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ポルシェ、全従業員の約2割に当たる9,000人を削減へ 中国販売の急減とEV戦略転換が重荷に

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ドイツの高級車メーカー、ポルシェは2035年までにさらに5,000人の人員を削減することで総合事業所委員会と合意した。これにより、全従業員の約2割に当たる合計約9,000人の削減が計画されている。中国市場での販売急減やEV戦略の転換が背景にあり、同社は強制解雇を回避する一方で、巨額の投資と拠点保証を約束した。
■全従業員の約2割を削減へ
ポルシェAGと総合事業所委員会(General Works Council)は月曜日(7月27日)、2035年までにさらに5,000人の人員を削減することで合意した。これにより、同社が計画する人員削減は合計約9,000人となり、全従業員約42,600人の約5分の1に相当する。数カ月にわたる交渉を経て発表され、前週に監査役会で承認された今回の合意には、強制解雇を行わないことに加え、シュトゥットガルト・ツッフェンハウゼンの本社工場とヴァイザッハの研究開発センターに21億ユーロ(約23億9,000万ドル、約3,920億円、1ドル=164円換算)を投資することが盛り込まれている。この投資とそれに伴う拠点保証は、事業所委員会がこの規模の削減を受け入れる条件として引き出したものであり、ポルシェの危機だけでなく、ドイツの労働法制の特徴も浮き彫りにしている。
今回の合意はポルシェ史上最大規模の再編であり、4年連続で急減した中国での販売、対応を誤ったEV(電気自動車)移行、そして米国の輸入関税による継続的な負担が背景にある。2026年1月1日にマクラーレンから移り、直ちに事業の立て直しを任されたマイケル・ライターズCEOは、目標をポルシェを「よりスリムで、より速く、さらに魅力的なものにする」ことだと説明している。この説明どおりの成果を上げられるかは、今回の譲歩による効果が尽きる前に収益の減少を止められるかどうかにかかっている。
■8カ月で2度目の人員削減
月曜日(7月27日)の5,000人削減の合意は、1年足らずで2度目となる大規模な再編策だ。第1弾では、2025年2月に1,900人の削減が発表され、その後3,900人に拡大されて、2026年6月24日に労働組合との間で正式に確認された。これに加え、ライターズCEOが5月に発表した3つの子会社、バッテリーセルを製造するCellforce Group、電動自転車用駆動システムを手がけるPorsche eBike Performance、データ通信ソフトウェアを専門とするCetitecの閉鎖に伴い、さらに500人が削減対象となった。今回の合意は、これらに追加される形となる。
合意条件に基づき、対象となる管理職と従業員は、予定されている昇給分の3.5%について、支給を2035年まで繰り延べる。2027年と2028年には、上級管理職と経営幹部も、基本報酬の引き上げ分から同等額を拠出する。最大で月給1カ月分に相当していたクリスマスボーナスは、月給の60%に引き下げられる。在宅勤務が認められる日数も、月最大12日から8日に減らされる。
ツッフェンハウゼンとヴァイザッハにおける雇用と拠点の保護は、2035年末まで継続される。ポルシェ総合事業所委員会のイブラヒム・アスラン委員長は、今回の合意は適切な結果だとしたうえで、拠点への投資は「さらに5年間の雇用確保にも大きな役割を果たすだろう」と述べた。
■中国市場:最大の収益源から危機的状況へ
ポルシェの再編を最も強く促した要因は、中国市場をほぼ完全に失ったことだ。中国での納車台数は、2021年のピーク時の95,700台から、2022年には93,300台、2023年には79,300台、2024年には56,900台、2025年には41,900台へと減少し、4年間で56%落ち込んだ。2026年上半期の中国での納車台数は、前年同期比でさらに32%減少して14,501台となり、同じ期間に本国ドイツで納車した14,938台を下回った。その1年前には、中国での納車台数がドイツを5,300台以上上回っていた。状況は完全に逆転した。
ポルシェ中国のアレクサンダー・ポリッチ社長兼CEOは、2026年1月のメディア向けラウンドテーブルで、この状況を「パーフェクトストーム」と表現した。その構造的な原因は、単なる一時的な市場サイクルよりも根深い。中国のEVメーカーは、欧州ブランドが数十年かけて築いてきた威信の優位性を切り崩すほどテクノロジーを充実させたモデルを、より低い価格で投入している。70万元(約9万7,500ドル、約1,600万円、1ドル=164円換算)を超える超高級車市場では、ファーウェイとJAC(江淮汽車)が展開する電動セダン「Maextro S800」の2025年12月の中国販売台数が、ポルシェ・パナメーラ、BMW 7シリーズ、メルセデス・マイバッハ Sクラスの合計納車台数を上回った。
