外国人就労者が「店長」になっている物語コーポレーションに学べ

2018年12月26日 19:51

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 改正入管難民法の成立で外国人就労者拡大の道筋がついた。業種別受け入れ人数や受け入れ先に求める基準等は来年4月の施行に向け「省令」に委ねるなど、不透明な部分が多いことは事実。が、国立社会保障・人口問題研究所の「将来推計人口」は約7500万人の現在の生産年齢人口(15歳~64歳)が、少子高齢化の影響で2030年には約6900万人に減り40年には6000万人を割り込むと試算している。

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 外国人労働力の確保は、日本経済の先行きを占う上で喫緊の課題といえる。省令策定に際して厚労省にまずは有識者の声に、しっかりと耳を傾けて欲しい。人口経済学が専攻の明治大学政経学部の加藤久和教授は「(企業が)外国人労働者と日本人との“同一労働・同一賃金”をきちんと適用することが受け入れ企業の絶対条件。現状では企業によって温度差がある」と指摘している。外国人労働者が「差別」を訴え訴訟を起こすという現実もある。是非にも省令を定める時、加藤教授の指摘を反映させるべきだと考える。

 また既に外国人労働者を受け入れている民間企業の実態にも、目を向けるべきであろう。愛知県を地盤に「焼き肉店」「ラーメン店」「お好み焼き屋」等を展開する上場企業に、物語コーポレーションがある。自社(海外店を含め)・FC店で計470店舗が稼働している。07年に外国人労働者の採用を開始。現在、中国・ネパール・韓国など9カ国の約80人が働いている。入社前の研修では「インターナショナル社員」と呼ぶ外国人就労者に日本語や日本の風土・文化を徹底し学ばせる。配属予定先の店長との面談も実施。配属後も独自の研修を年4回実施し、不安・不満・悩みを本部社員に吐き出させ就労状況の改善に努めている。

 そして実に興味深い事実を知った。採用開始から10余年が経ったいま、店長が登場しているというのだ。「同一労働・同一賃金」が施行されているからこその、なによりの証しだと言えよう。ちなみに今回の改正法で外食業に働く外国人は在留資格「特定技能者」の対象となった。

 近未来の労働力不足を勘案する時、法改正に付加される「省令」には多角的な検証を求めたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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