ビッグバンから僅か5億7千万年後の超大質量ブラックホールを発見 宇宙望遠鏡科学研究所

2023年7月10日 17:40

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CEERSプロジェクトで得られた超遠方銀河群の画像 (c) NASA、ESA、CSA、スティーブ・フィンケルスタイン (ユタ州オースティン)、ミカエラ・バグリー (ユタ州オースティン)、レベッカ・ラーソン (ユタ州オースティン)

CEERSプロジェクトで得られた超遠方銀河群の画像 (c) NASA、ESA、CSA、スティーブ・フィンケルスタイン (ユタ州オースティン)、ミカエラ・バグリー (ユタ州オースティン)、レベッカ・ラーソン (ユタ州オースティン)[写真拡大]

 ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を運営管理する米国の宇宙望遠鏡科学研究所(Space Telescope Science Institute, STScI)は6日、ビッグバンから僅か5億7,000万年後には既に存在していた超巨大ブラックホールを発見したと発表した。

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 このブラックホールは、CEERS1019と名付けられた銀河の中心に存在する。他の一般的な超大質量ブラックホールが太陽質量の10億倍もの質量をもつのに対し、だいぶ小ぶりで太陽質量の900万倍程度しかない。裏を返せばこれまでに知られていた超大質量ブラックホールは、規模が大きかったために、JWSTほどの解像力を要さずとも発見が可能であったということもできる。

 STScIは同時に、ビッグバンから10億年から11億年後に存在していた2つの銀河と、4億7,000万年から6億7,500万年の間に存在した11個の銀河を特定。JWSTの本格稼働によって、従来捉えることが困難であった130億光年クラスでしかも規模がそれほど大きくない超遠方天体の発見が、相次いでいる。

 これまでにも研究者らは、宇宙誕生初期に既にCEERS1019クラスの超大質量ブラックホールが誕生していたはずであることを、理論上は確信していた。だが実際に発見されたのは、これが初めてという。

 現在発見されている超大質量ブラックホールたちは、皆活発な活動が始まっているものばかりで、活動が未発達の状態のものはなく、超大質量ブラックホール誕生のメカニズム解明には至っていない。

 恒星を起源とするブラックホールの誕生メカニズムについてはよくわかっているが、超大質量ブラックホールがなぜどのようにして生まれたのか解明してゆくためにはには、JWSTによる観測データの蓄積が必須条件となる。その際に必要となるのは、ブラックホールとしての活動がまだ始まっていない様々な段階にある天体のデータだ。

 このようなデータ収集のために現在、CEERSプロジェクトが進行中だ。CEERSはCosmic Evolution Early Release Scienceの略で、宇宙誕生初期に存在していた天体に関する科学を意味し、JWSTを用いた精力的な活動を展開中だ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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