相場展望8月4日 米株式相場は再び金利上昇で、景気後退と企業業績悪化を織込む展開を想定 日本株は夏枯れ相場へ

2022年8月4日 09:39

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)8/1、NYダウ▲46ドル安、32,798ドル(日経新聞より抜粋
  ・前週までの上昇で相場の短期的な過熱感が意識され、利益確定売りが優勢だった。
  ・米中の地政学リスクの高まりも投資家心理の重荷となった。
  ・前週、決算を好感して上げたハイテクが利益確定売りに押され、マイクロソフトやアップルがともに4営業日ぶりに反落した。世界的な景気減速を意識した原油先物相場の下落を受け、シェブロンが売られた。
  ・ペロシ米下院議長が8/2に台湾を訪問する見通しだと複数の米メディアが報じた。実現すれば米下院議長として25年ぶりで、訪問に反対する中国との間で緊張が高まるリスクがあり、警戒感から積極的な買いを見送る投資家も多かった。
  ・米7月ISM製造業景況感指数は52.8と、市場予想52.1を上回り、景気の底堅さを意識した買いが入った。
  ・ボーイングが主力中型機の納入再開が進捗との報道で+6%高、P&Gなども買われた。

【前回は】相場展望8月1日 米国株は長期金利の再上昇(株価下落)に注目したい 日本株は高値圏にあり、反落リスクに備えたい

 2)8/2、NYダウ▲402ドル、32,396ドル(日経新聞より抜粋
  ・ペロシ米下院議長が8/2に台湾訪問し、米中間の緊張の高まりを懸念した売りがでた。対抗措置を予告していた中国は軍事演習を開始し、米中対立が激化すれば軍事衝突や貿易の停滞につながりかねないとの警戒感が強まり、投資家心理を冷やした。
  ・米連邦準備理事会(FRB)が、利上げペースを緩めるとの見方が後退したこととも、株売りを誘った。サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は8/2、インフレ抑制に向けた政策運営について「終わりは程遠い」と述べた。同総裁以外にもインフレ警戒を改めて強調するFRB高官が相次ぎ「断固としたタカ派姿勢」が再確認された。
  ・米債券市場で中期債と長期債の利回りが急上昇したのも株式相場の重荷となった。
  ・景気敏感のボーイング・ビザが安く、四半期で売上が予想を下回ったキャタピラーは▲6%安、マイクロソフト・アップルも利益確定売りが優勢だった。半導体は上げた。

 3)8/3、NYダウ+416ドル高、32,812ドル(日経新聞より抜粋
  ・8/3発表の米7月ISM非製造業景況指数が56.7と、市場予想54.0に反して上回り、米景気の底堅さが意識された。一方、エネルギー価格の下落などを背景に「価格指数」は大幅に低下し、インフレが和らぐとの観測を誘った。
  ・ペロシ米下院議長が台湾訪問を終え、中国は8/2から大規模軍事演習を実施しているが、今のところそれ以上の対抗措置は伝わっていない。米中関係への過度な懸念がひとまず和らいだことも、買い安心感につながった。
  ・市場では「6月にかけて株式への投資配分を大きく引下げていたヘッジファンドなどが7月の相場上昇に乗り遅れ、焦って買いを入れてきている」との指摘があった。
  ・アップル・アマゾン+4%高、セールスフォースとマイクロソフト+3%高、ディズニー・ナイキ・アメックスなど消費関連が上昇、一方、原油安でシェブロンが下げた。

●2.米国株:相場の流れは、(1)金利引上げ⇒(2)金利低下⇒(3)再び金利上昇で業績悪化を株式相場は織込む方向に

 1)米国株の視点変化による推移
  ・1~6月中旬:インフレ抑制でFRB金利引上げ ⇒ 株下落
  ・6~7月  :インフレピーク・景気後退観測で10年債金利低下 ⇒ 株上昇
  ・8月~   :景気後退による企業業績悪化 ⇒ 株下落?
  ・米インフレは高止まりが長期化する(インフレ退治は初期段階)
  ・米FRBは金利大幅引上げ ⇒ 緩めながらも金利引上げは継続
  ・金利引上げ期間は、米FRBのインフレ抑制目標2%達成まで
  ・金融の量的引締め(QT)は9月に倍増の月950億ドルに加速
  ・景気後退局面の利上げは、企業業績の悪化と倒産リスクが増す
  ・現在の株式市場は安心し過ぎで、リスク織込み不足

