相場展望4月10日号 米国: 原油高でインフレ再点火⇒利上げ継続へ 日本: 当面、大幅下げに対する反発を予想

2023年4月10日 09:58

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)4/6、NYダウ+2ドル高、33,485ドル(ブルームバーグより抜粋
  ・CPI発表を控え、値動きは概ね限定的だった。
  ・グーグル親会社のアルファベットやマイクロソフトが買われ、ボーイングは737型機の増産が報じられ買われた。
  ・セントルイス連銀のブラード総裁は、最近の銀行不安に起因する信用状況の引締めについて、米経済をリセッション(景気後退)に追い込むほどの規模ではないとの考えを示した。ただ、雇用統計がインフレ鈍化を示すのか、あるいは景気懸念をあおるのかが、不透明ななか、市場では様子見姿勢も強かった。
  ・投資家は年内の利下げを積極的に織込んできたため、「過熱した」雇用の数字となれば、こうした期待に水を差す格好になる。一方「過度に冷え込んだ」統計数値になっても、ハードランディングを巡る懸念が強まるとの予想を示した。最近の上昇相場を維持するには「ちょうど良い」数値が必要と、エッセイ氏は示した。
  ・MPSキャピタルのマヌチ氏は、日本銀行がいずれイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策を緩和するのに伴い、為替相場は年末までに1ドル=120円になると予想した。

【前回は】相場展望4月6日号 米国2重苦か: 原油高・ドル安でインフレ再上昇も 日本の4/5下落は3月末の反動、外国人先物は買越し

 2)4/7、祝日「グッドフライデー(聖金曜日)」で休場

●2.米国株:原油高でインフレ再加速⇒米利上げ継続へ

 米株式市場は「利下げ期待」が強く、楽観論が冷めると注意 

 1)5月米利上げ観測高まる
  ・予想より強めの雇用統計。
   米雇用者は堅調に増加:市場予想15万人⇒3月23.6万人増と堅調。
   失業率は低下:2月3.6%⇒4月3.5%に改善。
  ・CPIに注目:インフレ鈍化傾向が止まる可能性。

 2)米WTI原油価格の上昇への反転
  ・WTI原油先物は3週連続高となった。原油先物は最近安値から+26%上昇した。
  ・OPECプラスの協調減産や中国での燃料需要増で回復基調にあり、原油先物のショート筋の買戻しもあって上昇した。ただ、原油価格上昇と米国の備蓄増次第で米ガソリン価格の上げは急ピッチなものになる可能性がある。
  ・それは、米国のインフレ圧力が増す要因となる。そうなれば、FRBは金利引上げの手綱を強めざるをえなくなる。ますます、米国のリセッション(景気後退)懸念が増しそうだ。
  ・金利を産まない金(ゴールド)が銀行不安を背景に3月に急伸し、過去最高値に迫っている。金市場参加者は、信用不安や高インフレ継続を読んでいるかもしれない。
 
 3) 米経済発表の注目
  ・4/12   3月消費者物価指数
  ・4/13   FOMC議事録公開(3/21~22会合)
  ・4/14   3月小売売上高
        鉱工業生産
        ミシガン大学消費者信頼感指数

●3.米雇用者数、3月は+23.6万人増と堅調維持、失業率3.5%に低下し改善(ロイターより抜粋

 1)非農業部門雇用者数は市場予想+23.9万人を下回ったものの、堅調なペースを維持した。

 2)失業率は、2月の3.6%から3.5%に低下し、労働市場の逼迫を示した。

●4.米リセッション確率上昇、利上げ局面の終盤近い=サマーズ元財務長官(ブルームバーグ)

 1)3月の米雇用統計、非農業部門雇用者数は前月比23.6万人増え、失業率は3.5%に低下。3月米供給管理組合(ISM)製造業総合景況指数は2020年5月以来の低水準を記録した。信用収縮の見通しを考えると、米国の利上げ局面が終盤に入っている。

