相場展望11月5日号 大統領選結果より、『決着の遅れ』の不透明感を警戒 米上院は共和党優位、捻じれ現象で混迷継続か

2020年11月5日 10:58

小

中

大

印刷

■I.米国株式市場

●1.米株式市況の推移

 1)11/02、NYダウ+423ドル高の26,925ドル
   ・大幅下落の反発と、米10月ISM製造業PMIが2年ぶりの高水準を好感して急上昇。

【前回は】相場展望11月2日号 米国株は次期大統領決定まで、『下放たれ』警戒? 日本株は欧米株の下落にどこまで耐えられるか

 2)11/03、NYダウ+554ドル高の27,480ドル
   ・アジアや欧州の株高が好感され、買い先行した。
   ・バイデン候補が優勢と見て、景気刺激策の規模が大きくなるとの思惑も相場を牽引。

 3)11/04、NYダウ+367ドル高の27,847ドル
   ・バイデン候補の優勢を市場は好感し、株価上昇。

●2.株式市場は、大統領選挙の結果よりも、訴訟による『決着の遅れ』への不透明感を警戒

 また、バイデン大統領誕生でも、上院が共和党優位なら捻じれで政策決定の遅れを懸念

 1)ウォール街でも兜町でも、「民主党が大統領・上下両院議員選挙で勝利」で「大規模経済対策が期待できる」とのことで、楽観論が市場に漂っている。

 2)しかし、リスクを無視してよいのだろうか?
  (1)大統領選が接戦となった場合、訴訟問題に発展する可能性が大きく、勝者確定が遅れ、民主・共和党支持者による対立で暴動が発生することも考えられる。

  (2)民主・共和党の協議遅れで、失業保険の上乗せ支給などの追加経済対策が成立せず、減退する消費に追い打ちを掛ける状況に直面している。追加経済対策の成立が年末から年初までずれ込む可能性がでてきている。このままでは、最も消費が多いクリスマス商戦が不発に追い込まれ、GDPの約6割を占める消費部門が減退となって、米景気後退につながる懸念が深まる。

  (3)さらに、米上院議員選挙では共和党が優位維持の可能性があり、捻じれ現象が追加経済対策の遅れをさらに生じさせる恐れが色濃くなることが懸念される。

  (4)米失業率は9月に7.9%と改善したが、実態はもっと悪い。就業を諦めた労働者が労働市場から退去しているため、名目の失業率が改善しているように見えるため、表面上の失業率改善だけでは楽観できない事情がある。

  (5)市場は、次期大統領の大規模経済政策の良い面だけを見て、増税などの悪材料を無視している。

  (6)新型コロナ再感染拡大に伴うロックダウン(都市封鎖)などの措置で再び経済に打撃を与えるが、株式市場は軽視している。

  (7)株式市場は、いつものように新大統領を好感してハネムーン期間は株価上昇となるが、『大統領選の決着遅れ』と『政局の捻じれ』、『景気後退リスク』などの懸念材料を織り込んでいないことに今後、警戒したい。

●3.米商務省11/3発表、9月製造業新規受注は前月比+1.1%増と予想上回るが、先行き不透明感(ロイター通信より抜粋

 1)前月の+0.6%増から伸びが加速し、市場予想の+1%増も上回った。

 2)しかし、コロナ禍を受けた政府の経済支援策が先細りし、消費支出が減速する中、今後の見通しは不透明感が漂う。               

●4.大統領選挙イベントで、米国債利回り上昇のリスクに対する備えが必要

 1)大統領選投票11/3の翌日11/4に財務省は四半期定例入札計画を公表するが、急激な利回り上昇リスクがある。(ブルームバーグ)

 2)投資家は民主党の圧勝が財政支出の増加と見込んであり、国債増発により10年債利回りは11/3に0.899%と、4カ月ぶりの高水準に達している。そして、2020年末には0.95%に達すると予想もある。(ブルームバーグ)

 3)米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策は経済回復するまで2023年まで低金利継続を、維持するとしている。つまり、FRBの金融政策からみると、経済回復前の金利上昇は受け入れられない。

 4)米株式市場は、低金利が前提の相場になっているだけに、(1)国債金利の上昇と(2)FRBの金融政策に注目が必要と思われる。

 5)金利上昇は、米株式相場にとって悪材料となることが多いこともあり注意したい。

●5.JPモルガンは、米選挙後を見据え、ハイテク株と決別し、金融株引上げ(ブルームバーグ)

 1)選挙結果がどうなろうと、株式市場のリーダーがハイテク株から決別し、景気敏感株へと変化が起ると予想する。

●6.企業動向

 1)サウジアラムコ  7~9月期は、油価下落や販売減が打撃で▲44.6%減益。(ロイター)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)11/02、+1高の3,225(亜州リサーチ)
  ・消費財が買われたものの、米大統領選のトランプ氏再選が警戒視され。横這い。
  ・トランプ氏は遊説先で、中国批判を一段と高めており、米中冷戦が一段と深刻化するとの見方が一部で浮上。 

 2)11/03、+45高の3,271(フィスコ)
  ・中国政府の追加景気対策への期待で株価上昇。

 3)11/04、+6高の3,277(フィスコ)
  ・米大統領選が気掛かりで、慎重ムードが強い。
  ・しかし、中国政府の追加景気対策への期待が引き続きサポートしている。

