相場展望12月9日 金融正常化問題忘れ、新型変異株の懸念後退だけで株価全値戻し(米SP500)(日本株は半値戻し)

2021年12月9日 08:59

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・短期筋の買い仕掛けで上昇もあり、反動安に注目

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)12/06、NYダウ+646ドル高、35,227ドル(日経新聞より抜粋
  ・1日の上げ幅としては米大統領選があった2020年11/9(+834ドル高)以来、1年1カ月ぶりの大きさだった。
  ・新型コロナ「オミクロン型」に対する懸念が後退し、景気敏感株を中心に上昇。
  ・NYダウは前週まで4週連続で下落し、短期的な戻りを狙った買いが入った。
  ・米政権のファウチ主席医療顧問が12/5、「感染者の重症化は高くない」との見方を示し、景気悪化の過度な警戒感が和らいだ。
  ・クレジットカードのアメックス、航空機のボーイングや化学のダウなど幅広く景気敏感株に買いが入った。空運株も軒並み上昇した。
  ・中国人民銀行による預金準備率引き下げ発表を背景に中国関連株も上昇した。
  ・過去4週間で▲1,747ドル・▲4.8%下落していただけに、売り込んでいた投機筋の買戻しを巻き込んで上げ幅が大きくなった面もある。

【前回は】相場展望12月6日 米国・長短金利差が縮小、VIX指数高水準に注目 日本株、個別株で下落目立つ、SQ波乱?注視

 2)12/07、NYダウ+492ドル高、35,719ドル(日経新聞より抜粋
  ・新型コロナ変異型「オミクロン型」の蔓延が米景気の悪化につながるとの懸念が和らぎ、投資家心理が強気に傾き、景気敏感株・ハイテク株に買いが入った。
  ・米政権のファウチ医療顧問が「重症化しにくい」、英グラクソ・スミスクラインが「開発中のコロナ治療薬が有効性を示した」との説明も、投資心理を改善した。
  ・相場の重荷だったFRBのタカ派転換も「相場に織り込まれた」と指摘があった。
  ・投資家心理を測るVIX(恐怖)指数30を割り21.89と急低下した。
  ・景気敏感のアメックスが+4%高、Gサックス+3%高、インテル+3%高。アップルは史上最高値を更新、アマゾン、エヌビディアなども軒並み上昇した。

 3)12/08、NYダウ+35ドル高、35,754ドル(日経新聞より抜粋
  ・製薬のファイザーは12/8、3回目接種がオミクロン型に対して予防効果があるとの調査結果を発表。過度の懸念が後退した。
  ・新型コロナ変異株「オミクロン」の感染拡大の懸念後退を背景に消費関連株が買われた。
  ・NYダウは朝方+120ドル超上昇したが、急上昇した後とあって、目先の利益を確定する売りが相場の上値を抑えた。
  ・映画娯楽のディズニー、航空機のボーイング、クルーズ船・空運の上げが目立つ。

●2.米国株は、新型変異種の懸念後退だけで、「大幅下落の全値戻し近く」を達成したが、今後は『金融正常化』問題を思い出す局面に

 1)米国株の下落・戻し高の推移
   ・   11/08  12/01        12/08     (単位:ドル)
  NYダウ 36,432 34,022 ▲2,410下落 35,754 +1,732増 戻り率71.9%
       11/18  12/01
  SP500   4,704  4,513 ▲ 191下落 4,701  + 188増  戻り率98.4%

 2)新型変異種「オミクロン」の重症化は認められず、懸念後退で大幅戻り、一服か?

 3)次のイベント、12月FOMC(12/14~15)会合結果に、視点が動く可能性
  ・FRBは物価抑制のためタカ派に転向で、
   (1)テーパリング加速(毎月1,200億ドルの債券購入の減額150億ドルを増額)
   (2)金利引上げの早期化
   に向けて、どう動きだすか? そして市場の反応に注目したい。

●3.米10月JOLT求人件数1,103万件、予想外の増加で史上2番目(フィスコ)

 1)良好な結果を受けて、米国債市場は続落し、10年債利回りは1.5127%に上昇。

●4.ガンドラック氏、リスク資産の「炭鉱のカナリア」の高利回り債に注視(ブルームバーグより抜粋

 1)ガンドラック氏は、米投資会社ダブルライン・キャピタルの最高経営責任者(CEO)。

 2)FRBが資産購入のテーパリング(段階的縮小)を予定より早く終了させて、利上げに向かう構えを見せる中では、金融市場の前途に「荒波」が待ち受けていると警告した。

 3)新型コロナの世界的流行のもとで債務が急増し、借入コストの上昇が成長の逆風になる可能性が高いと主張。リスク資産の今後を占う意味で「炭鉱のカナリア」になりかねない高利回り債市場から目を離さないよう助言した。債券市場はイールドカーブがフラット化(長短金利差が接近)し、トラブルの兆候が既に反映されている。米国の2年債利回りは現在0.69%前後だが、1%を上回れば、問題が生じる恐れがある。

