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相場展望6月9日号 米国株: 米国経済後退懸念よりも、インフレ懸念が増す 中国株: 中国はサラミ戦略が効果発揮、トランプ高関税は後退必至 日本株: 日経平均はトランプ関税高値まで回復、正念場に差し掛かる
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)6/5、NYダウ▲108ドル安、42,319ドル
2)6/6、NYダウ+443ドル高、42,762ドル
【前回は】相場展望6月5日号 米国株: (1) 楽観すぎる米国株市場 (2) 中国は「レアアース規制」でトランプ米国に牙、米国は守勢 日本株: 円相場が短期転換のため慎重に、日経平均は重い展開を予想
●2.米国株:経済悪化懸念よりも、インフレ率上昇懸念の方が増す
1)米国株は、(1)労働市場の鈍化懸念と(2)関税によるインフレ率の上昇懸念がある。しかし、インフレ率の上昇は既に顕在化している。
・労働市場は鈍化しつつも依然として「底堅い」。
・賃金が予想を上回る伸び。
↓
・利下げ観測が後退している。
・対して、経済の冷え込みは労働市場の鈍化で兆候が見られるものの、まだ軽微である。したがって、インフレ対策(物価上昇対策)を優先すべき。
・このインフレ率の上昇を抑制できないならば、スタグフレーション(物価上昇と景気後退)に陥る確率が高くなる。
2)米国長期金利が上昇
・インフレ上昇圧力を低下するために、金利引上げは有効。
・トランプ政策の結果、財政赤字膨張するため、資金調達のための金利引上げは避けられず。
3)テスラ株は、6/5急落したが、6/6に買い戻される
・6/5 ▲14.27%下落 ▲47.35ドル安
6/6 +3.67%上昇 +10.44ドル高
・トランプ氏とマスク氏との関係が決裂したことから、6/5に急落した。6/6は値ごろ感から買い戻されたが、投資家心理の改善は見通しできず。
・マスク氏が指摘した警戒感が、当たっているか否か?。米国株式相場に懸念が広がる可能性がある。
●3.米国5月雇用統計、就業者13.9万人増加、市場予想をやや上回る(NHK)
1)景気減速への強い警戒感がひとまず和らいだ形。
2)失業率は前月と同じ4.2%。
3)インフレに結び付くデータとして注目される労働者の平均時給は前年同月比+3.9%で、前月比+0.4%上昇し、いずれも市場予想を上回った。
4)米国では、民間会社が6/4発表したデータで5月の雇用者数が市場予想を大きく下回るなど景気減速への警戒感が広がっていたが、今回の雇用統計を受けてひとまずは和らいだ形。ただ、トランプ政権の関税措置による懸念は根強く、米国経済の堅調さを支えている労働市場の今後の動向が焦点となる。
●4.FRBは利下げ急がず、労働市場が堅調で「夏の終わりまで」金利は据え置きの公算(ロイター)
●5.トランプ氏、マスク氏との政府契約打ち切りを示唆、両氏の決裂鮮明に (ブルームバーグ)
1)テスラ株は6/5、▲14%下落したため時価総額で▲22兆円が吹き飛ぶ(時事通信)
2)トランプ氏とマスク氏が決裂し「クレージー」「恩知らず」、「マスク新党」設立もほのめかす。(産経新聞)
3)財政や関税で根本的違い、個人攻撃も、修復不可能か(共同通信)
・マスク氏が、トランプ氏の大規模減税の延長を柱とする政権の法案を批判したことを契機に、2人の関係は悪化。マスク氏は5月下旬に政権を離れた。
4)トランプ氏「イーロンへの補助金打ち切り」、マスク氏は大統領選での献金を挙げ「恩知らず」と非難。(読売新聞)
5)トランプ氏、関係修復を否定、「マスク氏は正気を失った男」(共同通信)
6)トランプ氏、マスク氏への「信頼の証」で購入したテスラ車を売却へ(読売新聞)
=ニューヨーク・タイムズ6/6報道
●6.関税によるインフレ再燃を警戒、全容解明に時間必要=カンザスシティ連銀総裁(ロイター)
●7.金融政策の先行き見通せず、経済予測は不安定=フィラデルフィア連銀総裁(ロイター)
●8.米国新規失業保険申請+8,000件増、2週間連続増加、労働市場の軟化を示唆(ロイター)
●9.政策金利の現状維持を支持、関税でインフレリスクが上昇=クーグラーFRB理事(ロイター)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)6/5、上海総合+7高、3,384
2)6/6、上海総合+1高、3,385
●2.中国株 : 中国のサラミ戦略が効果発揮、トランプ高関税は後退必至
