毎年定期的に入れ替わりがある株価指数「JPX400」とは?

2023年10月1日 16:52

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記事提供元:エコノミックニュース

JPX400は2014年に発足した「日経平均」「TOPIX」の弟分の株価指数

JPX400は2014年に発足した「日経平均」「TOPIX」の弟分の株価指数[写真拡大]

■JPX400は2014年に発足した「日経平均」「TOPIX」の弟分の株価指数

 8月7日、株価指数「JPX400」構成銘柄の定期入れ替えが発表された。「JPX400」は正式には「JPX日経インデックス400」といい、日本経済新聞社と、東京証券取引所を運営するJPX(日本取引所グループ)の子会社JPX総研が共同で運営する株価指数である。2014年1月、「日経平均株価」「東証株価指数(TOPIX)」に続く第三の株価指数として、その算出と発表が始まった。「日経」の名がつくので日経平均株価(構成銘柄数225)の弟分のようなものだが、TOPIX(構成銘柄は東証プライム、スタンダード、グロース市場の全銘柄)を算出・発表するJPXも関わっているので、TOPIXの弟分でもある。

 JPX400の構成銘柄数は400で、基本的に全銘柄が東証上場のTOPIX構成銘柄を兼ねる。採用基準が異なるので、日経平均(225銘柄)の構成銘柄でもJPX400の構成銘柄ではないケースも起こりうる。たとえば2014年1月6日のJPX400発足時点で、日経平均構成銘柄のアマダHDがJPX400に「落選」して話題になった。同社はその後、落選の主な理由とされたROE(自己資本利益率)の悪さを経営努力によって改善したので、2017年8月に新規採用されている。

 日経平均は時価総額(株価×発行済株式数)、証券取引所での売買代金、株式市場での流動性、利益や配当のような「マーケットでの実績」が主に重視されているが、JPX400ではそれに加えて財務内容、資本効率(ROE)などの「企業全体の評価」も重視される。社外取締役や女性役員の数、国際会計基準(IFRS)の採用、英文資料の開示なども加点要素で、それはJPXのそのそもの創設目的「資本効率とガバナンス(企業統治)を正当に評価・反映する指標をつくりたい」に合致している。

■2023年8月は構成銘柄から36銘柄を外し、38銘柄を新規採用

 JPX400は毎年8月末に定期入れ替えが実施され、8月上旬に除外銘柄、採用銘柄が発表されるが、それ以外の時期でも臨時に除外が行われることがある。昨年の定期入れ替え後、日立物流、日鉄物産の2銘柄が上場廃止に伴って除外されて欠員になっていたが、2023年8月の定期入れ替えで36銘柄が除外、38銘柄が採用になり、8月31日の算出・発表から構成銘柄数が400に戻っている。

 日経平均の定期入れ替えが数銘柄程度なのに対し、JPX400は毎回、定期入れ替えで30~40銘柄が入れ替わる。それだけ経済情勢の動向や企業業績の変化に敏感で、スコアリングの基準を約1000ある最終候補に対し公正に適用して400銘柄を選び、日経平均のように現在の採用銘柄の優先や業種間のバランスをとる配慮もあまり見せない。そんな姿勢が市場関係者や投資家の信頼を得てきた。

 今回の採用38銘柄は、自動車のマツダ、自動車部品のKYB(旧・カヤバ工業)から、ADEKAや大紀アルミニウムのような素材メーカー、コメリやしまむらのような著名な小売チェーン、事業承継という今日的なテーマを扱う日本M&AセンターHD、カジノ関連のSANKYO、セガサミーHD、コンテンツを握るKADOKAWAのような企業など、幅広いラインナップが揃った。

 特筆されるのが世界的に需給が逼迫している半導体関連の多さで、SiCパワー半導体で積極投資を進めるローム、半導体封止材で世界トップの住友ベークライト、フォトレジストで世界トップの東京応化工業、半導体製造機器向けのCMP(化学的機械的研磨)技術を持つフジミインコーポレーテッド、半導体商社のマクニカHDなどが、軒並み新規採用されている。

 一方の除外36銘柄は、業種的には西松建設などの建設業、住友ファーマや参天製薬のような製薬メーカー、太平洋セメントやJR東海や九州電力のようなインフラ関連が目を引く。人手不足やポストコロナや燃料高騰が業績に影を落としているような企業である。

■ロームが構成銘柄に新規採用された意味と、そのメリットは?

 日経平均、TOPIX、JPX400のような株価指標が、プライオリティ(優先度)を獲得して投資家の間での知名度を高められるか、それとも市場関係者が必要に応じて口にする程度のマイナーなものにとどまるかは、次のような要素に左右されると言われている。

1 数値がメディアで日々、積極的に報道されること

2 指標に連動する投資信託、特に証券取引所で売買される上場投資信託(ETF)が多数設定されること

3 GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)のような影響力の大きい機関投資家が運用の指標として採用していること

 歴史の古い日経平均、TOPIXはこの3要素とも合格点だが、JPX400は発足からまだ10年足らずながら、すでに3要素をほぼ満たしている。まず1については日本経済新聞とJPXがバックについていることが大きい。2は現在までにJPX400連動型の投資信託、ETFが数多く設定され、しかもそのETFは日本銀行が積極的に購入している。JPX400先物市場もすでに大阪取引所に開設された。3もGPIFがJPX400を運用指標として重視すると運用報告書で述べている。日本銀行とGPIFは現在、日本最大級の資金の出し手であり、しかも安定度抜群の公的な資金である。

 つまり、一般的な知名度では見劣りしても、少なくとも日本の証券市場においてJPX400は、すでに日経平均、TOPIXと肩を並べられるほどのプライオリティを獲得できている。

 一般の個人投資家にとっても、特に長期保有を志向する投資家なら「JPX400の採用銘柄なら、資本効率でもガバナンスでもお墨付きを得ているから、安心だ」と思うだろう。つまり、採用されるメリットは、機関投資家からも個人投資家からも「選ばれる銘柄」になれる、ということである。

 JPX400構成銘柄に採用されるのは、そのこと自体「プレミアム」と言っていい。たとえば今回、新規採用されたローム(6963)の採用発表前の8月7日の終値は12430円だったが、採用発表後の8月8日の高値は215円高(+1.73%)の12645円、終値は160円高(+1.29%)の12590円だった。8日のTOPIXの騰落率は+0.3%だったので、+0.99~+1.43%のプレミアムがついた、とみなすこともできるだろう。ちなみにロームの8日の売買高は前日比+22.8%の100万2700株で、投資家から旺盛な買いを集めていた。

 JPX400新規採用銘柄で時価総額最大のロームは、日経平均新規上場の有力候補に何度も挙げられながら、電気機器セクターに優良企業が多いことなどもあり、結果として不採用になってきた過去がある。今回、JPX400に新規採用されたことで弾みがつき、晴れて日経平均構成銘柄になれる可能性が高まった、と言ってもいいだろう。(編集担当:寺尾淳)

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