、英国の財政悪化やインフレ加速への懸念が和らいだのも買いを後押しした。
  ・このところ下げがきつかった金融株の上昇が目立った。原油高を受け石油のシェブロンなどエネルギーや素材関連も高い。6~8月決算が市場予想を上回ったドラッグストアのウォルグリーンブーツも大幅上昇した。ネットフリックスや半導体株も大幅高。

【前回は】相場展望10月13日号 NYダウは10/13発表のCPIを控え、「立ちすくみ」 日米金利差拡大⇒円安進行、日銀「投機筋が円安 を主導」と責任転嫁

 2)10/14、NYダウ▲403ドル安、30,038ドル(NHKより抜粋
  ・消費者のインフレ予想が市場予想を上回ったことで、FRBによる大幅利上げで景気減速への懸念が強まって売り注文が増え、NYダウは▲400ドルを超える値下がりとなった。
  ・IT関連銘柄が多いナスダック総合指数は▲3%と大幅な下落となり、今年の最安値を更新した。
  ・市場関係者は「大幅な利上げ観測で、米国の長期金利が上昇したことも株価の下落につながった。これから発表が本格化する企業の決算で示されル業績に関心が集まっている」との指摘があった。

●2.米国株:株式は楽観論で株価上昇の意向根強いが、高インフレ続き金利引上げは続行

 1)株式市場は「楽観論」に染めたがるが、高インフレ水準は止まらず金利引上げ継続 
  (1)株式相場の「楽観論」の根拠。
   ・長期金利の低下。
   ・景況感指数の伸び率鈍化。
   ・インフレ率のピークアウト感(原油価格の落着きでガソリン価格の低下)。
    WTI原油先物価格は、3/7高値130.5ドル⇒9/26安値76.3に低下。
   ・米国求人件数の減少傾向に転じる。

  (2)金利引上げ継続の根拠。
   ・冬場の暖房用ガス・石油需要の高まりで石油価格上昇。
   ・原油価格は底止まり、価格は戻り反発傾向へ。
   ・OPECプラスの減産日量▲200万バレル決定。
   ・ロシアは戦費獲得と西側諸国への圧力強化で、原油価格高を志向。
   ・ロシアとサウジの友好関係、サウジと米国の冷めた関係が継続。
   ・産油国の財政事情から、原油価格高止まりを志向。
   ・米国政府による原油備蓄の放出⇒停止⇒減少した備蓄の積み上げ購入。
   ・高インフレ継続で、FRB含む欧米主要中央銀行の政策金利引上げ継続。
   ・米FRBは、11月+0.75%、12月+0.50%引上げが濃厚。
   ・米求人件数は若干鈍化したとはいえ、1,000万人を超え、雇用状況は厳しく賃金インフレが続く見通し。
   ・米国製造業は低下傾向を示すが、米GDPの7割近くを占める9月ISM非製造業指数は56.7と依然として高水準。
   ・米ガソリン価格は反転。

 2)米CPI総合が+8%台、コアCPIが+6%台で推移することから高インフレ抑制のためFRBは利上げ継続せざるを得ない

 3)長期金利が急上昇する中での、株式相場の上昇は「アヤ戻し」とみるべきで、甘い「希望的観測」はリスクが濃厚と思われる

●3.米9月消費者物価指数(CPI)+8.2%増、予想+8.1%・8月+8.3%(フィスコ)

 1)9月コアCPIは前年比+6.6%、予想+6.5%・8月+6.3%、40年ぶり最大の伸び

●4.9月米コアCPI、40年ぶりの大きな伸び、大幅利上げに道筋(ブルームバーグ)

●5.台湾TSMC、今年1年間の設備投資額400~440⇒360億ドルに下方修正(NHK)

 1)世界的なインフレや中国経済の減速を背景に、スマホやパソコンなど消費者向け電子製品の需要が弱くなっていることから、顧客の在庫調整が来年上期まで続く見通し。

●6.ダイモンCEOが言う「SP500▲20%下落」の確率は50%超か(ブルームバーグより抜粋

 1)SP500が▲20%下がれば、10/11終値から2,871まで下がり、時価総額は30兆ドル(約4,400兆円)から▲6兆ドル縮小することになる。

 2)テクノロジー銘柄のグロース株が苦境の矢面に立たされる可能性が高い。借入れコストが上昇する中で、高水準のバリュエーションがターゲットとなり、投資家は痛手を負うだろう。

 3)それが起きる確率は50%より高いだろう。
  ・ドットコム・バブル:2000/3ピーク⇒2002/3底まで、▲49%下落。
  ・世界金融危機   :2007/10ピーク⇒2009/3底まで、▲57%下落。

 4)今年の株安局面で、アマゾン、テスラ、マイクロソフト、アルファベットは時価総額の3分の1を失った。アップルは▲21%値下がりした。大手テクノロジー株よりも、半導体株に対する危惧を募らせている。

