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■I.米国株式市場
●1.米株式市況の推移
1)11/05、NYダウ+542ドル高の28,390ドル
・米大統領選挙の勝敗が判明する見通しで、不透明感が後退し、投資家心理が改善。
・米議会の上院で共和党が過半数を維持する見通しで、民主党のハイテク企業への規制強化が弱まるとの観測に加え、金利低下で割高感が薄れたハイテク株の買いとなり相場を押し上げた。
【前回は】相場展望11月5日号 大統領選結果より、『決着の遅れ』の不透明感を警戒 米上院は共和党優位、捻じれ現象で混迷継続か
2)11/06、NYダウ▲66ドル安の28,323ドル
・米上院の議席数が共和・民主党ともに48議席で、過半数制する党の判明まで長引くとの不透明感で売られた。
・上院の民主党議席増を受け、規制強化の思惑でユナイテッド・ヘルス▲45ドル安と1銘柄でNYダウ下落幅を説明できる状況となった。
●2.米国市場の動向(11/6時点):指標はまちまち
1)WTI原油先物:37.46ドル(前日比▲1.33ドル安、▲3.43%安)と景気後退を示唆。
2)ドル円:103.37円と円高ドル安継続し、ドル安傾向が米景気軟化・輸入物価上昇し、インフレ上昇を懸念。
3)米10年国債利回り:0.820%(前日比+0.0420%上昇)。予想上回る雇用統計の改善を受け米景気後退懸念が和らぎ、米長期債売りで下落。金利上昇は株には悪。
4)恐怖VIX指数:24.86と、10/28の40.28から下落して、市場に安堵感が漂う。
●3.民主党・共和党の議会支配状況からくる政策の違い
民主党が上・下院ともに支配 民主党下院・共和党上院の『ねじれ』
ポイント 民主党左派の主張入れた公約 民主党バイデンの公約執行に制約
1)大規模財政支出 景気刺激・金利上昇 景気刺激小型化・財政悪化歯止め
2)大型増税 増税必至(法人・富裕層) 増税後退(法人増税は大統領令)
3)GAFA規制 規制強化(企業分割も) 規制強化の後退
4)金融規制 規制強化(金融業界) 規制強化の後退
5)医療保険制度 医療保険拡大・薬価引下げ 実現困難
6)追加経済対策 大型化(2兆ドル・208兆円) 小型化(5,000億ドル・52兆円)
7)環境規制 規制強化 規制強化の後退
8)株式市場の反応 相場に相当なリスク・資金流出 「ねじれ」好感しIT株価上昇
●4.民主党は大統領と下院を支配、上院は共和党、という『ねじれ議会』の懸念が強まる
1)上院(定数100)で11/6、接戦のアリゾナ州で民主党の議席奪還が確実となり、共和・民主両党の獲得議席数が48議席で並んだ。(共同)残る4議席の開票状況は、共和党候補が2議席で優勢で、民主党は来年1/5に決選投票となったジョージア州の2議席を取らなければ、上院で主導権を握るのが困難になる。なお、上院での採決で50対50だった場合、副大統領が最後の1票を投じる権限を持っている。(時事通信より抜粋)
2)一方、下院は定数435議席のうち、民主党が211議席、共和党が194議席を確保した。残る議席は30で、民主党が過半数確保で優位に立っている。(共同)
3)なお、バイデン新大統領が、政権にエリザベス・ウォーレン上院議員を財務長官や大統領補佐官として取り込もうとしているという情報がある。ウォーレン議員はマサチューセッツ州選出の上院議員(民主党)。ウォーレン上院議員が政権に入った場合の、州選出の上院議員欠員は州知事が任命することが法律で決まっている。ということは、現知事は共和党なので、共和党から上院議員を選出することになる。
4)つまり、民主党は上院議員を51議席確保しなければ、上院は共和党が多数派となる。民主党は(1)大統領と(2)下院で優位に立ち、上院は共和党が主導する『ねじれ議会』となる可能性が増すことで、バイデン新大統領の政策進行に支障が生じやすくなる。
5)民主党左派のバーニー・サンダース上院議員(バーモント州)を政権入りさせる場合も同様の問題(州知事は共和党で、共和党から上院議員に任命)が発生する。バイデン新大統領は、大統領選で協力を得るために彼らの左派主張の多くを公約に取り込んでいるだけに、彼らの主張と処遇に苦慮しそうだ。
6)さらに、バイデン民主党政権運営において、民主党内の(1)サンダース氏ら左派と(2)中道派との主導権抗争にエネルギーを取られ、党内調整が難航することも予想される。
