最低賃金引上げ 栃木や秋田でも続々と、過去最高額の引き上げ

2023年8月27日 18:36

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記事提供元:エコノミックニュース

厚生労働省は2023年7月28日、2023年度の最低賃金引き上げ幅を過去最高額の 41円~39円 に定めた

厚生労働省は2023年7月28日、2023年度の最低賃金引き上げ幅を過去最高額の 41円~39円 に定めた[写真拡大]

 厚生労働省は2023年7月28日、2023年度の最低賃金引き上げ幅を過去最高額の 41円~39円 に定めた。これを受け、栃木県では過去最大となる41円増額の最低賃金時給954円、秋田県でも過去最大44円増の897円など各都道府県では続々と最低賃金の引き上げが発表されている。全国平均では最低賃金の目安が初めて時給1000円を超え、1002円となる。

 これに伴って、加藤厚生労働大臣は「中小企業などに引き上げに対応してもらうためには、環境の整備が重要」と述べ、賃上げや設備投資に取り組む中小企業などへの「業務改善助成金」などを拡充していく考えを示している。

 今年の春闘でも、大手企業が基本給を底上げするベースアップ(ベア)や賞与(ボーナス)で、労働組合側の要求に軒並み満額回答したことが大きな話題となった。電気代やガソリン代の高騰をはじめとする生活コストの急上昇を吸収するには、それでもまだまだ足りないという声も多いものの、賃金が上昇するのは素直に喜ばしいことだ。

 長引く不況の中、いくらそれが社会の流れとはいえ、賃上げに踏み切るのは並大抵ではない。経営陣の従業員やその家族の生活を大切に想う姿勢と、人手不足の中でも企業を存続させていこうとする強い決意の表れだ。

 例えば、トヨタ自動車は今年の春季労使交渉で、労働組合の要求に対して3年連続、満額回答をしているだけでなく、過去20年間で最高水準の賃上げ率を遂行している。また電機業界でも、日立製作所、パナソニックホールディングス、東芝、NECなど電機大手12社も満額で応じている。現行の要求方式が採用された1998年以降、12社全社揃っての満額は初めてだ。

 大手上場企業だけではない。日本商工会議所の調べによると、2023年度に賃上げを実施した企業の割合は予定を含めて62.3%となっており、前年調査に比べて11.4ポイント増加している。また、業績改善を背景に賃上げを実施する「前向きな賃上げ」は20.9%、業績は改善していないものの「防衛的賃上げ」を実施した企業は41.1%となっている。

 例えば、コロナ禍で大きな打撃を受けた住宅業界でも、過去最高売上げを達成し、着実に業績を伸ばし続けている株式会社AQ Group(アキュラホーム)は、今年3月分の給与から物価上昇率を大幅に上回る、最大10%のベースアップを実施している。

 同社は35期(2019年2月期)に「中期5か年計画」を定め、2019年から続くコロナ禍や世界的情勢による木材の高騰などの厳しい状況下のなかでも成長を継続しており、36期462億円、37期542億円と過去最高の売上高を更新、38期(2023年2月期)も595億円と過去最高となった。

 燃料費の高騰や資源の確保など、いずれの業界でも苦しい状況は続いているものの、従業員の生活やモチベーションの向上、優秀な人材の確保に注力している企業は、その事業規模の大きさに関わらず、この苦境の中でも絶えず発展しているように見える。かの松下幸之助氏の名言の一つに「物をつくる前にまず人をつくる」という言葉があるが、これからの時代を乗り切るには、この言葉がより大切なキーワードになりそうだ。(編集担当:今井慎太郎)

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