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相場展望5月16日号 米国株: 楽観主義の高まりで、NYダウの初の4万ドルに迫る 日本株: 気になる日経平均の「朝高⇒終値での伸び悩み」が続く
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)5/13、NYダウ▲81ドル安、39,431ドル
2)5/14、NYダウ+126ドル高、39,558ドル
3)5/15、NYダウ+349ドル高、39,908ドル
【前回は】相場展望5月13日号 米国株: 米利下げ期待が浮上し、株価持ち直しも、見極めが必要 日本株: 今週以降、格言「5月に売れ」通りになるか、注目
●2.米国株:楽観主義の高まりで、NYダウの初の4万ドルに迫る
1)インフレ期待の上昇⇒年内利下げ観測が後退
・NY連銀のインフレ期待の調査 3月時点 4月時点
1年先インフレ期待 3.0% ⇒ 3.3%と上昇。
2)米4月卸売物価指数(PPI)は予想以上に上昇し、利下げ期待が後退
・PPIの上昇率は前月比+0.5%と、市場予想の+0.3%を上回った。これはインフレ鈍化の停滞を示し、高金利政策が長く維持されることを示唆したと受け止められる。
・ただ、翌5/15発表の4月米消費者物価指数(CPI)を見極めたいとの声があった。FRBは、PPIよりもCPIや個人消費支出(PCE)物価指数をより重視しているためである。
3)パウエルFRB議長は、現在の高水準の米金利をより長期に維持する可能性を示唆
・1~3月はインフレ鎮静化への進展を欠いた、と発言した。(ブルームバーグ)
・米FRB議長は「現在の高い金利水準を維持して、インフレ率低下まで辛抱強く待つ必要がある」という考えを示した。(NHK)
4)5/15、CPIの伸び予想下回る、小売売上高が前月比横ばい⇒金利低下で米国株続伸
5)米NYダウは5/15も続伸し、最高値を更新、初の4万ドルに接近
・米国株式市場は、経済指標の発表を受けて「一喜一憂」している。FRBによる金利引下げ期待の進展と後退を繰り返しては、株価が乱高下している。
・ただ、米国株市場には資金の流入が続き、米国株高を支えている。それが米国株市場に参加する投資家を「より楽観」へと導いている。その「楽観」が、「次の楽観を生んでいる」。悪い経済指標も、悪さを取り消して中和するような材料探しをして、下落幅を縮小させるか小幅反発へ誘導している。
・例えば、5/14の4月の米卸売物価指数(PPI)では、前月比+0.3%上昇し、インフレ加速を表したて株価マイナス要因となる。しかし、前月3月の指標を+0.2%⇒+0.1%に下方修正したことを受け、株式相場は「好悪材料を相殺」して、株価に織り込まなかった。その状況が、5/13~15のNYダウの値動きによく表れている。利下げ期待が後退して株価が下落しても、次の経済指標発表で「直前に下落した以上に値上がりする」状況が繰り返されている。
・NYダウが初の4万ドル台に乗せる期待が高まっている根拠はそこにある。結果、恐怖指数(VIX)は非常に低くなっているところに「楽観」が見てとれる。
VIX指数の推移 5/1 5/15
VIX指数 15.39 ⇒ 12.45
●3.米4月PPI、前月比+0.5%上昇と予想以上に加速、インフレ高止まり示唆(ロイター)
1)4月卸売物価指数(PPI)は前月比+0.5%上昇、予想+0.3%、前年比+2.2上昇。インフレ緩和の兆候は見られない。
●4.インフレ低下の確信「以前ほど強くない」、金利維持を予想=FRB議長(ロイター)
●5.物価上昇圧力が緩和するまで金利は据え置き=ジェファーソンFRB副議長(ロイター)
●6.NY連銀4月調査、米消費者のインフレ期待が1年先と5年先で上昇(ロイターより抜粋)
1)インフレ期待の状況 3月時点 4月時点
1年先インフレ期待 3.0% ⇒ 3.3%
5年先インフレ期待 2.6 ⇒ 2.8
2)消費者は将来の収入や所得の伸びが鈍化すると予想。一方、将来の支出は増加すると想定。
3)職を失ったとしても、最就職できると答えた割合は、2021年4月以降で最低となった。