ポルシェはこれに対応するため、中国のディーラー網を2024年の約150店舗から2025年末までに114店舗へ縮小した。2026年には、さらに約80店舗まで減らす計画だ。
■EV戦略の誤算と巨額の代償
中国での販売低迷と同時に、ポルシェはEV戦略をめぐる財務上の清算にも直面した。この戦略転換は、自動車史上でも特に高くついた方針転換の一つとなった。
グループの営業利益は、前年の56億4,000万ユーロ(約64億3,000万ドル、約1兆545億円、1ドル=164円換算)から、2025年には4億1,300万ユーロ(約4億7,100万ドル、約772億円、同)へと93%減少した。主な要因は、約39億ユーロ(約44億5,000万ドル、約7,298億円、同)の特別費用だ。その内訳は、製品戦略の見直しと組織再編に関連する費用が約24億ユーロ(約27億4,000万ドル、約4,494億円、同)、バッテリー関連費用が7億ユーロ(約7億9,800万ドル、約1,309億円、同)、米国の関税による影響がさらに7億ユーロ(約7億9,800万ドル、約1,309億円、同)となっている。自動車部門に限ると、営業利益は53億ユーロから9,000万ユーロ(約1億300万ドル、約169億円、同)へと98%減少した。
この方針転換を最も具体的に示しているのは、あまり大きく報じられることのない技術上の問題だ。ポルシェがアウディと共同開発したEV専用アーキテクチャ「PPE Sport(Premium Platform Electric Sport)」は、センタートンネル、燃料タンクを設置する空間、排気系統の取り回しを意図的に設けない設計となっていた。センタートンネルは、ミッドシップの内燃機関レイアウトでドライブシャフトを通すために必要となる。客室の床下に平らな形で配置されるバッテリーパックも、車体の荷重を担う構造部材として設計されていた。つまり、バッテリーを取り外すには、車体のねじり剛性を一から再構築する必要がある。
ヴァイザッハのポルシェのエンジニアは現在、まさにその作業に取り組んでいる。内燃機関を搭載しないことを前提に専用設計されたプラットフォームに、内燃機関を搭載できる構造を後から組み込もうとしているのだ。再設計されたプラットフォームを使う新たな内燃機関搭載の718派生モデルは、早くても2028年か2029年まで登場しないとみられている。さらに、ポルシェが電動718向けバッテリーセルの供給を委託していたスウェーデンのメーカー、ノースボルト(Northvolt)が2024年11月に破産したことで、開発日程は一段と複雑になった。
「911」はEV化されず、代わりにハイブリッド技術をより広範に採用する。これは、タイカンをポルシェの走行体験の未来として打ち出してきた同社の方針からの明確な後退だ。2026年上半期には、タイカンの納車台数が25%減の6,219台となり、マカンシリーズも22%減少した。一方、最も底堅かったのは電動フラッグシップではなく、ポルシェで最も古い車名を持つ911だった。911の納車台数は、GTS、ターボ、GT各派生モデルの需要に支えられ、19%増の30,534台となった。これらは、EVへの転換によって依存度を下げようとしていた内燃機関主体の高利益率モデルである。
■ライターズCEOの使命と「Strategy 2035」
ポルシェ入社前にマクラーレン・オートモーティブのCEOを務めていたライターズ氏は、就任後、迅速に改革を進めてきた。2回の人員削減に加え、ブガッティ・リマックとリマック・グループのポルシェ保有株式を売却し、バッテリー供給問題に対するポルシェの解決策と位置づけられていたCellforceを閉鎖した。さらに、設立されて間もないCar-IT部門も解散した。これらの動きは、いずれもポルシェの再編計画に含まれている。
ライターズCEOが2026年3月の年次決算発表会で提示した「Strategy 2035」は、「ブランドと顧客」「製品と技術」「企業とオペレーション」の3本柱で構成される。具体的な製品ロードマップや利益率の回復目標を含む戦略の全容は、2026年10月7日に予定されているキャピタル・マーケッツ・デーで示される見通しだ。ライターズCEOは、それまで待ってほしいと株主に公の場で求めている。
同社の2026年の業績見通しは、売上高が350億~360億ユーロ(約399億~410億ドル、約6兆5,436億~6兆7,240億円、1ドル=164円換算)、売上高営業利益率が5.5~7.5%となっている。控えめな水準ではあるが、2025年に記録した1.1%からは明確な回復となる。
■ドイツ労働法がもたらす雇用保護と構造的リスク
