相場展望8月9日 米雇用統計改善は、株式市場にとっては負のサイン 量的緩和の縮小⇒カネ余り相場ピークが近づく?

2021年8月9日 09:07

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)8/5、NYダウ+271ドル高、35,064ドル(日経新聞)
  ・前日の下落を受け、短期的な戻りを狙った買いが先行した。
  ・米長期金利が1.2%前後で落ち着いているのも、投資家心理の改善につながり、景気敏感株や経済再開の恩恵を受ける銘柄を中心に買い直された。空運・クルーズ船・旅行予約など旅行・レジャー株の上昇が目立った。
  ・ただ、米7月雇用統計の発表を8/6に控え、様子見ムードの投資家も多い。新規失業保険申請件数は改善したが、雇用統計発表があるため、材料視する動きは限られた。
  ・新型コロナのデルタ型感染拡大への警戒は相場の重荷になっているが、死亡者や入院患者数の増加は緩やかで、経済活動が正常化する流れは続くとの見方が改めて広がった。

【前回は】相場展望8月5日 米国株は高値圏、日本株は下落と相反する要因 米国はカネ余り、日本は日銀の資金供給停止

 2)8/6、NYダウ+144ドル高、35,208ドル(フィスコ)
  ・7月雇用統計が予想を上回り、労働市場の順調な回復が証明されたため、寄付きから上昇。強い景気回復に向けて投資家の楽観的な見方が強まり、NYダウは堅調に推移し、市場志向値を更新して引けた。
  ・一方、金利先高観でハイテク株が売られ、ナスダックは下落。
  ・業種別では、銀行・各種金融が買われ、反面、自動車・自動車部品が下落した。

●2.米雇用統計改善で株高となったが、米資金供給減を招き、株式市場にとっては負のサイン

 1)米雇用統計のポジティブサプライズを受けて、米国株高・ドル高・長期金利上昇した。
  ⇒ 米NYダウ株高は、雇用統計が2カ月連続の改善を受け、景気回復が続いているとの見方から景気敏感株が買われたため。
  一方、ハイテク株の多いナスダックは、長期金利上昇で相対的な割高感が意識されアップルやマイクロソフトなどが売られた。

 2)早期緩和縮小を受けた市場の反応(前日比)
  (1)米株式・ドル・金利は上昇 ⇒ テーパリングによる金利上昇の織り込みの動き
    NY株式       35,064ドル ⇒ 35,208ドル  史上最高値圏にある
    ドル円        109.75円 ⇒ 110.217円    金利上昇ドル高強まる
    米10年国債利回り  1.25% ⇒ 1.305%      金利低下から反転上昇
  (2)反面、商品先物は下落 ⇒ 金利上昇による景気後退の織り込みの動き
    WTI原油      69.09 ⇒ 68.02   ▲1.55%
    金          1808.9 ⇒ 1763.1  ▲2.53%
    銅          434.8 ⇒ 433.7   ▲0.25%
    CRB指数      215.17 ⇒ 214.49  ▲0.31%
  (3)株式を除く指数の反応は、『金利上昇と経済成長鈍化』を示唆したと見るべき。

 3)米国株は「金融緩和に主導された楽観論が支配」し、「良い所取りの『適温相場』を形成して『高値更新を続け最高値圏』」にいる。

 4)米国では、デルタ型の感染が急拡大していることから、感染増に歯止めが掛からなければ、消費者心理や企業の経済活動に悪影響を及ぼす可能性がある。

 5)FRBによる金融緩和縮小(テーパリング)の早期化との見方が強まったと見るべきであり、むしろ市場への資金供給縮小は株式市場にとってはマイナス材料と思われる。

 6)やはり、8/26~28開催のジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長講演または9/21~22のFOMCに、市場は注目していく流れを想定する。

 7)カネ余り相場のピークが近づいているとの受け止める人が増えていくと思われる。

●3.7月雇用統計発表を受けたメディアの反応 (フィスコ)