●5.米大統領選挙でトランプ大統領が苦戦したのは、「選挙前の失業率が高かった」ためという説
1)1970年以降で、再選できなかった大統領(カーター、ブッシュ)は、大統領選前の『失業率が8%まで悪化』していた。
2)選挙前10 月の失業率7.9%(一時15%)はトランプ大統領にとって不利な状況と言える。高い失業率では再選できないという経験則が今回も当てはまりそうだ。(時事)
●6.米FRB、ゼロ金利政策を維持、コロナ再拡大の影響を警戒し(時事)
1)米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は11/5、連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、新型コロナの急速な感染再拡大が経済に与える影響を見極めるとして、事実上のゼロ金利政策と量的緩和策の維持を全会一致で決めた。
2)政策金利は年0~0.25%、米国債等の買入額は月額1,200億ドル(約12.5兆円)を据え置く。FRBは、ゼロ金利を2023年末まで維持すると示唆している。
●7.米10月雇用状況(フィスコ)
1)非農業部門雇用者数は予想を上回り+63.8万人増。
2)失業率は6.9%(予想7.7%)と、9月7.9%から改善。
●8.米コロナ新規感染12.7万人超、3日連続で過去最多(11/7)(時事)
1)11/6夜までの累計で、感染者数は970万人、死者数は23.6万人以上となっている。
●9.企業動向
1)マイクロソフト 7~9月期決算、純利益30%増の138.9億ドル(約1兆4,500億円)と過去最高益。(共同)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)11/5、+42高の3,320
・バイデン氏が当選で米中関係に楽観的な見方の強まりと、中国政府の政策期待感が高まり、リスクを取る動きが増えて、ハイテク株と内需株に買い。(NHK)
2)11/06、▲7安の3,312
・前日まで4日間の値上がりで、利益確定売りに押された。(フィスコ)
●2.中国、10月の輸出額は前年同月比+11.4%増と、5カ月連続プラス(NHK)
1)輸出では、新型コロナ感染拡大による、マスクを含む繊維製品、パソコンなどの電子機器の需要が増えている。
2)一方、欧州や米国でコロナ感染再拡大していることから、今後の輸出に影響が出る可能性があり、先行きに対する警戒感もある。
●3.中国は、トランプ政権の「70日余りの任期で最後の狂気」に警戒も(産経新聞より抜粋)
1)中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は11/8、バイデン政権の発足により、米中関係は「一息入れる」ことができると指摘する復旦大学教授の見方を伝えた。
2)警戒すべきは、「トランプ政権が残された期間で米中関係を破壊する可能性」を示した。
●4.中国、海警局に外国船に武器使用認める法案を準備(NHK)
1)沖縄県尖閣諸島周辺で日本漁船への影響が懸念される。
2)対象区域は、領海に加え、排他的経済水域、大陸棚も含む。
●5.中国で動物用ワクチン工場から菌が流出し、周辺住民6,620人が感染発覚(NHK)
1)中国・甘粛省蘭州市は当初200人と発表し、当局の隠蔽体質に批判が高まっている。
2)「ブルセラ症」は主に犬・牛・豚・ヤギなどが感染する病気で、人が感染すると発熱や関節の痛みなどの症状が出る。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)11/05、日経平均は+542円高の24,105円
・今まで売り仕掛けの外資系短期筋が、米株急騰を受け、大量の買戻しで株は急伸。
・ソフトバンクGなど5銘柄で、日経平均の上昇幅の半分程度を占めた歪さに注意。
2)11/06、日経平均は+219円高の24,325円
・米国株の大幅高を受けて、外資系短期筋の買戻し継続もあり、4日間連続の3桁高となった。
●2.日経平均の動向分析
1)NYダウと日経平均の比較
10/30までの下落幅 11/02以降の上昇幅 差 引
NYダウ ▲2,336ドル安 +1,887ドル高(11/5迄) ▲449ドルと回復今一歩