●5.米銀行の融資、2週連続で急減、信用状況の逼迫を示唆(ブルームバーグより抜粋

 1)信用状況の逼迫が続いており、高い借入れコストのため既に圧迫されている米経済に一段の重石となり得ることが示唆された。

 2)米連邦準備制度理事会(FRB)が4/7公表データによれば、商業銀行の貸出は3/29終了週に▲450億ドル(約5兆9,500億円)余り減少した。前週は▲596億ドル減少していた。3/29までの2週間で商業銀行の貸出は▲1,050億ドル近く減り、1973年からのFRBデータで記録的な落込みとなった。

 3) 商業銀行の預金も同じ週に▲596億ドル減少。減少はこれで10週連続。

●6.米国債利回り上昇、雇用統計を受け5月に0.25%利上げ観測、円は下落(ブルームバーグ)

●7.セントルイス連銀ブラード総裁、「信用収縮を恐れずに、インフレとの闘い継続を」(ブルームバーグ)

●8.今年の世界成長率、+3%に満たず、今後5年は+3%程度=IMF(国際通貨基金)(ロイターより抜粋

 1)新型コロナやロシアのウクライナ侵攻に対応するための強力かつ協調的な金融・財政政策行動により最悪の状況は逃れたが、高インフレが続いていることから、成長見通しは短期的にも中期的にも弱い状況が続く。

 2)今後5年間の世界経済成長見通しは1990年以来の低さ(ブルームバーグ)

●9.FRBは利上げ軌道を維持、米景気・雇用鈍化懸念が広がる(フィスコ)

●10.ECBのクノット・オランダ中銀総裁、利上げ「もちろん」終わっていない(ブルームバーグ)

 1)ユーロ圏のインフレ率は現在3%近い、3%の金利では対抗できない。

 2)5月の利上げ幅は、0.25%か0.50%。

●11.ロシア財政赤字、1~3月期は▲290億ドルの赤字、歳出増が重石(ロイター)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)4/6、上海総合+0.07高、3,312(亜州リサーチより抜粋
  ・中国景気の持ち直し継続期待が相場を下支えしている。
  ・3月の財新中国サービス業PMIは57.8間で回復し、予想55.0を上回った。中国では3月以降、景気改善を示唆する経済指標の発表が相次いでいる。
  ・産業支援の動きも期待される状況。
  ・先端技術を巡る米中摩擦の高まりを背景に、中国当局は産業支援の姿勢を強めるとの見方だが、株価の上値は重い。
  ・米中対立への警戒感がくすぶるなか、指数は安く推移する場面もみられた。
  ・業種別では、ハイテク関連の上げが目立ち、軍需関連もしっかり。半面、金融は冴えず、酒造・食品も安い。

 2)4/7、上海総合+15高、3,327(亜州リサーチより抜粋
  ・中国景気の回復が改めて意識される流れとなった。
  ・4/6公表の3月財新中国サービス業PMIは57.8まで回復し、予想55.0を上回った。3月以降に発表された中国の経済指標は、概ね良好な内容で着地している。
  ・ただ、米中対立の警戒感が漂うなか、上値は限定されている。
  ・業種別では、メディア・エンターメイメント関連の上げが目立ち、アパレル・靴関連の銘柄もしっかり。半面、セラミックは冴えず、船舶製造・醸造は安く、石炭・非鉄金属も売られた。

●2.財新の中国3月サービス業PMIは57.8と、市場予想55.0を上回る(フィスコ)

●3.注目イベント

 ・4/11  3月中国CPI
 ・4/14  3月中国貿易統計

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)4/6、日経平均▲340円安、27,472円(日経新聞より抜粋
  ・米国で市場予想を下回る経済指標の発表が相次ぎ、前日の米株市場で景気敏感株やハイテク株が売られた。東京市場でも運用リスクを避ける動きが広がり、値嵩の半導体関連株のほか、機械や海運といった景気敏感株が下げた。
  ・4/5発表の3月米ADP雇用リポートで非農業部門の雇用者数の増加が市場予想に届かず、同日発表の米サプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況感指数も市場予想を下回った。4/7に控える3月米雇用統計の発表を前に「米景気の悪化を警戒する投資家が多く、持高を整理するための売りが出やすかった」という。
  ・4/5の米ハイテク株安を受け、東エレク・信越化・アドテストなど半導体関連株の下落が目立った。ファナック・コマツ・荏原が売られた。一方、医薬や食料品などディフェンシブ株は堅調で、キッコーマン・味の素・テルモ・アステラス・武田も高い。

