Circle、IBMのブロックチェーン特許を取得 米最大の保有者に、防御利用の誓約は示さず

2026年7月29日 11:41

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記事提供元:Tech Times

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USDCを発行するCircle Internet Groupは、IBMが保有していたブロックチェーン関連の特許ポートフォリオ全体を取得し、米国最大のブロックチェーン特許保有者となった。影響を受け得るのは、競合する決済基盤やステーブルコイン、オープンソースのプロトコルを開発する企業や開発者だ。Circleは他社への攻撃的な特許行使を禁じる誓約を示しておらず、今後の行使方針は未確定である。

■1件の特許から米国最大の保有者へ

Circle Internet Groupは27日(月)、IBMが保有していたブロックチェーン関連の特許ポートフォリオ全体を取得した。これによりCircleは、米国最大のブロックチェーン特許保有者となった。一方、競合するCoinbase、Block、Blockstream、Strategyが署名している、他のブロックチェーン開発者に対して特許を攻撃的に行使しないという誓約は示していない。

Circleの公式発表によると、今回の取引では680超の特許ファミリーと、世界各国で成立済みの約1,000件の特許がIBMからCircleへ移管された。対象は、分散型台帳技術の基盤、銀行・金融サービスの業務フロー、保険分野の応用技術、企業向けインフラ、サプライチェーンの検証、安全なクラウド運用などに及ぶ。USDCを発行するCircleが保有するブロックチェーン特許は、2023年12月の時点ではわずか1件だった。

Yahoo Financeによると、CircleのCRCL株は月曜日の取引時間中に一時4.7%上昇した。同社株は2025年の新規株式公開(IPO)後に293ドルの高値を付けたものの、その後の約12カ月でおよそ66%下落しており、今回の上昇は一定の反発となった。

■IBMが築いた特許ポートフォリオ

IBMは2010年代半ばから進めた企業向けブロックチェーン事業を通じ、10年以上をかけて知的財産(IP)のポートフォリオを構築してきた。特に中心となったのがHyperledger Fabricである。IBMがサプライチェーン追跡、貿易金融、保険業務向けに開発した、参加者を限定する許可型ブロックチェーンのフレームワークで、企業向け導入の事実上の標準となった。

Decryptが引用した特許分析会社PatSnapの2025年12月の調査では、IBMが保有する米国のブロックチェーン特許は約790件とされ、米国でも上位の保有者に位置付けられていた。

これに対し、CoinTrustによると、Circleが初めて取得した特許は並列型のブロックチェーンデータ処理に関するもので、成立したのは2023年12月だった。IBMの取得により、約20年にわたる蓄積の差を1回の取引で埋めたことになる。

IBMにとって今回の売却は、当初見込んだ規模の商用化に至らなかったブロックチェーン戦略から、静かに撤退する動きでもある。海運会社Maerskと共同開発したサプライチェーン基盤「TradeLens」は、事業継続に必要な業界全体の参加を得られず、2022年11月に終了した。Hyperledger Fabricの商用実装である「IBM Blockchain Platform」も、独立した商用製品としての展開を終えている。

IBMが、消費者向けと機関向けの双方でブロックチェーン基盤を実際に展開するCircleへ特許を移したことは、技術の勢いがどこへ移ったかを現実的に認めたものとも考えられる。

Circleの法務責任者兼コーポレートセクレタリーであるSarah Wilson氏は、公式発表で「知的財産は、私たちの使命を前進させ、オンチェーン基盤の普及を拡大するうえで極めて重要だ」と述べた。IBMとCircleは、新たな商機についても検討する方針を示したが、具体的な内容は明らかにしていない。

■約1,000件の特許は何を対象とするのか

成立済みの約1,000件の特許は、ブロックチェーン技術、銀行、金融サービス、保険、企業向けインフラ、サプライチェーン、安全なクラウド運用など、広い領域を対象としている。その意味を理解するには、IBMがどのような前提で知的財産を構築し、Circleがそれをどのように利用しようとしているのかを分けて考える必要がある。

IBMの特許ポートフォリオは、Hyperledger Fabricのように、承認された参加者だけが取引の検証に加われる許可型ブロックチェーンを中心に構築された。一方、USDCやCircleの製品群を支えるEthereumやSolanaなどのパブリックブロックチェーンは、異なるコンセンサス方式で動作する。IBMの許可型ブロックチェーン特許がCircleの運用するパブリックブロックチェーン基盤に適用できるかどうかは、個々の特許請求項によって異なる。

