相場展望4月3日号 米国: しばらく「楽観」が優勢な展開か 日本: やや「買われ過ぎ」も、需給の良さで「堅調」との見方

2023年4月3日 10:15

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)3/30、NYダウ+141ドル高、32,589ドル(日経新聞より抜粋
  ・今週は新たに経営不安に陥る金融機関が出ておらず、金融システム不安が収束しつつあるとの見方が相場の支えとなった。ただ、3/31に米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する物価指標の発表を控え、上値は重かった。
  ・米金融当局は必要に応じて金融機関への支援を拡充する姿勢を示している。金融不安を背景に銀行が貸出しを渋り、米景気の冷え込みにつながるとの過度な懸念は薄れている。金融市場は落ち着きを取り戻しはじめ、投資家は運用リスクを回避する姿勢を緩めた。
  ・もっとも、NYダウは買い一巡後に伸び悩み、下げに転じる場面もあった。3/31にはFRBがインフレ目標として重視する米個人消費支出(PCE)物価指数の2月分が発表されるため、手仕舞い売りが出やすかった。
  ・3/30発表の週間の米新規失業保険申請件数は19.8万件と、市場予想19.5万件以上に増えたものの、「依然として低水準で労働市場の強さを示した」と受け止められた。インフレ圧力の根深さが意識されたことも重荷だった。
  ・個別では、前日に新製品の発売計画を公表した半導体のインテルに買いが続いた。ハイテク株も高く、ソフトウェアのマイクロソフトとスマホのアップルが上昇した。クレジットカードのアメリカン・エキスプレスと工業製品・事務用品のスリーエムは下落した。交流サイトのメタやネット通販のアマゾンが上昇した。

【前回は】相場展望3月30日号 米国: その場限りの言動が目立つパウエル議長 日本: 配当狙いで想定以上の上げ、反動に注目

 2)3/31、NYダウ+415ドル高、33,274ドル(日経新聞より抜粋
  ・朝方発表の2月米個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率が市場予想を下回った。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが長引くとの懸念が和らいだ。月末と四半期末が重なったため、機関投資家のリバランス(資産配分の調整)に伴う買いも入った。
  ・NYダウは月間では2カ月ぶりに上昇し、上げ幅は+617ドル(+1.9%)となった。
  ・FRBが物価目標として重視するPCE物価指数は、変動が大きい食品とエネルギーを除くコア指数が前年同期比+4.6%上昇と、市場予想+4.7%ほど伸びなかった。伸び率も前月+4.7%から鈍化した。3月の消費者態度指数では、消費者が予想する1年先のインフレ率は+3.6%と2月+4.1%から低下し、2021年4月以来の低水準を付けた。
  ・市場では「週末、月末、四半期末が重なり、機関投資家の資産配分の見直しに伴う買いが入ったようだ。インフレ鈍化への期待に加え、引続き金融システム不安が落ち着いていることも買い安心感につながった」との声が聞かれた。
  ・ホームセンターのホームデポ、建機のキャタピラー、小売のウォルマートなど、景気敏感株や消費関連株が買われた。米長期金利が低下し、相対的な割高感が薄れた高PER(株価収益率)のハイテク株も上昇した。ハイテク株の多いナスダック総合指数は、6カ月半ぶりの高値。交流サイトのメタが高い。中国当局が「国家安全法」などに基づき調査に着手したと伝わった半導体のマイクロンは▲4%安で終えた。

●2.米国株:しばらくは「楽観」が優勢となる展開か

 1)NYダウは、「買い優勢」で推移している。
  ・NYダウの推移    3/20    3/31
   NYダウ     31,861ドル  33,274  +1,413上昇 +4.4%
   日経平均     27,333円   28,041  + 708上昇 +2.6%
  ・米経済指標は落ち着いた内容となっており、米長期金利の低下基調もあって、米国株式相場は「楽観」が優勢となっている。
  ・また、パウエルFRB議長のハト派発言「利上げはもう1回」もあり、先行きの「金利引上げの打ち止め」感が出て、相場に好環境を与えている。
  ・米国の銀行破綻が止まったことも、米株式相場に安心感をもたらしている。
  ・米国株の上昇が、世界の株式、引いては日本株の上昇圧力につながると思われる。

 2)なお、米国のインフレ率は、前月比や市場予想から鈍化したとはいえ、依然として「高水準」にあるという事実は忘れないでおきたい。
  ・また、パウエルFRB議長の発言も「市場を気にした」迎合的なスタンスでの発言が多く、一貫していないことに注意したい。

●3.イエレン財務長官、銀行の規制緩和は行き過ぎた可能性、危機の原因にも(ブルームバーグ)

●4.ボストン連銀コリンズ総裁、依然として追加利上げを示唆(フィスコ)

●5.米PCE価格鈍化でも金融政策の道筋変わらず=ボストン連銀総裁(ロイター)

●6.原油先物が上昇、好調な中国製造業景況感で需要期待(ロイター)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)3/30、上海総合+21高、3,261(亜州リサーチより抜粋
  ・前日までの続落を受け、ひとまず買戻しが先行する流れとなった。
  ・中国人民銀行(中央銀行)が今週に入り、厚めの資金供給を続けていることもプラスだ。人民銀行は3/30、1,750億人民元を市中に供給した。先週は吸収超だったが、今週は本日までの累計で差引き6,290億元を供給している。
  ・ただ、株価の上値は重い。
  ・中国の経済情勢や企業業績の動向を見極めたいとするスタンスが強まっているほか、米中対立の警戒感もくすぶっている。指数は安く推移する場面もみられた。
  ・業種別では、エネルギー関連の上げが目立ち、航空・空港・ホテルの旅行関連も高い。消費関連もしっかり、公益・インフラ関連・素材・医薬品・ハイテク・銀行も買われた。半面、通信ネットワークは冴えない。保険・不動産も売られた。

