相場展望9月16日 米国次の焦点は、(1)増税 (2)消費者物価の株価反応 日本株は買戻し高、次は中長期投資家の買い期待

2021年9月16日 08:46

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/13、NYダウ+261ドル高、34,869ドル(日経新聞)
  ・NYダウは、先週は新型コロナの感染拡大で米景気回復が鈍るとの警戒感から米株式相場に売りが続き、2カ月ぶりの安値を付けていた。
  ・ダウは、前5営業日で▲836ドル下げた反動と、新型コロナ感染にピークアウトの兆しが出ていると伝わり投資家心理が改善し、値ごろ感からの買い優勢となった。
  ・原油先物の上昇で石油株が上げたほか、資本財や金融など景気敏感株の一角が買い直された。
  ・9/14発表の消費者物価指数を見極めたいとのムードもあった。
  ・市場では、「インフレ加速で米長期金利が上昇すれば、高PER(株価収益率)のハイテク株などが相場の重荷になる」と警戒する声も聞かれた。

 2)9/14、NYダウ▲292ドル安、34,577ドル(日経新聞)
  ・朝方発表の8月米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回り、緩和的な米金融政策が続くとの見方から買いが先行した。ただ、米長期金利が低下幅を広げると銀行株を中心に景気敏感株が売られ、NYダウは下げに転じ、下げ幅を広げる展開となった。
  ・景気減速やFRBのテーパリング(量的緩和の縮小)への警戒感がくすぶり、不安定な相場につながっている。

 3)9/15、NYダウ+236ドル高、34,814ドル(日経新聞)
  ・前日に▲292ドル下げて約2カ月ぶりの安値圏にあり、最近下げが目立っていた景気敏感株を中心に値ごろ感からの買いが入った。クレジットカードのアメックス、建機のキャタピラーの上昇が目立った。
  ・米景気の底堅さを示唆する経済指標の発表もあって、投資家心理の改善につながった。
  ・米9月NY連銀製造業景況指数が34.3と、8月の18.3から改善し、予想17.5も上回り、「製造業は引き続き堅調」との見方が強まった。

●2.「増税」はNYダウ▲5%の下落要因、「インフレ」は高止まりのため、株価への反応に注目

 1)増税は、企業業績を悪化させ、個人消費を減退させる。

 2)インフレは高止まりが継続。
  (1)エネルギー・食品を除くコアCPIは前年同月比+4.0%上昇と、市場予想+4.2%より小さかった。そのため、市場では、FRBの見方「インフレは一時的」を裏付けるとし、FRBは金融引き締めを急がないとの解釈を誘った。
  (2)米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は高インフレは『一時的』だと依然として主張を続けている。もしそうであれば、彼が願う(1)テーパリング要求も和らぎ (2)利上げの先送り、ができる。
  (3)しかし、インフレの芽は育っている
   ・サプライチェーン(供給網)の混乱が続き、コストアップを伴っている。
   ・労働市場は労働不足の深刻化が進み、求人者数が最高水準にあり、就業者数は増加傾向にあり、人手確保のため賃金は上昇している。
     例:アマゾンは物流関連で12.5万人の新規採用、採用一時金3,000ドル(約33万円)、賃金は同業種の16ドルに対して時給18ドル。採用一時金は昨秋の1,000ドルから大幅上昇。(テレ朝)
   ・ワクチン接種率の向上でオフィス勤務が再開し、レストラン・劇場・ジムなど消費が戻ってきている。
   ・住宅価格の高騰が家賃の上昇を引き起こしている。
   ・穀物など農産物は高値が続き、食品価格は上昇している。
   ・ガソリン価格が上昇。
   ・企業努力によるコストアップの吸収も限界を超え、価格転嫁が加速している。
   ・生産価格だけでなく、サービス価格も上昇している。
   これらは物価上昇が続く要因となり、インフレは今後も着実に進むことを示している。

 3)上記の懸念材料も、「カネ余り」が飲み込んでしまう可能性もあるので注目したい。

●3.米下院民主党が提案した増税に対する株式市場の反応に注視したい

 1)バイデンの当初案との違い
  ・当初案の法人税 21% ⇒ 28% 引上げを、民主党案は26.5%に修正。

 2)民主党上院議員からの異論に説得・妥協が必要。
  ・上院は、増税に反発の共和党と同議席数のため、民主党上院議員全員の賛成が必要
  ・しかし、民主党穏健派からも異論が出ている。異論の内容は、財政赤字膨張を懸念して歳出規模を3.5兆ドル⇒1.5兆ドル程度に減額することを求めている。

●4.米8月消費者物価指数は前年比+5.3%と、予想に一致、7月+5.4%からは鈍化(フィッチ)

 1)前月比では+0.3%と、7月の+0.5%からは伸びが鈍化した。

 2)FRBがインフレ指標として注視している、エネルギーと食品を除いた「コアCPI」は前年比で+4.0%と、7月+4.3%から予想以上に鈍化した。

 3)新型コロナのデルタ変異株感染拡大により、経済活動再開に伴う需要の過熱感が緩和しつつあることが、8月CPIの落ち着きで証明された。

●5.米下院民主党、法人増税や富裕層向け付加税を提案へ(ロイター、毎日新聞)