 2)米国債利回りは8/2に急上昇。7月の金利低下は、金利急騰の反動安の範囲か
  ・米10年債金利の推移: 6/21 3.275% ⇒ 7/29 2.649% ⇒ 8/3 2.706%
  ・米地区連銀総裁の発言「インフレとの闘いはまだ終了に近づいていない」を受けて、2023年の利下げ観測が後退。
  ・金利低下を好感して株価は反発したが、どうやら一時的のようだ。再び、金利再上昇の局面に入るので、株価にとって天敵の『金利上昇』に備えるようにしたい。

 3)注目の経済指標
  ・8/05 雇用統計
  ・8/10 消費者物価指数

●3.ゴールドマン、米利下げ期待の行き過ぎに警鐘、リセッション軽視早過ぎ(ブルームバーグ)

●4.クレディS、米インフレは構造的、政策金利は5~6%の必要も (ブルームバーグより抜粋

 1)米国のインフレ抑制には、現在の想定より深く長いリセッション(景気後退)を経る必要があると、クレディスイスはみている。

 2)市場は消費者物価の上昇が近くピークに達し、金融緩和期待を織込んでいる。しかし、世界でコスト圧力が高止まりする高いリスクがあると、分析した。そのため、総需要を大幅かつ持続的に圧縮することになるため、FRBは政策金利を5%もしくは6%に引上げ、そうした金利水準を維持しなければならないリスクがある。

●5.米クリーブランド連銀総裁、インフレのピークはまだ、一段の取り組みが必要(ロイター)

●6.米7月ISM製造業景況指数は52.8、予想52.1を上回る(フィスコ)

 1)パンデミック以降で最低に落ち込んだものの、予想を上回った。

●7.米7月ISM非製造業景況指数は予想外に改善、追加利上げ観測強まる(フィスコ)

 1)7月は56.7、悪化予想に反し、6月55.3から改善し、4月来で最高となった。

●8.スマホ・パソコン用の半導体逼迫ピーク越す、供給過剰に(日経新聞)

 1)景気減速で需要が鈍るが、車載用の不足感はなお残る。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)8/1、上海総合+6高、3,259(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済対策への期待が相場を支える流れとなった。
  ・国務院は7/29常務会議で、新エネルギー自動車(EV)の車両購置税(車両取得税)の先送りを承認した。新型コロナ禍などで困難に面した産業の支援に、増値税の減免などを継続することや、グリーンスマート家電の農村部普及策なども決定した。
  ・中国景況感の悪化を嫌気した売りが先行したものの、下値は堅く、徐々に買いの勢いが増した。
  ・中国7月製造業PMIは49.0に停滞し、市場予想50.3に反し、前月50.2から低下。 景況判断の境目となる50.0を再び割込んだ。 市場の一部には、景気悪化は景気テコ入れ策の強化につながる、との見方も広がった。
  ・業種別では、自動車の上げが目立ち、ハイテク・酒造が高く、不動産は冴えない。

 2)8/2、上海総合▲73安、3,186(亜州リサーチより抜粋
  ・米中関係の緊迫化を警戒し、リスク回避スタンスが強まる流れとなった。
  ・ペロシ米下院議長は今夜にも訪台する見通しで、祭英文・台湾総統と面会するとの観測もある。米憲法では、下院議長は大統領継承順位で副大統領に次ぎ2位の要職。
  ・台湾を自国領と見なす中国は猛反発している。中国外交部の報道官は、「ペロシ議長の台湾訪問は、中国軍が『座視しない』」などと強く警告した。
  ・業種別では、素材の下げが目立ち、消費関連も安く、金融も冴えない。

 3)8/3、上海総合▲22安、3,163(亜州リサーチより抜粋
  ・米中間の緊張が懸念される流れとなった。
  ・対中強硬派として知られる米政権ナンバー3のペロシ米下院議長は8/2夜に訪台し、祭英文・台湾総統などと8/3に会談した。
  ・台湾を自国領と見なす中国は猛反発し、中国人民解放軍は軍事演習を始めた。台湾を囲み6カ所で訓練する。
  ・前日の下げが急だったこともあり、自律反発狙いの買いが先行したものの、上値は重く引けにかけてマイナスに転じた。
  ・業種別では、不動産が安く、金融も冴えない、半面、軍事関連が高い。

●2.中国の銀行、不動産危機で47兆円超の住宅ローン損失に直面の可能性(ブルームバーグ)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)8/1、日経平均+191円高、27,993円(日経新聞より抜粋
  ・前週末の米株式相場の上昇を受けて、運用リスクを取りやすくなった投資家の買いが日本株にも波及し優勢、6/9以来の約2カ月ぶりの高値となった。
  ・半導体関連を中心に直近の好決算銘柄や、これから決算発表を控える銘柄に先回りした買いが広がった。
  ・日経平均は株価先物に連動しながらじわじわ上げ幅を拡大する展開となった。
  ・米国で米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを鈍化させるとの観測が広がる中、短期的な株高期待が意識された。
  ・中国の経済指標は悪化したが、上海総合指数などが比較的底堅い動きとなったのも心理的な支えになった。
  ・東エレク・アドテスト・信越化・ダイキン・トヨタが高く、KDDI・ソニーが下落。