 2)3/31、上海総合+11高、3,272(亜州リサーチより抜粋
  ・前日の好地合を継ぐ流れとなった。
  ・中国人民銀行(中央銀行)が連日で厚めの資金供給を実施したことや、中国指標の上振れが材料視された。
  ・寄り付き直後に公表された3月中国製造業PMIは51.9、前月から低下したものの、予想51.6を上回った。また、非製造業PMIは58.2に達し、市場予想55.0に反し前月56.3から加速している。
  ・業種別では、ITハイテク関連の上げが目立ち、医薬品も高く、オンラインゲーム関連も物色された。通信・公益・不動産・素材・食品・酒造なども買われた。

●2.中国、「一帯一路」で、途上国に32兆円融資、米国は影響拡大懸念(時事通信)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)3/30、日経平均▲100円安、27,782円(日経新聞より抜粋
  ・3月期末配当の権利落ちの影響が相場を下押しした。配当落ちした高配当銘柄を中心に売りが出て、下げ幅は一時▲250円を超えた。一方、前日の米株高の流れを引き継いだハイテク株への買いが相場全体を下支えした。
  ・日経平均採用銘柄の配当の権利落ちの影響は、日経平均を▲257円程度下押しした。
  ・3/29の米株式市場で主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が+3%超高と急伸した。市況改善を見込んだ買いが東エレクなど半導体関連の一角に入った。東証株価指数(TOPIX)型の上場投資信託(ETF)による配当再投資を指摘する声が聞かれ、思惑買いを誘ったとみられる。
  ・ソフトバンクG・リクルート・ENEOS・出光興産が安い。一方、ファストリやダイキンが高い。
 
 2)3/31、日経平均+258円高、28,041円(日経新聞より抜粋
  ・米銀行の破綻に端を発する金融システム不安が後退するなか、欧米株が上昇した流れを受けて、堅調に推移した。東証は上場企業に対し、資本コストや市場の評価を意識するよう要請する案を示した。企業の対応に期待する買いも、相場を押し上げた。
  ・米シリコンバレーバンク(SVB)が3/10に経営破綻して以降、米金融当局の対応もあり市場が懸念したような銀行の連鎖破綻は起きなかった。欧米の株式相場の戻り基調に合せ、日本株も上昇した。リスク回避の円買いが一巡するなか、円相場が133円台半ばまで下落し、トヨタなどの輸出関連株を中心に上昇した。
  ・朝方に経済産業省が発表した2月鉱工業生産指数は市場予想を上回る伸びとなり、製造業の生産回復への期待が高まった。東証がPBR(株価純資産倍率)1倍を下回る企業を中心に経営改善を要請する案を示したこともあり、日本製鉄などのバリュー(割安)株の上げが目立った。
  ・日経平均は+340円ほど上昇する場面があったが、大引けにかけて上げ幅を縮小した。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視する米個人消費支出(PCE)の2月分の発表を控え、持高調整の売りが出たようだ。
  ・三井物産・太陽誘電・HOYA・三菱UFJ・鹿島・信越化学が上昇。半面、郵船・シャープ・JTは下落した。

●2.日本株:「買われ過ぎ」サインが出るが、堅調な「需給」に支えられた展開を予想

 1)テクニカル指標では「買われ過ぎ」サインがみられ始めたが、「需給は堅調」に推移
  ・騰落レシオ   3/20    3/31
    25日    103.31    121.7:やや過熱感を示唆
    6日     45.97    148.1:過熱感を示唆
   ・日経恐怖指数   22.8     16.6:恐怖指数が低下し、市場の安心感示す
   ・国債10年利回り  0.206%    0.34:長期金利が上昇(債券価格下落)に推移

 2)外国人先物手口は、3/16以降、売越し転換・買越し転換を繰り返し始める
  ・方向感に欠け始めた点に注意したい。

 3)日経平均は、強弱感が交錯し始めた点に注目したい
  ・日本国債10年利回りが上昇することは、国債価格の低下を示す。日本国債を保有する銀行・機関投資家にとって、「国債の含み損」を抱えることになる。日本国債の5割を超えて保有する日銀にとって、外資系ファンドから「売り」仕掛けされやすくなるため、その攻防の余波が懸念される。
  ・4月は例年では「外国の年金等の資金流入で株買い要因」の季節である。4月中旬までは、外人買いが期待できるが、それ以降の外人動向に注目したい。
  ・また、日本企業の6月株主総会に向けた「自社株買い」が始まる時期接近となる点は株式需給にとって好環境でもある。
     

●3.ブルーベイ、日銀のYCC放棄予想で日本国債ショート最大限に増やす(ブルームバーグより抜粋

 1)6月日銀の決定会合で、YCC政策を放棄と予想。日本の10年物国債利回りの適正水準を1.25%程度と考えている。現在は0.5%。

●4.中国からの入国、4/5から水際対策緩和、陰性証明不要に(読売新聞)

●5.日本政府、半導体製造装置23品目を輸出規制(ブルームバーグ)

 1)東京エレク株は下落。

■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)

 ・2801 キッコーマン   業績堅調。
 ・4307 野村総研     業績堅調。
 ・8267 イオン      業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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