●7.1~3月のCPIは変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIで+4.5%上昇(ブルームバーグ)
1)昨年10~12月の+3.3%から上昇が加速した。
2)一方、インフレ調整後の小売売上高は、1~3月期+0.4%増にとどまり、昨年10~12月期+2.9%増から低下した。今後、インフレ調整後の小売売上高の伸びは鈍化すると予想されている。
●8.S&P500 種株価指数は今後数カ月で▲10%下落し4,750へ(ブルームバーグ)
1)スティーフル・ニコラウスのバニスチ氏が指摘。同社モデルでは、PCEコア指数が+3%をやや上回った場合、米国株は下落する。当局が目指す持続的な米個人消費支出(PCE)コア価格指数の+2%は「夢想」に過ぎないと記した。
●9.JPモルガンが警戒促す、米消費者物価指数(CPI)発表後にS&P500は大幅変動も (ブルームバーグ)
●10.ヘッジファンドは過去5カ月で最速ペースで株式売却=ゴールドマン・サックス資料(ロイター)
1)5/10までの1週間の動き。
・先進国市場の欧州・アジアで売り。北米・アジアの新興国市場では買いが優勢。中国株は3週間連続で買い越し。
・セクター別では、売りの中心は高級品や自動車など一般消費財銘柄。次に売りが大きかったのはテクノロジー株と銀行株。半面、エネルギー株・不動産株・公益株は買われた。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)5/13、上海総合▲6安、3,148
2)5/14、上海総合▲2安、3,145
3)5/15、上海総合▲25安、3,119
●2.米国、中国EVの関税を100%、太陽光電池・半導体も引上げ(FNN)
1)米国政府は、中国製電気自動車(EV)の輸入関税を現在の4倍にあたる100%に引上げると発表した。
電気自動車の関税を25%⇒100%
太陽光電池の関税を25%⇒50%
半導体・重要鉱物・注射器などの医療品の関税も引上げる。
2)関税引上げの理由
・中国が不当に低い価格で輸出を行っているとして、米国の労働者と企業を保護するために関税を引上げる。
3)引上げ対象額は、180億ドル(約2兆8,000億円)。
●3.バイデン政権の対中国関税引上げは不十分、拡大すべき=トランプ前大統領(ロイターより抜粋)
1)トランプ氏は5/14、「中国はわれわれを食い物にしている」とし、バイデン政権による対中国関税引上げについて、電気自動車(EV)などだけでなく、その他の幅広い中国製品も対象にすべきという認識を示した。
2)トランプ氏は11月の選挙で再選を果たせば、全ての中国製品に対し60%超の関税、その他全ての国からの製品に一律10%の関税を課す考えを示唆している。
●4.中国財務省、超長期特別国債1兆元を発行へ、景気支援へ5/17から(ロイター)
1)20年債3,000億元、30年債6,000億元、50年債1,000億元。
●5.中国栄養学会調査、平日で毎日朝食を摂れない国民は18.9%、週末は29.7%(Record China)
●6.中国の4月・自動車輸出+34%増(新華社)
●7.中国進出の日系企業、中国経済に厳しい認識(日テレより抜粋)
1)中国に進出する日系企業が、中国経済に対し、厳しい認識を持っていることが明らかになった。中国に進出する日系企業が加盟する「中国日本商会」が、今年3月から4月にかけてアンケートを行ったところ、1,700社以上から回答があった。そのうちの半数を超える56%の企業が「売上が低下している」と答え、中国国内の景気についても53%が「悪化している」との認識を示した。
2)一方、中国国内への投資については、56%が「増加または維持する」と答えていて「中国市場の競争が激しくなるなか、先手を打って投資しようという企業が多い」との指摘があった。
●8.ホンダ、中国工場で希望退職募集、中国事業見直し進める方針(NHK)
1)中国販売の落ち込みを受け、希望退職者は全体の14%にあたる約1,700人が応募。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)5/13、日経平均▲49円安、38,179円
2)5/14、日経平均+176円高、38,356円