 5)SP500は1/3高値から既に▲25%下落、さらに▲20%下げると、高値から▲40%下回る。

 6)まだリセッション(景気後退)入りしていないが、今後3~9カ月以内に景気後退が到来すると考えている。ここからさらに▲10~▲15%の下落は容易だろう。(NEIRGウエルス・マネジメントのギアクマキス社長談)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)10/13、上海総合▲9安、3,016(亜州リサーチより抜粋
  ・経済指標の発表前で買い手控えられる流れとなった。中国では明日10/14、9月物価統計と貿易統計が発表される。結果を見極めたいとするスタンスが強まったが、下値は限定的。
  ・また、米金融引締めの長期化懸念が広がっていることも不安視されている。
  ・中国当局による景気テコ入れ策に対する期待感や、「国家隊」と呼ばれる政府系資金による株価下支えの思惑もある。指数はプラス圏で推移する場面もみられた。
  ・業種別では、不動産の下げが目立ち、銀行・エネルギー・半導体・素材・インフラが下落。

 2)10/14、上海総合+55高、3,071(亜州リサーチより抜粋
  ・投資家のリスク選好姿勢が回復する流れとなった。
  ・インフレ高進懸念のやや後退や、人民元安進行の一服が好感された。
  ・中国9月物価統計では、消費者物価指数(CPI)が前年比+2.8%となり、上昇率は予想+2.9%を下回った。生産者物価指数(PPI)も下振れた。
  ・米10年国債利回りが低下する中、対ドルで人民元高に転じた。
  ・業種別では、医薬品の上げが目立ち、ハイテク・素材・不動産・銀行・エネルギーも高い。

●2.中国共産党大会の開催

 1)5年に1度の大会で、期間10/16~22。

 2)10/22に党規約の改正案を採択。10/23に最高指導部メンバー決定予定。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/13、日経平均▲159円安、26,237円(日経新聞より抜粋
  ・米国の金融引締め強化による世界景気の悪化を懸念し、幅広い銘柄に売りが出た。
  ・足元で堅調だったリオープン(経済再開)関連への売りも目立った。
  ・9月の米消費者物価指数(CPI)の発表を控え、午後は様子見ムードが広がった。
  ・朝方は足元で下げていた銘柄に自律反発狙いの買いが入り、日経平均は上昇して始まったが、ほどなく売りに押される展開となった。前日の米株式市場が下落しており、投資家心理は上向かなかった。
  ・10/12発表の9月米卸売物価指(PPI)の上昇率が市場予想を上回り、米連邦準備理事会(FRB)が大幅な利上げを続けるとの警戒が強かった。
  ・市場では「FRBの金融引締めが日本企業の業績にどの程度影響するのかが読めず、先行き不透明感が強い」との声があった。
  ・ダイキン・HOYA・リクルート・JAL・JR東海が下落、東エレク・東芝が上昇。

 2)10/14、日経平均+853円高、27,090円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式相場が急伸した流れを受け、短期筋の買戻しなどが膨らみ、朝方から全面高の展開となった。アジア株の大幅な上昇も投資家心理を一段と上向かせ、上げ幅は一時+900円を超える場面があった。上げ幅は3/17(890円高)以来の大きさだった。
  ・10/13に発表された米9月消費者物価指数(CPI)は市場予想を上回り、高水準のインフレが続いていることを示す内容となり、NYダウは安く始まったものの、大幅高に転じて終えた。東京市場でも、CTA(商品投資顧問)など海外の短期筋が先物の買戻しを急ピッチで進めた。
  ・日経平均は米CPIを警戒して10/13までの4営業日で▲1,000円超下げており、イベント通過後のアク抜け感から売り方の買戻しが入りやすかったとの指摘もあった。
  ・値嵩株もファストリは決算発表を受け急伸、1銘柄で日経平均を+220円押し上げた。円相場が147円まで下落し、輸出企業の採算が一段と向上するとの見方から輸出関連株にも買いが目立った。
  ・三菱自・日産自・第一三共・エーザイ・オリンパス・リコーが高く、日ハムは売られた。

●2.日本株:外国人投資家の日本株離れが止まらず、短期筋の外国人が暗躍、売りを忘れない

 1)日本株買いの主役は、個人・年金などの資金であり、日本株を買い支えしている。

 2)現物株は、外国人投資家が年初から一貫して大幅売越しを継続し、短期筋の外国人は株式先物を中心に売買を繰返している。

 3)日本株の対NYダウとの比較で、「日本株は底堅い」「PERは米国15倍に比べ日本株は11倍」と割安という兜町の囃子に振り回されないように注意したい。日本株は、「押し目買い、吹いたら売り」が正解のように思われる。

●3.9月国内企業物価指数、前年比+9.7%、19カ月連続前年上回り過去最高(テレ朝日)

 1)資源価格の高止まりや円安による輸入物価の上昇などにより、幅広い品目で値上がり。

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)

 ・1963 日揮   業績好調。
 ・3382 7&I   業績堅調
 ・9602 東宝   業績堅調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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