相場展望1月25日号 米景気刺激策の縮小を意識、市場の勢い鈍化?

2021年1月25日 09:03

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)1/21、NYダウ▲12ドル安、31,176ドル
  ・NYダウは3営業日ぶりに小反落。
  ・最近買われてきた景気敏感株が売られ、決算期待で大型ハイテク株が買われた。
  ・ただ、ワクチン接種展開や景気刺激策への期待なお根強く支えとなる。(ロイター)

【前回は】相場展望1月21日号 短期筋の買い仕掛け明らか! 日経平均1/19の大幅上昇は僅か10銘柄で70%を占める異常

 2)1/22、NYダウ▲179ドル安、30,996ドル
  ・大型経済対策法案の実現に対し、民主党上院議員に反対の声が出たのを嫌気された。上院の議席数は民主・共和で50対50と拮抗しており、民主党から1人でも造反が出れば、可決できない。(日経新聞)
  ・IBMの決算で売上減、インテルの最先端半導体開発遅れで株価下落したのが懸念材料として広がった。(日経新聞)

●2.米国株は勢いが鈍化する懸念?

 1)長期金利上昇、インフレ率上昇しているが、この上昇は株式市場にとってマイナス要因となる。

 2)FRBによる超金融緩和策の出口を巡る議論がエコノミストで増えてきた
  ⇒ 超金融緩和策の『段階的縮小』論議が増え、その時期が2021年後半から2022年になるだろうとの観測が株式市場に出てきたことに留意したい

 3)バイデン政権による大規模景気刺激策1.9兆ドル⇒民主党上院議員から異論⇒共和党の賛意は得られにくい⇒妥協で刺激策規模は約6割の1.1兆ドルに縮小の可能性との観測が出てきている。

 4)バイデン大統領は大規模刺激策が議会を通りにくいことを見据えて、大統領令で小出しの刺激策を敢行の構えの動きとも言える。
  ⇒ これは、むしろ法案の議会可決の難しさを示唆

 5)NY株式市場の出来高は減少傾向でマーケットに勢いが鈍化してきた模様。
  ・最近まで景気敏感株が牽引してきたが、売に押される展開になってきた
  ・米国の小売売上高は感染拡大の影響で11月、12月と前月比マイナスに沈んでいる。
  ・飲食・宿泊が相当厳しくなっていると思われ、1月を押し下げる可能性が出てきた。

 6)個人消費はGDP全体の約7割を占めるだけに注意が必要。
  ⇒ 相場を牽引する主役が不透明となる可能性高まり、混迷化の恐れがある。

 7)景気刺激策の縮小は、好材料のみ見て、悪材料を無視してきた株式市場にとって、転換点となる可能性を秘めている。

 8)米公開市場委員会(FOMC)は1/26~27に開催される。事前にパウエルFRB議長からのアナウンスもあり、サプライズは無いと思われるが、留意したい。

●3.米国の金融緩和の段階的縮小は2022年の公算大きいとエコノミスト予想(ブルームバーグより抜粋

 1)エコノミスト回答者の88%は、FRB(米連邦準備制度理事会)の次の動きは「債券購入」ではなく、『段階的縮小』を予想している。

 2)新型コロナ禍に対する経済対策は、
  (1)昨年12月に9,000億ドル(約93兆円)が成立、(2)バイデン氏はさらに1兆9,000億ドル(約197兆円)の追加対策案を発表している。

 3)エコノミスト調査によれば、こうした状況を背景に経済成長は押し上げられ、失業率は改善すると予想した。しかし、インフレ率も押し上げられる、としている。

●4.米1月製造業・サービス業PMIは予想を上回った(フィスコ)

 1)製造業PMIは59.1と予想56.5を上回った。
 2)サービス業PMIは57.5と予想53.4を上回った。

●5.米新規失業保険申請90万件に小幅改善、雇用は2カ月連続で減少(ロイター)

 1)新規失業保険申請の予想は93.5万件、前回は92.6万件。(フィスコ)

 2)新型コロナの流行の勢いは衰えておらず、国内の雇用は2020年12月に続き、2カ月連続で減少する恐れがある。(ロイター)

●6.バイデン氏が大統領令に署名、パリ協定復帰など前政権の路線転換(ロイター)

 1)キーストンXLパイプライン建設認可取り消し。

 2)連邦庁舎内でのマスク着用。

 3)メキシコとの国境の壁建設に連邦政府資金振り向ける根拠の非常事態宣言を解除。

 4)世界保健機構(WHO)脱退の手続き停止。

●7.米大統領報道官は1/22、TPPは「不完全」とし、早期復帰には慎重(日経新聞)

 1)バイデン支持基盤の労働者層には、TPPは米雇用が流出するとの警戒感が根強い。

 2)そのため、バイデン氏は対米投資が拡大するまでは、新たな貿易協定は結ばない方針を選挙公約で決めている。(日経新聞)

