火力発電×EVは決して“クリーン”でない 内燃機関は“まだ死せず”

2017年12月11日 08:39

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記事提供元:エコノミックニュース

化石燃料による火力発電に依存するEV化推進では、二酸化炭素搬出削減で、未だハイブリッド車に及ばない。写真はHVの代表「プリウス」

化石燃料による火力発電に依存するEV化推進では、二酸化炭素搬出削減で、未だハイブリッド車に及ばない。写真はHVの代表「プリウス」[写真拡大]

 2017年、欧州主要3カ国、英仏独・政府が2040年までに、自国内で販売する内燃機関をパワーユニットとして搭載したクルマ、つまりガソリンとディーゼルエンジン車の販売を全面的に禁止すると発表して話題となった年として記憶されるだろう。

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 内燃機関を動力としないクルマとは、電気自動車(EV)である、と短絡的に捉える報道がほとんどだが、果たしてそんなことは可能なのか。仮にすべてのクルマをEVに置き換えるとするならば、COP21の「パリ協定」で示された二酸化炭素排出規制に、大いに貢献できるだろう。

 自動車の動力源を電動モーターに変更する場合、重要なのはモーターを動かす電力の発電方法だ。風力発電や太陽光発電、水力発電など再生可能なエネルギーを使った発電方法なら二酸化炭素は発生しない。クリーンな電力といえる。

 また、原子力発電大国のフランスは、電力使用量の8割程度を原子力発電でまかなっている。この原子力による電力は、確かに二酸化炭素を排出しない。それゆえ原発電力をクリーンな電力だとするならば、原発を増設して自動車のEV化を推し進めることで、フランスは「パリ協定」の目標値をクリアできるとしているようだ。

 しかしながら、フランス以外の英国やドイツは、そうはいかない。とくにドイツは、原発廃止路線を打ち出しており、火力発電に頼らざるを得ない状況だ。ましてや、同じようにEV化促進策を打ち出している中国やインドは、劣悪で安価な石炭を使った火力発電所が多い。そんな状況で自動車のEV化を叫んでもまったく意味をなさない。

 話を分かりやすくするために、日本の自動車社会にEV化戦略を当てはめてみよう。現在、日本には約7700万台の自動車が走っているとされる。そのすべてが同じ時間に走っている訳ではなく、自家用車などはほぼ駐車場で眠っている。日本全国で消費される自動車燃料の消費から推計すると、業務用を含めて車輌1台あたりの稼働時間は2.5時間程度だとされる。

 この数字を基に日本のクルマがすべてEVに変更された場合、ざっくりとした試算で、1基あたり100万kWクラスの発電所を80基ほど新設する必要があるとされる。こんなことは可能だろうか。同じことは、英国やドイツにも言えることなのだ。

 現在、量産されているEVの代表「日産リーフ」を1時間・速度60km/hで走らせるのに必要な電力は、カタログ値でおよそ10kwだ。10kwの電力を石油による火力発電で得ると7kgの二酸化炭素を排出するという。石炭なら9kgだ。フランスのように原子力発電をクリーン電力と規定するならば、二酸化炭素の削減はできそうだが、問題は多い。

 いっぽう、ガソリンエンジンとモーターで動くハイブリッド車の代表「トヨタ・プリウス」の二酸化炭素排出量はカタログ値で60g/km。つまり、プリウスが1時間で60km走ったなら6kgの二酸化炭素を排出する計算になる。

 環境に負荷をかけないクルマは、どちらだろうか。(編集担当:吉田恒)

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