明確なのは、応用手法を対象とする請求項の範囲が広いことだ。米国特許商標庁(USPTO)は年間5,000件を超えるブロックチェーン関連特許を認めている。防御力が高く、商業的にも重要な特許は、ブロックチェーンという概念そのものではなく、決済・清算の業務フロー、トークン化資産の移転、組織をまたぐデータ共有、暗号技術による本人確認など、具体的な応用手法を対象とする。

Circleが取得したポートフォリオには、IBMが約10年間にわたり企業向けブロックチェーンを研究開発する中で取得した、こうした応用手法の請求項が含まれる。基盤となるネットワークが許可型かパブリック型かにかかわらず、他社への適用、クロスライセンス、権利行使に利用できる可能性がある。

取得の単位となった「特許ファミリー」とは、同一の発明を基に複数の国・地域へ出願された一連の特許を指す。Circleが取得した680超の特許ファミリーは、680を超える別個の発明を意味し、それぞれが複数の法域で複数の成立特許によって保護され得る。このため、680超のファミリーから世界全体で約1,000件の成立特許が生じている。

■Circleが示さなかった誓約

今回の取得で特に重要なのは、Circleが同時に何をしなかったかである。

Bitcoinやブロックチェーン基盤の主要企業であるCoinbase、Block(旧Square)、Blockstream、Strategyは、Crypto Open Patent Alliance(COPA)に加盟している。COPAの加盟企業は、他のブロックチェーン開発者に対して自社特許を攻撃的に行使しないと誓約する。

この誓約は象徴的なものではない。特許の価値や権利行使の可能性にかかわらず、加盟企業はその特許ポートフォリオを、オープンソース開発者、ブロックチェーンのスタートアップ、競合するインフラ企業への武器として使えなくなる。

CircleはCOPAの加盟企業ではなく、今回の発表でも同等の誓約を示さなかった。

一方、CircleはLOT Networkに加盟している。LOT Network(License on Transfer)はCOPAとは別の、制限が比較的緩い仕組みで、IBMとCircleを含む約2,800社の加盟企業を特定の脅威から保護する。加盟企業の特許が後に特許権行使主体(PAE、一般にパテントトロールとも呼ばれる)へ売却された場合、他のすべての加盟企業へ自動的にその特許のライセンスが付与される。これにより、PAEが旧加盟企業の特許をブロックチェーン業界への攻撃に利用することを防ぐ。

ただし、LOT Networkへの加盟は、Circle自身が新たに取得したIBMの特許を非加盟のブロックチェーン企業、オープンソース開発者、競合企業に対して行使することを妨げない。競合するステーブルコイン基盤の開発企業も、潜在的には対象となり得る。LOTは加盟企業の特許がPAEへ移転するリスクを防ぐ盾であり、攻撃的な利用を禁じる誓約ではない。

Ledger Insightsは月曜日、今回の取得を報じる中で、「Circleがこの特許を使って他社を威嚇し始めれば、評判を多少落とすかもしれない」と指摘し、防御目的に限るとの宣言が発表に含まれていない点に注目した。

Circleは、他社に対して特許権を行使する意図を発表していない。重要なのは、Circleが実際に行使するということではなく、COPAと同等の誓約がない状態で約1,000件の特許を保有するため、他のブロックチェーン開発者がその可能性を排除できないことだ。USPTOの制度によってブロックチェーン特許への異議申し立てが難しくなり、PAEがすでに業界を標的としている環境では、この曖昧さは構造的な意味を持つ。

■ブロックチェーン基盤に広がる特許紛争

Circleによる取得の時期は、LOT Networkが2026年4月の分析で示した変化と重なる。トークン化資産とステーブルコイン基盤の時価総額が合計3兆ドルを超えたことで、ブロックチェーン特許の権利行使が初めて経済的に割に合うようになったという。

従来、ブロックチェーンの開発企業は十分な資金を持たず、特許訴訟を通じて利益を得る戦略の対象として魅力的ではなかった。だが、この状況は変わった。自ら製品やサービスを提供しない非実施主体(NPE)が水面下でブロックチェーン特許を集め、裁判で権利を行使し始めている。

直近の例がMalikie Innovations Ltd.である。同社は、Bitcoinの署名方式の基盤となる楕円曲線暗号を対象としているとされる特許を保有し、Core Scientific、Marathon Digital HoldingsなどのBitcoinマイニング企業を提訴した。署名1件ごとのライセンス料を求めており、請求が認められれば、ネットワーク全体でブロックを検証するコストが上昇する可能性がある。

