相場展望1月4日号 米国株: 昨年「利下げ期待で上昇」したが、今年は「期待の確認の年」に 日本株: 「年末高⇒年初安」⇒「年末安⇒年初高」の繰り返し継続

2024年1月4日 10:47

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)1/2、NYダウ+25ドル高、37,715ドル(日経新聞より抜粋
  ・2023年12/28以来の最高値で終えた。このところ出遅れていたディフェンシブ株が上昇し、相場を押し上げた。半面、スマートフォンのアップルが下落し、ハイテク株全般に売りが及び重荷となった。

【前回は】相場展望2024年1月2日号 謹賀新年 米国株: 米利下げ、選挙(大統領・連邦議会)、アップル株価に注目 日本株: 「堅調」も、短期的には「下落」リスク、円高にも注意

  ・NYダウの上げ幅は一時+100ドルを超える場面があった。製薬のメルクやバイオ製薬のアムジェン、通信のベライゾンなどディフェンシブ株が資金の受け皿となった。

  ・もっとも、相場の上値は重く、NYダウは下げる場面もあった。アップルが▲4%弱下げた。バークレイズが投資判断を引下げ、iPhone15の販売が苦戦していると指摘した。アップル株安が投資家心理を冷やし、他のハイテク株にも売りが及んだ。NYダウ構成銘柄では、顧客情報管理のセールスフォースとソフトウェアのマイクロソフトの下げが目立った。

  ・米長期金利が3.9%台前半と、前年末の終値3.87%を上回って推移した。高PER(株価収益率)のハイテク株の相対的な割高感が意識されたのも米株相場の重荷になった。

  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は3日間続落した。前営業日比▲245安・▲1.63%低下の14,765で終えた。半導体のエヌビディアや交流サイトのメタなど主力ハイテク株の下げが目立った。

 2)1/3、NYダウ▲284ドル安、37,430ドル(日経新聞より抜粋
  ・昨年末にかけて急ピッチの上昇が続いたあとで、景気敏感株や消費関連株などに利益確定や持ち高調整の売りが出た。下げ渋る場面があったが、引けにかけて再び売りの勢いが強まった。

  ・NYダウは前日に過去最高値を更新し、前週まで9週連続で上昇した。短期的な過熱感や割高感が意識され、主力銘柄に売りが先行した。米長期金利が上昇した場面では株式の相対的な割高感も意識された。外国為替市場でドルが主要通貨に対して買われ、米企業の海外売上高を押し下げると嫌気された場面もあった。

  ・午後に米連邦準備理事会(FRB)が公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(2023年12/12~13開催分)では、参加者が政策金利が今回の引締め局面での「ピークに達したか、近い」とみていた。半面、断続的なインフレの鈍化が確認できるまで「引締め的な金融政策を維持することが適切」との見解があったことも分かった。

  ・「株式市場の期待に比べてFRBが利下げに慎重と受け止められた可能性がある」との声があった。NYダウの下げ幅は引け間際に▲310ドルを超えた。

  ・午後に米長期金利が低下すると、NYダウも一時下げ渋った。午前発表の2023年11月の米雇用動態調査(JOLTS)で求人件数が3カ月続けて減少し、2021年3月以来の低水準となった。2023年12月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は上昇したものの、好不況の境目である50を下回った。個別項目の価格指数は低下した。インフレ減速と雇用の伸び鈍化が続けば、FRBが利下げに動きやすくなるとの見方が相場を支えた。

  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合指数は4日続落し、前日比▲173安の14,592で終えた。

  ・個別銘柄では、航空機のボーイングや建機のキャタピラーなど景気敏感株が下落した。ホームセンターのホームデポなど消費関連も売られた。アナリストが足元の業績悪化を予想したドラッグストアのウォルグリーンズも安い。電気自動車のテスラの下げが目立った。半導体のAMDなども売られた。一方、石油のシェブロンが上昇し、製薬のメルクなどディフェンシブ株は買われ
た。

●2.米国株:昨年は「利下げ期待で上昇」したが、2024年は「期待が現実するか?」確認の年

 1)昨年、米国株の上昇を牽引したハイテク株が、年初から厳しいスタートを迫られている
  ・ハイテク株代表のアップルの株価は、12/14高値198.11ドルから▲7%下落した。12/14高値198.11ドル⇒1/3終値184.25ドル、▲13.86ドル安
  ・ハイテク銘柄が多いナスダック総合指数も4営業日続落となっている。12/27高値15,099⇒1/3終値14,592、▲507安・▲3.36%下落

 2)米長期金利はFRB利下げ期待で急低下していたが、反動高となる
  ・長期金利の上昇を受け、高PER(株価収益率)のハイテク株は割高感が意識され売られやすい局面に入った。

 3)米FRBの政策金利引下げ期待の高まりで、長期金利が低下⇒株高を牽引
  ・特に、長期金利の低下から割安意識で成長株のハイテク銘柄の株高となった。
  ・ただ、長期金利低下も一段落となり、金利は反動高となる。金利上昇に対し割高感が意識されたハイテク株が売られる局面を迎えている。

