相場展望8月5日 米国株は高値圏、日本株は下落と相反する要因 米国はカネ余り、日本は日銀の資金供給停止

2021年8月5日 08:26

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)8/2、NYダウ▲97ドル安、34,838ドル(日経新聞より抜粋
  ・欧州株高を受けて買い先行したが、米長期金利が低下すると景気減速の懸念が強まり、景気敏感株を中心に売りが広がった。
  ・原材料や労働力不足が、米国の製造業の業績回復の勢いを抑えており、債券買い・株売りの材料になった。
  ・米国ではコロナ・ワクチン接種者にも感染が広がり、景気減速を見越した債券買いが強まった。

【前回は】相場展望8月2日 米国景気4~6月期がピーク ⇒ 米株価に変化? 日本株、決算発表シーズンの株高は、期待外れ

 2)8/3、NYダウ+278ドル高、35,116ドル
  ・米6月製造業受注、6月耐久財受注が予想を上回った結果を受け、リスク回避の動きが一服した。(フィスコ)
  ・米長期金利の低下を背景にした景気減速への警戒感から売りが先行したものの、米長期金利が下げ止まるにつれて景気敏感株を中心に買いが優勢となった。割安株が相場を上昇する相場のピーク論を唱える声が聞かれる一方、米企業の好決算などを手掛かりにした買いが入った。(日経新聞)

 3)8/4、NYダウ▲323ドル安、34,792ドル(日経新聞)
  ・朝方発表の民間の米雇用指標が市場予想を大幅に下回り、雇用回復の遅れが警戒された。
  ・米国でデルタ株(インド株)の感染拡大しており、米長期金利の動向も投資家に景気減速を意識させ、景気敏感株が売られた。

●2.米株式はカネ余りを牽引力に高値圏にあり、懸念材料に敏感に反応する動きが出始めたか?

 1)個別企業の決算発表に対する市場の反応に変化、足りないもの探しが始まる
  (1)GM  上方修正も、通期見通しが予想以下と、株価は売られ一時▲8%安。
        最終利益は28.3億ドル(前年同期は▲7.5億ドルの赤字)と黒字転換。
  (2)リフト 7~9月期の売上高見通しが市場予想に届かず、株価は一時▲9%安。
        運転手不足で採用コストがかさみ業績悪化が意識された。(日経新聞)

 2)8/4の米FRB副議長発言を受け、早期利下げ観測が浮上し、NYダウが下げに転換。なお、クラリダ副議長発言にある利上げ時期は「2023年」であり、まだ先のことである。ただ、市場は発言に反応し、米10年国債利回りは8/4、1.13%⇒1.18%へ大幅上昇⇒株価下落の流れになった。

 3)好決算発表を背景に株価は最高値を更新してきたが、決算シーズン後の株式軟調を意識した動きの先駆けとも見受ける。

 4)今後の米株式動向は、最高値更新の恐怖⇒横這いレンジで動く可能性を示唆したか?当面は、FRBによる市場への資金供給は続く(毎月1,200億ドルの資産購入継続)ため、カネ余り継続相場で深押しはないと思われる。

 5)改めて、現在の位置は、決算発表シーズン相場の後半戦にあることを意識したい。

●3.米FRB副議長、「インフレリスク上向き」として、2023年利上げ開始を支持(ロイターより抜粋

 1)クラリダFRB副議長は8/4、米経済が雇用や物価の目標達成に向け、順調に推移しているとした上で、2023年に利上げを開始できる状況にあるとの認識を示した。

 2)「インフレ見通しに対するリスクは、上向きだ」とも語った。

 3)今年の国内総生産(GDP)成長率は不況からの急速な回復を示すものになると予想。

●4.米7月ADP民間雇用は33万人増と、予想69.2万人増から大きく下回った(ロイター)

●5.米6月製造業受注は前月比+1.5%増と、予想+1.0%を上回る   (フィスコ)

 1)5月+1.7%増からは低下した。

●6.米6月耐久財受注は前月比+0.9%増と、予想+0.8%を上回った (フィスコ)


■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)8/2、上海総合+66高、3,464(亜州リサーチ)
  ・中国の景気テコ入れ期待が強まる流れとなった。
  ・7月中国製造業PMIが50.4となり、昨年2月以来の水準に低迷した。その中、「当局は経済回復の腰折れを回避するため、経済対策を強化する」との見方が広がった。
  ・7/30の共産党中央政治局会議で、インフラ投資を加速させ、財政政策の効果を高める方針などが確認されている。
  ・業種別では、インフラ建設関連の建機・建材・ゼネコンなどの上げが目立つ。反面、半導体株は安い。