●2.中国当局の監督強化で、アント社の上海・香港上場直前に一時停止 (36Kr japan)

 1)11/2に、中国人民銀行、中国銀行保険監督管理委員会、中国証券監督管理委員会、国家外貨管理局の4つの規制当局は、アリババ創業者のジャック・マー(馬雲)とアント会長、CEOの3名を呼び出し、管理監督上の指導を行った。

 2)アント社はアリババ傘下で中国最大の電子決済サービス『アリペイ』の運営会社。

 3)アント社は11/5に上海・香港市場に同時上場、350億ドルの(約3.6兆円)資金調達の見込みだった。

 4)世界最大のIPO計画が頓挫(ブルームバーグ)

 5)中国当局はアント社の融資事業を一段と厳しく監視 (ロイターより抜粋
  ・アントのオンライン融資である消費者ローン事業(クレジットカード、短期消費者ローン)残高は6月末時点で1兆7,000億元(2,540億ドル、約26.5兆円)。

  ・アントは中国の預金取扱金融機関が発行した、短期消費者ローンの2割強を占める。

  ・中国当局は、アントのローン事業の規模と利益率などに「衝撃を受けた」という。

  ・中国当局は、債務不履行(デフォルト)の急増や、資産の悪化が懸念される中、急成長するオンライン融資の抑制を目指してきた。

  ・アントは、新規株式公開(IPO)を延期すると発表した。

 6)上場延期は、創業者・ジャック・マー(馬雲)氏の発言が関係か?(朝日新聞より抜粋
  ・馬雲氏が10月下旬に上海で行った講演での発言の中で「金融当局への不満を述べた」ことが理由とされる。
  ・発言内容「中国の問題は金融システムではなく、金融システムがないことだ」「駅を管理する方法で、空港を管理することなどできない」などと、当局を批判する内容が波紋を呼んでいた。

●3.企業動向

 1)レノボ   7~9月期は在宅勤務需要が寄与し純利益+53%増益。  (ロイター)

●4.中国、豪州へ最も大規模な報復で主要商品を輸入停止へ(ブルームバーグ)

 1)対象商品は少なくとも7品目で、石炭・大麦・銅鉱石・砂糖・木材・ワイン・ロブスターなど。

 2)中国政府が11月6日からの購入停止を命じたという。

 3)なお、豪州から最大の輸入品である鉄鉱石は購入停止対象には含まれない見込み。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)11/02、日経平均は+318円高の23,295円
  ・先週の▲539円大幅安の自律反発の買いが好決算銘柄に入った。
  ・中国景気回復が国内企業業績への改善期待が高まり、相場を押し上げた。
  ・外資系短期筋の買い戻しも寄与した。

 2)11/04、日経平均は+399円高の23,695円
  ・米大統領選は民主優勢で景気刺激策を期待して、景気敏感株を中心に上昇。

●2.トヨタ、水素燃料電池車(FCV)の生産能力を10倍の3万台に強化(読売新聞より抜粋

 1)FCVは水素を燃料とし、走行中には水だけを排出するため「究極のエコカー」と呼ばれる。

 2)トヨタは、FCV「ミライ」として2014年に世界初の量産車として発売されたが、生産能力が年3,000台に限られ、2019年の国内販売台数は690台にとどまっていた。

 3)2代目ミライは、水素をフル充填した際の航続距離を850kmに伸ばし、乗車定員も4人から5人に増やし、使い勝手も向上させた。

 4)生産車種は、乗用車だけでなく、バスなどの商用車も含めたFCVの量産体制を整える。

●3.水素燃料の開発・活用取組み事例(MONO ist)

 1)鉄道分野   トヨタ、JR東日本、日立製が試験車両を2022年3月ごろから南武線、鶴見線で試験走行を行う予定。

 2)海運分野   日本郵船、東芝エネルギー、川崎重工、ENEOS、日本海事協会の5社が開発を始めており、2024年6月竣工、半年間の実証運航を予定。

 3)自動車分野
 (1)大型トラック:
  ・トヨタと日野自動車がトラックを共同開発。2022年春からアサヒ、西濃運輸、ヤマト運輸がトヨタの物流業務で走行実証の計画。
  ・いすず自動車と本田技術研究所が共同研究。
 (2)バス:トヨタとホンダは移動式発電・給電システムの実証実験を開始した。
 (3)乗用車:トヨタのFCV「ミライ」は2020年末に全面改良予定。

●4.企業動向

 1)三菱自動車 9月中間決算は▲2,098億円純損失、販売不振で4年ぶり(時事)
 2)ワールド  9月中間決算、▲110億円の純損失、店舗休業が響いた(時事)
 3)フジクラ  9月中間決算、予想▲65億円の赤字から、一転+7.46億円の黒字(日経)

■IV.注目銘柄(株式投資は自己責任でお願いします)

・8088 岩谷産業  水素事業を次の柱に育成。
・7203 トヨタ   9月世界販売・生産が前年超えまで回復、水素関連事業を幅広く推進。
・4502 武田薬品  シャイヤーの買収効果で堅調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

記事の先頭に戻る

関連キーワードトヨタ自動車三菱自動車JR東日本日経平均NYダウアメリカ中国ヤマト運輸燃料電池消費支出東芝岩谷産業クリスマス在宅勤務日野自動車アリババ日本郵船ワールド

関連記事

広告