 4)パウエルFRB議長は「景気は強く、利上げが可能」と言うが、『景気基調は弱く、相場は前例のない金融刺激策で人為的に支え合っているだけ』だと主張した。

●5.欧州

 1)独ZEW景気期待指数は12月悪化、現状指数は 6カ月ぶり低水準(ブルームバーグより抜粋
  ・ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)12/7発表、12月景気期待指数は29.9と、前月の31.7から低下し、エコノミスト全員の予想を下回った。
  ・ドイツは新型コロナ感染者数が記録的増加し、経済成長見通しはここ数週間悪化。
       

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)12/06、上海総合▲18安、3,589(亜州リサーチより抜粋
  ・新型コロナ感染拡大への警戒感が重石となった。
  ・新変異型「オミクロン型」の感染は急速に広がり、12/5時点で40カ国・地域を超えている。 感染者に重篤な症状は現時点では見られないものの、各国が入境規制を強めている。また、中国国内で「オミクロン」の感染確認されていないが、従来型は散発した。
  ・もっとも、下値は限定的で、金融緩和への期待が支えとなった。李克強首相は12/3、「適切な時期に預金準備率を引き下げ、実体経済、特に中小企業への支援を強化する」と述べた。
  ・業種別では、ITハイテク関連の下げが目立ち、医薬品・不動産が売られた。反面、証券・銀行・海運が買われた。

 2)12/07、上海総合+5高、3,595(亜州リサーチより抜粋
  ・中国政府の景気テコ入れを好感した流れとなった。
  ・中国人民銀行は12/6、銀行の預金準備率を12/15から0.5%引き下げると発表。
  ・共産党中央政治局会議で12/6、不動産規制の緩和修正方針が示された。
  ・中国11月貿易統計は、輸出と輸入の伸びがそろって予想を上回った。
  ・業種別では、不動産が高く、金融もしっかり、運輸・インフラ建設なども上昇。反面、ハイテクは冴えなく、自動車・非鉄・防衛関連が売られた。

 3)12/08、上海総合+42高、3,637(亜州リサーチ)
  ・中国政府の経済対策への期待感が持続した。
  ・中国人民銀行は預金準備率を0.5%引き下げると発表、銀行貸し出しの最優遇貸出金利も引き下げられるとの見方が広がった。
  ・業種別では、ITハイテク関連の上げが目立ち、酒造・食品・小売などが買われた。一方、不動産が冴えず、銀行の一角も売られた。

●2.中国、金融緩和に舵を切る、不動産市場の低迷が経済成長に打撃の恐れ(ブルームバーグより抜粋

 1)中国共産党中央政治局は12/6、習近平総書記(国家主席)が主宰した会議で、不動産界への規制緩和を示唆した。

 2)来年後半の第20回共産党大会を前に、2022年の経済安定化の方針を示した。中国不動産開発業者の資金繰り危機は、債券市場を揺るがせている。

 3)中国人民銀行(中央銀行)も12/6、銀行の預金準備率を来週から0.5%引き下げると発表。これにより、1兆2,000億元(約21兆円)の資金が市場に供給される。李克強首相は12/6遅く、さまざまな金融政策の余地があると述べた。

 4)UBSとモルガン・スタンレーは、不動産開発業者の資金調達が容易にするための措置がなされると予想している。中国不動産開発会社の株価は11/7に上昇し、中国恒大と佳兆業は香港市場で一時
+8.3%と+4.4%高を付けた。

●3.中国社会科学院は12/6、中国の2022年経済成長率を5.3%と予想(ロイターより抜粋

 1)中国政府のシンクタンク・中国社会科学院は年次報告で、2021年成長率は8%と予想。来年2022年は不動産業の低迷が続き、地方政府の歳出を圧迫するとの見方を示した。

 2)また、中央政府に対しては、不動産セクターを軟着陸させる措置を積極的に講じ、大都市の土地入札が不成立にならないようするとともに、中小都市での不動産価格急落リスクを払拭するよう求めた。

●4.中国、預金準備率を12/15から0.5%引き下げ、今年2回目(ロイターより抜粋

 1)新型コロナの流行が続く中、減速する景気の押し上げに向けて1兆2,000億元の長期流動性を供給する。

●5.規制リスクで滴滴出行の米上場廃止、強気に傾く中国株投資に警鐘 (ブルームバーグ)

 1)米国に上場する中国株全体の時価総額は、2月からの減少幅1兆ドル(約113兆円)を超えた。

 2)中国の習近平国家主席がテクノロジーセクターなどの変革に着手して1年余経った現在でも中国投資のリスクの高さを浮き彫りにした。

●6.中国恒大集団は11/6、社債の利払い93億円確認できず、債務不履行の可能性も(朝日新聞)

