相場展望1月13日号 米国株の懸念材料 (1) 政治 (2) 軍事 (3) インフレ (4) 金利 (5) オミクロン

2022年1月13日 09:10

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)1/10、NYダウ▲162ドル安、36,068ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを前倒しするとの観測が、投資家心理の重荷で一時▲600近く下げたが、米長期金利の上昇が一服すると下げ渋った。
  ・Gサックスが2022年の利上げ回数を3回⇒4回に引き上げ、資産圧縮開始時期も12月⇒7月に前倒し。米長期金利は午前に1.80%を付ける場面があった。
  ・製薬のメルク、医療保険のユナイテッドヘルス、バイオ製薬アムジェンが上げた。一方、ナイキが大幅安、景気敏感株が短期的な利益確定売りに押された。

【前回は】相場展望1月10日号 バイデン支持率低下は、生活苦の不満の表れ バブル崩壊リスク回避の金利上昇&資産縮小を

 2)1/11、NYダウ+183ドル高、36,252ドル(日経新聞より抜粋
  ・パウエルFRB議長の議会証言後に、米長期金利の上昇が一服したのを受け、長期金利が上昇すると売られやすい高PERのハイテク株を中心に買い直された。
  ・パウエル議長は1/11の議会証言で、(1)高インフレを抑えるために利上げする(2)保有資産の縮小は「年内に始める可能性はある」と述べた。
  ・ただ、発言内容は市場の想定内であり積極的だったと言えず、金利は低下した。
  ・アップル、セールスフォース、ボーイングが上がり、IBM、P&G、J&Jが下げた。

 3)1/12、NYダウ+38ドル高、36,290ドル(日経新聞より抜粋
  ・米12月消費者物価指数(CPI)の上昇が+7.0%と、市場予想並みにとどまり、米長期金利は一時低下した。
  ・相対的に割高感がある高PER(株価収益率)のハイテクを中心に買い優勢となる。反面、金融のGサックスが売られ、NYダウの重荷になった。
  ・今春以降、インフレ率鈍化を見込む市場関係者が多い。米債券市場も先週末インフレ加速を織り込んで長期金利が上昇していたため、1/12の長期金利はCPI発表後に1.71%まで低下する場面があった。
  ・マイクロソフト・アップルが高く、Gサックス▲3%安とダウを▲80ドル下げた。
       

●2.米国株の懸念材料:(1)政治 (2)軍事 (3)インフレ (4)金利 (5)オミクロン

 1)政治
  ・米中間選挙(11月)
  ・現状の議席 :上院は同数、下院は民主党が多数だが僅差の9議席にとどまる
    民主党  共和党 空席 合計(1/10時点)
   上院     50    50   0  100
   下院     221    212   2   435
  ・中間選挙では、政権党に批判票が集まり逆風となり議席数減の経験則がある。バイデン支持率は43%と低く、共和党が多数を占めると、ねじれ議会運営に転じ、法案成立には苦労し、妥協せざるを得なくなる。そうなれば、バイデン政権のレームダック化が進みやすい。
  ・株式市場は、政治の安定を望み、混乱を嫌って資金流出する性質がある。
  ・日本・参議院選挙(7月)
  ・保守票は自民党離れが進行していたが、昨年の自民党総裁選効果で戻った結果、衆院選挙で自民党は勝利した。ところが、保守票は期待外れで離れ、参院選挙では自民党惨敗の可能性がある。そうなった場合、政治抗争が表面化し、不安定化しやすい。
  ・岸田首相は、今までの自民党政策と異なって証券課税強化を掲げおり、その反発はこれからであろう。
  ・海外投資家は政治の不安定化を嫌って、一時日本株市場から脱出するリスクも考えられる。

 2)軍事
  ・台湾
  ・ウクライナ
  ・軍事衝突からリスク回避で、投資資金はリスク資産から逃げる可能性がある。

 3)インフレ
  ・米12月CPIは前年比+7.0%と歴史的にも高水準にある。
  ・株式市場は想定内ということで冷静に受け止めているが、株式市場に資金流入が続いているため鷹揚に振舞っていると思われる。
  ・米ガソリン価格も前年比+49.5%、下方硬直性のある家賃に上昇などもあり、高インフレの長期化は避けられないだろう。
  ・高インフレ退治は、バイデン大統領にとっても再選を意識した支持率回復と中間選挙勝利のために待ったなしの最重要課題だろう。

 4)米長期金利
  ・長期金利の推移: 1/10一時1.80%を付けたが、パウエルFRB議長の予想内の議会証言を受け、10年債利回りの上昇は一服し低下した。
  ・資金還流の分岐点:「長期金利(10年物)1.75%」と過去、言われてきた。次の節目は2.0%、そして2.5%である。
  ・2年国債利回り: 10年債利回りは上下するが、2年物は1/12で0.911%と上昇傾向にある。節目1%を超える時点で、市場の反応に留意したい。
  ・インフレを抑制したいFRBは、金利の引き上げ策を取らざるを得なくなる。金利上昇と株式市場との綱引きが始まっているが、金利上昇は避けられない。
  ・FRBの資産は3月末時点で9兆ドル規模になる。FRBは新型コロナ禍対策で約5兆ドル近くの資金供給をした。インフレ対策が必要であるとバイデン大統領もパウエルFRB議長も公言している。インフレ対策としても膨大なFRB資産の縮小から避けられない。FRB資産縮小は、過剰マネーとなった市場から引き揚げるため、この側面からも金利上昇を促進することになる。