1)トランプ・習氏の電話会談で、習氏は米国から「技術・輸出規制の緩和を引き出し、失速気味の中国国内経済の下支えを狙っていたはずである。トランプ関税で、中国で失業者1,000万人増加が見込まれる危機回避もあった」と思われる。
2)トランプ・習氏の「相互招待など」で緊張緩和に向けて前向きな様子だが、楽観はできない。
3)この両首脳の電話会談は、5月に行われた閣僚級協議の結果内容を確認したことにとどまっている。決して楽観視はできない。
・中国は、米国自動車向けレアアースの輸出に一時許可を付与。
・米国・中国閣僚級協議は6/9、ロンドンで再開。
4)トランプ氏はどこまでも自分勝手な人で気分屋のため、信頼がいる外交には不適
・米国は、中国の原発向け関連機器の輸出を停止し、冷や水をかけた。
・習近平氏は、レアアースの輸出一時的許可についても、サラミ戦術で薄く小出し対応をしてくるだろう。米国は200年の歴史しかないが、中国は4,000年のノーハウの蓄積がある。単純で怒りやすいトランプ米国大統領は、中国にとって御しやすい人物に映っていると思われる。
●3.習近平氏、トランプ氏との電話に応じ、半導体や関税を巡る攻防に勝算見込む(ブルームバーグ)
1)トランプ氏は電話会談で、レアアース(希土類)磁石の輸出再開の約束を取り付け自分が望んでいた成果を得た、と述べた。
2)習氏が見返りに何を得たかは、米国のさらなる制裁措置の凍結と中国人留学生受け入れについて米国の保証は得た以外は、あまり明らかになっていない。
3)投資家は、米国・中国間の関係が軌道に乗ってきたとの見方には懐疑的で、中国本土株のCSI300指数は6/6現在、ほとんど変化しなかった。
●4.中国BYD、2週間で時価総額▲2.88兆円消失、価格競争を懸念(ブルームバーグ)
1)株価は過去最高値から▲13%下落している。
2)小米(シャオミ)、華為技術(ファーウェイ)など新規参入によって競争が一段と激化している。
●5.中国当局がBYDなどに自主規制を求める、値下げ競争激化で=関係者(ブルームバーグ)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)6/5、日経平均▲192円安、37,554円
2)6/6、日経平均+187円高、37,741円
●2.日本株 : 日経平均はトランプ関税前に戻ったが、正念場
1)日経平均は3/26のトランプ関税前高値を5/13に回復、5/29超えるか正念場
・日経平均の推移
3/27 38,027円
4/07 31,136
5/13 38,183
5/29 38,432
6/03 37,446
6/04 37,747
6/05 37,554
6/06 37,741
2)中期で見ると、高値が右下がり基調なのが気になる点
・日経平均の中期の推移
2024年07/11 42,224円
12/27 40,281
2025年03/26 38,027
05/29 38,432
3)空売り比率が下がって日経平均はこの程度、出来高は低調で盛り上がりに欠ける
・空売り比率の推移 日経平均 売買高
6/2 40.9 37,470円 3兆8,398億円
6/6 37.2 37,741 3兆6,054
・空売り比率が▲3.7も低下しても、日経平均の上昇はわずか+271円高。
・売買高は通常4~5兆円/日だが、最近は3兆円台と商いが細っている。
4)円相場は2025年末には130円台を目指すと見る
・円高に向かう理由
・米国の利下げ(米国景気減速対策のため年内は利下げを探る展開)。
・日銀は利上げ姿勢。
・米国トランプ政権による財政赤字拡大でドル安へ。
・トランプ政策は米国の弱体化を招き、ドルの基軸通貨としての信認低下。
・トランプ政権末期には、1ドル=115円もありと予想
●3.消費支出、4月は前年比▲0.1%減で2ヵ月ぶりのマイナス(ロイター)
●4.ラトニック米国商務長官、USスチール買収は「承認可能と大統領に勧告」(NHK)
1)米国議会下院の公聴会で、安全保障上の懸念を緩和する措置があれば承認できると明らかにした。
・合意の中には、USスチールのCEOに米国人の任命を義務付けられる見込み。
・6/18までには結論が出る見通しを伝えた。
●5.スズキ、中国レアアース磁石の輸出規制で「スイフト」を5月下旬から生産停止=関係者
1)中国は4月、レアアース磁石など一部重要鉱物類の輸出停止を決定。(ロイター)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・2685 アダストリア 業績好調
・4004 レゾナック 業績順調
・6367 ダイキン 業績堅調
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