3)5/15、日経平均+29円高、38,385円
●2.日本株 : 気になる「朝高⇒終値で大幅下げ」が続く日経平均
1)円安が再び進み、5/13米時間で156円台 ⇒ 5/15 154円台へ円高
・5/13は、米消費者のインフレ期待の上昇を受け、円安が進行。
・5/15は、一転して、米経済指標の低迷を受けて、円高・ドル安。
・円高は、輸出関連企業の株安につながるため、日経平均にとってマイナス要因。
・乱高下が続く円相場に注目したい。
2)5/14・15は日経平均上昇も、値下がり銘柄数が値上がり数を超え、不透明感強まる
・値上がり・値下がり数の動き 5/14 5/15
値上がり銘柄数 746 482
値下がり銘柄数 874 1,140
日経平均値動き +176円高 +29円高
3)気になる最近の日経平均の値動き特長「朝高⇒その後、上げ幅縮小」
・日経平均の「朝高⇒上げ幅縮小」の推移
朝高 終値
5/14 +300円 ⇒ +176円
5/15 +460円 ⇒ +29円
5/16 +460円 ⇒ +127円(9時36分現在)
・日本株買いの主役であった、海外投資家と証券(自己)は売り基調に転換。上記の売りに対し、買い支えしてきた「個人」の売買状況を注視したい。
4)日経平均はNYダウに比べ「割高感薄れた」状況に戻る
●3.米ブラックロック、円安進行で海外投資家が日本株離れを招いている(ブルームバーグ)
1)歴史的な円安の進行は、原材料やエネルギーなど輸入コストの上昇につながり、内需企業の利益や個人消費を圧迫している。こうしたことが警戒され、日経平均は3月最高値から▲6%以上下落している。
●4.ソフトバンクG、2024年3月通期純損失▲2,276億円、前期▲9,700億円から改善(ロイター)
●5.清水建設、2024年3月通期営業損失▲246億円、1961年上場以来初(NHK)
1)2025年3月通期計画営業利益410億円。
●6.ジャパンディスプレイ、2024年3月通期最終損失▲443億円、赤字は10年連続(TBS)
●7.シャープ、堺市の液晶パネル工場の生産停止、赤字続きで経営判断(朝日新聞)
●8.トッパン、発行済み株式の12.31%・1,000億円を上限に自社株買い(ロイター)
●9.SUBARU、2025年3月通期営業利益は前年比▲14.6%減の4,000億円(ロイター)
1)アナリスト予想は+3,534億円を上回った。
●10.三井金属、2025年3月通期経常利益は前期比▲21%減の350億円 (産業新聞)
●11.大阪チタニウム、2024年3月通期営業利益は前期比+73.4%増の82.9億円(フィスコ)
1)2025年3月通期計画の営業利益は前期比+32.7%増、100億円弱。
●12.INPEX、発行済み株式の3.18%、上限500億円で自社株買い(ロイター)
●13.クラレ、発行済み株式の4.48%、上限200億円の自社株買い(ロイター)
●14.ソニー、株式5分割、上限2,500億円の自社株買い(ブルームバーグ)
●15.楽天、1~3月期最終損失▲423億円の赤字、昨年同期の▲825億円から縮小(NHK)
●16.三越伊勢丹、2024年3月通期営業利益は前年比+83.65増の543.7億円、過去最高(セブツ―)
1)2025年3月通期予想の営業利益は前年比+17.7%増の640億円
●17.スズキ、2024年3月通期営業利益は前期比+1,150億円増の4,656億円(レスポンス)
1)2025年3月通期予想の営業利益は4,800億円を見込む。
●18.三井住友トラスト、2024年3月通期純利益は前期比▲58.5%減の791億円(読売新聞)
1)2025年3月通期純利益は前期比3倍の2,400億円を見込む(日経新聞)
●19.三和、2024年3月通期経常利益は前期比+23%増の649億円(フィスコ)
1)2025年3月通期経常利益は前期比▲4.5%減の620億円
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・3776 ブロードバンド 業績回復期待
・3865 北越 業績好調
・4523 エーザイ 認知症薬に期待
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