 5)オミクロン
  ・重症化は低いようだが、感染率が従来と比べて4~6倍強力と言われている。日本のここ数日の新規感染者数の増加数をみると驚きである。
  ・症状の重さよりも、職場・学校からの離脱規模拡大が経済に与える影響が大きい。
  ・変異は止まらないし、楽観できない状況がまだまだ続くことを前提にして臨みたい。

●3.パウエルFRB議長の議会証言 「2022年は金融正常化の年」と表明(FXニュース)

 1)証言概要
  (1)米国経済には、もはや大規模緩和の必要はない。
  (2)2022年が金融正常化を実施する1年になる。
  (3)インフレ抑制のために、積極的な利上げ実施はいとわない。

 2)内容
  (1)新型コロナ変異株オミクロンは、経済回復軌道を損なわない。
  (2)3月に資産購入は終了。
  (3)その後、利上げ開始。
   ・利上げ回数は、データ次第で、インフレ動向と供給問題を見極める。
  (4)年後半には、9兆ドル規模に膨れ上がったバランスシート縮小を開始。

 3)市場反応
  (1)急速な金融正常化を警戒していた市場には安心感が広がった。
  (2)金利上昇も一段落した。
  (3)今後は「利上げ」と「資産縮小」のタイミングを探る展開になると予想。

●4.パウエル議長、利上げ回数の増を示唆、急激な金融引き締めには警戒感も(朝日新聞より抜粋

 1)2022年中に、3回程度見込んでいた利上げについて、「予想を上回る物価上昇が長引けば、より多く進めなければならない」と述べた。

 2)年内にFRBが保有する資産縮小して、金融を引き締める次の段階へと進む見通しを示し、加速する物価上昇を抑制する姿勢を強調した。

●5.FRB要人発言

 1)メスター米クリーブランド総裁:「2022年3回の利上げを想定」(フィスコ)

 2)ボスティック米アトランタ総裁:「インフレ抑制で、早くて3月利上げ」(フィスコ)「その後、速やかに資産縮小開始の必要がある」

 3)ジョージ米カンザスシティ総裁:「FRBは早期の資産縮小を」(フィスコ)

●6.ゴールドマンやUBSは、売り行き過ぎと、株式の押し目買いを勧める(ブルームバーグより抜粋

 1)理由:
  ・株式相場が金利と債券利回りの上昇を乗り越えられるとの見通しを示す。
  ・実質利回りが大きく上昇するとは考えられず、株価の制約になる可能性低い。

 2)Gサックス:高PERの売りはすぐに行き過ぎとなるだろう。
   UBS    :金融政策の正常化は、企業利益の伸びを抑えるものではない。
   ブラックロック:相場下落の機を捉え、リスクを積み増すことを勧める。
   JPモルガン:リスク資産の値下がりは行き過ぎで、下落時は買い時との見方を示す。

●7.米・12月消費者物価指数(CPI)は前年比+7.0%、予想+7.0%・11月+6.8%(フィスコより抜粋

 1)12月CPI+7.0%は予想通り拡大し、1982年以降40年ぶり最大を記録した。

 2)変動の激しい食品やエネルギーを除いたコアCPIは、前年比+5.5%と伸びは11月+4.9%から予想以上に拡大し、1991年2月以降31年ぶり最大となった。

 3)ガソリン、食品、衣料の価格が上昇、特にガソリンは前年比+49.5%高となった。

 4)結果は高インフレを示したものの、ほぼ予想の範囲にとどまり、米株式は先物主導で上げ幅を拡大した。米債券相場は上下に振れ、10年国債利回りは1.745%に上昇後、1.7138%まで低下した。

●8.バイデン大統領、米消費者物価統計を受け「物価の伸びは、依然、高すぎる」(ロイター)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)1/10、上海総合+13高、3,593(亜州リサーチ)
  ・中国政府の経済対策が相場を支える流れとなった。国務院は1/10、公共事業向け特別地方債の発行を加速し、投資拡大方針を示す。併せて、消費拡大にも注力する。
  ・ただ、新型コロナ拡大の影響が不安視され、上値が限定的となった。
  ・業種的には、電気、電力、酒造が買われた。

 2)1/11、上海総合▲26安、3,567(亜州リサーチより抜粋
  ・新型コロナ感染拡大の影響を改めて不安視された。西安市(人口1,000万人)に続き、河南省安陽市(人口550万人)では、国内2カ所目となる都市封鎖に踏み切った。また、北京市に隣接する天津市では、オミクロンの市中感染が週末に確認された。北京冬季五輪の開催まで1カ月を切るなか、「ゼロコロナ」政策を続ける政府は行動抑制を強化し、消費も落ち込むと懸念された。
  ・当局は景気腰折れ回避するため経済対策を強めるとの期待で下値を叩く売りはない。
  ・業種別では、消費関連・ITハイテクが下げ、反面、金融・公益・医薬品が買われた。
 