 2)8/3、上海総合▲16安、3,447(亜州リサーチ)
  ・デルタ株の感染拡大で北京市など31省で省外移動が禁じられた。大きく売り込む動きは見られなかった。
  ・経済回復ペースの鈍化懸念が強まる中、当局が景気対策を強めるとの期待も広がっている。
  ・業種別では、ハイテク関連株の下げが目立ち、鉄鋼・非鉄も安い。反面では、医薬品株、海運・食品飲料・保険・証券株が買われた。

 3)8/4、上海総合+29高、3,477(亜州リサーチ)
  ・主要企業の決算発表本格化を前に、好業績セクターに先回りした買いが入る流れとなっている。非鉄金属・ハイテク・新エネルギー産業も好業績が見込まれている。
  ・財新中国製造業PMIは54.9に達し、市場予想を上回った。

●2.中国7月財新サービス業PMIは54.9と、市場予想50.5を上回る(フィスコ)

●3.中国、北京などでデルタ株感染拡大のため、数百万人を対象に外出制限(時事通信)

●4.中国はデルタ株感染拡大で、防疫と経済損失の重い負荷(ロイターより抜粋

 1)中国当局はこれまで広範囲の感染拡大を食い止めてきた。感染力の強いデルタ株が、中国経済に新たなリスクをもたらしている。中国沿岸部から内陸の各都市に感染が広がり、防疫を進めながら、経済に過度の負担をかけないという難しい対応を迫られている。

 2)不要不急の旅行中止を呼びかけ、旅行者には陰性証明を義務化、大規模な検査実施に乗り出した。

 3)中国経済は盤石な状態とは言い難い。実際、4~6月の成長率は原材料価格の高止まりや、消費者の慎重な姿勢、不動産市場の熱気が冷めたことなどを受け、予想を下回った。

●5.テンセントの創業者・馬化騰氏は、アリババ馬雲氏よりも資産大幅減(ブルームバーグより抜粋

 1)アリババは独占禁止法の罰則として過去最大の28億ドル(約3,060億円)の支払いを、強いられた。また、中国当局は、アリババ傘下のアントの超大型新規株式公開(IPO)を中止させた。

 2)国営・新華社通信系の国営メディアが、「ゲームを『精神的アヘン』『電子薬物』」と批判すると、テンセント株式は8/3の香港株式市場で最大の下落を記録した。今年に1兆ドルに迫ったテンセント時価総額は、8/3の株価急落で5,505億ドルの急減。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)8/2、日経平均+497円高、27,781円(日経新聞より抜粋
  ・前週末の大幅下落分をほぼ埋めた。
  ・自律反発期待の買いに加え、決算発表が本格化し、利益水準はコロナ感染前の2019年4~6月期を上回る企業が多い。株価の値ごろ感が意識され、短期的な戻りを見越して幅広い銘柄に買いが入った。
  ・緊急非常事態宣言の対象地域拡大を受け、夏休みの帰省・旅行の自粛で鉄道株などに売りが出て上値を抑えた。

 2)8/3、日経平均▲139円安、27,641円(日経新聞)
  ・インド型(デルタ型)の世界的感染拡大で景気先行きが懸念され空運・陸運などに売りが優勢だった。
  ・一方、好業績期待が高い銘柄には買いが入り、相場を支えた。後場は、好業績を発表した商社株などが強含み、明日に決算発表するトヨタも買われた。
  ・中国当局によるネット企業などへの規制強化に対する警戒感も根強い。
 
 3)8/4、日経平均▲57円安、27,568円
  ・日経平均は朝方一時▲153円安。(モーニングスター)
  ・新型コロナのデルタ株感染拡大に警戒感が広がる中、好決算銘柄に買いが入っている。通期見通しの上方修正を昨日発表した日本製鉄が買い気配で始まった。好業績発表の日本製鉄、郵船などの買いで、相場を下支えした。(ロイター)
  ・円高・ドル安の進行で、輸出企業の採算悪化懸念も日本株の重荷になっている。好業績のトヨタの下げが重荷になった。(日経新聞)

●2.米国株は上昇vs日本株は下落と相反する動き。日本株が抱える重い要因

 1)米株式はFRBから毎月1,200億ドル(約13兆円)の資金供給の恩恵、日本株は、日銀ETF購入を4月から事実上の撤退で、市場への資金供給の恩恵無し。

 2)好決算発表が相次ぐが、日経EPS(1株利益)は思ったほど改善せず
           7/19    8/4     
  1株当たり利益  2,042円  2,075円