 2)4/7、日経平均+45円高、27,518円(Zai Onlineより抜粋
  ・米長期金利の低下を受けてハイテク株に買いが入り昨日の米国株市場が上昇となったことに加え、日経平均は2日間で▲800円超下落していることもあり、+45円高と反発した。
  ・しかし、今晩の米国市場がグッドフライデー(聖金曜日)で休場となるなか、3月の米雇用統計の発表を控えていることから様子見となり、一時マイナスとなるなど上値の重さが意識され、伸び悩んだ。
  ・なお、2月決算企業の本決算発表が今週からスタートするが、3月決算企業の決算発表を占ううえでマーケットの関心が高い安川電機が今夕に決算発表を行なう。
  ・個別銘柄では、ディスコが3月通期の売上高が+11.2%増と予想を上回ったため、一時+2.9%高となった。ウエザーニュースの営業利益が前年同期比+18.5%増となり、+3.3%高となった。一方、セブン&Iは営業利益が前期比で+1.3%増の見通しを示したが、市場予想に届かなかったことで失望売りが出た。キューピーも鶏卵の値上がりで営業利益見通しを+210⇒+140億円に下方修正したことで売り優勢となり、一時▲3.4%安となった。

●2.日本株:当面、大幅下げの反発を予想

 1)日経平均は堅調な動きを取り戻すと予想
  ・株価の推移     4/3    4/4    4/5    4/6    4/7
   日経平均の値動き +146円高 +99円高 ▲474円安 ▲340円安 +45円高
   NYダウの値動き +327ドル高 ▲198安 + 80ドル高 + 2ドル高  休場

 2)日経平均4/4~5の下洛要因は、金融機関による年度始めの「益出し」の売り
  ・日本の金融機関特有の動きとして「年度初めに益出しの株売り」が例年みられる。4/4~5の下落は、その流れと思われる。
  ・そのため、短期間で終了するのが通例である。
  ・外国人投資家による先物は、4/5はむしろ買い支えしている。

 3)ところが、外国人投資家の先物手口は4/6~7は、売越しに転換した点に注目したい。
  ・外国人の先物市場での動きは、強弱入り乱れる展開となっている。決して「強気一辺倒でない」ことを忘れないでおきたい。

 4)ただ、このところの日経平均の下げで、米国株の堅調さが目立っている。
  ・そのため、日経平均の戻りを試す展開を想定する。

 5)但し、米インフレが再台頭する可能性があり、米FRBは「利上げ継続」するとみる。
  ・WTI原油価格は80ドル台に上昇してきており、米ガソリン価格の急伸があり得る。
  ・そうなった場合、米インフレは再加速しやすく、金利引上げで、株価は軟化すると思われる。
  ・米株式市場は「楽観」が蔓延しているだけに、「下落圧力」に警戒したい。
  ・まして、米企業業績の落込みが予想されるが、米株式市場はそれを織込んでいない。
  ・日本株へも波及するので、注意深くみたい。

 6)日本の3月決算の先駆けとして2月期決算発表に注目。
  ・4/12  イオン2月期本決算
  ・4/13  ファーストリテイリング中間決算

●3.日銀・植田新総裁が4/9に就任、賃金上昇に伴う物価安定など課題(NHK)

 1)大規模な金融緩和の長期化で、債券市場機能が低下した市場の再生が求められる。

 2)日銀による国債の大量保有などで、今後、金融緩和縮小の「出口戦略」に踏み切る場合の金融市場の混乱回避を求められる。

 3)欧米で金融不安がくすぶるなか、金融システムの安定を保つことを求められている。

■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)

 ・3099 三越伊勢丹   インバウンド期待。
 ・6323 ローツェ    業績好調。
 ・7270 SUBARU    業績絶好調。

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