相場展望4月7日号 過剰マネー相場終焉の始まりに注意 日本株4月相場は期待薄?

2022年4月7日 13:17

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)4/4、NYダウ+103ドル高、34,921ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦制度理事会(FRB)の積極的な金融引き締めへの警戒がくすぶっており、成長性が高く、相対的に景気の影響を受けにくいハイテク株が値頃感から買われた。
  ・新たな四半期に入り、期初に新規の投資資金が流入するとの期待も相場を支えた。セールスフォース+3%、アップルやマイクロソフト+2%、ツイッター+27%高。ツイッターは、テスラのマスクCEOが大量取得で経営に関与する可能性をはやして買いが入ったことが、ハイテク株の買いを後押しした面がある。
  ・最近下げが目立った消費関連株も買い直され、ホームデポ・ディズニーが上昇。
  ・もっとも、ウクライナ情勢は相場の重荷で、NYダウは一時▲200ドル余り下げる場面もあった。ロシア軍による民間人虐殺の疑いが強まり、EUの対露制裁の強化検討が伝わった。
  ・エネルギーの禁輸がガソリン高につながるリスクも意識された。

【前回は】相場展望4月4日号 日経平均28,000円台キープできず、外資系短期筋が売り転換 小型・新興株に潮流の流れが向かうか?

 2)4/5、NYダウ▲280ドル安、34,641ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦制度理事会(FRB)が積極的な金融引き締めをするとの観測が広がり、米長期金利が3年ぶりの高水準を付けた。
  ・金利上昇すると相対的に割高感が意識されやすい高PER(株価収益率)のハイテク株が売られ、セールスフォース▲4%、アップル、マイクロソフト、アマゾンが下げた。
  ・金融引き締めが米景気を冷やすとの懸念も相場の重荷になった。
  ・FRBのブレイナード理事が4/5の講演で、国債など保有資産の圧縮について「5月にも始め、削減ペースは前回よりも著しく速くなるだろう」と述べた。ウクライナ侵略戦争で、食品やガソリン価格が一段と上昇するリスクを指摘し、インフレ抑制を急ぐ姿勢を強調した。
  ・ハト派で知られる同氏の金融引き締めを受け、米長期金利は一時前日比+0.17%高い2.36%を付けた。
  ・金融引き締めに加え、対露制裁の強化に伴う世界景気の不透明感も意識され、景気敏感株が売り優勢、EUは露産石炭の輸入停止を含む制裁強化を公表し、米国も4/6にも新たな制裁を発表すると伝わった。景気敏感のボーイング、キャタピラー、金融のゴールドマンも下げた。
  ・反面、業績が景気に左右されないディフェンシブ株のマクドナルド、J&Jが高い。

 3)4/6、NYダウ▲144ドル安、34,496ドル(日経新聞より抜粋
  ・FRBが金融引き締めを積極化するとの観測が重荷で、一時▲364ドル安を付けた。
  ・長期金利が一時+2.66%まで上昇し、金利上昇で割高感が意識されるハイテクなど高PER銘柄である半導体のエヌビディア、テスラなどが売られた。
  ・ただ、FOMCの議事要旨が開示されると、材料出尽くしとなり下げ幅を縮小した。
  ・FOMC議事要旨では、5月にも始める資産圧縮について「月950億ドルの削減が適切だ」との見方で、参加者の概ね合意していたことがわかった。
  ・前回2017~2019年の資産圧縮は月100億ドルから始め、段階的に500億ドルに増やしたが、それを大幅に上回るペースとなる。
  ・利上げ回数は、多くの参加者が「インフレ圧力が強まれば、1回かそれ以上の回数にわたり+0.5%の利上げが適切になる」と指摘した。
  ・セールスフォースとマイクロソフトが▲4%安、消費関連株も安い。反面、ディフェンシブ株が買われ、J&J・アムジェンが上昇しNYダウを下支えした。

●2.米国株:FRBの金利引き上げと資産圧縮で、過剰マネー相場終焉の始まりに注意

 1)5月に、「金利引き上げ+0.5%」と「資産縮小の開始」の可能性が高まったとみる。

  2)米株式市場へのFRBからの資金流入は3月で止まった。ただ、ロシアによるウクライナ侵略で、欧州の景気先行き不透明感が濃くなり、安心感のある米国株式市場に欧州からの資金流入が続いているようだ。また、原油価格高騰により産油国の収入も膨らみ、オイルマネーが米国株式市場に流れ込んでいる結果、米国株式市場を支え、堅調さをみせていると思われる。

 3)いよいよ、インフレ抑制策として、5月からFRBは資産圧縮に取りかかることになる。金利引き上げは、市場にある程度織り込まれ始めたが、資産圧縮リスクの折り込みは今後に委ねられていると思われる。市中に溢れた過剰マネーの縮小に伴う変動リスクには慎重な対応が求められるだろう。

●3.米連邦公開市場委員会(FOMC)3月議事要旨(フィスコ)

  1)多くのFRB高官は+0.5%を1回以上の利上げが正当化される可能性を主張。

  2)FRBはウクライナ戦争を受けて、3月FOMCで+0.25%の利上げを決定。

  3)FRBは期限失効による縮小が軌道に乗ったら、MBS(住宅ローン担保証券)の売却検討。

●4.ブレイナードFRB理事が、「5月にFRBの資産縮小」を示唆(フィスコ)