 1)7月雇用統計は、(1)失業率の低下 (2)賃金の上昇 (3)労働参加率の上昇と、良好な内容となり、米国労働市場が順調に回復している証拠となった。
  ・強い指標の結果を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和縮小を開始できる軌道にあるとの見方が強まった。
  ・FRBの利上げ条件が整うには引き続き長い道のりだが、債券購入縮小は速やかに開始されるとの見方が強まりつつある。市場は2022年の初旬の緩和縮小を織り込み始めた。

 3)FRBのウォラー理事は、8月の雇用統計の結果次第では、9月にも緩和縮小計画を発表する可能性があるとしていた。
  ・8月の雇用統計も引き続き労働市場の順調な回復を示した場合、FRBが9月中に計画を発表する可能性も強まった。(フィスコ)

●4.米7月非農業部門雇用者数は+94.3万人と、予想+87万人を上回った(フィスコ)

●5.米7月失業率は5.4%と、予想5.7%・6月5.9%から改善した(フィスコ)    

●6.米7月平均時給は前年比+4.0%と、予想+3.9%・6月+3.7%を上回った(フィスコ)

●7.米先週分新規失業保険申請件数38.5万件と、予想38.3万件と2週連続改善(フィスコ)

 1)失業保険継続受給者数293万人と、前回329.6万人から減少し、300万人を下回った。

●8.バイデン氏は米大統領令に署名、「新車の5割を電動自動車に」2030年目標(テレ朝

 1)大統領令は、EV(電気自動車)やFV(燃料電池車)など排ガスを出さない電気自動車の割合を2030年に新車販売の5割まで引き上げることを目標にしている。

 2)この大統領令には、日本メーカーが得意とするハイブリッド車は含まれていない。

 3)大統領令に法的拘束力はないが、今後の政策作りの指針となる。バイデン政権は2030年までに全米50万カ所で充電設備の設置を進めるとしている。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)8/5、上海総合▲10安、3,466(亜州リサーチ)
  ・新型コロナの変異種デルタ株の感染拡大が不安視される流れとなった。中国での直近2週間の感染者数は、7月中旬まで半年間の合計を上回った。
  ・野村の最新リポートでは、中国各地で厳しい防疫対策実施の可能性を指摘。サービス業を中心に一定の影響が出るとの見方を示している。すでに複数の工場が操業停止を余儀なくされる状況で、経済成長鈍化を警戒。
  ・中国当局が景気腰折れを回避するために経済対策を進めるとの観測も根強く、下値を叩くような売りは見られない。

 2)8/6、上海総合▲8安、3,458
  ・デルタ株感染拡大や各分野に対する当局の監視強化スタンスが引き続き不安材料として意識されている。
  ・業種別では、医薬品が急落、消費関連も冴えない。反面では、非鉄・鉄鋼などの素材株が物色された。

●2.中国7月輸出の伸び鈍化、アジアのデルタ株感染拡大などリスク増大(ブルームバーグ)

 1)中国税関総局8/7発表、前年同月比6月+32.2%⇒7月+19.3%増と予想20.0%下回る。

 2)中国の経済回復が今年下期に新たな圧力に直面するとの懸念が強まった。

●3.ファーウェイの1~6月期売上は、米国の半導体輸出規制の影響で▲29%減少(NHK)

 1)上半期売上は3,204億元(約5兆4,000億円)と前年同期比▲29%減少した。米国の半導体輸出規制のため主力のスマートフォンなど消費者事業が▲46%の大幅な落ち込みとなったため。ファーウェイ(華為技術)のスマートフォン出荷台数は、昨年4~6月期はメーカー別で世界トップだったが、今年は上位5位にも入っていない。

 2)ファーウェイは、新興国向けの5Gなど通信網の整備事業や、電気自動車の関連事業を拡大する考え。

 3)ただ、米国の半導体輸出規制が撤廃される見通しは立っていないうえ、欧米などファーウェイの5G通信機器を排除する動きも続いており、業績改善が難しい状況となっている。