 1)狙い: 
  (1)中流家庭の減税 
  (2)国外への雇用移転を防ぐ税制改革 
  (3)最富裕層と大企業の公平な負担
  を実現することで、米経済が富だけでなく、労働に報いることを確実にすべく前進させる。低所得・中間層の底上げを目指すのが狙いで、財源として法人・富裕層への増税を盛り込んだ。

 2)具体策:
  (1)法人税率 年間利益500万ドル超  21%⇒26.5%に引上げ
          年間利益40~500万ドル 21%を維持
          年間利益40万ドル未満  21%⇒18%に引下げ
  (2)個人所得で年収40万ドル超最高税率 37%⇒39.6%
  (3)500万ドル超える個人所得     3%の付加税
  (4)米企業の海外所得最低税率     10.5%⇒16.5%
  (5)キャピタルゲイン最高税率     23.8%⇒28.8%

 3)効果  : 歳入2兆9,000億ドル
  ・歳出3兆5,000億ドルに対応する増税。子育て・教育支援を柱とする1.8兆ドル規模の格差是正計画や、気候変動対策をまとめたもので合計3.5兆ドル規模の歳出案。
  ・個人所得最高税率の変更で、約1兆ドルの歳入増を図る。
  ・増税に加え、経済成長による税収増で3.5兆ドル規模の歳出案の財源のすべてを賄える、と民主党は主張。

●6.米民主党、国内メーカーを優遇するEV向け税額控除の大幅拡充を提案(ロイター)

 1)米自動車大手3社(ビッグスリー)とテスラに有利な措置となる。トヨタ、ホンダなど外資系メーカーは反発している。

 2)新たな税額控除の財政負担は、10年間で330~340億ドルと推計。

●7.アマゾン、2025年迄に1,320億円を投じ75万人従業員の学費負担(ビジネスインサイダーより抜粋

 1)雇用を強化するため教育面の福利厚生を拡大した最新の企業の行動。

 2)ウォルマート、ターゲット、スターバックス、チポトレ、ベライゾン等も学費を支援している。

●8.アップル、アプリ市場運営を巡る地裁判断で、年間数十億ドル失う恐れ(ブルームバーグ)

●9.バイデン大統領、民主党のカリフォルニア州知事のリコール投票で、現地入り(テレ朝)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/13、上海総合+12高、3,715(亜州リサーチ)
  ・経済指標が下振れしたことから、中国政府の経済対策への期待感が強まる流れとなり、3日間続伸した。
  ・中国人民銀行(中央銀行)9/10発表の金融統計で、8月の新規融資と通貨供給量M2がそろって予想を下回った。それを嫌気する売りが先行したが、「政府は景気のテコ入れ策を強める」との観測も根強く、株価指数はプラスに転じた。
  ・業種別では、非鉄や鉄鋼などの素材株の上げが目立ち、不動産株も高い反面、ハイテクは冴えず、消費関連・医薬・金融株は売られた。

 2)9/14、上海総合▲52安、3,662
  ・中国政府による産業締付けに対する警戒感が重石となる流れとなった。
  ・現地メディアによると、上海や広州などの大都市で住宅ローンの審査や金利が一段と厳格化されている。
  ・中国商業銀行による不動産向け融資の不良債権比率の悪化なども不安材料だ。
  ・上海総合は急ピッチで上昇し、約6年1カ月ぶりの高値水準まで切り上げていた。
  ・業種別では、金融株が下げを主導し、不動産株も安く、インフラ株等が売られた。

 3)9/15、上海総合▲6安、3,656(亜州リサーチ)
  ・中国経済統計では、小売売上高や鉱工業生産がそろって予想を下回った。
  ・ただ、「経済指標の悪化は、景気対策につながる」との見方もあり、小幅安。
  ・業種別では、消費関連の下げが目立った半面、石油・石炭株が高かった。

●2.中国・8月鉱工業生産は前年比+5.3%で、市場予想+5.8%を下回った(フィスコ)

●3.中国・8月小売売上高は前年比+2.5%で、市場予想+7.0%を下回った(フィスコ)

●4.中国・8月調査失業率5.1%と、市場予想と一致(フィスコ)

●5.中国の景気回復のほころびが、米金融緩和縮小に代わって、新興国市場を脅かす恐れ

 1)中国経済の回復の弱さに対し、新興国通貨は脆弱性を増している。(ブルームバーグより抜粋
   中国が今週発表する小売売上高や工業生産の統計が、世界2位の経済大国の回復がもたついていることを裏付け、比較的リスクが高い市場への波及懸念をあおる恐れがある。

 2)UBSアセット・マネジメントは、「中国経済の鈍化はここから加速すると見込む。この問題は、中国以外の世界にも及ぶ問題になろうとしている」と指摘した。人民元を対ドルでショート(売り持ち)している。