 3)日経平均が大幅上昇した2~3月の信用買いの期日接近による解消売り圧力。

 4)市場予想を上回る上方修正銘柄に買いが集中
  日本製鉄   8/3、市場予想2,628億円を大きく上回る3,700億円に上方修正。
         買い気配で始まり前日比+10%高
  日本郵船   3月期通期営業利益1,300⇒1,500億円、予想上回り、一時+13.2%高。
         4~6月期営業利益は530億円と、前年同期比492.3%増。
  カシオ計算機 4~6月黒字転換(▲9.3⇒+43億円黒字)を好感し、一時+8%高。

  市場予想の期待に届かず失望売りされた銘柄
  大塚商会   8/3、一時▲7.2%安、終値▲6.0%安
  ニチレイ   8/4、一時▲13%安、タイ工場稼働率低下で4~6月期営業利益70億円と予想80億円を下回る。年間営業利益は据え置いた。
  トヨタ    8/4、通期予想据え置きで、株価は売りに押され一時▲2.3%安。
         4~6月期純利益は8,978億円と前年同期比5.7倍で、過去最高。
         部品供給問題で工場稼働停止、資材高騰で先行き見通しは楽観できず。
  住友商事   3月期通期純利益+2,900億円(前期▲1,530億円赤字)に上方修正も反落。

 5)ドル安・円高のリスク
 ドル・円相場が108円台に上昇し、電機・自動車など輸出企業の採算悪化懸念。

 6)新型コロナのデルタ株感染拡大に歯止めがかからず、景気回復鈍化への懸念。    

 7)新高値銘柄数は多く、新安値数を超える流れ。
  ⇒ 当面、株価底抜けはなくレンジ維持、日経平均レンジは27,500円を軸に動く可能性。

 8)政治リスクの高まり。

●3.東証1部上場企業の4~6月期決算は、7/31までの発表のうち7割超が増益に(NHK)

 1)決算発表したのは約3分の1に当たる508社で、増益企業は製造業を中心に前年同期比で73%。

 2)年間の最終利益を引き上げた企業は、製造業を中心に58社。欧米や中国への輸出回復で、自動車関連や電子部品を中心に大幅増益となった。一方、減益の企業は16%に当たる84社。赤字企業は10%に当たる51社。小売業などは緊急事態宣言の影響もあり、業績が振るわなく、業種格差が鮮明。

●4.7月新車販売は半導体不足で前年同月比▲4.8%減と10ヵ月ぶりの減少(神山純一)

 1)軽自動車は▲17.0%減、軽以外では+3.3%増。

●5.洋上風力発電は、政府主導で3海域の調査へ(読売新聞より抜粋

 1)これまでの洋上風力開発の調査は、事業者が行ってきており、人件費などが電気料金に上乗せされる可能性があった。

 2)経済産業省は、地域一体で洋上風力発電の開発を進めるため、北海道など3海域で調査を行うと発表した。
  ・海域の風量や海底地盤、気象などの調査を1年程度かけて行い、調査結果は事業参入を希望する民間事業者や地元自治体に提供する。
  ・政府が主体となって開発海域の調査を行うのは初めて。
  ・3海域とは、北海道岩宇・南後志地区沖、山形県酒田市沖、岩手県洋野町沖。

●6.企業業績(4~6月期)

 1)三菱FFJFG  最終利益+3,830億円と、前年同期比2倍の増加。
 2)みずほFG   最終利益+2,505億円と、前年同期比2倍。
 3)三井住友FG  最終利益+2,032億円と、前年同期比2.3倍。
 4)りそなHD   最終利益+342億円と、前年同比比1.5%倍。
 5)日本製鉄   来年3月期最終利益2,400⇒3,700億円に上方修正。

●7.企業動向

 1)ヤマト     ヤマト引っ越し子会社の株式51%をアートに売却(時事通信)
 2)日本製鉄    東京製綱の株式保有比率19⇒9%に売却で引下げ(NHK)
          公正取引委員会から「結合関係」に当たると指摘された。
 3)三菱ケミカル  米で自動車や塗料用樹脂原料の工場投資に1,000億円(日経新聞)
 4)ソフトバンクG 英アームのエヌビディア買収に安全保障を理由に英国が阻止検討(ブルームバーグ)
 5)ソフトバンクG ロッシュの株式50億ドル(約5,500億円)相当取得、最大株主に。ロッシュは新型コロナの抗体検査試薬事業が好調(ブルームバーグ)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6258 ナブテスコ  産業ロボット用精密減速機メーカー。業績好調。
 ・9735 セコム    警備業。業績堅調。
 ・1926 ライト工業  国土強靭化政策銘柄。業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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