 3)1/12、上海総合+29高、3,597(亜州リサーチ)
  ・物価上昇の一服を好感した流れとなった。
  ・中国12月物価統計では、消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)ともに
上昇が予想以上に鈍化した点が明らかになり、過度なインフレ懸念が薄らいだ。
  ・金融当局が緩和的な政策を継続するとの見方が広がった。
  ・業種別では、消費関連やITハイテク関連が高く、反面、不動産・銀行が売られた。

●2.中国当局の規制が強まり、中国のゲーム会社1.4万社倒産、リストラ相次ぐ(西日本新聞より抜粋

 1)オンラインゲームの審査が厳格化され、昨年7月下旬以降、新作公開の承認が1本もおりない状態が続き、この5ヶ月で14,000社が倒産した。

 2)日本など規制のない海外市場に活路を求める動きが今まで以上に加速するとみられる。

 3)中国ではオンラインゲーム公開にあたって、メディアを統括する国家新聞出版署の審査と承認が必要となる。内容に、法律違反や国家機密の漏洩、殺人、「女性的な男性」「史実の歪曲」などが新たに加えられた。政府系ゲーム団体の研修会では、「正しい価値観」「中国の歴史・文化への正しい理解」を反映したものであるべきだとの方針が示されたという。

 4)国営通信の新華社系新聞の経済参考報が、オンラインゲームを「アヘン」として批判。18歳未満がゲームで遊べる時間を制限することが企業側に義務付けられた。

●3.中国1月生産者物価指数は前年比+10.3%、予想+11.3%を下回る(フィスコ)

●4.中国の新車販売台数はEV車が増加し前年比+3.8%増の2,627万台、4年ぶり増加(NHK)

 1)商用車は前年比▲6.6%減の439万台、不動産開発の冷え込みが響いた。

 2)新エネルギー車は2.6倍の352万台で過去最高を更新した。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)1/10、「成人の日」祝日のため休場

 2)1/11、日経平均▲256円安、28,222円(日経新聞より抜粋
  ・米国の金融引き締めへの警戒感が強まり、金利上昇が逆風となるグロース(成長)株への売りが押し下げた。
  ・新型コロナ感染急拡大が投資家心理が弱気に傾き、下げ幅は一時▲400円に迫った。
  ・米長期金利上昇観測で、半導体などハイテクを中心に売りが出た。
  ・東エレク、アドテスト、ソフトバンクG、キーエンス、ファナックが安い。反面、金利上昇でSOMPO,第一生命、三井住友FG、三菱重工、武田が買われた。

 3)1/12、日経平均+543円高、28,765円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式市場の上昇を受け、東京市場も成長主力・割安株など買いが広がった。
  ・売り持ちしていた投資家の損失覚悟の買戻しも巻き込み、大幅高となった。
  ・チャート上の200日移動平均線(28,800円)が上値抵抗線として意識された。
  ・ソフトバンクG・トヨタ・東エレク・レーザレクが高く、エーザイ・第一生命は安い。

●2.日銀の生活意識調査、「物価が上がった」77%、消費税増税以来(読売新聞)

●3.東証の市場再編(共同通信、毎日新聞、朝日新聞)

 1)2022年4月4日実施

 2)内容: 東証の4グループ⇒3
     東証1部   東証2部  ジャスダック  マザーズ
  社数  2,185     474     694      424
      ↓  ↘   ↓   ↙    ↘   ↙
     プライム  スタンダード      グロース
  社数  1,841(84%) 1,477        459
  趣旨 世界企業   国内企業       新興企業
  時価 100億円以上 10億円以上      5億円以上

●4.東京証券取引所、EduLabに決算虚偽で違約金4,800万円要求、マザーズに変更(時事通信)

●5.企業動向

 1)大王製紙  ティッシュ、トイレットペーパー等15%以上3/22値上げ(読売新聞)
 2)楽天    都市部の高層マンションでドローン配送の実証実験(NHK)
 3)トヨタ   2021年世界販売首位が確定、2年連続でVWを上回った(共同通信)
 4)ジャパンディスプレイ 資本金減資2,151億円⇒1億円へ、7年連続赤字(時事通信)
 5)ローム   中国・天津工場を1/9から稼働停止、コロナ感染制限(ブルームバーグ)

●6.企業業績

 1)良品計画  9~11月期営業利益+111億円と前年同期比▲15.3%減。(フィスコ)
         予想+126億円に届かず。衣類・雑貨で販売苦戦。
 2)イオン   3~11月期最終損益▲89億円赤字。総合スーパーの回復鈍く(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・1942 関電工   新電力網建設期待。
 ・1721 コムシス  業績堅調。
 ・7244 市光工業  業績好調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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