 3)2020年の新型コロナによる低迷から、中国は製造業主導で持ち直した中国経済だが、回復が続かない兆候が出てきている。
  ・中国国家統計局が発表した8月非製造業購買担当者指数(PMI)は2020年2月以来の活動の縮小を示し、2021年後半の減速を示唆。
  ・習近平国家主席が進める規制強化を通じた締付けは市場を動揺させている。
  ・デフォルト(債務不履行)に陥る可能性もある中国最大の不動産開発会社の中国恒大集団には銀行や投資家が巨額の資金を投融資している。「中国の民間企業の資産リスクプレミアムの上昇が、より広範な新興国市場の資産に波及する」懸念がある。

●6.中国政府は、アリババ傘下のアントからアリペイ分割を指示(ブルームバーグ)

 1)アントの融資判断を支えるユーザーのデータも、中国政府が一部所有する予定の信用評価合弁会社に引き渡す計画。

●7.バイデン米政府は、中国の産業補助金の調査を検討、貿易制裁も視野(時事通信)

●8.恒大集団、中国最大級の破綻危機(ロイターより抜粋

 1)中国1の販売実績を誇った不動産開発大手の中国恒大集団が崖っぷちに。

 2)現在の負債は2兆元(約33.55兆円)近くの負債を抱え、中国で最大級の破綻を起こす可能性が迫ってきている。

 3)恒大集団株価は過去14カ月で約90%下落し、ドル建て社債は額面の3~4割で推移。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/13、日経平均+65円高、30,447円(日経新聞)
  ・日経平均は利益確定売りが出て、下げる場面が多かったが、買い遅れていた投資家から断続的に買いが入り、上昇に転じた。加えて、売り方の買戻しも入って、日経平均はこの日の高値で終えた。
  ・自民党総裁選やその後の衆院選挙をにらみ、経済対策による景気浮揚への期待が根強い。
  ・新型コロナ感染者数が減少傾向にあり、経済活動の正常化に向けた素地ができつつあることも相場を支えた。

 2)9/14、日経平均+222円高、30,670円(日経新聞)
  ・新型コロナの新規感染者数の減少による経済正常化期待から買いが優勢な展開。日経平均は1990年8月1日(30,837円)以来の31年ぶりの高値となった。
  ・米国株に比べ割安感から海外投資家の買いが続いているとの見方から、急ピッチの上昇に乗り遅れた投資家などの買いが下支えした。
  ・次期政権の景気浮揚策への期待感も相場の支援材料となった。

 3)9/15、日経平均▲158円安、30,511円(日経新聞より抜粋
  ・前日に日経平均が31年ぶりの高値を付けたことで、幅広い銘柄で利益確定売りが優勢となった。反面、急ピッチの相場上昇に乗り遅れた投資家の押し目買いが相場を支えた。
  ・前週までは海外市場など外部要因の影響を感じさせない上昇だったが、今週は騰勢がやや衰えていた。そこに米株市場で景気減速懸念が強まり、『世界の景気敏感株』とされる日本株にも売りが波及した(JPモルガン・アセット・マネジメント)との指摘があった。
  ・もっとも、新たな首相の経済対策やコロナ感染者数減少による経済正常化への期待が根強く、断続的な買いが入って下値を支えた。

●2.日経平均の大幅高は「売り方の買戻し」、次は「中長期投資家の年金基金の買い」に期待

 1)日経平均8/30~9/15の大幅上昇+2,870円の内、業績対応分はわずか16.2%の+465円
  ・業績(EPS)効果  + 465円(16.2%)
  ・人気(PER)効果  +2,405円(83.8%)

 2)8/20を底に日経平均は反発したが、3月の高値買いした売り期日明けを狙った短期筋の買い仕掛けで上昇。

 3)9/1以降からは、自民党総裁選・衆議院総選挙の「政局ラリー」による株価上昇

 4)今後は、短期急騰の揺り戻しで調整を予想。
  ・8/23~9/15の日経平均は、+10.38%(+2,870円)の急伸した反動があり得る。

 5)その後、経験則では年金基金等の中長期投資家の出番で、再度上昇を予想する。
  ・過去の衆議院選挙と株価上昇(直前安値~選挙後高値)
    2012年12月選挙  +85.0%上昇
    2014年12月選挙  +44.2%上昇
    2017年10月選挙  +25.4%上昇

●3.大企業景況判断指数(BSI)7~9月期は+3.3と3四半期ぶりに改善した(共同通信)

 1)財務省・内閣府が9/13発表、ワクチン普及などを背景に、経済回復への期待感から企業心理が持ち直した。

●4.企業動向

 1)大真空    株式分割1:4(株探)
 2)旭化成    イスラエルの医療機器会社を592億円で買収(ロイター)
 3)JTB     コロナで業績悪化、本社ビルなど2棟売却、数百億円規模(読売新聞)
 4)新生銀行   SBIからの買収(TOB)阻止に向けて買収防衛策を検討(朝日新聞)

●5.企業業績

 1)HIS     7~9月期最終損益▲332億円の赤字。前年同期▲166億円(時事通信)
         業績悪化止まらず

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・9022 JR東海    コロナ禍からの回復期待。
 ・1414 ショーボンド  インフラ関連の補修・補強工事に期待。
 ・2326 デジアーツ   DX関連のセキュリティに期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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