   1)カンザスティ連銀ジョージ総裁も、タカ派発言     

●5.10年債利回りは4/5に急上昇し、米2年債との金利差の「逆転を解消」した(フィスコ)

●6.米3月ISM製造業景況指数は58.4、2月56.5を下回り悪化した(フィスコ)

●7.米FRBは、年内に+2.25%までに追加利上げを短期金融市場が織り込む(ブルームバーグ)

●8.ロシア関連

 1)EU、ウクライナでの民間人虐殺を受け、露産石炭禁輸含む追加制裁検討(フィスコ)

 2)英国4/7、ロシアへの投資を全面禁止(フィスコ)

 3)米国4/6、露最大手ズベルバンクとアルファ銀行の資産凍結、露への投資禁止(AFP)                      

 4)米国家経済会議、2022年ロシア経済は▲10~▲15%縮小、インフレ率200%(ロイター)

 5)ハンガリー首相、露大統領に露産ガスのルーブル支払い表明、EU加盟国で初(AFP)

●9.米財務省、ウクライナの民間人虐殺を受け、4/4ロシア国債のドル建支払い不許可(時事通信)

 1)デフォルトリスク高まる。

 2)ロシアCDSは4/6、99%の確率で年内のデフォルト入りを織り込む(フィスコ)

●10.EU統計局、2月生産者物価指数は前年比+31.9%(ロイター)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)4/4、祝日「清明節」のため休場
 
 2)4/5、祝日「清明節」のため休場

 3)4/6、上海総合+0、3,283(亜州リサーチより抜粋
  ・中国政府の経済対策への期待が相場を支える流れとなった。
  ・中国景気の先行きを不安視した売りが先行したものの、下値は堅く、後場途中からプラスに転じた。景況感指数が悪化したことで、逆に政府が景気の下支え策を強化するとの見方強まる。
  ・朝方発表された民間3月製造業PMIは42.0となり、景況判断の50を7カ月ぶりに割り込んだ。中国国家統計局が先週発表したPMIは50を割り込んでいる。
  ・中国不動産業の債務問題を巡る警戒感がやや薄らいだこともプラス。米メディアが4/4によれば、流動性危機に直面する中国恒大集団は海外の大口債権 者と再編協議を進展させたことで合意した模様だ。
  ・業種別では、不動産の上げが目立ち、インフラ関連も高く、金融もしっかり。反面、ハイテクは急落、消費関連も安く、医薬品・海運・防衛関連も売られた。

●2.中国・上海市、感染拡大収まらず、4/4全域で外出制限継続(時事通信)

  1)上海市人口は約2,500万人。

  2)中国で4/6感染者20,473人、うち上海は17,077人と最多更新。(北海道新聞)
  上海では国際イベント会場に4万床を確保する予定。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)4/4、日経平均+70円高、27,736円(日経新聞より抜粋
  ・新年度入りに伴う資金流入への期待が支えとなったほか、米国経済に対する悲観的な見方がやや和らいだことも日本株の買いにつながった。
  ・反面、企業業績の先行き不透明感は強く、積極的に上値を追う動きは限られた。
  ・東証の市場区分見直しに伴い、今日からプライム、スタンダード、グロースの3市場に再編されたが、目新しい取引材料が少なく、積極的売買を見送る雰囲気が強かった。
  ・通信や医薬など内需関連に物色の矛先が向かい、海運や資源関連の上昇も目立った。
  ・一方、前週末の米株式市場では主要な半導体関連銘柄が売られ、東京市場でも東エレクやアドテストといった値嵩株に売りが波及した。
  ・中国で新型コロナ感染が広がったことも投資家心理の重荷となった。
  ・川崎汽・商船三井・アステラス・ソフトバンクGが上昇し、オリックスが下落した。

 2)4/5、日経平均+51円高、27,787円(日経新聞より抜粋
  ・米ハイテク株高の流れを引き継ぎ、値嵩株の半導体関連に買いが入り相場を支え、日経平均の上げ幅は一時+200円超えた。
  ・中国・上海や香港市場が休場で模様眺めの投資家も多く、上値を追う動きは続かず。
  ・円相場が、円高ドル安方向に進むと、下げに転じる場面もあった。
  ・市場では心理的節目28,000円に近づくと戻り待ちの売りが多いとの見方があった。
  ・ファストリ・SBG・イオン・三越伊勢丹が上げ、薬品・海運が下げた。

 3)4/6、日経平均▲437円安、27,350円(日経新聞)
  ・米長期金利の上昇を警戒して米株式市場は下落、東京市場でも運用リスクを避ける動きが強まり、成長株を含め幅広く売られ、下げ幅は一時▲500円を超えた。
  ・日本時間4/7に、利上げを決めた米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公表されるが金融緩和縮小(QT)への具体的な言及があれば、先行き一段の重荷になるとの懸念から、投資家心理を弱気に傾けた。
  ・東エレク・アドテスト・東ソー・三井化学が安く、反面、村上ファンド系の株式取得でコスモが急伸し、出光興産・第一生命が買われた。

●2.日本株:4月の上昇は「期待薄?」

 ・4月相場の期待薄材料
 ・原油高と円安
 ・コスト増で業績懸念
 ・ウクライナ侵略が引き起こした世界景気への懸念
 ・中国本土の新型コロナ感染拡大に伴う景気悪化
 ・岸田政権の株式市場を目の敵にしたようにみえる政策

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・9005 東急    値上げ効果期待。
 ・9022 JR東海   業績期待。
 ・6861 キーエンス 業績期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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