●8.ポンペオ前国務長官など28人への中国の制裁は、バイデン政権は非生産的と示す(ロイターより抜粋

 1)国家安全保障会議(NSC)の報道官は1/20、中国の制裁は「非生産的でシニカル」との見解を示した。

 2)さらに、民主・共和党両指導部と協力してバイデン氏は中国に対抗していくと述べた。

 3)中国による米前政権への異例な報復措置をとった。(共同通信)
   バイデン新政権が対中強硬路線を継続しないように、牽制する狙いもありそうだ。

●9.企業動向

 1)米ユナイテッド航空  10~12月期は▲21億ドルの赤字、コスト削減強化へ(ロイター)

●10.欧州関連

 1)世界旅行市場予測、欧州で高い旅行意欲で2025年は2019年比+23%増(トラベルボイス)
  ・欧州最大の旅行会社TUIは、今夏の旅行需要は「通常」に戻り前年比+50%増予想。

 2)ドイツは2021年経済成長見通しを従来の+4.4%⇒+3%に下方修正(ブルームバーグ)

●11.台湾TSMCはアップル向け販売好調、最先端5nm製造フル稼働、売上最高記録(財新)

 1)2020年通期売上高は前年比+25.2%増の4.96兆円、純利益50%増の1.91兆円。

 2)売上高の51%がスマートフォン関連で最大顧客はアップル。

 3)最先端半導体の製造
  ・世界最先端の5nmは、2020年にフル稼働し、10~12月期は総売上の20%となる。主要顧客はアップル、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ、ブロードコム、ビットメイン(中国)、ザイリンクスなど。
  ・次世代3nmは2021年試験生産、2022年下半期に量産計画。

 4)設備投資
  ・2020年は1.8兆円。
  ・2021年2.6~2.9兆円計画。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数

 1)1/21、上海総合指数+36高、3,621
  ・中国政府の経済対策に対する期待感が強まり、政策の恩恵を受けやすい消費やハイテクが高い。(亜州リサーチ)

 2)1/22、上海総合指数▲14安、3,606
  ・今年に入って急ピッチに上昇し、前日は5年1カ月ぶりの高値を付けただけに、利益確定売りに押された。(亜州リサーチ)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)1/21、日経平均+233円高、28,756円
  ・米株高を受け、バイデン新政権誕生のお祝儀の買い相場で続伸。
  ・日銀の大規模金融緩和政策の維持は、織り込み済みのため、反応は限定的だった。

 2)1/22、日経平均▲125円安、28,631円
  ・前日のNYダウ先物の下落を受け、日経平均の高値警戒感もあり、利益確定売りが出た。

●2.日経平均は米国株の動向に連動して動く外資系短期筋次第で決まる

 1)日本株の牽引役は、(1)米国株上昇と、(2)短期筋の買い仕掛け だが、市場に勢いの鈍化が見られる。

 2)株式市場は政治の混迷を嫌う習性がある。
  (1)菅政権の支持率低下(二階氏の傀儡政権に対する不快感、方針展開の不透明さ、説明の縮小と不明瞭、中国・韓国へのすり寄り姿勢に疑問、問題を先取りし踏み込んだ強い指導力の欠如)
  (2)国政選挙で2敗退が濃厚(長野、北海道)で、国政への影響が懸念される。
  (3)自民党国会議員不祥事多発(カジノ、贈収賄、選挙買収、しかも二階派議員が目立つ)

 3)日本株式と先物市場の出来高減少に見える市場の勢いに鈍化傾向が見られる。

 4)買い仕掛けが1本でまとまられない外資系短期筋のパワー分散が露呈してきている。

●3.日銀は1/21、2020年景気の現状判断を下方修正、2021年は上方修正(ロイター)

 1)2020年見通し
  (1)経済・物価の見通しで、コロナ感染症の影響を中心に下振れリスクが大きいとした。
  (2)2020年度の実質GDP見通しを従来の▲5.5%から▲5.6%に下方修正した。

 2)2021年見通し
  (1)経済は持ち直しているとして、GDP成長率を前回の+3.6%から+3.9%に引き上げた。

 3)日銀は大規模な金融緩和策の維持を決定。(NHK)

●4.2020年貿易統計で輸出は前年比▲10.1%減、原油減少で貿易収支+6,747億円黒字(FNN)

●5.企業動向

 1)三井物産   モザンビーク炭鉱をブラジル資源大手のバーレに売却し撤退。(時事通信)
 2)日本製鉄   ワイヤーロープ国内最大手の東京製綱にTOB(株式公開買付け)発表。保有比率を現在10%から19.9%に引き上げ。(時事通信)
 3)ルネサス   自動車向け半導体の需要高まり、値上げ検討。(NHK)
  東芝     同上。
 4)資生堂    シャンプーや洗顔料など日用品事業の売却検討。(NHK)
 5)川崎重工   水素を動力源とする脱炭素大型船を建造。(読売新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6502 東芝   業績回復傾向、東証1部に1/29復帰。       
 ・6724 エプソン 業績回復期待。
 ・7259 アイシン 業績回復基調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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