 4)昨年後半からの「政策金利引下げ期待」が強まったが、今年は「金利引下げの事実確認」の年となりそう
  ・株式市場は3月から「政策金利引下げ」を期待しているが、「現実」としてそうなるか否かが、相場の乱高下を醸し出すとみる。

●3.FRBは追加利上げも除外せず=リッチモンド連銀総裁(フィスコ)

 1)講演で、インフレや経済が金利軌道を決定するとし、潜在的な追加利上げは依然、選択肢だと、追加利上げの可能性も除外しなかった。ソフトランディングの可能性が一段と強まったが、確実ではないと言及した。

●4.米ISM製造業景気指数、2023年12月は47.4、14カ月連続で50割れ(ロイターより抜粋

 1)先行指標となる新規受注指数は47.1と、11月の48.3から低下。
 2)市場では1/5に発表される12月雇用統計が注目されている。

●5.米12月製造業PMIは47.9と、予想48.4を下回った(フィスコ)

●6.原油価格が上昇、イランが紅海に軍艦を派遣、緊張高まる(ブルームバーグ)

●7.ビットコイン、45,000ドル突破し、2022年以来の高値、昨年は+154%高(ロイター)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)1/2、上海総合▲12安、2,962(亜州リサーチより抜粋
  ・中国景況感の悪化が嫌気される流れとなった。

  ・12/31に公表された12月の中国製造業PMI(国家統計局)は49.0となり、市場予想の49.6に反して、前月の49.4からも低下した。(景況判断の境目となる50を割り込むのは3カ月連続)ただ、下値は限定的。

  ・中国経済対策の期待感は持続している。習近平・国家主席は12/31、新年に向けたテレビ演説を行い、「2024年は改革と解放を全面的に進化し、長期的な経済発展を達成する」と述べた。

  ・業種別では、消費関連の下げが目立つ。ハイテクも安い。金融・不動産・医薬なども売られた。半面、エネルギーはしっかり。公益・海運・軍事関連・素材の一角が買われた。

 2)1/3、上海総合+4高、2,967(亜州リサーチより抜粋
  ・中国の景気支援スタンスが支えとなる流れとなった。

  ・中国人民銀行(中央銀行)が1/2に発表したデータによれば、人民銀の担保付き補完貸出(PSL)による政策銀行への融資残高は昨年12月末時点で3兆2,520億人民元に上り、11月末時点の2兆9,020億元から大幅に増加している。PSLは都市開発に向けた資金供給となるため、不動産支援を強化したとの見方ができる。

  ・また、アナリストの間からは、人民銀が政策金利や預金準備率の引下げなどの金融緩和を進めるとの分析も流れている。

  ・もっとも、上値は重い。米長期金利の上昇や対米ドルの人民元安、米中対立の激化などが不安材料としてくすぶる中、指数は安く推移する場面もあった。

  ・業種別では、石油・石炭のエネルギー関連が高く、金融もしっかり、不動産も物色された。公益・メディア・娯楽・素材なども買われた。半面、ハイテクは冴えず、自動車・医薬・軍事関連も売られた。

●2.年末年始3日間の中国主要40都市の住宅販売は前年同期比▲26%減少(フィスコ)

●3.中国の習近平・主席、経済的な苦境を異例の言及(CNNより抜粋

 1)中国の習近平・国家主席は12/29の演説で、国内の企業が苦戦し、雇用が厳しい状況にあることを認めた。2012年以来、恒例となっている新年に向けたテレビ演説で、習氏が経済的苦境に言及したのは初めて。

 2)世界第2位の経済大国である中国は、
  (1)需要の低迷
  (2)記録的な高水準にある若者失業率の上昇
  (3)長引く不動産不況
  (4)地方政府の財政負荷の増加
  (5)景況感の悪化
  (6)依然として続いている物価の低迷(デフレ)
 などによる構造的な経済減速に苦慮している。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)1/2休場

 2)1/3休場

●2.日本株:経験則が続く「年末高⇒年初安」⇒「年末安⇒年初高」の繰り返し

 1)1/4の日経平均は下落を予想
  ・要因
  (1)前日の米国株安の流れを受ける。
  (2)1/1の石川県能登地区の最大震度7の地震発生で、経済への影響懸念。
  (3)1/2の羽田空港の航空機事故による心理的不安で投資マインド低下。

 2)最近の経験則、「年度末の株高⇒年初の株安」が繰り返されている

 3)日経平均の売り圧力
  ・海外投資家は昨年で6兆円の買い越しとなり、売り圧力になり得る。
  ・証券会社自己部門の買い残高も5兆円弱と高水準である。
  ・短期筋の海外ファンドによる株式先物売りが下落を増幅する可能性が高い。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2579 コカ・コーラ 黒字化期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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