 2)8/2、日経平均▲398円安、27,594円(日経新聞より抜粋
  ・ペロシ米下院議長が台湾を訪問するとの報道を受け、米中関係や台湾情勢を巡る緊張が高まると警戒が強まった。
  ・円相場の上昇も重なり、輸出関連を中心に幅広い銘柄への売りが優勢となった。
  ・ペロシ米下院議長は8/2夜に台湾を訪問すると伝わっており、反対姿勢を示す中国と米国の対立激化が懸念された。台湾や上海・香港の株式相場が大幅に下げる中、運用リスクを回避する動きが強まり、日経平均の下げ幅は一時▲400円を超えた。
  ・決算発表シーズンとあって、業績を手掛かりにした個別銘柄の物色があり下げ渋った。
  ・日野自が大幅安、三越伊勢丹・TOTO・トヨタ・三菱重・コマツが下落、TDKが急騰。

 3)8/3、日経平均+147円高、27,741円(日経新聞より抜粋
  ・日経平均は前日に▲400円近く下げたため、短期的な戻りを期待した買いが優勢。
  ・円安進行も支えに上げ幅は一時+200円を超えたが、買い一巡後は伸び悩んだ。
  ・円相場は一時133円台後半と、前日から3円ほど円安となり、輸出採算改善との思惑  から、前日に売られた機械・電気機器の一角に買いが入った。
  ・国内企業の決算発表シーズンで、業績を手掛かりとした個別銘柄の物色も目立った。月次売上高を手掛かりでファストリが買われ、1銘柄で日経平均を+42円押し上げた。
  ・買い一巡後は伸び悩んだ。米FRB高官らが金融引締めに前向きな発言をし、株式市場の楽観論にクギを刺したことが上値を抑えた。
  ・台湾を訪問しているペロシ米下院議長と台湾の祭英文・総統との会談には相場の反応は限定的だった。
  ・ダイキン・ニチレイ・三菱電・NTNが上げ、SUBARU・川崎汽・電力株は安い。

●2.日本株:8月中旬以降は夏枯れ相場に注意

 1)懸念材料
  ・4~6月決算発表シーズン終了
  ・外国人投資家の夏期休暇入り(日本株市場では外人シェアが約3分の2を占める)
  ・閑散相場で一方向に流れやすい(買い仕掛けあれば上昇しやすい)
  ・米中間選挙を控え、株式市場では見送りムードとなるケースが多い。

●3.米ボーイング、日本国内初の技術開発拠点を名古屋に設立、エコ燃料研究へ(朝日新聞)

●4.大手デパート5社の7月売上、去年同月を上回る、夏物・高額品などが好調(NHK)

 1)三越伊勢丹+14.6%、そごう・西武+13.9%、大丸松坂屋+12.5%、高島屋+10.6%、阪急阪神+10.2%

 2)2019年比では、▲3~▲10%程度売上が下回る。

●5.「値上げ」食品や飲料など18,000品目超へ、価格は平均14%上昇(NHK)

●6.企業動向

 1)カルビー  「かっぱえびせん」2度目の値上げ、11月に30品目(NHK)

●7.企業業績

 1)LIXIL   4~6月純利益+67億円、前年同期比▲60%減、アルミ・銅の高騰(日経新聞)
 2)双日    4~6月純利益+451億円、前年同期比+2.7倍増(日経新聞)
 3)ANA    4~6月純利益+10億円、前年同期▲511億円赤字、国際線回復(日経新聞)
 4)大手5銀行 4~6月純利益+6,238億円、前年同期比▲32.3%減、債券評価損(時事通信)
        三菱▲70.3%、みずほ▲36.4%、りそな▲0.9%
        外債の評価損は三菱・住友・みずほの3メガバンク合計で約▲2.5兆円
 5)小野薬   4~6月純利益+294億円、前年同期比+22%増(日経新聞)
 6)電力大手7社 4~6月最終赤字、燃料費上昇を転嫁できず(NHK)
 7)ケーズ    4~6月営業利益+69億円、前年同期比▲39.7%減、想定下振れ(フィスコ)
 8)ダイキン   2023年3月期純利益2,300億円、前年比+5.6%増の見通し(ロイター)
 9)野村    4~6月純利益+17億円、前年同期比▲97%減、米投資先評価損(ブルームバーグ)

■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)

 ・2607 不二製油  業績堅調
 ・4442 バルテス  業績好調
 ・7148 FPG    業績好調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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