日経平均 ▲ 694 +1,348円高(11/6迄) + 654円と下落幅上回る
2)
・米株はまだ上昇余地があると思われる。
・日経平均は(1)直近の大幅高(2)ファンダメンタルズ(3)先行きの需給、を考えると24,500円近辺が限界とみる。
・新型コロナ新規感染では、欧州が急増し都市封鎖や規制強化、米国でも1日当たりの新規感染者数を更新中であり、日本も直近は1日当たり1,000人を超えた状態で冬季を迎えるだけに、経済への再打撃が懸念される。もちろん、株式市場へもマイナスの影響があり得る。
・いずれにしても、外資系短期筋の買戻しが頼みの相場展開なだけに、国内系証券による強気相場は峠を越えたかもしれないので注意したい。
外国人投資家の売りvs日本勢の買い状況(9月第1週~10月第4週)
外国人の売り ▲2兆9,265億円の売り越し
日銀・年金の買い + 1兆7,238億円の買い越し
9週間で外国人買いは1週のみで、基本は売り基調が続いた。
ただし、11月第1週は、外国人は買い越しの模様。
・過去、大統領選後の株式市場は活況となる確率が7割あったが、今回は新型コロナ要因があることに留意したい。
●3.米大統領が誰になろうと、法廷闘争になろうが、相場にはそれほど関係がない
社会構造の変化を捉えた中長期的な投資を考えたい
1)5GによるIoT機器
2)量子
3)固体電池
4)水素燃料
5)脱炭素
6)風力・太陽光発電
7)EV(電気自動車)
8)EUV露光半導体関連
9)AI(人工知能)
10)クラウド
11) 遠隔診療
12) DX関連(デジタルトランスフォーメーション)
など
●4.上場企業の早期・希望退職実施数はリーマンショック並み(東京商工リサーチ)
1)2020年の上場企業で11/5時点で74社であり、2010年の85社以来の水準に近づく。
●5.企業業績 : 新型コロナの影響で、最高と最悪の決算が共存
1)任天堂 ゲーム機が好調で2021年3月期予想を上方修正し、純利益3,000億円と12年ぶり過去最高。(東京商工リサーチ)
2)リコー 9月中間決算で初の純損失▲221億円。年間▲364億円赤字を予想(NHK)
3)川崎汽船 2021年3月期、経常損益▲280億円の赤字予想から収支均衡へ。(時事)
4)スズキ 2021年3月期、純利益+1,100億円の黒字(前期比▲18%減)(共同)
5)エイベックス 7~9月期、売上前年同期比▲44.0%減、最終利益▲32.9億円の赤字。初の希望退職募集。(東京商工リサーチ)
6)トヨタ 2021年3月期純利益+1.42兆円に上方修正。米国・中国で想定以上(FNN)
7)ホンダ 中国での自動車販売が好調で純利益3,900億円に上方修正。(FNN)
8)ライオン 上期決算、営業利益は前期比+39%増の415億円に上方修正。(日経新聞)
9)スシロー 2020年9月期売上高は前期比+2.9%増の2,049億円と過去最高。(共同)
10)Jフロント 8月中間決算で最終損失▲163億円、冬のボーナス半減。(NHK)
11)三菱商事 9月中間決算、純利益は前年同期比▲64.2%減の866億円。(レスポンス)
12)東証1部企業 上期決算発表665社の上期純利益合計は前年同期比▲45.5%減少。SMBC日興証券発表。(FNN)
●6.企業動向
1)日本製紙 国内紙需要低迷で来年夏に釧路工場の紙生産終了(NHK)
2)日本航空 公募増資で最大1,680億円調達へ、燃費効率優れた新型機購入や事業構造改革・有利子負債の返済などに充てる。(ブルームバーグ)今回の公募増資と第三者割当増資で株式総数は約30%増える。
3)ヤマト 10月の宅配が前年同月比+20.7%増で、10月としては過去最大。(共同)ネット通販が堅調。
■IV.注目銘柄(株式投資は自己責任でお願いします)
・6754 アンリツ 5G受注増加期待。
・1883 前田道路 景気刺激策としての大規模補正予算期待。
・5802 住友電工 業績回復期待。
関連キーワード電気自動車、日経平均、NYダウ、尖閣諸島、スズキ、人工知能(AI)、IoT(Internet of Things)、太陽光発電、三菱商事、任天堂、日本航空、半導体、リコー、失業率、雇用統計、スシロー、FOMC、日本製紙、ライオン
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