強制解雇を行わないこと、拠点を保証すること、投資を約束することを組み合わせた今回の合意は、ドイツの自動車業界の再編を伝える多くの報道で見落とされている事情を反映している。ポルシェのようなドイツ企業で働く従業員には、事業所組織法(Betriebsverfassungsgesetz)と1976年共同決定法に基づく法的権利がある。これらの法律の下では、企業は事業所委員会と協議する必要があり、事業所委員会は社会計画(Sozialplan)を要求することによって、強制的な人員削減を事実上阻止できる。従業員が2,000人を超える企業では、監査役会の半数を従業員代表とすることも義務付けられている。
これはポルシェ経営陣の寛大さによるものではない。強制解雇を行わないという約束と10年間の拠点保証は、ドイツの労働法制の下で必要となる法的・政治的な代償であり、事業所委員会が約9,000人規模の削減を受け入れるのと引き換えに交渉で得た譲歩だ。メッツラー(Metzler)のアナリスト、ダニエル・シュヴァルツ氏は、今回の削減規模は「販売台数の減少にほぼ対応している」と指摘した。計算は残酷なほど単純だ。ポルシェは拡大を続ける販売見通しを前提に人員体制を築いたが、その前提となった成長軌道は、中国市場の崩壊とEV戦略の転換によって恒久的に失われた。
一方、強制解雇を防いだ法的枠組みは、今後に向けた構造的な問題も生み出す。拠点保証と2035年まで維持される固定費負担は、中国市場の縮小が現在の予測を超えて加速した場合や、EV市場がライターズCEOの戦略で想定する時期までに回復しなかった場合に、ポルシェが対応できる速度を制限する。収益がなお減少している企業が、2030年代半ばまで自社のコスト構造を維持すると約束したことになる。
■ポルシェはもはやVWの利益のけん引役ではない
ポルシェの危機は、同社だけの問題ではない。ポルシェは3年足らずの間に、フォルクスワーゲングループで最も利益率の高い子会社から、同グループが最も早急に対処すべき問題の一つへと転じた。ポルシェでライターズ氏の前任者を務め、現在は親会社のトップに立つVWグループのオリバー・ブルーメCEOは、グループ全体の人員削減規模を倍増させ、10万人にする方針を推進している。同氏は、中国ブランドの欧州市場への進出が続くなか、競争力を維持するために必要な措置だとしている。ブルーメCEOはまた、プレミアムブランドであるアウディの工場1カ所を含むグループの4工場が、2030年以降に閉鎖の危機に直面すると警告している。
メルセデス・ベンツとBMWも、高い関税の影響を吸収しながら、中国の競合企業に対抗してEVへの移行を進めるため、コスト削減と事業再編に取り組んでいる。ドイツ自動車工業会(VDA)は、2019年以降にすでに失われた約10万人分の雇用に加え、2035年までに自動車業界で22万5,000人分の雇用が失われる可能性があると推計している。
ポルシェの株価は、2022年9月にフランクフルト証券取引所へ上場して以来、約50%下落した。この新規株式公開は当時、ドイツ史上最大規模だった。7月27日の発表後、月曜日のフランクフルト市場で株価は小幅に下落した。この限定的な反応は、悪材料の多くがすでに株価に織り込まれていることを示唆している。
■消費者への影響と今後の展望
消費者にとって、今回の再編は製品ラインアップに直接的な影響を及ぼす。内燃機関(ICE)搭載の718ボクスターとケイマンは、計画されていたEVへの移行に備え、2025年に生産を終了した。電動718の後継モデルは、早くても2027年まで登場しない見通しだ。再設計されたPPE Sportプラットフォームを使う内燃機関搭載モデルについては、早くても2028年か2029年まで登場しないとみられている。米国で13万7,850ドル(約2,261万円、1ドル=164円換算)からとなる911より安い新車のポルシェ製スポーツカーを求める購入者には、現在のラインアップ上、選択肢がない。
タイカンは生産を継続しているが、主要市場で高級EVの需要が弱まるなか、2026年上半期の世界納車台数は25%減の6,219台にとどまった。完全電動のカイエンは、既存の内燃機関モデルおよびプラグインハイブリッドモデルと併売される形で、2026年6月下旬に顧客への納車が始まった。複数の動力方式を併存させるこのラインアップは、戦略上の不確実性を解消するというより、それを映し出している。
ライターズCEO自身の表現は示唆に富む。同氏が掲げる目標は「より少ない台数で利益を上げる」ことだ。これは、中国で販売台数を伸ばすことで過去10年間の成長を実現してきたブランドにとって、大きな方針転換となる。より少ない台数の高利益率車で、中国市場における収益の減少を補えるかどうかは、「Strategy 2035」がまだ答えていない中心的な問題だ。投資家は、10月7日のキャピタル・マーケッツ・デーで、ライターズCEOがその答えを示すことを期待している。
■注目ポイントQ&A
●なぜポルシェはこれほど大規模な人員削減を今行うのですか?
