次代を担う若手を育成 積水ハウス建設が人材育成・人材確保に見せた「本気」

2023年6月4日 16:04

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記事提供元:エコノミックニュース

積水ハウス建設は5月29日、住宅技能工の育成・採用を大幅強化する新施策を発表した。クラフター制度の導入や、最大約1.8倍もの年収アップ計画、新ユニフォーム採用などで、働く魅力を向上する。

積水ハウス建設は5月29日、住宅技能工の育成・採用を大幅強化する新施策を発表した。クラフター制度の導入や、最大約1.8倍もの年収アップ計画、新ユニフォーム採用などで、働く魅力を向上する。[写真拡大]

 働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、 自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限される。これによって、トラックドライバーの労働環境や長時間労働の慢性化などの問題改善が期待される一方、従来のような働き方ができなくなってしまうことで、収入の減少や経費の増加、労働力の減少など、様々な問題も懸念されている。これは「2024年問題」といわれ、Eコマース市場が年々拡大していることなども相まって、物流業界の最大の関心事となっている。

 しかし、「2024年問題」は物流業界だけの話ではない。建設業も同様に24年4月から、労働基準法の改正による時間外労働の罰則付き上限規制が適用される。また、建設業界では底堅い住宅需要が継続しているものの、高齢化や労働人口の減少に伴う人材不足で長時間労働が常態化しており、労働環境の改善とともに、職場の魅力を向上し、いかに人材を確保するかが大きな課題となっている。

 そんな中、積水ハウスグループの積水ハウス建設は5月29日、2025年4月入社までの高校卒業予定者を中心とする 「住宅技能工」の採用計画を発表した。同社では、2024年4月入社では今期の2.4倍にあたる年間95名、2025年4月入社では3.4倍にあたる年間133名の採用と、大幅な採用増員を計画しており、とくに高校卒業予定者を積極採用する方針だ。また、育成及び採用強化の新施策として、「技能者」「技能工」「現業」などの名称を見直し、「クラフター」という名称に統一する。この名称は同社独自の造語だが、魅力ある住宅技能工という仕事を表現する意図が込められており、現在の住宅づくりには多様な技能を持つ「多能工」が求められていることから、マルチスキルを持った住宅技能工を育成するという同社の姿勢も表現している。経験やスキル、立場によって「ホープ」から後進育成を担う「マスタークラフター」まで4段階が設けられており、マトリックスによって客観的にスキルの評価を行い、多能工の育成を目指す。

 また、「収入がついてこなければ、憧れの職業にはならない」という思いから、2024年4月 の新人事制度導入からは、初任給が最大11%アップ、さらに職長クラスにあたる「チーフクラフター」に昇格すれば、年収が現行と比較して最大約1.8 倍、30代で約900万円に引き上げられるなど、大幅に待遇が改善されるという。

 積水ハウスグループは大規模な工事数を背景に、完全週休2日制、年間休日120日、男性育休取得率100%など、建設業界でもとりわけ手厚い福利厚生で知られているが、育成面でも、全国3か所にある自社施設の教育訓練センター・訓練校を持ち、基本から応用まで教育してくれるので、高校卒業したての新社会人も安心して働けるだろう。さらに今回、新施策の導入に合わせて、ユニフォームも新調する。快適で動きやすいことはもとより、若者に人気のアパレルブランド・ビームスのユニフォームブランドであるUniform Circus BEAMSによる、濃いブルーを基調にした爽やかなデザインとなっている。ちなみに、新ユニフォームのデザインは、いくつかの候補の中から、現在働いているクラフターたちによる投票によって選ばれたものだという。

 

 建設業界や物流業界に限らず、労働環境の改善は喫緊の課題ではあるものの、これまでのやり方が通用しないことで戸惑いも多く、不満も出るだろう。それをどう乗り越え、次につなげていくか。2024年はそんな企業の姿勢が問われる年になりそうだ。(編集担当:藤原伊織)

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