●4.デルタ株感染拡大の中国で、世界遺産など閉鎖や入場者数制限が相次ぐ(テレ朝)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)8/5、日経平均+144円高、27,728円(日経新聞)
  ・良好な決算を発表した海運株などの銘柄が買われ、相場を上昇させた。
  ・半面、新型コロナ感染拡大や米国の景気減速への警戒感は根強く、上値は重かった

 2)8/6、日経平均+91円高、27,820円(日経新聞)
  ・前日の米国株高や、国内企業の市場予想を上回る好決算発表が相次ぎ、好業績を手掛かりにした個別銘柄の物色が支えとなった。
  ・ただ、新型コロナ感染者は東京で初めて5,000人を超え、全国でも過去最多を更新し、状況の悪化が重荷になった。経済活動の本格的な再開が更に遅れるとの見方が強まった。

●2.日本株の動向

 1)決算発表を受け、「予想上回る企業株価は上昇・予想内は下落」が鮮明化
   任天堂    市場予想を下回る4~6月決算で、▲8%超安で年初来安値。
   ラウンドワン 米国事業回復で赤字縮小、一時+8%高。

 2)ワクチン接種率は8/6現在、1回接種45.7%、2回目接種32.7%でも、感染者数が増大。ワクチン接種率向上による経済回復効果が見えない今、経済回復に向けた更なる接種率の上昇に期待したい。

●3.決算発表での上場企業の純利益、コロナ禍前を上回る製造業が好調 (朝日新聞より抜粋

 1)東証1部上場企業の4~6月期決算の8/5前での集計で、最終純利益が6.8兆円となり、新型コロナ禍前の2019年同期と比べ+26.8%増となった。
  ・欧米中などの外需を取り込んだ製造業が全体を引っ張った格好だが、旅行やレジャーを含むサービス業は低迷し、明暗が分かれた。

 2)製造業の純利益は2019年同期比+62.7%増。特に世界販売の回復が著しい自動車業界が好業績で、鉄鋼や化学など素材関連にも波及した。電気機器は巣ごもり消費や半導体の需要増の恩恵を受けた。原材料費高騰も懸念されたが、コストダウンで補った企業が多かった。

 3)非製造業の純利益は同▲14.1%減。人の移動を伴う空運と陸運は赤字が続き、レジャーなどサービス業も回復していない。ただ、荷動きが急増した海運は業績を大きく伸ばした。

 4)世界で経済活動が停滞した2020年同期比と比べると、売上高は+26.9%増、営業利益は4.6倍、純利益は6.7倍に増えた。

●4.塩野義製薬、開発中のコロナ治療薬「飲み薬を年内に申請」、供給体制も整備 (毎日新聞)

●5.大手企業の夏賞与▲8.27%減、非製造業は落ち込み最大の▲17.0%減(共同通信)

●6.干ばつの北海道、農業・畜産生産者に危機感(日経新聞)

●7.厚生労働省発表、6月給与総額は前年同月比▲0.1%減で、今年2月以来のマイナス(NHK)

 1)物価変動を反映した実質賃金は、昨年6月を▲0.4%下回り、今年1月以来のマイナス

●8.企業業績(4~6月期決算) 

 1)任天堂    営業利益1,197億円と前年同期比▲17%減、売上は▲10%減。(時事)
 2)オリンパス  営業利益276億円と前年同期比7.5倍。
         通年でも前年比70.8%増と、市場予想を上回る上方修正。(フィスコ)

●9.企業動向

 1)ホンダ   早期退職の応募2,000人以上、EV開発など技術者の世代交代進める。
        2040年迄に新車販売をEVや燃料電池車に切り替える方針。(読売新聞)
 2)第一生命  豪ウエストパック生命保険を約730億円で買収方針。(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・7912 大日本印刷  半導体・電池などハイテクが成長。業績好調。
 ・6289 技研製作所  国土強靭化で政府施策に合致。業績好調。
 ・2222 寿スピリッツ ワクチン接種率向上による人流回復期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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