ポルシェの営業利益は、EVロードマップの撤回や米国の関税の影響などに伴う39億ユーロ(約44億5,000万ドル、約7,298億円)の費用と、中国で4年連続して販売が急減したことにより、2025年には56億4,000万ユーロ(約64億3,000万ドル、約1兆545億円)から4億1,300万ユーロ(約4億7,100万ドル、約772億円)へと93%減少しました。7月27日の総合事業所委員会との合意は、減少した収益を前提として、ライターズCEOがポルシェで維持可能だと考えるコスト構造を正式に定めるものです。ドイツの労働法制では、事業所委員会が大きな交渉力を持ちます。大規模な削減を受け入れる代わりに、強制解雇を行わないことや拠点を保証することなどの条件を交渉したため、合意までに数カ月を要しました。
●ポルシェは今後も電動の718ボクスターやケイマンを販売しますか?
先行きは不確実であり、予測可能な時期に実現しない可能性もあります。ガソリンエンジン搭載の718は2025年に生産を終了しました。当初2025~2026年に予定されていた電動の後継モデルは、2024年のバッテリー供給会社ノースボルトの破産によって遅れました。その後、電動モデルの開発計画自体を続行すべきかどうかをめぐる社内協議により、計画はさらに不透明になっています。
ポルシェは同時に、センタートンネル、燃料タンク用の空間、排気系統を持たないよう設計されたPPE Sportプラットフォームに、内燃機関を搭載できる構造を後から組み込む作業を進めています。これにより、開発日程には少なくとも1~2年の遅れが加わります。内燃機関搭載の718は、早くても2028~2029年まで登場しないとみられています。911のエントリー価格を下回る新車のポルシェ製スポーツカーを求める購入者には、現在のところ選択肢がありません。
●事業所委員会との合意は、労働者に何を保証しているのですか?
合意に基づき、2035年まで強制解雇は行われません。人員削減は、自然減、部分退職制度の拡大、希望退職を通じて実施されます。現在のポルシェの全拠点は、少なくとも2035年まで操業を続けます。
その引き換えとして、従業員は予定されている昇給分の3.5%について支給を2035年まで繰り延べること、クリスマスボーナスを月給1カ月分から月給の60%へ引き下げること、在宅勤務が認められる日数を月12日から8日へ減らすことを受け入れました。上級管理職は別途、2027年と2028年の基本報酬の引き上げ分から同等額を拠出します。ツッフェンハウゼンとヴァイザッハへの21億ユーロ(約23億9,000万ドル、約3,920億円)の投資は、事業所委員会がこの規模の削減を受け入れる条件として掲げた主な要求でした。
●なぜ中国市場はポルシェにとってこれほど急激に悪化したのですか?
中国は過去20年間にわたってポルシェで最も急成長した市場であり、2010年代半ばまでには同社最大の単一市場となっていました。今回の逆転は、2つの構造的変化を反映しています。
第一に、中国の若い富裕層が、優れた車内テクノロジーの統合と欧州高級車に匹敵する威信を備えた、ファーウェイとJACの「Maextro S800」のような中国製のテクノロジー重視型EVを選ぶ傾向を強めていることです。第二に、中国メーカーが高級車市場への進出を加速させた時期に、ポルシェ自身のEV製品戦略によって、中国の重要なEV市場に製品の空白が生じたことです。
ポルシェはまた、価格水準を維持するために供給を意図的に抑える「価値重視の販売」戦略を進めており、これが販売台数の減少をさらに大きくしています。ポルシェ中国のアレクサンダー・ポリッチCEOは、こうした複数の圧力が重なった状況を「パーフェクトストーム」と表現しました。
元記事: Porsche Axes One in Five Jobs as China Collapse and EV Reversal Cost Billions
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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