 1)広東省政府はリスク管理などにあたる監督チームを恒大に派遣している。広東省政府直轄で債務処理を進めていく構え。

 2)仮に今回の社債利払いを終えても、12/28は2億5,520万ドル(約290億円)の利払い期限が迫る。年明け以降も社債の利払いや償還が控えている。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)12/06、日経平均▲102円安、27,927円(日経新聞より抜粋
  ・前週末の米株式市場でPER(株価収益率)の高いグロース(成長)株の下げが大きかった流れを受け、東京市場でも成長株の下げが目立った。
  ・新型コロナ変異型「オミクロン型」の感染拡大への懸念もあって、下げ幅は▲300円を超える場面があった。経済活動への影響が見極めきれず、積極的な運用リスクを取り難いムードが続いた。
  ・ソフトバンクGは投資戦略への不透明感も意識され▲8.2%下落、日経平均を▲96円押し下げ、東京市場の市場心理の悪化につながった。
  ・反面、27,000円台後半では、値ごろ感が意識された銘柄には買いが入り、下値は限定的だった。
  ・第一三共・中外製薬など医薬品株の下げが目立ち、一方、川崎汽船は+6.7%高。

 2)12/07、日経平均+528円高、28,455円(日経新聞)
  ・日経平均は大幅反発し、上げ幅は11/1以来、およそ1カ月ぶりの大きさだった。
  ・前日の米株式市場が大幅上昇したこと、新型コロナ変異種「オミクロン」に過度な警戒感が後退したことから、景気敏感株を中心に幅広い銘柄に買いが入った。
  ・最近の下落局面で売り方だった投資家による、先物主導での買戻し転換もあった。
  ・配当の再投資や、冬賞与の支給による買いで、需給改善の期待も支えとなった。
  ・日経平均は一時+690円高となる場面があったが、個人を中心に戻り待ちの売りが出て、大引け間際に伸び悩んだ。
  ・ソフトバンクGは+7.9%上げ、日経平均を1銘柄で85円ほど押し上げた。ANA・日本郵船・日本製鉄が大幅上昇し、関西スーパー・日水・Zが下落した。

 3)12/08、日経平均+405円高、28,860円(日経新聞より抜粋
  ・変異株「オミクロン」懸念が後退し、投資家はハイテクを中心に買い広がった。
  ・従来型よりも重症化しにくい可能性があり、大規模な経済活動の制限が避けられそうとの期待が支援材料になった。
  ・12/10の先物特別清算(SQ)前に、売り手の損失カバー目的の先物買いが入った。
  ・東京エレク、エムスリー、ファナックなど値嵩株が買われ、不動産が売られた。
  ・一方、心理的節目29,000円が視野に入ると、利益確定や戻り待ちの売りが出た。

●2.日本株は、新型「オミクロン型」の懸念後退を理由に、短期筋の買い仕掛けで大幅反発

 1)日経平均は下げに対する戻り率は53.9%と、半値戻しに留まっている。
  ・日経平均は、11/16~12/01まで▲2,055円・▲6.9%の下落した。
  ・12/03から自律反発狙いの買いと、売り方の買戻しもあり、12/07時点で+1,107円高・+4.0%上昇した。
  ・   11/16  12/02         12/08   (単位:円)
日経平均 29,808 27,753 ▲2,055円安  28,860  +1,107円高
    下落幅に対する戻り率(12/08時点)53.9%
  ・米国株の戻り率と比較すると、12/8現在では「弱い戻り」といえる。
   戻り率:NYダウ+71.9%、SP500+98.4%、日経平均+53.9%、TOPIX+60.6%

 2)騰落レシオから見ると、6日ベースでは「高値警戒」で反落が近づいていると示唆。
  ・ただし、25日ベースは「居心地の良い」状態を示している。
  ・騰落レシオの推移   11/30  12/07  12/08
        6日ベース  37.31  146.76  180.91
        25日ベース  71.53   82.27   78.04

 3)外資系先物は、今回の上げ局面では外資系の買い仕掛けに対し、野村の売りという攻防になっている。
  ・外資系は、売り仕掛けで減少した買いポジションの買戻しの範囲ともいえる。外資系の買い残高枚数は歴史的に低い水準にある。外資系の本格的な買いか? 単なるポジション調整の範囲なのか?については、
今後の動向に注目したい。
   

●3.内閣府12/8発表、7~9月期国内総生産(GDP)年率換算▲3.6%減(日経新聞)

●4.企業動向

 1)味の素   マヨネーズを3~9%値上げ、来年3月納品分から(朝日新聞)
 2)トヨタ   米南部ノースカロライナ州に電池生産工場を1,400億円投資(Response)
         生産は当初年間で80万台、その後120万台まで拡大、25年稼働予定
 3)ソニー   米ゲーム事業売却で譲渡益650億円(時事通信)
 4)リクシル  ユニットバス39%、トイレ33%、キッチン11%程度の値上げ(FNN)
         要因は、原材料価格高騰、コンテナ不足による輸送費上昇など
 5)東洋水産  家庭用生めん・冷凍食品250品目を来年4月から値上げ(時事通信)
         値上げ幅は、家庭用生めん6~13%、具材・冷凍食品9~11%
 6)JR東日本  山手線などワンマン運転導入目指す、乗客安全確保が課題(NHK)
 7)飯田G   ロシア木材企業を660億円で買収、木材の安定調達を狙う(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・8604 野村証券     業績回復期待。
 ・8439 東京センチュリー 業績回復。
 ・6577 ベストワン    旅行客回復期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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