東日本大震災から13年 住宅メーカーそれぞれの耐震性能向上への取り組み

2024年3月11日 08:56

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記事提供元:エコノミックニュース

2011年3月11日、東北地方を中心に未曾有の被害を引き起こした東日本大震災から13年

2011年3月11日、東北地方を中心に未曾有の被害を引き起こした東日本大震災から13年[写真拡大]

 2011年3月11日、東北地方を中心に未曾有の被害を引き起こした東日本大震災から13年。復興庁によると、2023年11月1日の時点でも、まだ2万9733人の方々が避難生活を送っている。いくら自然災害とはいえ、十数年もの間、避難生活を強いられることは、どれだけ辛いことだろう。

 また、今年1月1日に発生した能登半島地震の被災地も、未だ復興には程遠い状況だ。石川県内の住宅被害は6万9910棟におよび、2月以上経った今も、倒壊した建物やがれきが手付かずで残されているところも多い。奥能登地域ではインフラ設備の被害も甚大で、撤去などの作業を進める人手も作業時間も不足しており、特に被害の大きかった珠洲市では断水も続いている。

 日本では、マグニチュード6以上の大きな地震が10年間の年間平均で約20回も発生している。地震大国といわれる国に住んでいる以上、全国どこに住んでいても、地震災害に見舞われてしまう覚悟はしておかなくてはならない。阪神淡路大震災以降は特に東日本大震災や熊本地震、能登半島地震など、大きな地震災害が短い周期で頻発している。さらには南海トラフ巨大地震や首都直下型地震など、今後、近い将来に発生が予想されている大地震も多い。

 そんな中、住宅業界では今回の能登半島地震以降、住宅の耐震化や耐震補強、防災についての問い合わせが急増しているという。国土交通省が2月2日に公表した各都道府県別の住宅の耐震化率で90%を超えているのは、千葉や神奈川、愛知などの10都道県で、全国平均では約87%程度とみられている。ただし、これはあくまで平均値だ。都市部以外、特に過疎化の傾向にある地方では、この割合がもっと低くなると思われる。改修資金の工面をはじめ、住人の高齢化や家屋を受け継ぐ人がいないなど様々な理由によって、リフォームや耐震補強を躊躇している家庭は珍しくないのだ。実際、能登半島地震で大きな被害が出た輪島市では住宅の耐震化率は45%、珠洲市は51%程度だった。国土交通省は30年までに耐震性が不十分な住宅を「おおむね解消」するとし、東京や和歌山、佐賀、熊本では前倒しして25年度までの解消を目標にしているが、これを達成するためには、政府だけでなく、民間の企業や団体の取り組みや国民全体の防災意識をさらに高めていかなければならない。

 住宅メーカー各社も独自の技術と視点で積極的な取り組みを進めている。

 例えば、住友林業では住宅の耐震性能だけでなく、ZEH仕様にすることで防災力を高めるアドバイスを行っているようだ。地震などの災害によってライフラインが寸断された際にも、ZEH仕様であれば、太陽光発電システムで発電した電力を蓄電池に貯められる上、エネファームなどで発電することもできる。自宅避難が可能な状況であれば、公共のライフラインが途絶えていても、一時的に家電や照明、お湯、シャワー、トイレなども使用できるので不便さは緩和されるだろう。

 大和ハウスは、地震に強く、断熱性能の高い注文住宅「xevoΣ」に独自のエネルギー吸収型耐力壁「D-NΣQST(ディーネクスト)」を標準搭載。強い揺れを受けると上下にしなやかに動く独自の断面形状によって地震エネルギーを効果的に吸収し、震度7クラスの地震に連続して耐える粘り強さを発揮するという。さらに、建物の揺れを早く収束させることで、外壁や構造体の損傷を最小限に抑える仕組みとなっている。

 また、木造住宅で耐震技術に特に注力しているのがAQ Groupだ。

 AQ Groupのアキュラホームでは、コロナ禍以降「広いリビング」の間取り需要が高まっていることを受け、同社の看板商品である、広いリビング空間と大型の吹き抜けを備えた「超空間の家」を茨城県つくば市の国立研究開発法人 土木研究所内に実物大で建築し、倒壊実験を実施している。この実験で建設された試験体は、前面に約5.5m、側面に約3.5m、合計9m開いた大きなコーナー窓、さらにワイドな吹き抜けを両立したもので、本来は壁を設けないと耐震性確保が難しい。しかし、同社では机上のデータのみならず、実際に住宅が倒壊する限界点を実験によって確認することが重要と判断し、東日本大震災などの大災害をもたらした地震波で計10回加振。さらに実験3日目は倒壊実験とするため、あえて床や壁などを外した試験体に巨大地震の数倍の振動を加振した。その結果、最終段階まで大きな損傷なく、住み続けられる住宅であることが実証されたという。同社では、AQ Groupオリジナルの壁で、通常の耐力壁の6枚分の強さを持つ業界最強クラスの「8トン壁」がこの驚異的な耐震性能に大きく貢献していると検証した。しかも、この8トン壁を軸とした工法を用いることで、鉄骨やRCでは坪100万円程度はかかる広い開放的なリビングを持つ間取りが、坪50万円程度で実現可能になるというから驚きだ。

 また、AQ Groupでは昨今、SDGsなどの観点からも普及型純木造ビルの開発に注力しており、2022年には、世界で初めて、木造軸組工法「5階建て純木造ビル」の実大耐震実験を実施し、国の基準である地震波で倒壊・損傷なしの実証データを取得している。

 大地震などの自然の脅威には、どれだけ備えても、備えすぎるということは無い。新築やリフォームの際はもちろん、自宅の耐震性能に不安がある場合は一日も早く、信頼のおける専門家に相談するようにしていただきたい。(編集担当:今井慎太郎)

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