USPTOの現在の制度も、特許保有者に有利な状況を生んでいる。同庁が採用した「NHK-Fintiv」枠組みでは、地方裁判所で並行訴訟が進んでいる場合、特許審判部(PTAB)が成立済み特許への異議申し立てを裁量で却下できる。実質的に、成立したブロックチェーン特許を無効にする際の障壁が高くなる。2025年5月に提出されたPREVAIL Act法案が成立すれば、特許成立後の審査手段はさらに制限される。

こうした状況を踏まえると、CircleによるIBM特許の取得は直接的な対応とみることができる。アナリストや業界関係者は、この買収について、Circleが機関金融向けに開発するレイヤー1ブロックチェーン「Arc」の知的財産基盤を確保する狙いが強いとみている。CircleはArcを、銀行や企業向けの決済・清算基盤として位置付けている。

基盤技術の知的財産を自社で保有すれば、機関顧客がCircleのネットワークを導入する際、従来型の企業向けブロックチェーン特許の保有者から権利を主張されるリスクを抑えられる。

■ステーブルコイン市場で相反するIBMの立場

今回の取引は、IBMの複雑な立場も浮き彫りにする。同社はCircleにブロックチェーン特許群を売却する一方、Open Standardの創設パートナーでもある。Open Standardは140社からなる企業連合で、2026年6月30日に、USDCの市場地位へ対抗するために設計された「Open USD(OUSD)」を立ち上げた。

OUSDの経済モデルは、Circleの事業を支える収益構造に直接挑むものだ。Circleのようにステーブルコイン発行企業が裏付け資産から生じる準備金収益を得るのではなく、OUSDはそのほぼすべてを企業連合の参加企業へ分配する。発行と償還の手数料は無料で、取引量の上限も設けず、単一企業ではなく加盟機関の理事会が運営する。

OUSDが発表された日、CRCL株は17.5%下落した。Visa、Mastercard、Stripe、BlackRock、BNY、Coinbase、Google、Shopify、Rippleが支える準備金収益の再分配モデルがUSDCの収益性に及ぼす影響を、市場が織り込んだためだ。

USDCの流通量は、3月の約800億ドルから約735億ドルへ減少し、総額3,150億ドル超のステーブルコイン市場におけるシェアも縮小した。IBMはCircleへブロックチェーンの基盤特許を売却しながら、Circleの収益基盤を弱めることを狙ったステーブルコインを同時に支援している。Circleはこの関係について公にはコメントしていない。

みずほのアナリスト、Dan Dolev氏は7月14日、OUSDの準備金収益を参加企業へ還元するモデルがCircleの収入に対する構造的な脅威になるとして、CRCLの投資判断を「アンダーパフォーム」へ引き下げ、目標株価も85ドルから50ドルへ大幅に引き下げた。

■Coinbaseとの契約更新が迫る

IBMの複雑な立場とは別に、より差し迫った影響をCircleへ及ぼし得るのがCoinbaseとの関係である。Coinbaseは、もともとUSDCを運営していたCentre Consortiumの共同設立者だ。現行の収益分配の枠組みでは、USDCの準備金収益のおよそ半分をCoinbaseが受け取っており、その額は年間約9億800万ドルと推定されている。契約は2026年8月18日に更新時期を迎える予定だ。

CoinbaseはOUSDの創設パートナーでもあり、OUSDを自社のBaseブロックチェーンへ導入すると公に確認している。契約更新を前にしたCoinbaseの交渉上の立場を考えると、Circleに有利な状況とはいえない。

Circleが新たに取得した特許ポートフォリオを、こうした交渉の材料にできるかは不明だ。CoinbaseにとってのUSDCの価値は、準備金から得られる収入と、Coinbaseの取引基盤へ供給する流動性にあり、その基盤となる知的財産ではない。

■特許を蓄積するCircleの戦略

IBM特許の取得は単発の動きではない。Circleは2026年初め、Interop Labsのチームと、ブロックチェーン間の相互運用プロトコルを対象とするクロスチェーン関連の知的財産を取得する契約を結んだ。相次ぐ取得は、特許の蓄積が機会に応じた購入ではなく、意図的な戦略であることを示唆する。

Circleは2023年と2025年の2度にわたりLOT Networkへ参加した。少なくとも、PAEによる特許取得の脅威を認識し、LOTの仕組みが対象とするPAEへの移転リスクから加盟企業を守ろうとしていることがうかがえる。

Circleが展開を拡大する各種インフラの背後には、今回の特許群が直接位置付けられる。対象には、流通額735億ドルのUSDC、デジタルドルを用いた銀行間の国際決済を可能にするCircle Payments Network(CPN)、機関向けレイヤー1ブロックチェーンのArcが含まれる。

さらに、AIエージェントが資金を保有し、0.000001ドル単位の支払いを実行し、金融サービスと自律的にやり取りできる「Circle Agent Stack」など、エージェント型金融ツールも拡充している。

IBMのポートフォリオに含まれるサプライチェーン検証と安全なクラウド運用の特許は、Circleの構想がステーブルコイン発行にとどまらない可能性を示す。これらの分野は、ステーブルコイン市場とは独立して商用化と特許訴訟が進んでいる。

■今後の焦点は特許の利用方針

CircleにとってIBM特許の取得は、直ちに防御上の価値をもたらす。IBMの特許や、IBMがPAEへ売却した可能性のある特許がCircleの基盤に対して行使されるリスクを取り除けるためだ。IBMとCircleはいずれもLOT Networkに加盟しており、PAEへの特許移転という経路については相互に保護される。

未解決なのは、Circleの姿勢が純粋に防御的なままかどうかだ。Circleの発表にも、その後の声明にも、COPAと同等の誓約は含まれていない。法務責任者は知的財産を「私たちの使命を前進させるうえで極めて重要」と表現したが、この言葉は防御だけでなく、商用ライセンスも含み得る。Circleは特許権行使の計画を発表しておらず、その意向を示したこともない。

ブロックチェーン業界全体にとって、基盤技術に関する約1,000件の特許が、防御目的に限るとの誓約をしていない暗号資産業界出身のステーブルコイン発行企業へ集中したことは、知的財産を巡る構造的な変化である。オンチェーンアプリの開発者、競合する決済基盤を構築する企業、オープンソースのプロトコル開発チームは、米国最大のブロックチェーン特許保有者が、その影響力をどう使うか正式に約束していない環境に置かれた。

Open USDは2026年後半、まずSolana上で稼働を開始し、その後ほかのブロックチェーンへ対応を広げる見通しだ。ステーブルコイン市場の次の競争は、準備金の収益構造、流通・提携網、規制対応を中心に進む。そして潜在的には、それらを支えるインフラの基盤特許を誰が支配するかも争点となる。

■注目ポイントQ&A

●IBMはなぜブロックチェーン特許をCircleへ売却したのですか

IBMは2010年代半ば、主に許可型のHyperledger Fabricを軸とする企業向けブロックチェーン事業を積極的に進め、特許ポートフォリオを構築しました。しかし、主力だったTradeLensは業界全体から十分な参加を得られず2022年後半に終了し、IBM Blockchain Platformの商用展開も縮小しました。大規模なブロックチェーン基盤を実際に展開するCircleへの売却は、技術の勢いが許可型の企業ネットワークからパブリックブロックチェーンを利用した金融基盤へ移ったとの判断を反映している可能性があります。IBMは今後もCircleとの商機を検討できます。

●LOT NetworkとCOPAは何が違い、Circleはどちらに加盟していますか

両者が防ぐ脅威は異なります。約2,800社が参加するLOT Networkでは、加盟企業の特許がPAEへ売却された場合、ほかの加盟企業に自動的にライセンスが付与されます。COPAはさらに強い仕組みで、加盟企業は相手を問わず、ブロックチェーン開発者に対して特許を攻撃的に行使しないと誓約します。Coinbase、Block、Blockstream、StrategyはCOPA加盟企業です。CircleはLOT Networkには加盟していますが、COPAには加盟しておらず、約1,000件の新たな特許を防御目的だけに使うとの同等の誓約も示していません。

●他の企業やオープンソース開発者が特許権を行使される可能性はありますか

可能性はありますが、Circleは他者に対して特許権を行使する意図を発表していません。CircleはCOPAに加盟せず、同等の誓約もしていないため、取得した特許を他のブロックチェーン企業、オープンソース開発者、競合するステーブルコイン基盤に対して行使する法的な権利を維持しています。実際に行使するかどうかは不明です。今回の取得により、米国最大のブロックチェーン特許保有者が、競争の激しい市場で事業を営むステーブルコイン発行企業になったことは確かです。

●IBM特許の取得はOpen USDとの競争にどう関係しますか

140社の企業連合が支えるOUSDを、IBM特許によって直接阻止できる可能性は低いとみられます。特許戦略が作用するのは別の層であり、ステーブルコイン運用を支える基盤技術について、Circleが防御可能な知的財産を確保する意味があります。これは、大規模な金融基盤を導入する前に知的財産の由来や権利関係を確認する機関顧客にとって重要です。Circleは、USDCの市場シェアだけでなく、大規模なステーブルコイン基盤が対応を迫られ得る基盤特許の保有にも競争力を求めていると考えられます。

元記事: Circle Buys IBM Blockchain Patents, Becomes Top U.S. Holder Without a Defensive Pledge

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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